救急病院 苦境に拍車
診療報酬改定で大減収
「早急に見直せ」 小池議員が要求
今年四月の診療報酬(いわゆる「医療の値段」)の改定で、入院についての算定方式が変更されたため、大幅減収に追い込まれている地域の救急病院が生まれています。今年の診療報酬改定で厚生労働省は「病院勤務医対策」を売り物にしましたが、現場からは「改定によって打撃を受けている。逆行だ」と批判が続出。日本共産党の小池晃参院議員は質問主意書で見直しを強く要求しました。
半分以下
問題になっている診療報酬は「入院時医学管理加算」の改定です。同加算は、もともと「十分な人材と設備を備え、地域で専門的な救急医療を提供している病院」を評価するためのもので、一病床で一日三百円の加算でした。昨年度は二百六病院が届け出ました。
ところが厚労省は診療報酬改定で、同加算を一日六百円に引き上げる一方、算定できる施設基準に厳しい条件をつけました。このため、加算を継続できない病院が相次ぎました。
当初、厚労省は百五十ー百七十程度の病院が申請すると見込みましたが、実際は八十八病院(七月一日現在、小池議員にたいする厚労省の回答)で、昨年度の半分以下という事態です。
加算が継続できなかった場合、三百床程度の中核病院の場合、減収額は三千万ー三千五百万円。入院収益が0・7ー0・8%下がる計算になり、今年度の診療報酬引き上げ(0・38%)効果が「消し飛ぶ」(病院関係者)結果となっています。
直撃されたのは、地域の中核となってがんばっている病院です。
全日本民主医療機関連合会(民医連)の調査によれば、北九州市では、救急車搬入を年間三千ー五千件受け入れている病院でも、加算が算定できない事態になっています。それは新たに設定された施設基準が、救急医療の努力を評価するものでなく、現場の実態を無視したものだからです。
施設要件として▽内科、精神科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科、産科、産婦人科と、その入院体制が整っていること▽全身麻酔の患者が年八百件以上であることーなどを挙げています。
これでは、すべての診療科の医師体制が確保できない病院は算定困難です。北九州のある救急病院は、産科・小児科がないため、算定が継続できなくなりました。
麻酔件数などのハードルは、医師不足が深刻化している麻酔科、精神科の医師に二十四時間対応を迫り、勤務医の過重労働にいっそう拍車をかけるものです。
“処罰”も
重大なのは、新たな算定要件の施設基準として「選定療養」(他の医療機関からの紹介状のない初診患者から初診料以外の料金をとること)も必須にしたことです。
「選定療養」を施設基準に入れたのは、初めて。これは、患者の負担を減らすための努力をしている病院への「事実上のペナルティー(処罰)」です。
小池氏は十月に提出した質問主意書で、新しい加算の問題点を挙げ、即急な見直しを求めましたが、政府の答弁書は、現場の実態をまともに調べずに、「適切なもの」という答えに終始しています。
小池氏は「地域の救急病院を支援する役割を果たしていない。医療現場の士気の低下や救急医療からの撤退など医療崩壊に拍車をかけかねない」として、二年後の診療報酬改定を待つのでなく、早急な改善と見直しを求めています。(宮沢毅)
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