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質問第一七八号

後期高齢者医療制度の政府・与党の「負担軽減策」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

 平成二十年六月十九日

小池 晃

 参議院議長 江田 五月 殿

後期高齢者医療制度の政府・与党の「負担軽減策」に関する質問主意書

  • 「後期医療」 政府「見直し」策/負担増の解消 5%/小池議員に答弁書(関連記事

 六月十二日に発表された政府・与党による後期高齢者医療制度の「負担軽減策」は、七十五才以上の高齢者を今まで加入していた保険から強制的に脱退させ、新たな制度に囲い込み、際限のない保険料の引上げと高齢者に対する差別医療をもたらすという制度の骨格には何ら手をつけないものである。一時的には保険料負担が軽減された人も、二年後には大幅な負担増になる可能性もある。くわえて当面二年間の「負担軽減策」それ自体についても、さまざまな問題がある。

 そこで、以下質問する。

 厚生労働省の調査報告に添付された試算によれば、政府・与党の「負担軽減策」を実施した場合に、「負担減」の割合が六十九パーセントから七十五パーセントに、六ポイント改善するとされている。この試算の分母となる数は「国保から後期高齢者に移行した人=約一千万人」なので、「負担軽減策」によって負担増が解消される人は六十万人程度ということになるが間違いないか。独自試算があるならば、それを示されたい。
 政府・与党の「負担軽減策」による均等割の軽減について、政府・与党の試算では、二〇〇八年度は「七割軽減」を受けている人、四百七十万人が「八・五割軽減」になり、二〇〇九年度は「七割軽減」対象者のうち年収八十万円以下の二百七十万人が「九割軽減」になるとされている。
  1.  同居している子供が世帯主であり、その子供に三十三万円を超える所得がある場合には、高齢者自身は低所得でも「七割軽減」の対象にはならないことになる。たとえば、母親七十六歳・無年金・無収入、息子五十歳・給与年収百万円の場合、息子の給与所得が三十五万円以上になるので、「七割軽減」にならず、「五割軽減」となるため、今回の「負担軽減策」の対象にもならないのではないか。
  2.  高齢者夫婦で、夫の年金収入が百六十八万円以上の場合は、夫はもちろん、妻も「七割軽減」の対象にはならない。したがってこの場合、夫婦とも「負担軽減策」による均等割の軽減の対象にならないのではないか。
 二〇〇九年度には、政府・与党の「負担軽減策」による均等割の軽減について、世帯に属する後期高齢者医療制度被保険者の全てが「年収八十万円以下」という条件が追加されるため、ますます対象が狭まってしまう。夫婦世帯の場合、たとえば、妻は年収五十万円しかなくても、夫の年収が九十万円あったら、夫婦とも均等割の「九割軽減」対象にならないのではないか。
 政府・与党の「負担軽減策」の所得割の軽減対象は、年金収入二百十万円程度までとされている。つまり年金収入のみの場合、所得割がかかる百五十三万円から二百十万円程度の所得層が対象である。政府・与党の試算では、全県で実施した場合には九十万人が対象になるとされている。
  1.  年金収入百五十三万円以下の人は、もともと所得割がかからないから、「負担軽減策」による所得割の軽減対象にならない。年金収入八十万円から百五十三万円の人は、二〇〇九年度には「負担軽減策」の均等割の軽減対象にもならないので、まったく「負担軽減策」から漏れてしまうことになるのではないか。
  2.  後期高齢者医療保険料の所得割料率が、国保の所得割料率より高い市町村の比率はどの程度か。われわれの調査では半分程度と思われるが、その結果、今回の政府・与党の「負担軽減策」が全県で実施され所得割が軽減された場合、実際に負担増が解消される人数は、政府・与党が試算している九十万人のうちどの程度になるか明らかにされたい。実際に負担が軽減される方は九十万人よりはるかに少ないということになるのではないか。
  3.  東京二十三区、横浜市、名古屋市など、国保料が住民税方式だったところでは、夫婦で年収二百十一万円までは住民税非課税で、所得割国保料はゼロだった。政府・与党の「負担軽減策」が実施され後期高齢者の所得割保険料が半減された場合、どの程度負担増が解消されるのか明らかにされたい。また、所得割保険料が半減されたとしても、これらの地域では負担増が解消されない場合が多いのではないか。政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。


答弁書第一七八号

内閣参質一六九第一七八号

 平成二十年六月二十七日

内閣総理大臣 福田 康夫

 参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員小池晃君提出後期高齢者医療制度の政府・与党の「負担軽減策」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員小池晃君提出後期高齢者医療制度の政府・与党の「負担軽減策」に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、平成二十年六月三日の後期高齢者医療の保険料軽減に係る与党プロジェクトチームにおける負担軽減策(以下「負担軽減策」という。)の取りまとめの後、同月四日に御指摘の長寿医療制度(後期高齢者医療制度)の創設に伴う保険料額の変化に関する調査の結果速報を公表したものであるが、当該調査の取りまとめとして推計した、負担軽減策を実施した場合と実施しなかった場合における保険料額が減少する世帯に属する後期高齢者の割合の差に、平成十八年の健康保険法等の一部を改正する法律案を提出する際に推計した国民健康保険(市町村が行う国民健康保険に限る。)から後期高齢者医療に移行する人数を乗ずることにより、国民健康保険から後期高齢者医療に移行した世帯のうち、負担軽減策を実施したことにより保険料額の負担増が解消される世帯に属する後期高齢者数を推計すると、平成二十年度において、約六十五万人となる。なお、負担軽減策の内容については、平成二十年六月十二日の政府・与党協議会において、正式に政府・与党の方針として決定されたものである。

二の1及び2について

 お尋ねのとおりである。

三について

 お尋ねの夫の「年収」が「年金収入」を意味するのであれば、お尋ねのとおりである。また、当該「年収」が「年金収入」以外の収入を含むのであれば、お尋ねの世帯については、負担軽減策による後期高齢者医療の保険料の被保険者均等割額の九割軽減(以下「九割軽減」という。)の対象になることもありうる。

四の1について

 年金収入八十万円のみの者は、九割軽減の対象となる。年金収入が八十万円を超え、百五十三万円以下の者は、負担軽減策における所得割額及び均等割額の軽減の対象にはならないが、こうした者のうち災害等の特別の理由がある者については、個別減免の適用も含め、市町村において、きめ細やかに相談に応ずることとしている。

四の2について

 お尋ねの比率については、把握していないためお答えすることは困難である。なお、後期高齢者医療の保険料と国民健康保険の保険料(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による国民健康保険税を含む。)については、保険料の算定方法に違いがあること等から、両者の所得割率を単純に比較することは不適切であると考えている。
 また、お尋ねの実際に負担が軽減される人数については、把握していないため、お答えすることは困難である。

四の3について

 お尋ねの住民税方式を採用している市町村において、どの程度負担が軽減されるかについては、把握していないため、お答えすることは困難である。なお、後期高齢者医療の保険料と国民健康保険の保険料については、その水準に差があること等から、これらの市町村では負担増が解消されない場合が多いのではないかとの御指摘が妥当かどうかについて確たることを申し上げることは困難である。

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