私は、ただいま議題となっております最低賃金法の一部を改正する法律案に対し、日本共産党を代表して、修正の動議を提出いたします。
その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。
これよりその趣旨について御説明いたします。
今日、貧困と格差の拡大が日本社会の深刻な問題となっており、どんなにまじめに働いても生活保護水準に達しないワーキングプアと呼ばれる世帯は四百万以上、年収二百万円以下の労働者は実に一千万人を超えています。
その原因の一つは、先進国で最も低水準の最低賃金額が、労働者の最低生活の下支えどころか、おもしになってきたことにあります。その深刻さから三十九年ぶりの改定が行われることになり、労働者も大きな期待を寄せていました。ところが、政府案では、都道府県別の四十七種類という世界一細かく分かれている地域別最低賃金制を固定化し、引上げのブレーキとなってきた事業者の支払能力を決定要素に残すなど、労働者の切実な要求から懸け離れたものとなっており、衆議院の修正もその枠組みを残したものとなっています。
本修正の目的は、貧困と格差の解消に果たす最低賃金制の役割を重視し、世界では当たり前になっている全国一律最低賃金制の創設を始め、真に最低限度の生活を保障するための措置をとることとしております。
以下、提案する修正案の骨子を説明いたします。
第一に、第一条の目的規定に、憲法第二十五条第一項の趣旨を表す「健康で文化的な最低限度の生活を確保するために必要な」の文言を追加し、最低賃金法の目的を明確にしております。
第二に、全国を通じすべての労働者に対し一律に適用される全国最低賃金を創設します。さらに、全国最低賃金が不適当と認められる地域については、全国最低賃金額を上回る額で地域最低賃金を定めるものとしております。また、労働者又は使用者からの申出により、全国最低賃金を上回る額で産業別最低賃金を定めることができることとします。
第三に、全国最低賃金と地域最低賃金は、労働者及びその家族が健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な経費を基本として定めなければならないこととし、事業者の支払能力は決定要素から削除します。
第四に、改正後の制度の中小企業における円滑な実施を図るため、中小企業に関する取引の適正化に係る措置、中小企業に対する支援に係る財政上、税制上及び金融上の措置等の措置を講じなければならないこととしております。
第五に、最低賃金額は時間だけでなく、日、週又は月によって定めること、産業別最低賃金に係る違反についても罰則の対象とすること、派遣中の労働者の最低賃金は派遣先、派遣元の最低賃金のうち金額の高い方の適用とする等、所要の措置を講じることとしております。
この修正によって、最低賃金を大幅に引き上げてほしいという労働者の願いにこたえるものになるものと確信します。
以上述べて、提案理由の説明といたします。
是非とも御賛同くださいますよう、よろしくお願いいたします。