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166通常国会 参議院厚生労働委員会 社会保障協定特例法に関する質疑/年金・医療等に関する一般質疑

  • 金持ちほど保険料減/後期高齢者医療 あまりに不公平/小池議員が追及(関連記事
2007年5月10日(木)

委員長(鶴保庸介君)

 質疑を続けます。

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 日本の労働者が海外転勤を命じられた場合に、年金、健康保険は、会社が雇用関係がないと意思表示をしない限り適用が継続されるわけです。今回の法律によって、社会保障協定の締約国との関係では、年金、健康保険料の二重負担は解消されることになります。

 そこで、それ以外の保険について最初にお聞きしたいんですが、労災保険、雇用保険はこれは労働者の命綱でもあるわけですが、これはそれぞれ海外転勤の場合にはどういう扱いになるんでしょうか。

政府参考人(高橋満君)

 まず、雇用保険制度にかかわる取扱いでございますが、海外支店への転勤等になりました場合、これが雇用保険の被保険者が事業主の命により日本国の領域外において就労するということになるわけでございますが、その場合、この当該事業主との雇用関係が継続している限り雇用保険の被保険者資格は継続をする取扱いといたしております。

政府参考人(青木豊君)

 労災保険についてでございますが、我が国の労災保険の適用範囲は、属地主義ということで原則として日本国内の事業場に雇用される労働者に限られております。しかし、海外転勤を含む海外に派遣される労働者につきましては、海外における労働災害保護制度が必ずしも十分でない状況等にかんがみまして、特別加入することができることとしております。

小池晃君

 年金、健康保険、雇用保険については、雇用関係が継続している限り海外転勤したとしても被用者保険に加入し続けることができる制度となっているわけです。一方、今お話あったように、労災保険については、海外転勤についてこれは原則としては加入できないんですが、任意加入である特別加入制度によって労働者保護を図っていると。この任意加入であるがゆえにいろんな問題が起こっているので、今日その問題をちょっと取り上げたいと思うんです。

 最初に紹介したいのは、ある大手印刷会社に勤務していた方の事例なんですね。

 これは、中国の上海工場への出向を命ぜられて、二〇〇三年九月に赴任をされています。これ現地行かれて、業務遂行上の課題、それから前任者から引き継いだ不祥事の整理の課題、こういうのに追われる一方だった。国内で三か月間中国語の研修受けたんだけれども、言葉が通じないので現地労働者との人間関係に非常に悩んだと。国内では経理しか経験がなくて管理職でもなかったのに、中国行ったら総務部長になって、新会社の立ち上げ、事務、人事、経理、全部担ったと。向こうでは、三人で三百人の中国人の管理をしていたというんですね。この方は、長時間勤務と環境の激変の中で、赴任後わずか四か月でうつ状態で自殺に追い込まれて、死亡時三十四歳の方です。これ遺族が労災申請をしようとしたらば、会社が今お話あった海外勤務者の労災特別加入手続をしていなかったということが判明をいたしました。

 局長にお伺いしたいんですが、こういう場合、後から労災事故として救済するような手段はないんでしょうか。

政府参考人(青木豊君)

 我が国の労災保険制度は、日本国内の事業について原則として労働者を一人以上雇用するすべての事業に強制適用されるということでありますので、事業を開始したときから当然に保険関係が成立しているわけです。このため、適用事業の場合には、事業の開始の日から当然に事業主は保険料を納付する義務が生じておりますし、保険関係成立の届出を行う前の災害についても、したがって補償を行うと。したがって、遡及的に保険料負担を求めつつ給付を行うということにしているわけです。

 しかし、今お話にありました特別加入につきましては、事業主が任意に、正に委員御指摘になりましたように任意で加入をするということができるということでありまして、加入を申請した後でなければ保険関係が成立しないというものでございますので、保険関係が成立する以前の事故について遡及的に保険給付を行うということはできないというものでございます。

小池晃君

 この事案では、救済されないので会社を相手取って損害賠償訴訟が提起されています。

 裁判の中では、会社側は、被災者の業務上の負荷とか過重性を全く無視して、精神疾患と業務との関係ももう否定して、遺族に対して、不当な責任転嫁だと、会社に義務なきことを強いる難癖、言い掛かりのたぐいであり、非礼を通り越して言語道断であるという悪罵を浴びせ掛けているんですね。本件死亡事故の原因が外部的な要因ではなく家族の中に内部的要因としてあると、こういう主張まで会社側はしている。そもそもの過労自殺裁判が始まったころの、もう過労自殺が労災になるかどうかが問題になるような、そういうような闘いを一から繰り返すということになっているんですね。特別加入していたとしても、これは労災と認定されたかどうかは確かに分かりません。しかし、労災保険による救済が可能であれば、こんなひどい言い掛かりを投げ付けられることもなかったんじゃないかというふうに家族は切実な声を寄せておられるんです。

 それから、二つ目ちょっと紹介したいのは、これは同様に、日本の繊維商社に勤務されていた方なんですが、上海の子会社に現地工場に工場長として派遣されたケースなんです。これは、不良品が発生したり、従業員とのトラブルがあったり、通訳を通じての言葉の不便さ、先ほどもお話あったような同じような状況があって、日曜も休まず、ほぼ毎日朝八時から夜遅くまで仕事をこなしておられた。二〇〇四年十月に、日曜出勤で会議に参加しているときに廊下で倒れて脳幹出血で亡くなられて、死亡時四十九歳の方です。この方のケースは、日本の企業の側が派遣する段階でこれ業務委託契約にしているんです。雇用関係にないので何の責任もないんだというのが会社側の主張なんですね。

 局長、お伺いしたいんですが、こういうケースで労災保険に特別加入するというのは、これはそもそもできない仕組みになっているんでしょうか。

政府参考人(青木豊君)

 海外の事業場に派遣される者につきましては、国内の事業主の命令で海外の事業に従事して、その事業との間に現実の労働関係を持つ者である限り、形態のいかんにかかわらず特別加入制度の対象となり得るというふうに思っております。したがって、業務委託契約という、名称がそういうことでありましても、その実態、今申し上げたようなことであれば、特別加入制度の対象となり得るというものでございます。

小池晃君

 悪質な企業では、こういう法律上は雇用関係切って海外派遣するというようなこともあるので、この辺は非常に重大な問題だと思うんです。

 三つ目にちょっと紹介したいのは、これは実名で紹介したいと思うんですが、萩原幸次さんという方です。この方は、ライター製造大手の株式会社東海の課長さんでした。九六年の一月から中国の東莞工場に工場長として単身赴任をした。一九九九年の一月に合弁会社の佛山東海というのの社長兼東莞工場長の併任を命じられています。東莞工場が閉鎖して、同時に佛山東海の立て直しということがあって、非常に長時間過密労働を強いられた。九九年九月に一時帰国した際の健康診断では、高脂血症、心電図異常などで要治療の状態でした。そのまま中国に再度赴任をされて、一月後の十月二十三日に心筋梗塞で現地で死亡されて、死亡時五十二歳であります。こういうケース、本当に多いんですね。私も、今回この質問をするに当たって大変驚きました。

 遺族は、これは死亡が明らかに業務過重によるものだとしか考えられないということで、労災申請をした。これ、赴任を命じられた時点での佛山東海というのは、従業員数が三百人以下だということだったんです。これは当初から特別加入手続を行って、言わば派遣元の株式会社東海が特別加入の労災保険料を負担し続けていた。ところが、厚生労働省がこの労災申請があって調べに行ったらば、萩原さんが過労死したときの佛山東海の従業員数が三百人を超えていたということで、中小事業主としての特別加入は不可であると、労災の適用はないということで不支給を決定したというふうに聞いているんです。

 なぜこの人の場合は不支給ということになるんでしょうか。

政府参考人(青木豊君)

 個別の案件について直ちにどうということはちょっと言い難いわけでありますけれども、今の一般的な問題として申し上げれば、中小企業である場合には特別加入ができるということになっておりますが、これは我が国の中小企業対策の一環として、中小企業基本法の中で規定されているような中小企業につきましては、そこの中小企業事業主については労災補償の対象にしようと。それは、業務の実態、災害の実情、そういったところから考えてそういう制度をつくっているわけであります。しかし、事業規模の変更によりまして特別加入制度の対象でなくなったという場合には、やはりこれはそういった制度の枠から飛び出るということでございますので、その時点で労災補償制度の適用対象にならないということになるというふうに思っております。

 しかし、中小企業事業主につきましては、事業活動の発展等によりまして、事業規模の変更、拡大によって中小企業の要件を超えていくというようなことも可能性として当然あるわけでございますので、こういったことについては、この制度の、特別加入制度の内容を十分に周知いたしまして、そういったことが十分事前に分かるように私どもとしては処理をしていきたいというふうに思っております。

小池晃君

 ちょっと確認したいんですけれども、この場合、子会社の社長さんなんですね。で、海外なわけです。一般論でお聞きしますが、子会社の社長であっても、またこれがたとえ海外であったとしても、本社の具体的な指揮命令の下で仕事をしていれば労災保険上は労働者としての扱いになるという原則でよろしいですね。

政府参考人(青木豊君)

 子会社というのがこれまたどういうものか厳密に整理をしなくちゃいけないと思いますが、通常、法人格を持っている会社であるということで考えますと、一般的にはそういった現地の法人の社長というのは労働者ではないということでありますので、海外派遣労働者としての特別加入制度の対象となる可能性はないだろうというふうに思っております。

小池晃君

 しかし、この場合は中小企業主特例が適用される可能性があったわけです。

 大臣、今お話を聞いていただいて、この萩原さんの場合、佛山東海の社長さんになったときは従業員数が三百人以下だったんですけど、その後三百人超えたのでこの中小企業主特例の適用対象から外れると。中国というのは人口も多い国ですし、非常に労働力集約型の仕事ぶりしているところで、こういうケースというのはあり得るんではないかと思うんですが、私はこの話聞いて、こういうケースでこの適用から外れちゃうというのは、これは何とかならないのかなというふうにまず思ったんですけれども、今の話聞いていただいて、こういう方が中小企業主、加入したとき三百人以下だったのに、死亡したときにそれが三百人超えていたから適用対象でないということで労災の申請を却下されると、これはちょっと何とかならないんですか。

 ちょっと大臣、率直な御感想でもいいですけど。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 三百人以下の海外の事業場の代表者になって、それで中小企業主としての任意加入である特別加入制度を利用しているというケースでありますが、それはやっぱり常時三百人以上ということになりますと、やはりその適用要件を欠くことになるということは、これはもう内外の平等取扱いということからしても、それは貫徹されざるを得ないというふうに考えるわけでございます。

 したがいまして、今基準局長から答弁ございましたように、そういう不測の事態が生じないように、あらかじめ制度の趣旨というものを徹底しておくということが大事だろうと思います。

 一般論として、以上お答え申し上げました。

小池晃君

 何か随分冷たいなという感じがするんですけどね。だって、やっぱり中小企業といったって、中国での企業規模と日本の企業規模って同じしゃくし定規に当てはめるということじゃないんじゃないかとも思いますし、こういう人のケースの場合は何らかの救済策あって私はしかるべきだと思うんですよ。

 ちょっと今いろいろとこの労災の問題について指摘をさせていただいてきたんですけれども、やっぱり任意加入の特別加入という制度の限界というのはやっぱりあるんだと思うんですよ。やっぱりこれ考える必要あるんじゃないか。これだけ経済がいわゆるグローバル化というふうに言われている中で、日本企業では普通の一般の労働者だった人が現地子会社に行って合弁会社なんかの社長なんかで派遣されるケースというのが非常に増えてきて、行く先としてはやっぱりアジア、中国、労災制度なんかが十分完備されていないという国のケースが非常に多いわけです。法制上、直接投資が認められていないというような場合で合弁会社を設立せざるを得ないようなケースもあって、そういう場合、実態としては生産拠点の責任者なんだけれども、現地会社では社長という、こういう扱いになるということもあるわけです。

 萩原さんのようなケースは、現地法人の社長と現地生産拠点の労働者を兼ねているという、そういう労働実態ですよね。こういう人の場合はやっぱり中小事業主の特別加入制度で労働者保護を図るしかないというのが実情としてあるわけですね。しかし、この中小企業特例というのが、国境を越えた企業の展開とかあるいは企業の海外進出の中で、やっぱり日本の条件を機械的に当てはめるということで対応できるのかということでは、実態に合わない面もあるんじゃないか。やっぱりこの特別加入制度の任意加入という問題をこのまま今の制度のままでいいのかということが一つですね。

 やっぱりこれは事業主が行う制度なんです。しかし、実際にその不利益を被るのは労働者なんです。だから、やっぱり労働者がある程度関与できるような仕組みというのも考えないといけないんではないか。あるいは、中小企業主特例というのも、今の実態に照らせば、やっぱりこれ一定の見直しということをやっていく必要があるんじゃないか。やっぱり国民の命や健康を守るという観点から、今九州の会社に派遣されるのと中国に派遣されるのとほとんど変わらないような感覚で企業行動というのは行われているわけですから、そういう中で海外に行った労働者の、あるいは国民の健康を守るという観点から、やっぱり一定の制度の見直しということをこの際やっていく必要があるんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 まさしく九州に子会社を設けるのと中国に子会社を設けることとを余りもう意識しないというか、そういうボーダーレスの産業社会というか、経済社会が進展をしているわけでございます。

 じゃ、九州に子会社を設けてその社長さんになってもらうときはどうなのかというと、やっぱりこれは中小企業の特例で三百人以下である場合に初めて任意加入が可能になると、こういうことでございます。

 したがいまして、そういう内外を同じように扱うというメルクマールは、それは小池先生、中国の人は人海作戦あるいは労働集約型の企業なんでそこでしんしゃくされるべきだというようなお考えは、それはそういう経済的な意味では分かりますけれども、この制度のこの枠組みというものをそれで、では円滑にあるいは公平に運用できるかというと、私はそうではない。やはりここはやっぱり三百人以下というところは守らざるを得ないのではないかと、このように考えます。

小池晃君

 じゃ、特別加入制度についてもやっぱり見直しというのはこれ全く考える余地ないという、そういうことですか。

政府参考人(青木豊君)

 特別加入制度は、正に特別加入ということでありまして、元々労災保険制度が事業主の労働者の災害補償に対する災害補償責任ということで出発をし、それをベースにいたしているわけでございます。

 その際に、この特別加入というのは、先ほども申し上げましたが、一定の中小企業の方には、労働者と実際に一緒になって働いて作業実態が同じようで、なおかつそういう意味では発生する災害が同じようなものがあると、そういう場合には特別に労災補償保険の中で補償していくということもいいではないかということで、任意の制度としてそういう特別加入制度を設けていると。そういう制度の趣旨からいたしまして、それを広範に認めていくというのはなかなか難しいというふうに思っております。

小池晃君

 非常に冷たい答弁なんですが、やっぱり労働者はそういう中で本当に命奪われている実態あるわけですから、それに対してどうするのか、これまともに真剣に考えていただきたいというふうに思います。

 それから続いて、年金の問題ですが、この協定が結ばれてきて、アメリカの問題を聞きたいんですが、アメリカの年金期間を通算して日本年金を受給した人と、日本年金を通算してアメリカ年金を受給した人の数はどうなっていますか。

政府参考人(青柳親房君)

 今アメリカについての実績ということでお尋ねがございました。

 受給している人間の数がどうかということでのお尋ねでございましたので、平成十七年の十月から本年の三月末までの実績でお答えいたしますと、実際に裁定が行われた件数ということでお答えいたしますと、日本の国民年金、厚生年金については七十四件、それからアメリカの年金については日本に在住しているすべての申請者に対する裁定の件数が、昨年のこれは十二月までの実績ということですが、五千三百七十二件というふうに承知をしております。

小池晃君

 非常に大きな乖離があるわけですね。これはやはり、先ほども議論ありましたけれども、もちろんアメリカ在留邦人と在日アメリカ人の数の差もあると思いますが、日本とアメリカの年金の最低加入期間の差というのもここには何らかの形で影響しているのではないかと思うんですが、いかがですか。

政府参考人(渡邉芳樹君)

 日本とアメリカのそれぞれのサイドからの年金の請求、裁定件数に大きな差があるというのは御指摘のとおりでございます。

 そして、その原因というのは私ども必ずしも明らかにでき得るものではございませんが、もちろん私ども及びアメリカ当局の広報、周知の努力と、こういった点もあろうかとは思いますが、基本的にはやはり日本からアメリカに派遣されている民間企業関係者数が五万四千人を超えているのに対して、アメリカから日本に派遣されている企業内転勤者の人数が一千三百人ぐらいと、こういう差がどうしても大きくあるのではないかと。

 また、日本には独特の外国人脱退一時金制度もあるというようなことで、それで終了してしまうという方もいらっしゃるのかと思いますので、確かに最低加入期間の違いというものが両国の制度にあるわけです、十年と二十五年とあるわけでございますが、全く関係がないかというと、よく断じ切るわけにはいきませんけれども、大きな影響をそこに及ぼしているというふうに私どもは考えておりません。

小池晃君

 全く関係がないわけではないと。

 先ほども議論ありましたけれども、主要国では年金の最低加入年限はゼロから十年、日本は二十五年、余りに長いと思うんです。これは確立した国際標準があるわけではないと思うんですが、やっぱりこの長い最低加入年限の問題というのはこれは考える必要がある。これは国際比較の問題だけじゃなくて、やっぱり無年金者を生み出している一つの大きな原因にも私はなっているんじゃないかと、二十五年支払わなければ掛け捨てになってしまう。

 日本の場合、一階も二階も現時点では保険主義になっているわけです。保険主義ということでいえば、やっぱり払った分に見合う分をちゃんと給付するというのは、これは原則のはずなんです。ところが、二十五年たたなければゼロになってしまう。これはやっぱり保険原理でやるという皆さん方の主張で、我々は最低保障年金という制度を提案していますが、しかし、保険主義という建前に立ったとしても、二十五年払わなければカムバックしないという制度は、私はこれはおかしいと思うんですよ。

 大臣、やっぱりこういう国際的な言わば本当のグローバルスタンダードということから見ても、余りにも懸け離れた、二階だけとは申しません、私は、一階も含めて、やっぱりこの二十五年の最低加入年限を見直す、せめてアメリカ並みに十年、こういうことを検討すべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 私ども、税方式との比較を論議する場合に、私どもは社会保険方式がいいという意味で社会保険方式ということを申し上げます。しかし、年金全体を議論するときには、それに加えて、世代間扶養であるとか、あるいは先ほど来いろいろな御議論があるように、年金の機能ということも併せ考えて我々の年金は構成されているということを御説明させていただいているというふうに認識をいたしておりまして、そのとおりの制度になっているということでございます。

 私どもの年金の制度といたしましては、やっぱり日本国民を考えまして、国民の皆さんが二十歳から六十歳なり六十五歳なりまで保険料を支払う期間が設けられているということの中で、まあ二十五年ぐらいを最低納めていただくということを基本としてこの年金を構成しているということでございまして、いろいろ国際的な中で協定が行われるわけですが、そうしたそれぞれの国、土壌の中で構成されている年金は相互に尊重する中で今の国際的な活動に対する手当てをしていこうと、こういうことであろうと思いまして、私ども、現在の制度は我が国に適切な制度であると、このように考えているということでございます。

小池晃君

 日本国民のためにこそこれは見直すべきであるというふうに申し上げます。

 終わります。

--午後の質疑

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 来年四月から後期高齢者医療制度が発足するわけで、この保険料が一体どうなるのかということをちょっと今日はお聞きをしていきたいと思います。

 財源構成は言うまでもないんですが、給付費の半分を保険料で賄い、その四割が現役世代、一割が後期高齢者ということになってきます。保険料の内訳としては、応能割と応益割が一対一という仕組みになるわけですが、最初の試算では年金収入二百八万円の方の応能割の平均を月額三千百円としているんですけれども、その根拠を簡単に御説明願います。

政府参考人(水田邦雄君)

 年金収入二百八万円の方の応能割額月額三千百円としているわけでございますけれども、この算出過程でございますが、まずこれは平成十八年度予算を足下にいたしまして平成二十年度の見通しを作成し、後期高齢者の医療給付を賄う保険料はどの程度となるか、全国平均の推計値を示したものでございます。

 もう少し具体的に申し上げますと、年金収入二百八万円の方に係る応能割額はこの二百八万円から公的年金等控除百二十万円、それから基礎控除三十三万円を控除いたしました五十五万円、これを賦課対象所得といたしまして、応能割率を約七%と見込みまして、五十五万円に約七%を乗じて得た年間保険料を十二か月で割ってこの月額三千百円というものを算出したわけでございます。

小池晃君

 同じく試算では、応益割の平均月額を三千百円というふうにしておりますが、この根拠は、じゃいかがでしょうか。

政府参考人(水田邦雄君)

 この低所得者に係る保険料軽減前の応益割額三千百円でございますけれども、これは保険料で賄うべき後期高齢者の医療の給付費約十・三兆円の一〇%、これが後期高齢者の保険料で賄う分でございますので、その額から高額医療に係る公費など約五百億円を控除いたしまして、さらにその半分を応益割総額といたしまして、これを後期高齢者医療の被保険者数約千三百万人で除して得た年間保険料を十二か月で除して得た額でございます。

小池晃君

 今の計算の仕方でいうと、給付費だけなわけですが、事業としては、保健事業や事務費、葬祭料なども含まれてくるわけで、これより増大するのではないかと。したがって、応益割の金額もあるいは応能割の料率についても、どれだけかというのはこれは分かりませんが、試算より例えば一割程度増大するのではないかということもあり得るんじゃないかと思いますが、その辺の見込みはどうですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 現実のこの後期高齢者医療の保険料の算定方法をどうするかということでございますけれども、基本的には現行の国民健康保険の仕組みを参考、下敷きといたしまして、一つには広域連合ごとの費用と収入の見込額を基にしまして、保険料で賄うべき額を賦課総額として算出いたしまして、その当該広域連合の被保険者の数、所得金額に応じて応益割額と所得割率を算定することを基準とすることを考えているわけでございます。

 この基準につきまして今後政省令で定めることとしてございますが、広域連合の費用の、いや収入の見込み方等につきましても、それから御指摘の保健事業等のお取扱いも含めまして、広域連合に示していくこととしてございます。それを踏まえて各広域連合ごとに算定されると、こういう手順を踏むわけでございます。

 御指摘のように、この医療保険制度改革の参考資料でいたしました応益割額それから応能割額につきましては、先ほど申したとおり、この平成十八年度予算を足下にしまして、二十年度の見通しを作成して、この医療給付費を賄う保険料はどの程度になるか、全国平均の推計値を示したものでございますけれども、実際に各広域連合において算定する場合には、広域連合の実情に応じて医療給付費の見込額を算定することになります。

 さらに、これに加えまして、御指摘のありました保健事業等に係る費用につきましても、保険料で賄うものについては、それらが賦課総額の中に算定されることがございます。

 またさらに、二年を通じて必要な保険料額を算定するということもございますので、給付費以外のこういった要素も織り込んで現実には算定されると、こういう手順を踏むことになるわけでございます。

小池晃君

 したがって、試算より若干増えるであろうということですね。

政府参考人(水田邦雄君)

 全国平均の推計額とは異なった数値になることは、これは十分考えられます。

小池晃君

 素直に増えるって言えばいいのにね。減る要素ないわけですから増えるわけであります。

 応益割、応能割、合わせて平均月六千二百円ということですが、実際はもっと多くなる可能性も高い。しかし、応益割額を取りあえず月三千百円として、料率を先ほど試算であった七%、八%ということで設定して、年金額に占める保険料の比率がどうなるか厚労省に計算をしていただいたものを今日資料の一枚目、二枚目にお配りをしております。

 これ見ますと、例えば所得割率を八%というふうにした場合で、年金額百八十万円で保険料総額が五万一千三百六十円、年金額二百万円で六万七千三百六十円ということで、これが天引きをされてくることになりますと、三%以上のダウンになってくる方も多いということになるわけですね。

 大臣、こういうやはり後期高齢者の保険料の賦課、特に今まで被用者保険の扶養家族だった高齢者にはこの保険料は今まで掛かっていなかったわけですから、丸々負担増になってくる。ただでさえ非常に高齢者の生活厳しいという中で、この後期高齢者の保険料の賦課、年金からの天引きというのが高齢者の生活に大きな打撃となるというふうに考えませんか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 後期高齢者医療制度におきましては、後期高齢者一人一人に保険料を負担していただくという仕組みといたしております。そういう仕組みを新たにつくるわけでございますが、現在でも後期高齢者の約八割は国保に加入しておりますが、国保加入者については、所得のない高齢者を含めて現に保険料を負担していただいているという現状がございます。

 したがいまして、この新しい制度の趣旨と現行の国保加入者との均衡を考えますと、新たな制度におきましては、今委員が御指摘のように、被用者の子供と同居するなどによりまして、被用者保険の被扶養者として保険料を負担してこなかった方についても保険料を負担していただくということが必要であるというふうに考えております。もちろん、その際、低所得者については現行の国保の仕組みと同様に最大七割、委員のこの資料でも七割、二割というような軽減が使用されておりますけれども、七割、五割、三割でしたでしょうか、そういう軽減措置を設けることとしておりますし、また、これまで保険料負担がなかったという事情を考慮いたしまして激変緩和の措置、つまり、これに加入したときから二年間は保険料を半額とするというような措置を講じさせていただきましてこの制度の定着を考えてまいりたいと、このように思います。

小池晃君

 私は、これは今の高齢者の実態から見て大変な負担になることは間違いないというふうに思います。大臣も、今まで国保加入していたところについてはまあ今までどおりということですが、やはりその扶養家族の場合は増えるということはお認めになっています。

 しかも、その中身自体が納得の得られるような仕組みになっているかということで、一つ試算をしてみました。現在、職場で給与年収も得ている方がどうなるのかということで三枚目に、これは我々が試算したものであります。保険料の上限額というのはまだ示されていないんですが、現行国保の上限額五十六万円、一方で、今回の制度は個人単位だということを考えて、単純に半分にしてもいいんですが、一応上限額三十万円として仮置きで計算をしてみました。

 そうすると何が分かるかというと、給与所得、給与年収が七百万円以下の場合はこれは保険料負担は増えます。今の例えば組合健保、政管健保、まあ政管健保の保険料で計算していますが、増えるわけですが、例えば応益割が月三千百円、応能割が料率八%だというふうにしますと、給与年収が二百万円の方は二万六千円、三百万円で四万一千円、四百万円で六万円、五百万円では八万三千円負担が増える。ところが、給与年収八百万円以上だと保険料負担減るんですね。年収二千万円超える場合は、これ五十一万七千円も保険料負担が軽減されるということになります。

 これは一応仮置きの数字で計算したんですが、局長、こういう仮定で計算すればこういう、給与年収が少ない人は負担増になり、給与年収が多い人は負担が減るという仕組みになっていることはこれ間違いないですね。

政府参考人(水田邦雄君)

 実際の保険料額につきましては、先ほど申し上げましたような手順を踏んで各広域連合ごとに条例に基づき算定されるわけでございますので、確たることは申し上げられませんけれども、委員が様々置かれた仮定を置いた上であれば、こういった事例もあり得るものと承知をしております。

小池晃君

 高額な収入を得ている人ほど保険料を軽減されるんですね。七十五歳以上で給与所得者というのは三十万人であります。そのうち二十万人は役員なんです。

 例えば、日本経団連の前会長の奥田碩さんは来年四月の後期高齢者医療制度発足時に七十五歳になるんですね。今トヨタの取締役をやっていますから、それなりの給与収入を得られているだろうと。奥田氏がどうなるか分かりません。しかし、こういう七十五歳以上で給与収入を得ている方の例えば大企業の役員なんかは、これは軒並み負担が減るだろうと思われるわけです。

 今まで被用者保険の被扶養者だった高齢者は丸々負担増になる。高い給与収入を持っている高齢者の場合は、収入が少ない場合はこれは今よりも負担増えるんですが、高い、高収入の給与所得を得ていれば負担が減る。

 これ、大臣、この仕組みは余りにも不公平だと思いませんか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 先ほども申し上げましたように、後期高齢者医療制度は個人単位で保険料を賦課することといたしているということです。

 保険料の賦課基準ですけれども、これは現に八割の方が国民健康保険に加入して国保の基準に従って保険料を支払っているという実態があることを考慮しまして、現在の国保の仕組みを参考にして頭割りの部分と申しますか、応益割と所得に応じた部分、応能割とで設定することにしているわけです。委員の今お示しになられた資料は、これは応能割の部分を取り上げられているというふうに見るわけでございますが、この後期高齢者医療保険料の賦課方式としては、同時に応益割の部分もあるわけでございます。

 実際の保険料は、今局長から申し上げましたとおり、各広域連合ごとに算定されるわけでございますけれども、保険料の算定基準においては、低所得者については応能保険料について所得額に応じた低い額の賦課になりますし、また場合によっては対象外になると。それからまた、応益保険料については先ほども申したように軽減措置を設けると、こういうことになっております。それから、賦課限度額というのも国保の限度額を参考にして適切に設定することといたしまして、予定をいたしております。

 委員は三十万ということで試算をなされたようでございますけれども、現行国保は五十六万というようなことで、いずれにいたしましても、これから賦課限度額あるいは保険料算定基準を政令等で定めるに当たりましては、パブリックコメント等を通じまして国民の皆さんの御意見を十分伺っていくということでございますので、そうした御意見もまた反映させていただいて決定をいたしたいと、このように考えます。

小池晃君

 いや、これ、応益割ちゃんと組み込んで計算していますから、余りちょっととんちんかんなことを言わないでほしいんですけど。

 応益割も組み込んで言っています。そんなに低い人のところを言っているんじゃなくて、かなり高い給与収入を得ている部分でいえばこういう傾向になることは間違いないんです。それは三十万円を四十万円にすれば、それは四十万円になる。しかし、今よりも高額所得のところは下がってくることは、これは家族単位の制度から個人単位の制度にすればそういうことになることは間違いないだろうというふうに思いますし、これ非常に不公平な問題として指摘をしておきたいというふうに思います。

 それから、来年四月の後期高齢者医療制度のスタートとともに、六十五歳以上の国民健康保険料の年金からの天引きも始まります。正にこれ便乗天引きみたいに私は思うんですが、なぜ国保料まで天引きにしたのか、御説明をお願いします。

政府参考人(水田邦雄君)

 国民健康保険におきましては、原則平成二十年四月から、世帯内の国保被保険者全員が六十五歳以上七十五歳未満である世帯につきまして世帯主の受給している年金から保険料を天引きする仕組みを導入することとしているところでございますけれども、一つには、被保険者の保険料納付の利便を図ることがございます。もう一つは、市町村における保険料収納の確保と事務の効率化を図ることを目的としているところでございます。

 後期高齢者医療制度と同時期になるわけでありますけれども、やはり同じ高齢者についてはこの年金天引きを導入しようということでございまして、そういう意味では整合性を取った措置でございます。

小池晃君

 いや、利便と言うけれども、別に年金から天引きしてくれなんて国民はだれも頼んでないと思いますね。そういうことで何か国民が何か望んでいる、国民のためにやっているような説明はちょっといかがなものかと思います。業務の簡素化のために暮らしが脅かされていいはずはないと私は思います。

 実際どうなるかは、これも計算してみましたが、大阪市とそれから大阪府の堺市のケースで年金から天引きされる国保料、介護保険料をちょっと計算してみたんです。それが資料の四枚目と五枚目にございます。

 これで見ていきますと、大阪市の場合で、月一万五千円の年金の方で介護保険料と国保料が天引きされると合計で四千四百十三円引かれる、一万五千円で四千円以上引かれる。天引き率二九・四%ですね。それから、同様のケースで堺市では四千二百三十三円、二八・二%の天引き率となります。

 これも一応事前にもうお渡しして、この数字は間違いないということは厚労省から確認をいただいておりますが、これは改めて、簡単で結構ですから、これで間違いないですね。

政府参考人(水田邦雄君)

 御指摘の大阪市と堺市におきます国民健康保険料及び介護保険料についてでございますけれども、この二十年度でも現行の所得割率等が同様である、こういった一定の前提の下で試算をすれば、御指摘のようになるものと承知をしております。

小池晃君

 大臣、国保料、介護保険料を合わせて三割近くが天引きされることになるわけですね。これ月額一万五千円が年金天引きの下限ですが、私は、その月一万五千円の年金というのはそもそもやっぱりこれは生存権を保障する水準ではないというふうに思っています。

 ただでさえ少ない年金から介護保険料の天引きで大変な怒りの声が上がっているときに、更に国保料まで含めて三割ももう強制的に奪われてしまう。私、大臣ね、これは本当に憲法二十五条、生存権ということに照らしてどうなのか、生存権の侵害に当たるようなことになりはしないのかと思うんですが、大臣、いかがお考えですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 年額十八万円の年金のみが収入だと、で、資産もなく生活されている場合というのは、基本的に生活保護の適用対象となる可能性があるというふうに考えております。

 今回の国民健康保険と介護保険の保険料の年金天引きは、今その趣旨とするところは保険局長からお答え申し上げたとおりでございますが、天引き額が過大にならないように、両方が合わせた、年金額の二分の一を超えないようにということを仕組みとして持っておりまして、この二分の一を超える場合には、その超える部分からまず国民健康保険料を天引きの対象としないということで二分の一にとどまるような仕組みとする、そういう配慮措置を講じておるところでございます。

 保険料の年金天引きの導入に当たりましては、どのような方々が対象になるのか、いつから開始されるかなどについて十分な広報を行って、市町村において被保険者への適切な配慮がなされるように留意してまいりたい、このように考えております。

小池晃君

 半分以上天引きしちゃいけないなんて当たり前です、それは江戸時代だって五公五民という言葉あるんだからね。そういう、常識ですよ、そんなの当然ですよ。それで配慮をしているなんてとんでもない。しかも、一万五千円の年金だったら、じゃ生活保護へ行けというんですか。それは私は暴論だと思いますよ、こういう年金生活者に対して。

 私は、こういうやり方というのは、これはまだまだ知られていないけれども、恐らく天引きがされるようになったら、本当に怒りの声が全国から上がることは間違いないだろうというふうに思っております。こういうやり方は正に憲法二十五条、生存権の侵害だというふうに思います。

 しかも、その医療の中身がどうなるかということなんですが、診療報酬の制度について議論が始まっているんですが、前回の委員会、当委員会でも必要で適切な医療は後期高齢者に対しても提供するという答弁がありましたが、その中身です。

 具体的に聞きますが、ある年齢を超えたらこの治療は行ってはならないというような制限というのは、これは医療保険制度、後期高齢者医療制度でそんなことをやってはいけないと思いますが、こういったことはどうお考えになりますか。

政府参考人(水田邦雄君)

 我が国の医療保険制度におきましては、必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保すると、これ繰り返しておりますけれども、国民皆保険制度の理念を前提としているものでございます。医療保険制度の性質上、特定の診療行為そのものを排除するような制度になることはないものと考えております。

 いずれにせよ、今、後期高齢者医療制度における診療報酬、検討しているわけでありますけれども、必要かつ適切な医療の提供を前提として後期高齢者の心身の特性を踏まえた体系としてまいりたいと考えております。

小池晃君

 ちょっと別の聞き方したいんですが、ある年齢を超えた場合に、同じ医療行為であっても診療報酬点数が、例えば七十五歳過ぎたら下がるというようなこともこれは医療の保障という点ではあってはならないと考えるんですが、この点はいかがですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 基本的にもちろん、これは繰り返しになりますけれども、必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保するということを前提にしているわけでございます。

 ただ、一見して同様の医療でありましても、患者の特性に応じた報酬の設定としている例といたしましては、現在の乳幼児加算等がございます。同様の医療について異なる報酬とすることが一概に不適切であるとは言えないものと考えております。

 いずれにしましても、高齢者の心身の特性を踏まえたものとしていきたいと考えております。

小池晃君

 それは加算でしょう。加算だったらいいと思いますよ。例えば、後期高齢者だったら手間暇掛かると、いろんな配慮が必要だと、だから加算するというようなことはそれはあり得ると思う。減点するということはあっちゃならないんじゃないんですか。いかがですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 経済的には両者の関係、相対的な関係が違うという点では加算方式、減算方式、いろいろあろうかと思います。加算方式というのは、一つのやり方として年齢によって一概に言えないという例としては使えるものだと思います。

小池晃君

 私、今の答弁聞くと非常に不安になるんですね。果たして後期高齢者に対しても必要な医療が提供されるのか、手抜き医療になるんじゃないか、そういう不安が増してくるわけであります。

 大臣、私、原則確認していただきたいと思うんですが、そもそも年齢による医療内容の差別というのはあってはならないということになるんじゃないか。後期高齢者医療制度、これから構築していく上でやっぱりこの考え方、年齢による差別は行わないんだということをはっきり明言していただきたいと思うんですが、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 先ほども保険局長から御答弁申し上げましたとおり、まず私どものこの保険による医療制度というのは必要かつ適切な医療を保険診療によって確保すると、こういうことを理念としているわけでございまして、その中身において、必要かつ適切な医療の中身においてどうするかということですが、年齢も含め患者の特性によってふさわしい医療の内容は異なるというふうに考えておりまして、重要なことは患者の特性に応じて、また重ねて申しますが、必要かつ適切な医療が提供されることである、このように考えております。

小池晃君

 差別をするべきでないと、しないというふうに言えと言っても言わないわけですね。適切な年齢に応じた医療だということになれば、後期高齢者にはそれにふさわしい水準の医療ということで、これ手抜き医療になる危険性はありますよ。今の答弁ではそういう危険を本当に私は強く感じるわけです。非常に重大な人権問題だというふうに思います。

 しかも、どういう議論が出てきているかというと、昨年末に国保中央会が後期高齢者医療制度に対してはフリーアクセスを制限する、支払方式はいわゆる人頭払いを導入するということを提案しています。極めてこれ重大だと思います。いつでもどこでもだれでもというのは日本の医療の最も優れたフリーアクセスの利点だというふうに思うんですが、これを阻害されれば正に日本の医療の質の低下が深刻になる。イギリスでは既にこの人頭払いは破綻しているわけですね。

 厚労省の特別部会の後期高齢者医療の在り方に関する基本的な考え方でも何て言っているかというと、後期高齢者を総合的に診る医師ということが強調されているんです。この総合的な診療能力を持つというのは、これは国民の要求でもありますし、私、これ異論はありません。しかし、これが国保中央会の提案のようにフリーアクセスを阻害するような人頭払いにつながる、こういうことになってくると、これ極めて重大だと思うんです。

 局長、この人頭払い制度を念頭に置いて後期高齢者医療制度の制度設計を行うようなつもりが、これはもうよもやないと思うんですが、そういったことはないんだということを、これ、きっぱりはっきりこの場で言っていただきたい。いかがですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 後期高齢者医療制度の診療報酬の在り方につきまして、御指摘のとおり社会保障審議会の特別部会において検討を行っているところでございます。ただ、ここでの検討は二つの段階を経ようと考えておりまして、一つはまず、後期高齢者にふさわしい医療の在り方についてまず検討して、そのふさわしい医療を提供するに当たってふさわしい診療報酬体系とは何かという、それが次のステップだと考えております。

 この当該部会におきまして先月取りまとめられました後期高齢者医療の在り方に関する基本的考え方におきましては、正にこの後期高齢者にふさわしい医療の体系といたしまして、複数疾患を抱える後期高齢者を総合的に診る医師が在宅医療等を提供することが望ましいとされているわけでございます。これは、特定の診療報酬の支払方式まで現時点で念頭に置いたものではございませんで、在宅医療等を担当する医師として総合的に診る医師が望ましいという医療の在り方について御指摘をいただいたものと理解をしてございます。

 この次のステップであります後期高齢者の診療報酬体系につきましては、御指摘の国保中央会の提言を始め様々な団体から御意見をいただいているものと承知してございますけれども、具体的な診療報酬内容につきましては、現在行っております、この基本的考え方についてパブリックコメントをやっておりますので、その結果なども考慮に入れつつ後期高齢者の心身特性にふさわしい診療報酬について検討を進めていきたいと、このように考えております。

小池晃君

 自己負担についてもお聞きしたいんですが、経済同友会が最近提言出しまして、七十四歳までは患者負担三割、後期高齢者は二割というふうにしています。

 患者負担増というのはこれまでも繰り返し行われて、結局、受診抑制から、早期発見、早期治療を遅らせる弊害ばかりが目立つわけでありますが、大臣、私はこれ以上の高齢者の自己負担の引上げなどは断じて認められないと思うんですが、後期高齢者制度を進めていく上で、患者の自己負担を増やす、こんなことは毛頭考えていないというふうに思うんですが、見解はいかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 これは、さきの通常国会におきまして成立した健康保険法等の一部を改正する法律におきまして、平成二十年四月から、現に三割負担をしている六十五歳から六十九歳の方については引き続き三割負担をお願いする、それから七十歳から七十四歳の方については応分の負担をしていただくということで二割負担、それから七十五歳以上の高齢者についてはこれは引き続き一割負担ということでございます。現役並みの所得を持たれる方については、これは三割ということを決めているわけでございます。

 したがいまして、御指摘の団体の提言にあるような患者負担の見直しが予定されているわけではございません。

小池晃君

 そのほか医療にかかわる問題、幾つか聞きます。

 歯科診療における診療報酬についての独自ルール、いわゆるローカルルールという問題です。これは一昨年四月の当委員会で、神奈川県でそういう県の独自ルールを保険医の皆さんに押し付けているという実態を私紹介しまして、そのとき水田局長も、診療報酬の解釈は全国統一だと答弁されました。

 これ白紙撤回ということになったようですが、その後の歯科医や医療機関への周知というのはどのように行われているか、御報告願います。

政府参考人(水田邦雄君)

 委員御指摘のいわゆる四者協議でございますけれども、これにつきましては、前回御答弁申し上げましたように歯科診療報酬の算定要件にかかわる全国統一の取扱いがございます。協議すること自体は認識を共有するという意味で意義があるわけでありますけれども、こういった個別の事案について詳細な取決めが行われているという神奈川県の事例、これについて県独自の解釈が行われていると、こういった誤解を招くおそれがあるのではないかと考えられたことから四者協議の場で白紙撤回ということを決めたわけでございます。これは、昨年九月にこの四者協議の場におきまして白紙撤回する旨の合意がなされたものと聞いております。

 その後の周知につきましては、社会保険事務局におきまして取決めの周知を行った医療機関に対しましてその周知を図る、あるいは国民健康保険団体連合会及び神奈川県歯科医師会につきましては、広報誌や事務連絡等を通じまして医療機関等へ周知しているものと聞いてございます。

小池晃君

 支払基金だけが周知の努力をしていないようなので、これは撤回したことを周知するように厚生労働省からも指導をしていただきたいというふうに思います。

 それから、神奈川県で行われているようなこういう四者協議あるいはローカルルールというのは全国でどうなっているか調査を求めましたが、その結果をお示しいただきたい。

政府参考人(水田邦雄君)

 社会保険事務局、支払基金、国保連合会及び歯科医師会、これで四者協議と言っているわけでありますけれども、こういった協議は全国で神奈川県を含め四つの県で存在していると承知をしてございます。秋田県、長野県、神奈川県、和歌山県でございます。ただ、この四者協議におきましては、歯科診療報酬の請求や算定の基準等に関する情報の共有化を図っているものと聞いておりまして、これ自体否定すべきものではないと考えてございます。

 ただ、この四者取決めがもうローカルルールになるのではないかということも御指摘になったわけでありますけれども、こういった神奈川県以外の三つの県におきましては、神奈川県と同様の取決めを行ったところはないものと聞いております。

小池晃君

 診療報酬の解釈は全国統一だという原則ですから、こういうローカルルールのようなものはもう根絶するように引き続き指導を求めたいと思います。

 それから、社団法人日本口腔インプラント学会が専門医制度規程を作っております。この規程の案の段階では、専門医資格の条件の一つとして日本歯科医師会会員であることということが挙げられています。しかし、専門医の認定に必要な技術水準の指標と、職能団体である歯科医師会への加盟ということは何の関係もないはずだと思います。

 医政局長にお伺いしますが、専門医制度の在り方から見ていかがなものかと私は思うんですが、見解はいかがですか。

政府参考人(松谷有希雄君)

 専門医につきましては、それを広告するに当たっては国が定めた一定の要件を満たすことを求めているところでございますけれども、それぞれの専門医自体の認定要件につきましては各学会において独自に定めておりますものであることから、社団法人日本口腔インプラント学会の判断につきまして厚生労働省としてコメントする立場にはないというふうに考えております。

 なお、そもそもこの学会は専門医を広告できる団体では現在ございません。なお、お尋ねをいただいた件につきましては、社団法人日本口腔インプラント学会に照会したところ、専門医の申請資格については、案の段階では日本歯科医師会員であるとなっていたものが、今先生御指摘のとおり、日本歯科医師会員であることが望ましいに修正されて、本年三月二十九日付けで施行されたと聞いております。

小池晃君

 専門医資格の条件として歯科医師会員であることがなぜ望ましいのかというのは、私、歯科医師会員であるというのは変わったと言うけれども、ますます疑問が深まるわけで、これは問題提起はしておきたいと思います。

 最後に、レセプトオンラインシステムの問題についてお聞きしたいんですが、昨年四月の厚生労働省令の改正で、オンライン請求が来年四月から段階的に施行され、二〇一一年四月から原則義務化される。初めに断っておきますが、私はオンライン請求そのものを否定する立場じゃありません。それはやれるところは大いにやったらいいと思うんです。しかし、その義務としてすべての医療機関に押し付けるということ、しかも、その何というか、財政的保障などについてやはり問題があるのではないかという、そういう立場で質問をするんですが、最初に、そのオンライン請求の義務化には、これは法律による根拠というのはあるんでしょうか、簡単にお答えください。

政府参考人(水田邦雄君)

 診療報酬のオンライン請求の法令上の根拠でございますけれども、これは平成十八年四月に、療養の給付、老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令を改正してこのオンライン請求を規定しているわけでございます。

 これは、健康保険法第七十六条第六項及び国民健康保険法第四十五条八項におきまして、保険医療機関又は保険薬局の療養の給付に関して必要な事項は厚生省令で定める旨規定がなされているわけでございます。先ほど申し上げました省令は、これらの法律の委任を受けたものでございます。法的環境はそのように整理をしてございます。

小池晃君

 私が法律の条文読んでも、オンライン請求を義務化するところまで委任しているとはとても読めないんですね。

 この義務化というのは、これはいろんな意味で権利義務生じるわけですよ。その従来の方式全部変えるわけですし、猶予期間以外の救済規定はありませんし、費用負担についても代償措置もないんですね。

 こういうように新たな義務を開業医、医療機関に課すのに対して、法律の根拠なく省令の改正だけでやれるということがそもそも許されるんですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 既に電子請求につきましてはこれまでもやってきたわけでありますし、言わば電子請求をしてきたものをオンラインにつなげるだけでございますので、これは診療報酬請求の方法でございますので、特に問題はないかと承知しております。

小池晃君

 いや、それはやりたいところがやるのは別にいいんですよ。義務にするわけでしょう。すべての開業医、医療機関にこれ義務にすることが、法律を変えることなく省令の変更だけでできるのかと、そういう権利義務の変更が。それを聞いているんですよ。

政府参考人(水田邦雄君)

 それは法令上の根拠のある省令に基づいて決められるものだと思っております。

小池晃君

 いや、それは駄目ですね。それはさっき言ったように、法律上あの法律からオンライン請求を義務化するというところまで委任しているとはとても読めないですよ。こういうふうに、新たなかなり大変な義務を負わせることを私は省令だけでやるということ、すべてに義務にするわけですから、そもそもこれは許されないやり方だと、立法府としてはちょっと大いに考えなきゃいけない問題だというふうに思っております。

 しかも、非常に心配の声が上がっていて、神奈川県の保険医協会のアンケートでは、二〇一一年からのオンライン請求化に対応できるというふうに答えた人が三二・一%、残りの七割の人が不安の声を上げています。これは非常に厳しい質問なんですが、オンライン請求が義務化された場合に開業医を続けるかという問いには、一二%の方が辞めるというふうに答えているんですね。このアンケート調査を見ますと、やっぱり一番の不安は設備への費用投資です。要するに、レセコンがある方が八割ぐらい、しかし今のレセコンでそのままオンラインにつなげるのかどうかということでいうと、なかなか難しいという方も多い。そういう意味では、環境を整備するために様々な費用が掛かってくる、それを大変心配されているわけですね。

 一方で、審査支払機関については昨年度予算で三十億円の補助金が付いているわけです。審査支払機関にはオンライン義務化に当たって三十億円補助金を出しながら、診療側には何の財政援助もなくもう全部オンライン義務化しろ、これはあんまりじゃないですか、こういうやり方は。いかがですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 レセプト請求の電算化、オンライン化ということでございまして、導入時点で一定の経費が必要になるわけでありますけれども、導入後におきましては、膨大な紙のレセプトの印刷あるいは編綴作業あるいは提出前の院内チェックが効率化されると、こういった医療機関にとってもメリットが大きいわけでございます。

 財政援助ということでございますけれども、十八年七月の診療報酬改定におきましてIT化を集中的に推進するという観点から、平成二十二年度まででございますけれども、電子化加算を新設したところでございます。さらに、医療機関ごとに異なる傷病名等のコードを電子レセプト用の統一コードに変換するための支援ソフトを私ども厚生労働省で開発し、医療機関に提供したところでございまして、こういったところで初期費用の軽減を図るということができるものと考えております。

小池晃君

 IT加算は初診料三点ですよ。これで設備投資の費用だって言えるんですか、胸張って。全然足りないですよ、こんなんでは。私は、やはりこれだけのことを診療側に求めるのであれば、当然何らかのその経済的なインセンティブというのがあってしかるべきだというふうに思います。

 それから、私、最も重大だと思うのは個人情報の問題です。診療報酬請求データというのは最もデリケートな個人情報であるはずです。ところが、昨年三月三十一日の閣議決定、規制改革・民間開放推進三か年計画ではこう書いてあるんですね。レセプトデータについて、民間等も含め活用する際、過度の厳重な要件を課していたずらに利用を制限することのないよう、個人情報保護に配慮しつつも、データ利用・分析に係る利用資格・手続等の利用環境の整備を図る、こう言っているんですね。私、これ読むと、どうしても個人情報保護がまず第一ではなくて、民間ができるだけ活用しやすくするようにするんだと、その際個人情報保護も配慮するけれども、まずは民間の利用の活用だというふうにしか読めないんです。

 大臣、ここで言っている民間というのは一体何なのかというのもあるんですが、これでは、やっぱりこういう閣議決定では民間へのデータの提供が個人情報保護よりも優先するとしか私には読めませんし、大事なその患者情報が流出する危険性があるようなシステムを医療機関に対して財政援助もなく義務として押し付ける、こういうやり方には到底理解が得られないのではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 レセプトデータというのは今委員の御指摘のとおりでありまして、非常に高度な個人情報であるということでございまして、その保護には万全を期すことは当然であると、このように考えます。このため、収集、分析に当たっては、個人情報保護に十分留意して、匿名化技術の活用によりまして、個人名等を特定できない形で行うことといたしております。

 また、収集したデータについて、国以外にどこまで利用を認めるかなど、利活用の在り方につきましては、個人情報の取扱いに十分留意しながら、有識者や関係団体の方々の御意見も踏まえ、今後、慎重に検討していかなければならないと、このように考えております。私自身も、この関係のいろいろな内閣における会合では、その点は常に強調をしているというところでございます。

小池晃君

 大臣の今の答弁と、私は閣議決定の三か年計画のニュアンス大分違うようにお聞きをしました。個人情報保護第一にこの問題はやっていくんだということでやっていただきたいと思います。

 終わります。

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