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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

166通常国会 参議院厚生労働委員会 社会福祉士・介護福祉士改正案についての参考人質疑

2007年4月25日(水)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 私たちの基本的なこの法案に対する考え方は、専門性の向上、資質の向上というのはこれ当然必要である。そのために資格の一元化というのも出てきたはずであるにもかかわらず、なぜか法案提出の直前になって准介護福祉士という制度が盛り込まれてきて、正に法改正の趣旨に反するような中身が盛り込まれているというところに一点大きな疑問を持っているわけです。

 そういう立場でちょっとお聞きをしたいと思うんですが、その問題の前に、今回、実務経験コースの養成方法の変更があって、六百時間の研修というのが義務付けられる問題について石橋参考人と小島参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、現場の方のいろいろお話聞くと、やっぱりハードルは高くなって大変だと。研修の費用の問題もあるし、休みが取れるかという問題もある。実際は、頑張りたい、介護の質の向上のために頑張りたいと思っていらっしゃる方にとって、ステップアップしようといっても道が事実上は閉ざされるということになるとこれは大変問題だというふうに思うんですね。

 その点で、まず小島参考人の方に、先ほど事業者にきちっと対応してもらうんだというお話がありまして、これはもうやっていかなきゃいけないと思うんですが、行政からの支援ということも、どういう形になるかは別として必要なのではないかと思っているんですが、その点について御提言を。

 それから、石橋参考人の方には、ハードルになっちゃうんじゃないかという辺りで、現場の皆さんはどういう不安抱いていらして、どういう改善を求めていらっしゃるか、支援ですね、応援を求めていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

参考人(小島茂君)

 今回の法律見直しのところで一つ出ております実務経験コースとして、実務経験三年以上がある方については養成施設六か月以上ということで、六百時間の研修ということでございますが、実質的にその六百時間の研修が就労しながらできるかどうかというところは大きな課題だというふうに思います。

 そこについては、先ほど私意見述べましたように、そこは取りあえずは事業主、事業者が、そこの従事者が就労しながらこれが受けられるような体制整備ということと、それから、この六百時間の研修をどう実際カリキュラムを組むかということにもなると思いますけれども、それの組み方も、就労が可能な形、一定期間集中的にやるとか、土日とかというような、方法は幾つかあるだろうと思いますけれども、そこは全く就労なしで集中するということだけでは、これは実務経験コースとしては難しいんだと思いますので、そこのカリキュラムの組み方等の工夫というのは当然出てくると思いますし、そこは行政側の努力ということは当然必要だと思いますし、それからそれをバックアップする事業者の努力ということも必要だと思います。

 そういうものに対する、費用も当然掛かりますので、その費用をだれが負担するかということなんです。本人だけでということではなかなか難しいとすれば、そこはまずは事業者の支援というようなこともまずは考える必要がある。それに対して行政としてどういうような支援ができるかということでありますけれども、現行の雇用保険にあります研修給付金ですか、ありますけれども、まあそれだけでは不十分ではないかと思いますので、それを含めて、やはりこれから、本当の意味でこの介護福祉士等の資質向上を図るという意味では、行政も含めて支援体制をきちっとやはり体制を組むということが必要ではないかというふうに思っていますけれども。

参考人(石橋真二君)

 すべての者がやっぱり国家試験を受けるということですから、当然、実務経験三年の方もそれなりの教育課程を経なければいけないというのはこれは致し方ないというふうに思っておりますし、現場の方たちもやはり一定の教育を受けたいというような方もたくさんいらっしゃると思いますし、これは別に悪いことであるというふうには思ってはおりません。

 ただ、しかしながら、それは介護福祉士がきちんと評価されないと、例えば将来的に介護職員は介護福祉士とするというようなことがやっぱり実現をされるとか、また介護報酬の中で、その施設の中で一定割合介護福祉士がいることが介護報酬が加算されるとか、やはり一定のきちんとした評価がないと、これ何のために受けるのかということにもつながってしまいますから、モチベーションを高めるためには、やっぱり介護福祉士をきちんと位置付けるということは何よりも大切だと思います。それがあれば、当然、事業者の方も自分のところのメリットになるわけですから、何らかの例えば支援、通信教育を受けやすく、又は日曜日、土曜日などのスクーリングに受けやすくするようなシステムとか、ある程度もしかしたら授業料等の負担もしていただけるかも分かりませんので、そういうような形になるような方向で介護福祉士の資格をきちんと評価していただきたいというふうに思っております。

小池晃君

 重ねて、介護福祉士の労働実態の問題をちょっと石橋参考人にお伺いしたいんですけれども、在宅のヘルパーの二割弱は介護福祉士の資格を持っているけれども、実際に今の働く実態がやっぱり力量の向上に果たして結び付いているのかというと、事業所のヘルパーさんのお話聞くと、やっぱり事業所内で十分に利用者さんのことを伝え合ったり検討し合ったりすることはとてもできないと。正に自分の、直行直帰といいますか、仕事だけに追われて、なかなかやっぱり、みんなで集団的に検討し高め合うという、とてもそういう労働環境になってなくて、やっぱりそういった中で幾ら有資格者を集めてもなかなか、みんなが成長し続けるために、そういう働く環境ができているかというと、なかなかそうなってないんじゃないかと。

 やっぱりそういう意味では、介護福祉士の資格自体、これは大事だと思うんですが、やっぱり働く環境の整備ということにもっともっと行政は力を入れてほしいというような要望も聞いているんですけれども、そういう実態についてどういうふうにお考えになりますか。

参考人(石橋真二君)

 今お聞きしましたとおり、現実、現場の方では、そういった在宅もそうですけれども、施設も、なかなかそういった研修したりとか勉強する機会が、とてもじゃないけれども忙しいから出れないというような、そういうような状況がありますので、やはりそういった勉強できる機会、研修する機会、お互いに高め合う機会を、やはり周りの環境、その職場、事業者の人たちのやっぱり御理解がまず必要になってくると思います。

 そのためにはやはり、ある程度介護報酬が何らかの形で加算されるとか、そういう仕組み、研修にはそれを加算するとか、この研修には例えば第三者評価などで評価するとか、何らかのやっぱりきちんとした評価する研修とか、そういったものに対する取組に対する評価というものがやっぱり構築されていくことも併せて必要になってくるんじゃないかと思います。

小池晃君

 ありがとうございました。

 続いて、板山参考人にお伺いしたいんですけれども、板山参考人のインタビューが載っている「厚生サロン」という雑誌などを見ると、やっぱり介護報酬の引下げについてかなり怒りを持ってお話しされています。

 その中で、やはり調査そのものが大変問題で、比較する数字の中身が比較に堪えられるものでないんだというような御指摘もされておられますので、この介護保険報酬の引下げが現場の労働者の処遇にどういう影響を与えているのか、それから引下げの根拠となった調査にどういう問題点があるのか、その辺り、御意見をお聞かせ願いたいと思うんです。

参考人(板山賢治君)

 先ほど、中村先生が収益率という言葉を使っておられ、今いらっしゃいませんか。大体収益率なんて、社会福祉事業に収益なんてあり得ない。にもかかわらず使われる。それは、一年間の収入と支出の差額をいかにも収益事業と同じような意味で、残ったお金を、年度末残ったお金を収益と言っている。そこからすべてが出発している。そうじゃないんですね。一年間に介護報酬等で得られた収入と、これ利用者負担も入っている、同時に人件費や食事代や運営費その他によって支出されたお金、年間を通して差引きして余ったお金を剰余金と私たちは呼んでいる。それを収益と呼んでいる厚生労働省、行政的に作為的にそういった呼び方を当初は一々した。最近は変えてきました、収支差という言葉で。それが正しい。収支差なんですよ。

 にもかかわらず、それがあたかも利益だというごとく、だから特別養護老人ホームや老人保健施設は、当時一〇%ぐらいの年度末に差が出た。それは利益率だから、三%、四%介護報酬ダウンとした。これを私は怒っているわけでありまして、福祉事業に収益はない。

 確かに、年度末に収支差は出る。その収支差は、翌年度の四月、五月、六月、翌年度以降の事業に使うための回転するための運転資金に充てる。そして、利益ではない。利益というのは、それを他に預金をしたり、他に配分することが可能なんです、株主を始めね。ところが、社会福祉事業はそうではない。剰余が出た、翌年に繰越しが出た、そのお金は翌年度以降に使うことを本則としている。だから、収益ではないと考える。それをもって収益と称して、だからもうかっているから介護報酬下げるというのは、いかにも何だというふうに私は考える。御質問に対してはそうお答えをしておきたいと思います。

小池晃君

 ありがとうございました。

 それから、問題の准介護福祉士問題なんですけれども、石橋参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、現場の皆さんの率直な声として、こういう准という資格者が入ってくることに対して、どんな不安の声、疑問の声が上がっているか、ちょっとそういうリアルな話あったら是非お聞かせ願いたいと思うんです。

参考人(石橋真二君)

 先ほどから、特に介護の労働環境が悪くて人材確保が非常に悪いという言葉がたくさん出てきておりますけれども、やはり今回の改正法案というのは、カリキュラム等を充実して、より資質の高い介護福祉士、例えばほかの保健、医療、福祉などは、すべて養成校を経て受験資格を得て、国家試験を受けて資格を取っているわけです。それでそういう人たちが評価されると。同じように介護福祉士もやっとそれでほかの専門職と同等に、対等になって、そして社会的な評価を得て、それなりの待遇面も改善されるというような期待があるのにもかかわらず、逆に准介護福祉士というものができることによって、これはやっぱり法案の趣旨に反するという懸念が非常に大きいというふうに伺っております。それがまず何といっても一番大きな理由だというふうに思っております。

 それからもう一つ。介護の現場に今度出ますと、法律上は准介護福祉士というのは介護福祉士の指導、助言の下に働くことというふうに規定されているわけですけれども、そうなりますと、介護福祉士との関係に上下関係がやはり生まれるんじゃないかということ、それによりまして現場での指示命令系統が非常に混乱するということもやっぱり不安に思っておりますし、それから、逆に国家試験に不合格ということは一定の水準に達していないということの証明でもありますから、サービスを受ける利用者側からとっても非常に不安ではないかというふうに思われるわけなんですね。

 そういうようなことなどを含めて、やはり現場の人たちについては、准介護福祉士ができるということについては、せっかく改正法案で資格の評価が高まると思っているのにもかかわらず、そういう足を引っ張るような付録が付いてきたと。やはりこれに対しては非常に憤りを感じているというのが現状だと思います。

小池晃君

 小島参考人にお伺いしたいんですけれども、今みたいな現場の混乱というのは本当に心配なんですね。

 それで、先ほど修正すればというお話で、実際にこの准介護福祉士制度がスタートするまでに、何というか、停止スイッチが押されて新規参入がされないとなれば、それはそれで解決するかとは思うんですが、一定進んでから停止したとしても、新規参入がストップされても、もう実際に生まれた人をどうするのかという問題は新たに生じてきますよね。その辺の問題もあるので、やっぱりこれはとにかくストップさせるということしか私はないんではないかというふうに思っているんですけれども、そこはどういうふうにお考えでしょうか。

参考人(小島茂君)

 私も、何度もお示ししているように、准介護福祉士を世の中に出さないということが一番だというふうに思っています。そのためには、何度も申し上げておるように、今回の法案からその条項を外していただくというのが、一番それがすっきりしているというように思いますので、それがなかなか、現実的なフィリピンとの協定との問題でどうしても今の段階でそれが難しいということであれば、実質的にそこが、世の中に准介護福祉士という名称を持った資格者が出ていかないという、出ていく前に協定見直しでストップするということの担保を何らかの形でこれは取れないかというふうに思っています。

 その辺が可能かどうかということが、ここは与野党の皆さんのところで是非知恵を出していただいて、何とかそういう方法がないかということでお願いしたいというふうに思っているんですけれども。

小池晃君

 最後、京極参考人にお伺いしたいんですが、先ほど参考人は、今回の法改正というのは国試を経た者と経ない者を区別するんだと、やっぱり国家試験ということを通じて身分、スキルアップ確立させるんだということを力説されました。

 この主張をされればされるほど、国家試験に受かった人も落ちた人も、あるいは国家試験を受けない人も国家資格が得られるというのは、どう考えても矛盾ではないかと思うんですが、それでも仕方ないというふうに、先ほど仕方ないという趣旨で発言されましたけど、私はやっぱり本来の趣旨からいえばこれは明らかに矛盾していると思うんですが、そこはどうですか。

参考人(京極高宣君)

 これは、小池先生おっしゃるように、矛盾があります、確かに。ただ、これは、矛盾は解決するための矛盾でありまして、できるだけ早く准介護福祉士がなくなれば矛盾は解決するわけで、准の方が受ければ、試験に受かれば自動的に登録さえすれば介護福祉士になりますから問題はなくなると。

 ただ、当分の間、考えてみますと、具体的なことで申し上げますと、新しくできるその介護福祉士は、国家試験を経て、しかも養成課程が非常に千八百時間と大きいと。そうすると、矛盾があるのは、もう一つ矛盾がありまして、古い介護福祉士さんはもっと低い資格で出て、無試験で入っているわけですね。これをどうするかという大きな問題があって、この問題が非常に大きいんじゃないかと私は実は考えています。だから、そこをどうするか。

 だから、それまでの間、つまり、古い介護福祉士さんよりもたくさんの資格、勉強して、新しい、しかも心のケアというようなことも勉強した人たちにはゼロにして古い介護福祉士さんを温存させるということにやっぱり差別が起きてしまいますので、当分の間、やはりできるだけ短い方がいいと思うんですけれども、まあ一番短いのは施行後一年以内というようなこともありますけれども、そういうことをやっぱり考えます。

 それから、一生懸命勉強した人たちが今度ゼロになってしまうということでいいのかと。かつて、自分たちの先輩たちはもう何十万、五十何万人が試験も受けないでみんな入っているということを考えますと、やはりそこは一定の経過措置をするのが社会的な公平性からいっても当然のことではないかと思います。

 ただ、これを余り強調しますと、冒頭に小池議員がおっしゃったように、その目的が矛盾しちゃいますので、やっぱりそこは直ちにやめていくということでよろしいんではないかと思っています。

小池晃君

 既に資格を持っている方がちょっと心配になるような御発言はちょっと受け入れ難いなということはちょっと一言申し上げておきたいと思います。

 終わります。

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