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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

166通常国会 参議院厚生労働委員会 一般質疑(総理出席)

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2007年2月15日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 女性を産む機械という柳澤大臣の発言というのは、これは単なる言葉遣いの問題ではないというふうに思います。今の女性は余りたくさん産んでくれない、産む役目の人が一人頭で頑張ってもらうしかないという、こういう言葉が付いているわけで、これは正に女性を国家の人口政策の道具としている、ここが一番の問題なんだろうというふうに思っております。

 今日も、不適切だった、おわびということはありましたが、この基本的な言わば憲法の人権思想にかかわる根本問題についての反省の言葉というのは聞かれていないわけであります。厚生労働大臣としては不適格であると考えますし、罷免を強く求めてまいります。

 その上で、少子化の克服のために今日は長時間労働の問題に絞って総理にお聞きをしたい。

 一月六日の記者団の質問に答えて、総理は、日本人は働き過ぎと感じている方が多い、家で過ごす時間は少子化対策にとっても必要だというふうに答えておられますが、労働時間の短縮が少子化にとって大事だと、少子化対策として重要だという認識でよろしいでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 やはり、日本人は長時間労働、働き過ぎだと言われておりますし、私もそのように思います。家族みんなで過ごす時間を増やす、家族の団らんを増やす必要はあるのではないかと、このように思います。そして、それを、やはり子供を両親がまた家族ではぐくんでいく上においては、そのワーク・ライフ・バランスを取っていくことがいいのではないかと、このように思います。

小池晃君

 その長時間労働の実態が一体どうなっているかということなんですが、私持ってまいりましたのは、これは昨年十二月に日本労働弁護団が発表した長時間労働酷書というもので、ここに電話相談で寄せられた事例が挙げられているんですが、例えば製造業で男性で三十代の後半、残業は月二百四十時間、月火水は帰りは午前三時、木曜は零時、金曜も深夜、休日は月二日から四日、もう限界で辞めるしかないというふうに言っている。あるいは、大手家電量販店の売場主任、三十代、残業は月百二十時間、残業代未払で労基署が二回指導に入っている、売上げが上がらず、毎日帰宅は午前一時か二時で、睡眠時間は三、四時間、人間としての生活が成り立たないというふうに言っています。あるいは、スーパー、男性二十七歳の方、月の残業は百四十時間で、残業代一時間分だけしか出ない、週休二日制だが有休は全く与えず、職場の離婚率が九割になっている。まだまだあるわけです。

 人間生活が成り立たない、あるいは離婚率が九割だ、こういう働き方が野放しになっていて、どうやって子育てしていけるのかという実態があると思うんです。しかも、これは特殊な例ではなくて、東京労働局の調査では、労災認定の目安とされている一か月に百時間又は二か月から六か月に八十時間を超える時間外・休日労働を行ったか、又は今後このような長時間労働を行う可能性があるという企業が五七・六%になっているわけで、正にこの例に挙げたような働き方は異常ではなくて、大きく広がっているというのは実態だと思うんです。

 総理はこういう実態についてどのように考えていらっしゃいますか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 ただいま委員が御指摘されたような数値は私は承知はしておりませんが、しかし、日本人が働き過ぎであるということは事実だろうと、このように思います。この状況を変えていかなければならないと、私はこのように考えております。

 長時間労働を抑制し、仕事と生活の調和が取れた社会を実現をしていくことが必要でありまして、このため、法定割増し賃金率、言わば残業代でありますが、法定割増し賃金率について中小企業にも配慮をしながら引上げを行うため、労働基準法の改正法案をこの国会に提出をいたします。そして、それとともに、時間外労働の削減に取り組む中小企業に対する助成金を創設をいたしまして、一定時間以上の時間外労働をできるだけ短くすることを労使の努力義務として位置付けるほか、労働基準監督署による重点的な監督指導の強化等を図り、長時間労働の抑制に正面から取り組んでいく考えでございます。

小池晃君

 今おっしゃいました残業代割増しですけど、まずやっぱり圧倒的にサービス残業野放しになっているわけで、これはやっぱり根絶することが大前提であると思うんです。しかも、今回検討されている案というのは、四十五時間までは変わらない、八十時間までは努力すればよい、八十時間超したときでないと割増しとせず、その割増し率も明確にしていないと。これではやっぱり不十分だと思うんですね。

 元々は一日八時間以上働かせてはならないというのが労基法の考え方なわけであって、時間外労働を抑制するというのであれば、まず、今大臣告示という目安になっているわけですが、何の歯止めにもなっていない年間三百六十時間の残業上限、これ法定化すべきだと。あるいは、その割増し賃金を支払うよりも新しい労働者を雇った方がいいというところまで割増し率を引き上げなければ、これは実効性のある制度にならないということは申し上げておきたいと思うんです。

 この長時間労働にとって重大な問題としてホワイトカラーエグゼンプションのことがございますが、これはいろんな報道あるんですが、率直に総理にお聞きしたいんですが、この国会には提出されないということなんですか。これは明確にしていただきたい。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 自己管理型の労働制につきましては、今国会への法案提出を見送り、法定割増し、先ほど申し上げました法定割増し賃金率について、中小企業にも配慮をしながら引上げを行うための労働基準法改正案を今国会に提出をするということにいたしております。

 この自己管理型労働制は、一定のホワイトカラー労働者を対象に、働く人が自ら労働時間を管理をし、仕事と生活の調和を図りつつ、弾力的、効率的に働くことを可能とすることにより、労使双方にとってメリットのある制度として創設を目指して検討が行われてきたものであります。労働時間の短縮がどの程度図られるかについては、この制度の適用を自ら選択する労働者個人、個々人の意向等によるものと、このように考えております。

 なお、国民の理解を今回なかなか得ることができていないという状況になったのは、残業代がなくなってしまう、残業代がなくなるということが先行をして、制度の趣旨、目的や具体的な内容について議論を深めることができなかったことによるものと思います。

 いずれにせよ、ホワイトカラー労働者の働き方の改革は、働く人たち、国民の理解を得ながら取り組まなければならない課題でもあり、今後とも労働時間制度の在り方について検討をしていく考えでございます。

小池晃君

 その理解が得られていない理由として、今、残業代が出ないということが先行したというふうにおっしゃいましたけれども、これ残業代出ないというのは事実ですよね。要するに、この制度の対象となった労働者というのは労基法の労働時間管理の適用から外れるわけですから、すなわち、その労基法三十二条の対象でなくなるわけですから、そうすると三十七条の時間外、休日及び深夜の割増し賃金の適用が外れることになるわけですから、これは総理ね、残業代が出なくなるって、これは事実じゃないですか。誤解でも何でもない。これは残業代が出ないことにその対象者はなっていくということは間違いないことではないですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 私が誤解として申し上げたのは、これはもうすべての言わばホワイトカラーの人たちにとって残業代がなくなってしまう、我々が対象としている人たちではなくて、また労使双方の協定によるもの、あるいはまた本人が納得するということはかかわりなく、すべて残業代をなくしてしまうんではないか、そういう誤解が広がったという意味について申し上げたわけでございます。

小池晃君

 要するに、この対象となった労働者からは残業代がなくなるという事実はお認めになった。

 しかも、別に国民はそんなこと誤解していませんよ。これは、ホワイトカラーエグゼンプションの対象というのは年収要件とかいろんな報道もされているわけですから、その人たちがその対象になるんだという理解は正しくしていますよ。しかし、それでもおかしいということでこれは怒りが広がったわけでね、私は今のような認識では全く間違いだというふうに思いますね。

 先ほど、労働時間が短縮するんだというようなこともおっしゃったように聞いたんですが、長時間労働の改善というのは少子化の克服にとって大事だという基本認識の上に、ホワイトカラーエグゼンプションを導入するとなぜその労働時間が短縮するのか、そこをちゃんと説明していただきたい。その根拠と保証は一体どこにあるんですか、それ明確に説明してください。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 先ほど申し上げましたように、これはいわゆる自己管理型の労働法制でありまして、労働制でございまして、そこで、言わばこの成果を上げるということを、会社との間においてお互いにこれは言わばこういう成果を上げるという約束事を成り立たせていくわけでございまして、その中で例えば、毎日出社をしなければいけませんが、その中で例えば、一日八時間でなくても、一時間でも二時間でもこれは仕事を終えて帰る、あるいはまた家で仕事をしても構わない、そういう働き方を実現をすることは可能であるという意味において申し上げているわけであります。

小池晃君

 それは全く実態が違うと思いますよ。私が最初に紹介したように、今の労働者というのは本当に厳しい長時間労働、さらされているわけですよ、実例挙げたように。ホワイトカラーエグゼンプションの対象というのはこれ管理職一歩手前の人だと。すなわち私が紹介したような、毎日、百数十時間も残業しているような係長や主任という人たちが対象になっていくわけでしょう。しかもこれ、相次ぐリストラと人員削減で一人当たりのノルマというのはどんどん増えているわけですよ、ホワイトカラーエグゼンプション導入したって仕事量が減るわけじゃないんだから。何でこれは労働時間短縮するんですか。

 今は割増し賃金の支払というのが、不十分だけれども唯一の歯止めになっているわけです。ところが、エグゼンプション導入して、賃金と労働時間の関係というのがなくなってくれば、これは働かせる側はどれだけ長く働かせても痛みを感じないという制度になっていくわけで、それどころかその成果主義賃金が徹底されていけば、これは徹夜してでもそれほど、それこそ死ぬほど働かせるということになるじゃないですか。これは今の実態、労働者の実態から見れば、こういうふうに労働時間が逆に拡大していくことにならざるを得ないと考えますが、総理、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 委員長。

小池晃君

 総理が手を挙げている。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 やや技術的な側面になってまいりましたので、私から御答弁申し上げます。

小池晃君

 技術的じゃないよ、これは大事な問題だよ。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 今、委員も御案内のとおり、既に裁量労働制というものが行われております。専門型裁量労働制、企画業務型の裁量労働制というのが行われているんです。しかし、現実の今の活用のされ方はどうかというと、もう非常に専門型のむしろ裁量労働制の方が多いんです。それで、企画業務型の裁量労働制、少ない。それで、もっとここのところを拡充して、本当にこの企画型の人たちの力を出して、同時に労働時間の抑制を図るにはどうしたらいいか、これが我々が直面した問題なんです。

 したがいまして、我々としてはこの裁量労働制の足切りをしまして、企画型の裁量労働制のうちのどちらかというとまだ十分な使用者側との交渉能力等を持ってない人たちの足切り、これはもうそういうグループには入れない。で、そして、企画裁量型の労働についてはもっと使いやすくすると。こういうような、言わば現実に今行われていることの手直しをするに当たって、より用心深く、労働強化にならないような形でこの制度を仕組んだという側面がありますので、是非、更に御検討をいただいて、我々が法案として出したときには是非御理解をし、御賛同を賜りたいと、このように思います。

小池晃君

 実態全く分かってないですよ。

 厚生労働省の調査で、専門業務型の裁量労働制も企画業務型の裁量労働制も、その適用労働者は何て言っているか。労働者の不満で一番多いのは業務量が過大だということですよ。それから、労働時間、在社時間が長いというのはその次ですよ。裁量労働制になって、みんなそういう悲鳴を上げているんですよ。それを更に、裁量労働制より更に一歩進んで、労働時間管理そのものをしなくなる、労働基準法の対象でなくなる、こんなことをしたら正にこういう実態が更に広がることになるじゃないですか。そこ、どうなんですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 個人としてはいろいろ言う人は、どこか探してくればいるかと思いますよ。しかし、我々は実際に、例えば専門型の裁量労働制をやっている人の中には、やっぱりビジネススクールに現実に行って非常に有効に時間を使っている人も現実におります。

 そういうようなことを考えますと、このクラスの人たちの日本の労働者の方々、ホワイトカラーの方々がワーク・ライフ・バランスを現実のものにしながら、しかもそのライフの中で家事、育児を共同してやる、それからまた自己啓発に努める、こういうような自由度を持ってやっていただくということがやっぱり私はふさわしいと思うんです。そういうことを実現しなければ、いつまでもいつまでも、工場労働というかベルトコンベヤーの仕事、もう労働時間だけが売り物ですというようなそういうところでなく働いていらっしゃる方々の現実に着目した労働法制を作ることが我々に課された課題だと私は思うのでございます。

小池晃君

 全く実態を踏まえてない、どこか別の国の話しているんじゃないかという話ですよ、今の労働者の実態から見れば。

 私、国民は決して、この問題、総理は誤解だとおっしゃったけど、誤解しているんじゃないと思います。この本質を見抜いているからこそ、これだけ多くの反対の声が上がっているんだということを申し上げます。これ、先送りでは駄目です。これはもう根本的に撤回する、そういうふうにしなければこの問題は解決しないと思う。ホワイトカラーエグゼンプションは先送りではなくて撤回をせよということを申し上げて、私の質問を終わります。

(休憩後)
小池晃君

 午前中に引き続いて、長時間労働の問題をお聞きします。

 安倍首相は、サービス残業の問題については、衆議院の本会議で、周知啓発、監督指導の強化、悪質な違反が認められた事業主に対する厳格な対応をという答弁をされたんですね。具体的にどうするのかが大事であると思います。

 二〇〇五年にサービス残業を摘発した金額は二百二十三億円、千五百二十四社、十六万人になります。これは氷山の一角にすぎません。全体でどれくらいあるのか。そのものの統計があるわけではありませんが、事業主が毎月支払っている毎日勤労統計の時間外労働、これと、労働者が実際にどれくらい残業をしているかという調査である総務省の労働力統計、この差がサービス残業に相当すると言われてまいりました。二〇〇五年で見ると、年間一人当たり二百十四時間、二百時間以上で毎年ずっと推移してきている。こういう実態というのはやっぱり少子化ということに本当に大きな悪影響を与えていると思うんです。

 大臣、やはり違法である未払が蔓延しているというのは国民の実感でもあると思うんですが、これはあらゆる方策を打つべきだと思いますが、その点どうお考えですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 賃金不払残業は労働基準法の違反でございます。あってはならないものであるということでございます。

 厚生労働省としては、平成十五年五月に策定いたしました賃金不払残業総合対策要綱等に基づきまして、賃金不払残業の解消に向けた総合的な対策を推進しています。

 今後とも、この要綱に基づきまして、企業全体として労使の主体的な取組を促すとともに、重点的な監督指導を実施する、そういうことを通じまして賃金不払残業の解消に取り組んでいきたいと、このように考えております。

小池晃君

 ちょっと具体的に基準局長にお聞きしますが、今年度と来年度でサービス残業に対する予算額はどうなっておりますか。

政府参考人(青木豊君)

 賃金不払残業の解消に向けた取組の推進についての平成十八年度の予算額は一億三千九百万円でございます。

 平成十九年度においては、賃金不払残業対策に加えまして、長時間労働そのものの抑制を図る観点から、過重労働対策と併せてキャンペーン月間の設定を行うことなどを考えております。こういったものを合わせまして、平成十九年度予定額は一億二千五百万円というふうになっております。

小池晃君

 これは、二〇〇四年は一億五千二百万、二〇〇五年は一億四千三百万、二〇〇六年が一億三千九百万、そして来年度予算で一億二千五百万円と、毎年こう減っているわけですね。これでは、やっぱり解消どころか後退しかねないという実態だと思うんです。

 しかも、その内容が非常に巧妙になってきている、悪質になってきているということでありまして、先ほど午前中にも紹介した労働弁護団の長時間労働酷書でもこんな例があります。

 これは飲食店の五十代の男性で、月の実残業百五十時間ですが、正社員にはタイムレコーダーの時刻を打刻しないように設定されている、残業代の欄には固定額が記載されている。これは整備工場の三十代の男性の例ですが、全員六十時間以上残業しているが、十五時間分しか支払われない、自己申告制で、提出先の工場長が月十五時間になるように書き直し、本社に報告している。大手電機メーカー四十代の男性、月百時間以上残業がある、会社はパソコンで労働時間を把握しているが、過少申告を強要している、最高で四十時間しか出ない、残業代が一定程度を超えれば無能とみなすと脅かされているという告発です。こうした手口というのは、これは管理職一人がやればできるわけじゃないわけでありまして、正に企業ぐるみでやらなければできないだろうと。しかも、こうしたことが、前回も質問しましたが、三井中央信託銀行であるとか、あるいは大手宅配便会社であるとか、だれでも知っているような大企業で起こっているわけです。

 ところが、おととしの暮れに、日本経団連が経営労働政策委員会の報告というものの中で、労働基準監督行政に対してこう言っているんですね、企業の実態を無視したかのような指導がなされていると、はね付けるような見解出しました。その際、厚労省は文書も出して、労使慣行に介入していないと、実態に合った指導監督をやっていると、そして指摘を受けた企業は冷静に自らの企業の在り方を見直すことから始めることが望ましいと、日本経団連においてもそのような立場で傘下の企業の指導を行うことを期待したいという文書を出された。これは、当時、尾辻大臣にもお聞きをして、尾辻大臣は厚労省の考え方を申し入れて、経団連側も地方組織にその趣旨を伝えると回答したと、回答どおりにやってくれるかどうかまず見たいと答弁をされています。

 そこで、大臣にお聞きしたいんですが、その後、日本経団連はこの問題についてどのような取組をやっているか、厚労省としてどのように把握されていますか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 ただいま、尾辻大臣当時に行いました申入れにつきましては、日本経団連が平成十七年一月から三月ごろにかけまして都道府県の経営者協会を回ってその趣旨を説明したことを確認しておるということでございます。

小池晃君

 しかし、その後の経過、推移を見ても、大企業の実態というのは改善したとはとても言えない、悪質さを増しているということになるんではないかと。

 私、先ほどその指針、通達に基づいてやっていくという御答弁あったんですが、二〇〇一年の四月六日にサービス残業解消のための通達を出しました。それ以降、やはり違法であるサービス残業をなくせということで、日本経団連に厚労大臣、厚生労働大臣として直接申し入れたというようなことはあるんでしょうか。このことについて、大臣のことですから大臣にお答えいただきたいんですが。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 平成十五年の五月に賃金不払残業総合対策要綱、それからまた賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針を策定いたしました際、労働基準局長が日本経団連に対し、文書により賃金不払残業の解消について協力を要請しております。

小池晃君

 いや、基準局長でしょう。私が聞いたのは、厚生労働行政のトップである大臣がやっぱり率先して具体的に行動することが必要なんじゃないか。柳澤大臣、やはりこれをなくすために、日本経団連のトップに対して本気でこのサービス残業解消のために取り組むべきだと、大臣自ら言いに行くべきじゃないですか。その点、どうですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 賃金不払残業対策につきましては、平成十五年に賃金不払残業総合対策要綱を策定いたしまして、以後、十一月を賃金不払残業解消キャンペーン月間と定めまして、賃金不払残業の解消と適正な労働時間の管理に向けた労使の主体的な取組について、日本経団連を含む経営者団体等を通じて周知に努めておるところでございます。それに加えまして、監督指導にも力を入れているというところでございます。

小池晃君

 いや、そんなことは知っているわけで、それだけでは不十分なわけだから大臣自ら率先していくべきじゃないかと。これは決意を示すと、厚生労働行政として、サービス残業を許さないと、これが必要なんじゃないですか。少子化対策で頑張るんだというのであれば、率先してそういうことをすべきですよ。そうでなければ、本当に上っ面の反省ということになるんじゃないでしょうか。しかも、やっぱり労働者に対しても周知徹底するということも必要だろうというふうに思います。今ありましたけれども、年に一回電話相談やると、それだけじゃ駄目なんですよ、やっぱり。日常的に周知徹底を図っていくということをこれはすべきだというふうに思っております。

 それにあわせて、もう一つ、労働の現場での非常に重大な問題として、やっぱり不安定雇用の問題がある。不安定雇用で労働条件が極めて厳しいということも少子化の大きな原因になっているということは言うまでもないと思います。

 参議院の本会議で我が党の市田議員が質問いたしまして、総理は、これは労働者派遣法への対応でも、派遣先企業の違反に厳正に対応すると答弁されていますが、大臣、これは、違反企業名の公表についてもこれしっかりやるんだということと受け止めてよろしいですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 この件につきましては、法の枠組みがあらかじめ設けられております。これはもう何回も答弁いたしますともういいと言われかねないんですけれども、違反しておる派遣先に対しましては、まず各労働局におきまして是正指導を行いまして、違法状態の解消、この段階でも図っているところでございます。さらに、そういう是正指導をやりましてもなお改善の見られない悪質な派遣先に対しましては勧告をし、また勧告に従わなかった場合は公表をすると、こういう一つの枠組みの下でこの法制度が運用されておりまして、この法の仕組みに従って厳格に対応しているということでございます。

小池晃君

 厳格に対応しながら、公表は一例も今までないわけでしょう。ないんですよね、これは。だから、やっぱりこれでは駄目なんですよ。労働者は是正されるまで待っていられないんですから、これ速やかに指導、勧告すると、従わなければ直ちに公表するというふうにしなければ、今言った仕組みだって絵にかいたもちなんだというふうに思いますよ。

 実際にじゃ何が行われているか。日本を代表するような大企業が、この派遣法に基づく直接雇用の申入れ義務といいながら、実際はその名前だけで、事実上数か月間という短期雇用にほうり出していると、こういう例がございます。これは去年の十二月にも私この委員会で取り上げましたが、いすゞ自動車の例ですが、これ、製造業で一年過ぎた派遣労働者千五百人、これ昨年十一月に直接雇用にしましたが、短期雇用です。しかも、雇用契約書すら労働者に渡さないような状況があるということでこの委員会でも指摘をいたしまして、調査も要求いたしました。

 局長、その後どのように対応されましたか。

政府参考人(青木豊君)

 個別の事案についての具体的な回答は差し控えさしていただきたいと思いますけれども、管轄の署におきまして適切に事実関係を踏まえて対応しているものと認識しております。

小池晃君

 いすゞ自動車では、労働者が申入れもして、やっと二か月間雇用期間が延びたというんです。それでも今年四月までという細切れな雇用契約になっているわけですね。

 大臣、これインターネットで出ているんですが、十一月三十日の経済財政諮問会議の議事録、これを見ますと、大臣はこう言っているんです。労働者派遣の雇用申込義務について、雇用申込義務は、期間制限に対する違反の防止のために、期限が終了したときに更に使おうとする場合には必ず長期雇用を申し込まなければならない義務があるということですと、こう述べているんですね。

 大臣のこの経済財政諮問会議の発言に照らせば、いすゞのように派遣労働者を短期、一か月、二か月という短期雇用にするというのは、これは指導しなければいけないんじゃないですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 まあこれ、そもそもそうした契約、労働契約の申込義務を設定した理由というのは、私が申したような考え方の下で行われていると、そういうものだと言っていいと思います。

 ただ、現実の雇用契約あるいは労働契約というものは、これは基本的に労使の当事者同士の契約でありまして、私としてはそういう方向で労使の話合いによる、交渉による契約が結ばれることを期待をしているということでございます。

小池晃君

 いや、それはおかしいでしょう。だって、議事録ではっきり出ているんですよ。もうそういう場合は必ず長期雇用を申し込まなければならない義務があるんだと、こういうふうに経済財政諮問会議で発言されているわけですから、これはそういうことを期待するということじゃないですよ。長期雇用をする義務があるんだということを厚生労働大臣として発言されているわけですから。だとすれば、こういういすゞのようなやり方はおかしいということを、大臣、言わなきゃいけないじゃないですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 私といたしましてはそういう方向で是非努力をしてもらいたいということですけれども、労働契約の個々について私どもが立ち入っていろいろ差配をするということは、これは慎まなければならないもう一つの命題だと思います。

小池晃君

 いや、これは契約だからそれは自由なんだとは一言も言ってないですよ。

 もう一回読みますよ。期限が終了したときに更に使おうとする場合には必ず長期雇用を申し込まなければならない義務があるんだと、これが労働者派遣法の趣旨だと、こう言っているじゃないですか、全然違いますよ。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 その制度の趣旨はそういう方向のものだということを私としては考えております。しかし、具体の個々の労働契約について私どもがこれに介入していくということは慎まなければならないことであると、このように考えます。

小池晃君

 これはちょっと納得できませんね。これ趣旨だと言っているんじゃないですよ、この趣旨は。

 私は、この長期雇用を申し込まなければならない義務があるというのは、これは当然のことだというふうに思いますよ。やっぱり派遣労働者を直接受け入れるというんであれば、これは雇用の安定というのは趣旨なんだから、それは長期雇用をやはり申し込まなければならない、これはおっしゃっていることは私はこれは正しいと思いますよ。

 だったらば、長期雇用を申し込まなければならない義務があるんだというふうにこういう公式の場でも発言されているのであれば、そうではない事態が起こっているんだから、そこに対してきちっと指導すると、これは最低限の厚生労働省としての役割じゃないですか。それはもう労使の問題だからもう手は出せませんというんじゃ、何のための厚生労働省かということになるんじゃないですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 これも何度お尋ねいただいても、個別の労働契約に対して私どもが介入する立場にはないと、こういうことです。

小池晃君

 これでは、やはり労働者の権利は守れないと私は思うんですね。

 このいすゞの問題では、栃木県の知事と労働局長連名の要請書があります、このいすゞの工場がある栃木県ですね。栃木県の雇用情勢についてこう言っているんですね。求人数は増加傾向にあるが若年層の正規の職員、従業員の割合の低下が続いており将来の生活設計に不安感が予測されています、正規求人は四割に対して正規を求める求職者は七割を超えミスマッチの大きな要因となっている、労働者雇用計画の再構築及び格段の、格別の御配慮をと、これを栃木県下の五つの経済団体に送っている。

 景気回復というけれども、正規雇用になっていない、こういう実態がある、これはいすゞの労働者の話を聞いてもそうなんです。正社員と同じ仕事をしているにもかかわらず、二か月、三か月の短期雇用だと、不安な日々を送っているんだと、一刻も早く安定した雇用で働きたいというのは労働者の切実な願いなんです。これは、多くの労働者は独身寮に入っていて、もし雇い止めになったらば仕事とともに住まいまで失うということになって、不安が今広がっているというふうにも聞いています。労働者はこう言っているんですね、正社員の採用試験を受けさせてほしいんだと。私、こういう願いにこたえることこそ再チャレンジなのではないかと思うんです。

 大臣、再チャレンジ、再チャレンジと言いながら、派遣が終わっても雇用申込義務が結局細切れの雇用ということであれば、私はこれは再チャレンジに到底ならないし、いつまでたっても不安定な雇用から抜け出せない、こういう事態を打開するために企業にもしっかり物を言うというのが厚生労働省としてのあるべき姿なんではないですか。いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 我々も、非正規雇用者が正規雇用に転換していくということが、これはもう希望をすればということですけれども、基本的に必要な方向だと、このように考えております。そのために、今度、雇対法あるいはパート法を改正するその内容では、できる限り正規雇用を希望する若者たちにその機会を与えるようにということを法定して努力義務を課そうと、そういった方向での努力をしてもらいたいということを今度法定しようというふうに考えているわけでございます。

小池晃君

 今ある法律でできることをやらずに、新しい法律があるからというんじゃ、それじゃ説明になっていないんです、今ある法律だってできる、やるべきことをやるべきなんですよ。

 私、じゃ大臣にお聞きしたいけれども、その会社の基幹的業務をやっているわけですね、恒常的に必要な部分を担っている労働者なんですね、みんな。そこに従事する労働者は二か月、三か月の短期間雇用になっちゃうというのでは、これは全く不公正な雇用契約になるんじゃないですか。大臣はそう思いませんか。

政府参考人(青木豊君)

 今多様な雇用形態が日本の労働現場でなされていると思います。これは様々な事情によって、経営上の事情もありましょうし、働く側の事情もございますが、そういったことで言わば社会が動いているということだろうと思っております。

 したがって、個々の企業でどういう雇用形態がなされているかということについては、それぞれの事情に応じて考えていくということになるだろうというふうに思っております。

小池晃君

 そういう姿勢では不安定雇用から抜け出そうという労働者の期待にこたえることができないんですよ。再チャレンジなんて絵にかいたもちになるんですよ。私は、しかも、今経済財政諮問会議などで議論されている労働ビッグバンなんというのは、こういう雇用申込義務すらなくして、もう派遣労働を永久化するような方向まで出されてきているわけでしょう。こんな方向は断じて認められないということを申し上げたいというふうに思います。

 それから、少子化の問題にかかわって、医学部の定員の問題について大臣に残る時間ちょっとお伺いしたいんですが、産科や小児科の医師不足が非常に深刻になって、これは抜本的な医師数の増員を図るべきだと我々は提案をいたしました。

 ところが、新医師確保総合対策では、医師不足県の医学部の定員を暫定的に増やすと。しかし、これは十県だけ、しかも最大十人まで、しかも十年間。こういう縛りが掛かっていて、しかもこれは前倒しなんですね。結局、十年間増やして、もうその後十年間、結果によっていろいろと対応は違いますが、増やした分はまた減らさなきゃいけないという、そういう枠になっている。

 なぜこんなことになっているかというと、大枠があるわけですよ、医学部の入学定員の削減という閣議決定。私、やっぱりこの閣議決定の範囲内では抜本的な解決はできないというふうに率直に言って思います。やっぱり今これだけ医師不足が深刻になっているんだから、やっぱりこの際、閣議決定見直すということを踏み出す必要があるんじゃないですか。大臣、いかがでしょう。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 現在、医師の総数につきましては、毎年三千五百人から四千人程度増加をしているという状況にあります。したがって、まだ過剰な状態などには到底至っていないわけですけれども、将来的には必要となる医師の数を上回る数の医師が供給されるという見込みを昨年の七月に厚労省は示したということでございます。

 このため、現状におきましては、医学部の抜本的な定員増は必要はないと考えておりまして、御指摘の平成九年の閣議決定の見直しも、これまた必要ないものと考えております。

 なお、中長期的な対策として、文科省及び総務省と協力して、今、小池委員が触れられたように、特に医師不足の著しい県における大学医学部や自治医科大学の暫定的な定員増を進めることといたしております。

 いずれにせよ、国としては、いま一度それぞれの地域の実情をしっかりと把握し、都道府県と協力をしながら、地域ごとに具体的で実効性のある医師確保対策を構築してまいりたいと、このように考えております。

小池晃君

 二十五年前に、そういう、これからは医師過剰になると言って減らして、今医師不足だって大問題になっているじゃないですか。OECDの平均とどんどんどんどん乖離していっているじゃないですか。この医師数の抑制という政策自体誤りだったんですよ。そのことを率直に認めなければ、私は現状の打開はできないというふうに思いますし、抜本的なこの問題の解決にはならないというふうに思うんです。

 しかも、これ、たとえその定数を増やそうとしても、奨学金制度をつくることが各県の条件になっているんですよ。十人の入学定員を増やすだけなのに全体の定員の五割の奨学金制度を用意しなければいけないと。だから、例えば百人の定員で百十人にしようと思ったら、五十五人分の奨学金制度を用意しなければ定数増ができないという仕組みでしょう。だから、県の財政の負担が非常に大きいので、ちゅうちょする声も上がっています。私も直接対象の十県に全部電話してみました。どこでも、びっくりしたとか、定員の五割の奨学金というのは厳し過ぎるという声が上がっている。

 私、このようなハードルを条件にするということはやめるべきだと思うし、せめて少なくとも柔軟にこれ対応できるようにやっていく必要があるんじゃないですか。その点いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 このような方針の下で医学部の定員増を容認することにいたしたわけですけれども、その際には、卒業後地元で医療に従事することを条件とする奨学金を用意していただかなきゃならないということにいたしております。このような条件を設定した理由は、医学部の定員増が医師の地元定着につながらなければ意味がないと考えられるためであります。

 したがいまして、奨学金を用意するという条件の意味は、貸与希望者がいる場合にはその用意の努力をしていただきたいという趣旨でありまして、貸与希望者の見込みにかかわらず、増員後の医学部定員の五割以上の人数分の予算をあらかじめ当初予算で用意をしなければならないという意味では必ずしもありません。その旨は、対象県に対して平成十九年一月三十日付けで医政局が発出した事務連絡におきまして明らかにしているところでありまして、具体的な各県からの医学部定員増の協議の受付に当たっては柔軟に対応していく考えであると、こういうことでございます。

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