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質問第七三号

圏央道高尾山トンネル掘削に伴う国定公園への影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

 平成十九年十二月三日

小池 晃

 参議院議長 江田 五月 殿

圏央道高尾山トンネル掘削に伴う国定公園への影響に関する質問主意書

 本年五月、圏央道高尾山トンネル工事が開始された。高尾山は古くから信仰の対象とされ、年間二百五十万人が訪れる首都圏のオアシスである。高尾山トンネル施工区間は、明治の森高尾国定公園に指定されており、トンネル建設は自然公園法第五十六条で定める「土地の形状変更」、「道路の新設」に当たるため、国土交通省には東京都知事との「協議」が求められ、東京都知事は環境大臣の「同意」を得ることが求められている。高尾山は八王子城跡に比べて一層水涸れを招きやすい地層構造であることから、高尾山トンネル工事による高尾山の地下水脈や生態系への影響が強く懸念されている。東京都知事の環境大臣への申請に当たって審査を委託された東京都土木技術研究所は、「地下水は浅層部と深層部は常に連動していることを示している」、「トンネル掘削中、坑内に地下水湧水があると、その影響は浅層地下水へも比較的早く表れると予想される」として、国土交通省が「高尾山トンネル報告書」の中で「トンネル掘削により、直接影響を受けるのは地山深部地下水である。この地域の水循環から上位に位置する浅部地下水に影響を与えない」と結論したことを「了解できない」としていた。しかし、東京都はこうした意見にもかかわらず同意申請を行い、環境大臣もこれに同意した。本年十月三十日には、高尾山自然保護団体によって高尾山トンネル南坑口付近の沢涸れの事実が確認された。同団体事務局は「沢涸れの原因は、高尾山トンネル南坑口の圏央道工事用橋脚が岩盤を損傷した可能性が高い」としている。

 そこで、以下質問する。

 東京都環境局は、東京都知事が環境省への同意申請を提出した際「①地下水位の状況報告、②地下水位の流入防止、③止水注入剤の周辺流出防止」などの条件を付けた。国土交通省相武国道事務所が、平成十七年六月二十九日に発表した「高尾山トンネルにおけるモニタリング計画」にも「東京都(から示された)の条件」として「工事の進捗状況に伴う地下水位の状況については、四半期ごとに多摩環境事務所長に報告すること」と明記されている。これらの条件はどのように実行されたのか明らかにされたい。
 前記一の条件付与にもかかわらず、「同モニタリング計画」では、高尾山トンネル予定地に設置されている深部の地下水位観測孔を、高尾山トンネルの工事の進捗とともに順次、閉鎖・埋設するとしている。私が相武国道事務所から説明を受けた際(本年十一月二日)にも、「トンネル建設予定地点にある深部の地下水位観測孔はシールド掘削に入る前に埋設する」旨の回答があった。これが事実とすれば、重大な問題であるが、この事実について詳細を明らかにされたい。
 高尾山トンネル工事については、八王子城跡トンネルの施工に当たって設置した「観測孔2」による観測に相当する「深部の地下水位観測」はどのように行われていたのか明らかにされたい。また、高尾山トンネル工事の覆水工法区間の深部の地下水位観測孔の埋設はあってはならないと考えるが、トンネル掘削予定地点と重なり、埋設が避けられないのであれば、代わりの役割を果たし得る深部の地下水位観測孔を建設すべきだと思うが、政府の認識を示されたい。
 国土交通省は高尾山トンネルと八王子城跡トンネルを一体のものとしてとらえるとともに、高尾山トンネル建設に当たっては、「八王子城跡トンネル工事の施工実績を踏まえた検討を進める」(平成十五年度第三回国土交通省のトンネル技術検討委員会)、「高尾山の水環境を保全するため、八王子城跡トンネルの施工実績を踏まえ」(平成十六年度第一回同委員会)、「八王子城跡トンネルで採用した『工法』を更に改良することが水環境を出来るだけ保全するために望ましい」(平成十九年度第一回同委員会)と繰り返し確認している。八王子城跡トンネルの「観測孔2」の地下水位が原状回復しておらず、水環境は完全に回復しているとは言えないことは明白である。
 高尾山トンネル工事については水環境の保全が確実に担保できるためには、より一層慎重な研究と検討が必要ではないか。また、自然環境の保全に対する万全の知見が得られていないのであれば、直ちに工事を凍結し、国民、都民が納得できる対策を講じるべきではないか。それぞれ政府の認識を示されたい。

 右質問する。


答弁書第七三号

内閣参質一六八第七三号

 平成十九年十二月十一日

内閣総理大臣 福田 康夫

 参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員小池晃君提出圏央道高尾山トンネル掘削に伴う国定公園への影響に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員小池晃君提出圏央道高尾山トンネル掘削に伴う国定公園への影響に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の条件のうち、地下水位の状況報告については、これまでに平成十八年二月十六日、同年四月二十六日、同年七月十九日、同年十月十九日、平成十九年一月三十日、同年四月二十四日、同年七月三十一日、同年十月二十二日の計八回にわたり、国土交通省関東地方整備局相武国道事務所長が東京都多摩環境事務所長に、高尾山トンネルの工事の進捗に伴う地下水位の状況を報告しているところである。

 トンネルの坑内への地下水の流入防止策については、高尾山トンネルの必要な区間においては、トンネルの周辺の岩盤に止水剤の注入等を行う覆工止水構造を採用したところである。

 止水剤の周辺の水域や地表面への流出防止については、止水剤の注入圧力を岩盤の性質に合わせて調整することにより、止水剤の流出がないよう配慮することとしている。

二及び三について

 お尋ねの「深部の地下水位観測」については、高尾山トンネルの施工予定地付近に設置していた地山の深部の地下水位の観測孔二箇所において、平成七年五月から平成十九年十一月までの間及び平成八年六月から平成十九年十一月までの間、それぞれ観測を実施した。この二箇所の観測孔については、トンネルの施工による影響を受け観測が不可能となるため、平成十九年十一月二十八日にそれぞれ埋め戻したところである。

 こうしたことから、現在は、地山の深部における地下水位については、観測を行っていないが、今後、トンネルの施工に伴い必要な地質データを把握するために実施するボーリング調査と併せて、観測を行うことについて検討したい。

 なお、トンネルの施工による影響を受けない九箇所の地下水位の観測孔においては、今後とも継続的に観測を行うこととしている。

四について

 高尾山トンネルの施工に当たっては、高尾山の水環境の保全に最大限配慮することが必要との考えから、工事に先立ち、二箇所の水平ボーリング調査と十六箇所の鉛直ボーリング調査を実施するとともに、平成四年二月七日より降水量、地下水位、河川流量等の調査を実施するなど詳細なデータを収集し、このデータを基に、トンネル工学、水文学、地質学等の専門家からなるトンネル技術検討委員会(以下「委員会」という。)で行われた検討を踏まえ、高尾山トンネルについては地下水への影響を最小限に抑制する覆工止水構造を採用することを決定したところである。

 また、平成十九年四月十八日の委員会における検討を踏まえ、トンネルの掘削による地下水への影響をより小さくするために掘削と覆工の時間間隔を八王子城跡トンネルの施工時よりも短くするなど、施工方法を改良することとしている。

 このように、現時点において、高尾山の水環境保全対策については必要な対策が講じられていると考えており、工事の中止は考えていない。

 今後とも慎重に研究と検討を進め、高尾山トンネルの施工に当たっては環境の保全に万全を期してまいりたい。

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