私は保険については余りよく知らないんですけど、いずれにしても、日本では医療費が高いという前提なんですけれど、それで前提として抑えなければならない。だけれども、それなりのお金は掛かるわけで、日本よりずっと前に抑制を重ねてきていたイギリスは完全に崩壊いたしました。イギリスの医者は外国へ行っている。
今、日本の医者は非常にやる気がなくなっています。どういうふうになっているかというと、医療費の抑制もあるし、それとやっぱり患者さんとのあつれきなんですね。
実は、医師の不足は地方だけではありません。私どもの、私の実は科でも今三人欠員になっています。都内の産婦人科の、大きい病院の部長さんというのは私そんなたくさん知らないんですけど、私の知り合いが二人、定年を大分残して辞めました。一人はもうしばらく医者をやりたくないと言っていましたね。
それから、福島県で、福島県の大野病院の事件がある前に、福島県立医大の教授は私の同級生なんですけど、から昨年九月に聞いた話なんですけど、福島県の基幹病院の内科部長が四人ほど一遍に辞めてしまって、非常に困っていると言っていましたね。それから、つい最近聞いた話ですけれども、いわき市という三十五万人ぐらいの都市があります。そこには千床ぐらいの病院と、あと八百ちょっとあれですけど、大きい病院が二つあります。そこの二つの病院とも産科診療が近いうちになくなりそうだという話を聞きました。
これ、どこでもあるんですよ。外から見るよりはるかに大変な状況で、みんな辞めようとしている。それで、辞めた場合にはどうなるかというと、そのいわき市の大きい病院では、今、少し前まで部長さんをされていた方は実は産科を辞めて、ちっちゃい病院に移ったんですね。それで、そこで婦人科だけやっている。ちっちゃい病院に移る。それから、都内のある大病院の部長だった人も今辞めて、ちっちゃい診療所で働いています。で、ちっちゃい診療所に移る。それからあと、開業に移る。
それで、開業医さんってお金持ちのイメージがあるんですけど、今は多分物すごいつらいと思います。もうこれは嫌だと言って、この圧力と責任の、無限責任を問われるこの圧力に負けて、もうちょっと人間らしい生活したいと言って開業しているのが実情だと思うんですね。それで、病院診療からどんどん人がいなくなる。で、病院診療はどんどんどんどん忙しくなる。
人が少なくなり始めると、産婦人科医が五名いた草加市立病院は、いったん傾き始めたら半年ぐらいで全員いなくなっちゃいましたから。そういうことが今日本じゅうで、そこらじゅうで起きているということです。だから、病院診療が多分なくなるだろうというのが私の予想です。