最低保障年金制度を提案 両院合同会議での小池政策委員長の意見表明
日本共産党の小池晃政策委員長が十四日の年金・社会保障両院合同会議で行った意見表明(要旨)は次の通りです。
社会保障制度を議論する前提、改革基準は何か
議論の前提として社会保障制度について国民が何を求めているのかということです。
この間、年金、医療、介護と社会保障のあらゆる分野で負担増と給付削減をもたらす制度改定が実施されてきました。国民の間には現在と将来のくらしへの不安が広がり、生活不安大国になったとさえいわれています。
このもとで、国民の不安を拡大する方向ではなく、制度と将来への安心を取り戻す方向に切り替えなければなりません。そのため、国民の八割の声を押し切って強行した改悪年金法の実施を中止し、白紙に戻すことをまず求めます。
もう一つの問題は、社会保障改革の基準をどこに置くかです。私は憲法二五条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とした立場で進めてこそ、国民が安心し希望が持てる制度改革ができると考えます。
最大の欠陥は最低保障の欠落
年金制度の最大の欠陥は、最低保障という考え方が欠落していることにあります。無年金者は百万人で低額年金の人々も膨大です。国民年金しか受給していない高齢者九百万人の受給額は平均月額四万六千円です。厚生年金でも女性の平均は十一万円と低水準で放置されています。
主要先進国では、生存権を保障するために国の責任で年金受給者の所得の最低額を保障しています。最低保障年金を否定する与党の立場こそ世界の流れに背を向けるものです。
日本共産党は最低保障年金制度の実現にすみやかに踏みだすことを提案します。厚生年金、共済年金、国民年金の共通の土台として全額国庫の負担による一定額の最低保障額を設定し、その上に掛け金に応じて給付を上乗せします。最低保障額月額五万円からスタートさせ、安定的な年金財源を確保しながら引き上げをはかります。
この制度が実現すれば、現在の無年金者には月額五万円の最低保障年金が支給されます。国民年金の満額六万六千円を受給している人は、最低保障額の五万円に支払った保険料に相当する三万三千円を上乗せして合計八万三千円を受け取ることになります。厚生年金についても一定額までは同様の底上げを行います。
水準貧しくする年金の一元化に反対
年金制度間の格差をなくし公平で分かりやすい制度にすることは大切です。一番具体的で現実的な方法は、最低保障年金制度で国民年金と厚生年金の低い部分の底上げをはかり、全体として格差を縮小することです。
しかし、現状の枠組みのままで「一元化」にすすめば、保険料の大幅な引き上げか給付水準の引き下げを招くことが懸念されます。年金の水準をいっそう貧しくする「一元化」には反対します。
年金の財源―消費税でなく歳出入改革で
続いて年金の財源についてです。問題は、社会保障財源というとまるで「打ち出の小づち」のように消費税の増税で穴埋めすれば事足りるかのような安易な議論がまかり通っていることです。
財界は、20%などということさえ平気で口にしますが、年金が月十万円しかない高齢者の場合、いまでも年間七万円程度の消費税を負担しています。もし税率が10%に上がればさらに七万円の負担が増え、消費税だけで一月半分の年金が消し飛びます。
消費税は低所得者ほどずっしりと重くなる逆進性を持っているだけではありません。勤労国民の消費を冷やし日本経済に大きな打撃を与えます。そうなれば、消費税大増税をしても財政を立て直すどころかかえって悪化させた一九九七年の橋本内閣の失敗を繰り返すことになります。
それではいったい何が必要なのか。第一は歳出のムダを徹底的に洗い直すことです。道路特定財源やムダと浪費の蛇口をきっちり閉めることが何よりも先決です。
もう一つは、大企業や高額所得者、大資産家など負担能力のある人に応分の負担を求めることです。九七年以降の九年間だけでも、一般庶民には平年度ベースで五・六兆円の増税の一方で、大企業・高額所得者・資産家には五・三兆円もの減税になっています。担税力の向上している大手企業と高額所得者の能力と責任に応じて、負担を求めることこそ必要です。
また、日本共産党は年金積立金を高齢化がピークを迎える二〇五〇年ごろまでに計画的に取り崩し年金の給付に充てる、リストラや不安定雇用に歯止めをかけ年金の支え手を増やす、子どもを安心して生み育てられる社会をつくる――こうした改革に取り組むことを提案しています。この方向に着実に進むことで保険料の上昇を抑えながら給付水準を維持し、低額年金については底上げする道を切り開くべきです。
自民・丹羽社会保障制度調査会長
昨年の年金改革は本格的な少子高齢化を前に持続可能な制度をうちだした画期的なものだ。
共済年金と厚生年金の一元化からすすめるのが現実的で、これらの被用者年金と自営業者向けの国民年金は違いが大きく、一挙に一元化するのは非現実的だ。
最低保障年金という提案は社会保険制度の根幹をくつがえす。保険料を払わなくても給付の受けられる税法式は生活保護的になる。
年金の焦眉(しょうび)の急は基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げること。そのためには定率減税の見直しや消費税などの財源の手当てが最重要課題になる。
医療・介護を含めた社会保障費の三分の二が企業(従業員と雇用主で折半)の負担によっていることを考えないと(どんな理想論も)絵空事になる。
公明・冬柴幹事長
昨年度の年金改革は優れたもの。これを批判する場合、保険料負担、給付額、国庫負担割合などの対案を明確にすることが大前提である。
社会保険方式は個人の納付努力を促す。税方式は個人の年金を受けとる権利を弱め、将来は給付増大で増税が必要になることも考えるべきだ。
国民年金との一元化については、成立した法律に自公民共同提案の修正で「一元化を展望しつつ」と明記してある。「展望」とは遠くの目的として眺めつつ、いまのことをどうするかだ。
民主・岡田代表
何のための年金改革か。五年ごとの見直しのたび負担を上げ給付を下げ、将来本当にもらえるのかと六割の国民が年金制度を信頼しないといっている、その信頼回復が必要。四十年間転職せず専業主婦がいるという(年金対象者の)モデルが現実に合わず、三割の雇用者が非正規社員で転職が当たり前というもと、新しい時代のモデルをつくらないといけない。国民年金の空洞化で、これが壊れているというのが現実。社会保障制度の根幹を揺るがすことを認識すべきだ。
持続可能で分かりやすい制度が必要で、(1)全国民を対象にした年金の一元化(2)最低保障年金の財源を全額税にする。現行制度の基礎年金国庫負担相当分に加え、年金目的消費税を創設し、その税収を活用する(3)(最低保障年金以外の)二階部分については所得比例年金にする(4)所得比例年金の保険料率は15%を超えない制度にする(5)所得を公正に把握するため納税者番号を導入する。
社民・阿部政審会長
国民の働き方も変わった。国民年金の空洞化は著しい。国民が働き方を選ぶことができるために、年金は国民年金も含め一元化すべきだ。基礎年金をくらし保障年金として、だれにも公平に国が保障し、額を八万円に設定する。財源については、国民の所得格差が拡大しているので、応能負担の所得税の体系見直し、空前の利益をあげているといわれる企業の法人税の見直しが必要。消費税だけを財源としてはいないが、もちろんこの場で検討することはやぶさかではない。
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