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162通常国会 参議院厚生労働委員会

  • 「過剰介護」で悪化なし/小池氏、調査結果示し追及/参院委(関連記事
  • 自・公・民が介護保険改悪案を強行 小池議員が反対討論(関連記事

2005年6月16日(月)


(ページ下部に「介護保険法等の一部を改正する法律案に反対の討論」があります。)
小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 軽度の要介護者の悪化の原因ということが最初から非常に議論になってきたわけですが、この問題について新しい調査結果が出されております。

 今日、資料で配付をしておりますけれども、これ業界紙のシルバー新報という新聞でも一面トップで紹介されている調査結果です。NPO法人地域保健研究会がまとめた軽度要介護高齢者の介護度重度化要因調査研究報告書というものであります。

 この中身、若干紹介しますと、どういう方たちがこれを調査しているかといいますと、保健師さんたち、しかも介護予防事業やあるいは介護従事者の教育指導に当たっているかなりの専門家の皆さんがこれは調査分析をされている。その結果、軽度の要介護者がなぜ悪化したのか。表四というところにありますが、一番多いのは疾患なんですね、病気なんですね。脳血管障害あるいはがんなどの疾患で四十四件、次いで認知症が三十九件、加齢による脆弱化が二十三件、転倒というのは十四件にすぎないわけです。

 私、この検討結果を聞いて非常に興味を持ったのは、これ、この研究会の皆さんは、厚生労働省は介護度の悪化の原因は介護のやり過ぎだと、家事代行などが悪化の原因だと言っているから、悪化要因として一応それもチェック項目に入れたそうなんです。介護過剰という項目を作って、過剰な家事援助やあるいは家族を含む他者への依存が重度化の要因になっていないかと検討したそうなんです。ところが、検討した結果はそれは一人もいなかったので、結果として分析の段階ではこの要因の中から削除したということを聞きました。

 局長に私お聞きしたいんですが、この結果、要介護度の悪化の最大の原因は病気なんだと、過剰な介護ということは調査したけれども一件もなかったと、この結果、どう考えますか。私は、厚労省の説明をこれは否定する内容になっているのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

政府参考人(中村秀一君)

 今御紹介のありました研究につきましては、平成十二年四月と平成十四年十月のケアマネジャーからの情報によって得られた百名に対しまして、重度化や死亡の要因、そういったことを担当ケアマネジャーの面接により聞き及んだ調査だというふうに聞いております。結果はここの表に出ているとおり、疾患、認知症、加齢による脆弱化が多いということが示されております。

 私ども、軽度者の要介護となった要因ということにつきましては、廃用症候群などの部分が多く、また、そのほかに脳血管疾患、認知症があるというようなことを申し上げてきましたので、そういう全国的な傾向の中でこの百名の事例が言わば詳細にと申しますか、ケアマネジャーさんからのデータで示されたものと考えております。

 要介護度の重度化要因について、この調査結果を直ちに普遍化するのは、一定の制約、医師の診断などではなく、重度化の要因についてのケアマネジャーの聞き取り調査である点などについて制約はあると思いますけれども、報告書でも述べられておりますように、慢性退行性疾患の療養指導や廃用症候群の予防対策が重要であるということを指摘している報告の一つであると考えております。

小池晃君

 直ちに普遍化できないと言うけれども、お聞きしますが、こういう軽度の要介護者の要介護度悪化要因について調査した研究というのはありますか。私はほかに見たことないんですが、どうですか。

政府参考人(中村秀一君)

 私どもも、悪化要因について具体的にどういう研究があるかについては今直ちに思い浮かばないわけでございますが、そういった意味では、ある意味で貴重な研究ではないかと思っております。

小池晃君

 ほかにこういう分析というのは余りないんですよ。その結果、局長は答弁していない、今答えていないんだけれども、過剰介護という項目をわざわざ作って、この研究会の皆さんはどちらかといえば介護予防を推進する積極的な立場の方たちだから、過剰介護というのはあるだろうということで項目まで作ったけれども、結局それは一例もなかったというんですよ。これは正に今までの厚労省の説明を覆すものになっているんじゃないかと、その点についてお答えいただきたいんです。

政府参考人(中村秀一君)

 この調査研究の詳細について今ここでコメントするあれではございませんが、やはりケアマネジャーさんからの聞き取りの調査ということもありますので、ケアマネジャーさんはケアプランを作っておられる方でございますから、そういった意味での制約もあろうかと思いますので、私は直ちにこの場でこの調査についておかしいとかそういうあれはありませんけれども、その点についてはよく検討してみる必要があるんではないかと思っております。

小池晃君

 ケアマネジャーさんが一番実情をよく理解しているはずじゃないですか、把握しているはずじゃないですか。そのケアマネジャーからの聞き取りを専門的知識を持った保健師さんたちが分析し、まとめた調査なんですよ。私は、これ、注目すべき検討結果だと思うし、同時に、ここで一番その重度化の要因となっているのは病気なんですね。病気の進行というのは介護予防じゃ防げませんよ、これは医療の世界の話なんですよ。それから、認知症が二つ目の理由に挙がっていますが、認知症はそもそも新予防給付の対象外じゃないですか。私、この調査結果を見れば、軽度者の悪化の原因の多くがこれは病気や認知症だとすれば、今回の新予防給付、地域支援事業、今回の予防給付のシステムというのは介護度の維持改善に役立たないということになっちゃうんじゃないですか、どうですか。

政府参考人(中村秀一君)

 お答え申し上げます。

 正に介護度の重度化の要因について、重複回答でもございますので、どういうふうに認知症のところをとらえておられるかということもあろうかと思いますので、そういった点が一点。しかし、要介護認定に該当されておられる方の半数は何らかの意味での自立度二以上ということで、認知症の症状を持たれている方もいるということもございますので、そういったことを総合的に考えていかなければならないと思っております。

小池晃君

 そんな一般的なことじゃないんですよ。これは、要介護度が悪化した人だけを対象にして、なぜ悪化したのかを分析して、その悪化要因として病気、認知症と言っているわけです。だとすれば、そこに対する手だてがなければ介護予防は何の役にも立たないということになるじゃないですか。

 ちょっと説明していただきたいんですが、この報告が示しているように、一般的に認知症がある、ないの話じゃないですよ。要介護度を悪化させている要因として病気あるいは認知症ということが一番、二番占めているのであれば、今回の介護予防ではほとんど効果は期待できないということになるんじゃないですか。そうでないのであれば、今回の介護予防のシステムで、なぜ病気で悪化する人あるいは認知症で悪化する人が要介護度を維持改善することができるのか、分かりやすく説明してくださいよ。

政府参考人(中村秀一君)

 この研究報告書の考察においても、重度化の要因、主要因、誘因を合わせて重度化の要因は疾患が一位であり、認知症が二位で、これらの二要因が全体の四七%を占め、また加齢による脆弱化が多いという結果から、慢性退行性疾患の療養指導や廃用性症候群の予防対策が重要であると考えられたというふうに分析されておりますので、予防対策の重要性を否定している御報告というふうには考えておりません。

小池晃君

 予防対策の重要性を否定している研究ではないですよ。今の新予防給付の予防の中身がこの中身に合っているのかと私は言っているんですよ。がんや脳血管障害やあるいは認知症が、なぜ慢性退行性疾患の予防ケアで維持されるんですか。そんな、関係ない話なんですよ、これ。私は、まじめに介護予防ということを本当に真剣に考えるのであれば、こういうふうに悪化要因をきちっと調査した研究というのはほかにないんだから、私はしっかり耳傾けるべき調査だと思うし、都合の悪いデータはこういうふうにいろいろとけちを付けると、そして一方で、島根県の例の調査のように都合のいいデータは否定されたにもかかわらずしがみつくという態度は、本当にまじめに介護予防を考える態度ではないというふうに思います。

 私は、結局、介護予防ということを結局隠れみのにして、軽度者の給付のコントロールすると、まじめに介護予防を考えて出てきているのではなくて、結局口実に、隠れみのにして給付を抑制するということでしかないんだというふうに私言わざるを得ないと思うんです。

 お聞きしたいのは、ちょっと確認的に聞きますが、今回の制度改定で、来年度からどれだけの給付の抑制になるのかということを数字で簡潔にお示し願いたいと思います。

政府参考人(中村秀一君)

 お答えを申し上げます。

 来年度の縮減でございますが、居住費、食費の見直しの影響に新しい施設整備計画などの策定、それから予防の給付費の削減ということで、十八年度から二十年度の第三期において〇・七兆円程度の給付費の縮減を見込んでおります。

 内訳は、居住費用、食費の見直しの影響に新しい施設整備計画の設定の影響を合わせた施設にかかわる見直しにより〇・五兆円程度、地域支援事業や新予防給付といった介護予防対策の推進により〇・二兆円程度を見込んでおります。

小池晃君

 この居住費、食費の見直しは三千億円程度だというふうに説明されていたと思うんですが、ということは二千億円が施設整備の見直しで生まれるということなんですね。それと、その地域支援事業と新予防給付のそれぞれについて数字を言ってください。

政府参考人(中村秀一君)

 お答えを申し上げます。

 今、委員から御指摘のありました三千億円というのは十七年度の数字でございます。第三期につきましては、十七年度に比べまして満年度の全体の給付費が伸びますことから、居住費用、食費に係る経費は〇・四兆円というふうになっております。したがいまして、施設整備計画の関係は〇・一兆円ということでございます。新予防給付、それから地域支援事業につきましては〇・二兆円と申し上げましたけれども、地域支援事業の導入により〇・一兆円、新予防給付の創設により〇・一兆円程度給付費が縮減するものと見込んでおります。

小池晃君

 新予防給付で来年度から一千億円の削減になるということなわけです。これ、軽度者の給付の制限というのは既に現場では行われております。

 私どもの方に来た話で、東海地方のある県なんですが、事業者に対してこういう指導が、これは文書も含めて寄せられているんですが、されているんです。一つは、生活援助中心型の居宅サービス計画は要支援の利用者には不適正ですというのがありました。それから別のケースでは、要支援者に対する生活援助中心のサービスは要介護状態への悪化の防止につながらないので適切ではありません。新予防給付の話じゃなくて、現時点でこういう指導がされております。生活援助中心のサービスは要支援者には不適切なんでしょうか。そういうことを一律に指導することがこれは正しいことなのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

政府参考人(中村秀一君)

 お答え申し上げます。

 今回の法改正に先立って、生活援助中心ケアプランを一律に打ち切るよう国において指導を行うというようなことはもちろんいたしておりませんし、今回の見直しにおきましても、大臣からも再三お答え申し上げておりますように、適切なケアプランに基づくサービスについては認められると、こういう考え方で行っているところでございます。

小池晃君

 だから、違うんですよ。現場では既に一律にそういうサービスカットするような指導をやっているんですよ。こういうことが正しいんですかと。私の質問に答えていただきたいんですが、生活援助中心のサービスが一律に不適切だという指導は正しいんですか。

政府参考人(中村秀一君)

 私どもが申し上げておりますのは、ケアマネジャーがサービス担当者会議を開催し、利用者を含め様々な職種の対象担当者から意見を求めた上でケアプランを作成し、継続的に利用者の心身の状況を把握して必要に応じたケアプランを変更していくというプロセスを経るわけでございますので、一律に画一的に要支援であれば生活支援サービスは要らないと、そういうようなこと、もしそういうことが行われているとすれば、それは誤っていると考えております。

小池晃君

 それが実際やられているんですよ。ケアカンファレンスをやりなさいとか、ケアプランのどこが問題ですというんじゃないんです。一律に要支援者には駄目ですという指導が現場では既にやられているんです。

 これは、昨年十月に皆さん方が介護給付適正化推進運動というのを始めて、介護給付費の一%の削減を目標としてこれ保険者に押し付けている。その下で、例えば京都では、京都市ではこんなこと起こっています。同居家族がいたら日中独居でも一律に家事援助は給付対象外だということで返還を求める指導までやったんですよ。これは批判を浴びて撤回をいたしましたけれども、こんなことが実際起こっている。

 私、新予防給付になっても適切なサービスは引き続き提供されるという答弁が繰り返されておりますが、まだその新予防給付始まる前の現在の運用の段階でも、現場のケアマネジャーが適正と判断し、なおかつケアカンファレンスやって、主治医まで含めてケアプラン作っても、それに対して保険者がカットしているという実態があるわけですよ。これが実態なんですよ。

 そういう中で、だから単なるキャンペーンで、適正化というキャンペーンですらこういうことになっているときに、新予防給付で先ほど御答弁あったように、これ来年度から一千億円カットすると。しかも、それが単なるキャンペーンではなくて法律の裏付けまで今回の新予防給付で付けられると、給付削減が目標となると。私は、利用者やあるいは現場で頑張っている労働者の中から、今でさえこんなになっているのに、こんなことになったらもう一律のカットが押し付けられることになるんではないかと、適正なサービスが、自分たちが必要だと思っても保険者によって切られるということになる、そういう心配が広がるのは当然のことではないですか。その心配に局長はどういうふうにお答えになるんですか。

政府参考人(中村秀一君)

 先ほどお答えいたしましたように、第三期におきまして新予防給付の創設により一千億円程度、〇・一兆円でございますので、給付費が縮減すると見込んでおりますが、私どもこの給付費の縮減と申しますのは、平成二十年、第三期の終わりに二百六十万程度になると見込まれる要介護二以上の中度者が二十万人程度予防給付の効果によりまして減少すると、増加が少なくなると、こういう効果として見込んでいるわけでございまして、ただいま申し上げました、委員のおっしゃっているようなそのサービス内容を不当に切り下げると、そういうようなことによって一千億円の給付費が縮減すると考えているわけではございませんので、そこのところは誤解がないように、もしそういう誤解をしている保険者がいるようでございましたら私どもよく徹底をしてまいりたいと思います。

小池晃君

 大臣ね、大臣は適正な給付はそれは提供されるんだというふうに答えているけれども、現場ではケアマネジャーが幾ら適正だと頑張っても、今どんどんどんどん切られる実態が起こっているんですよ。

 こういう中で、大臣が適正なものは提供されると言うけれども、決めるのは保険者じゃないかと、これは果たして守られるのかと。しかも、全体としては給付抑制の財政の目標がばんと出てくると。これ不安が広がるのは当然じゃないですか。そういう方たちに対して適正に提供されると言うだけでは私は納得得られる答弁になってないと思うんですよ。そこをお答えいただきたいと思います。

国務大臣(尾辻秀久君)

 もうこれは繰り返し申し上げておりますように、制度として適正に提供されるということで制度をつくったわけでございますから、これは保険者においてもそのようにサービスを提供していただくということになるはずでございます。私としてはもうそうお答えするしかありません。

小池晃君

 なるはずだと言っているけれども、もう実態はそうなってないんですよ。それが実態なんだと。そのことを知っているはずなのに、やはりそういう答弁では私は国民の今の本当に不安にこたえることできないということをちょっと申し上げたいと思います。

 重ねて、介護保険が施行されてから重度の要介護者の中で実は在宅の比率は減っているんではないかと。施設の入所者が増えている。施設から在宅へと言っていたけれども、逆の流れが起こっているんじゃないかという指摘がありますが、厚労省の調査では、要介護五について在宅と施設の入所者の比率、ちょっと示していただきたいと思います。

政府参考人(中村秀一君)

 比較という意味で二時点を申し上げた方がよろしいかと思いますので申し上げます。

 平成十三年五月分と平成十七年三月分を比較させていただきまして、要介護五の居宅サービスと施設サービスの受給者数について割合を申し上げますと、要介護五につきまして、十三年五月分では居宅サービスが四三%、残りが施設でございますので、施設サービスは五七%でございました。平成十七年三月は居宅サービスが三九%、施設サービスが六一%、要介護五の方は六一%が施設サービスを受けておいでになると、こういう結果でございます。

小池晃君

 ですから、要介護五に限って言えば、これは在宅の比率が下がってきているという実態があるわけです。

 これ数字で見ますと、在宅サービスの利用者は要介護五で言うと三万七千人ぐらい増えているのに対して、施設利用者は八万八千人増えている。これ、要介護の軽い方はもう全く逆で、在宅の増えの方が圧倒的に多いんですが、要介護五に限って言えば施設の利用者の方が増えているわけですね。これが実態なんです。

 重度者の在宅生活を維持することがいかに困難か。介護保険になってから、実は施設から在宅へといいながら、要介護五の人に関して言えば逆流が起こっている。逆に在宅の方が減っているという実態がある、比率として。局長、なぜこういう事態になっているというふうに考えるんですか。

政府参考人(中村秀一君)

 幾つか原因があろうかと思います。

 一つは、施設に入所される方々の状態が重度化していること。また、新規に入所される方については、私どもも施設は介護の最後のとりでと、こういうことで、重度の方、非常に困難な重度の要介護者の方は施設、施設は逆に重度の要介護者の方を重点的に受け入れていただきたいと、こういうことをお願いしている結果ではないかと思います。

小池晃君

 私はそんなことではないと思うんですね。

 これは、在宅でやはり長時間の介護を要する方から聞こえてくるのは、介護保険になるまでは制限なく必要なサービスを受けることができたのが、これ高過ぎる利用料の問題もあるし、同時にやはり利用限度額、支給限度額ができて二十四時間のサービスはほとんど不可能になっているんだと。先日の参考人質疑でもその問題の指摘はあったわけであります。そういう制度の欠陥から最後まで家で介護が受けられる制度になっていないんだという、そういう指摘がされているんですね。

 大臣、私、この数字を見れば、要介護五に限って言えば、本当に、在宅の比率が下がっているという、介護保険の当初の理念に反するような事態が起こっているわけですから、私は、五年後の見直しというのであれば、重度の方でも在宅で介護を受けられるように利用料の軽減を図る、あるいは支給限度額をこの重度の要介護者に関しては見直す、こういうことこそ本当に五年後の見直しでやるべき課題だったんではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(尾辻秀久君)

 在宅におきまして重度の要介護者を支えるということは、これは大変重要なことでございます。

 そこで、今回の見直しでも、在宅においても二十四時間安心して生活できる体制を整備するため、新たに夜間対応型訪問介護サービスを創設をいたしますとともに、また通いを中心として随時訪問や泊まりができる小規模多機能型居宅介護サービスを創設いたしますなど、在宅サービスの充実に取り組むことといたしております。

 また、医療と介護の連携の強化に取り組むとともに、重度や認知症の要介護者を支えるための専門性の高い介護職員を確保するため、ホームヘルパーの研修体系の見直しに取り組みまして、在宅サービスの基盤の充実を図ってまいりたいと考えております。

小池晃君

 いや、私が言っているのは、要介護五で二十四時間見守り必要だったら、参考人質疑でありました、実態としてそういうサービスを提供しようとすれば月六十万ないし七十万、場合によっては百万超えるようなケースもあるんだと。しかし、今、要介護五では三十五万、三十六万と。これでは、もうそこから先、全部自費ということではとても見れないんだと。

 私、利用料一割の問題も含めて、そういう在宅で最後まで暮らすことができないような制度の見直しということをするべきじゃないかと言ったんですが、幾らそういう地域密着型サービスとかいろいろ言ったとしても、そういう保険制度による不当な縛りがあれば使えないじゃないですか。その点どう考えるのかということなんですよ。

国務大臣(尾辻秀久君)

 言っておられることは、恐らく支給限度額をどうするかというお話だろうと思います。

 ただ、これは様々なケースがありますから一概には言えないわけでありますけれども、いつもお答え申し上げておりますように、平均で見ますと大体利用額の割合というのは限度額の五割程度でありますから、むしろ、正確に言いますと四ないし五割程度というふうな平均の数字でございますから、今支給限度額を見直すということはいかがかと考えております。

小池晃君

 私、平均の話については前も議論しましたけれども、平均で見たら救われない人が出てくるんだと。平均で見たら社会保障できないんだということを何度も言っているはずです。実態としてそういう人はもう見れないんだということがあるわけですから、今の限度額では。

 私、五年目の見直しだというのに、様々な介護保険制度の問題点あると思いますが、そういう欠陥はそのまま放置されている。一方で、在宅の要介護者は予防という名の下にサービスを制限する。断じて許されないと思います。

 今日も筋トレの問題、口腔ケアの問題、ちょっと質問用意していましたが、時間なのでもうこれでやめますが、議論すべき課題はまだまだ山積をしているし、いったん決めた地方公聴会もこれやられていないというわけです。このような段階で採決、審議を終えて採決をするということは絶対に許されないということを申し上げたいと。

 以上で質問を終わります。


反対討論

小池晃君

 日本共産党を代表して、介護保険法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 反対の理由の第一は、新予防給付の導入により軽度者のサービス利用が今まで以上に制限されることです。新予防給付をめぐる厚生労働省の説明はことごとく破綻しています。軽度者のサービス利用が要介護度を悪化させると説明していましたが、むしろ正反対の結果を示すデータも明らかになりました。軽度者の要介護度悪化の最大の要因は病気であるという最近の調査結果も示されました。新たに導入される筋力トレーニングなどの介護予防効果の科学的根拠も極めて不確かなものです。

 介護予防をめぐる厚労省の説明が迷走を続けたのは、結局、新予防給付導入が真剣に予防を考えたものではなく、その目的が、介護保険発足後利用が広がった軽介護者に対する給付を削減することにあるからにほかなりません。国民の厳しい批判の前に、厚労省は、適正なサービスは今までどおり利用できると弁明せざるを得なくなりましたが、新予防給付が来年度から一千億円もの給付削減を目的としている以上、既に各地で先行的に始まっているようなサービス切捨てが更に加速されることは明白であります。

 反対理由の第二は、十月から、施設入所者の居住費や食費の徴収を口実として一人当たり四十万円もの大幅な利用者負担増を強行することです。施設入所者の標準的な負担額は、相部屋で月八万七千円、個室で十三万四千円にも上ります。多くの高齢者が年金収入の大半を施設に払うことになり、年金収入を超える負担になる人もあります。どうしてこのような負担に耐えられるのでしょうか。厚生労働省は、社会福祉法人の減免制度があると言いますが、法人任せで、しかも対象となるサービス及び事業主体は限定されています。国の責任で負担軽減を図る対策とは到底言えません。

 このような負担増を、利用者や施設、自治体に対してまともな説明を行えないまま十月から強行しようとしていますが、現場は大混乱になると参考人からも指摘がありました。断固撤回を求めます。

 反対理由の第三は、地域支援事業の創設に伴い、これまで全額公費負担で行ってきた高齢者の保健福祉事業などの国庫負担を減らし、介護保険料の負担を増やすことです。これでは地方自治体が行ってきた老人保健事業などが後退し、介護予防に逆行する結果にもなりかねません。

 反対理由の第四は、三十四万人の特別養護老人ホーム待機者を解消する計画を立てるどころか、今後、介護三施設の整備を抑制し、入所対象者を基本的に要介護二以上とする方向を打ち出していることです。さらに、個室化の推進や負担増と相まって、負担能力のない低所得者は施設に入所できない事態がつくり出されます。施設整備予算を削減し、交付金化で国の責任を後退させる政府の姿勢を改め、地域密着型サービスなどの基盤整備を進めるために必要な財政保障こそ行うべきです。

 反対理由の第五は、老人福祉施設職員の退職金手当制度を改悪し、公的支援を打ち切ることです。掛金の事業者負担を三倍に増やし、労働者が受け取る退職金を一割減らす重大な中身であるにもかかわらず、その影響についてまともな検討がされず、将来推計もずさんなものでした。

 反対理由の第六は、附則で、被保険者、受給者の拡大について検討課題とし、二〇〇九年度を目途として所要の措置を講ずるとされていることです。若年者からの介護保険料徴収については、今の経済情勢からも、負担増の対象となる若い世代の雇用と収入が不安定になっていることからも、滞納や制度の空洞化を招きかねません。また、若年障害者への介護保険制度の拡大は、障害者にサービス水準の低下や負担増を押し付けることになり、いずれの面からも賛成できません。

 介護保険制度は老後の安心を支える制度です。今回、国として初めての制度見直しを行うに当たっては、高過ぎる保険料や利用料の問題、特養ホームの待機者が増え続け、保険あって介護なしという事態が広がっていること、介護の質の向上に欠かせないホームヘルパーを始めとする介護労働者の労働条件の改善など、実施以来五年間で明らかになった問題点を改善することこそ求められています。

 こうした課題にまともに向き合おうともせず、国庫の支出削減を目的に給付の削減と国民負担増ばかりを押し付ける本法案は改革の名に値するものではありません。こうしたやり方は、介護保険制度に対する国民の信頼を失わせ、老後の不安を一層かき立てるもので、断じて認めることはできません。

 日本共産党は、希望ある老後のため、真の介護保障制度の確立のために全力を尽くす決意を表明して、反対討論を終わります。

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