日本共産党を代表して、介護保険法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
反対の理由の第一は、新予防給付の導入により軽度者のサービス利用が今まで以上に制限されることです。新予防給付をめぐる厚生労働省の説明はことごとく破綻しています。軽度者のサービス利用が要介護度を悪化させると説明していましたが、むしろ正反対の結果を示すデータも明らかになりました。軽度者の要介護度悪化の最大の要因は病気であるという最近の調査結果も示されました。新たに導入される筋力トレーニングなどの介護予防効果の科学的根拠も極めて不確かなものです。
介護予防をめぐる厚労省の説明が迷走を続けたのは、結局、新予防給付導入が真剣に予防を考えたものではなく、その目的が、介護保険発足後利用が広がった軽介護者に対する給付を削減することにあるからにほかなりません。国民の厳しい批判の前に、厚労省は、適正なサービスは今までどおり利用できると弁明せざるを得なくなりましたが、新予防給付が来年度から一千億円もの給付削減を目的としている以上、既に各地で先行的に始まっているようなサービス切捨てが更に加速されることは明白であります。
反対理由の第二は、十月から、施設入所者の居住費や食費の徴収を口実として一人当たり四十万円もの大幅な利用者負担増を強行することです。施設入所者の標準的な負担額は、相部屋で月八万七千円、個室で十三万四千円にも上ります。多くの高齢者が年金収入の大半を施設に払うことになり、年金収入を超える負担になる人もあります。どうしてこのような負担に耐えられるのでしょうか。厚生労働省は、社会福祉法人の減免制度があると言いますが、法人任せで、しかも対象となるサービス及び事業主体は限定されています。国の責任で負担軽減を図る対策とは到底言えません。
このような負担増を、利用者や施設、自治体に対してまともな説明を行えないまま十月から強行しようとしていますが、現場は大混乱になると参考人からも指摘がありました。断固撤回を求めます。
反対理由の第三は、地域支援事業の創設に伴い、これまで全額公費負担で行ってきた高齢者の保健福祉事業などの国庫負担を減らし、介護保険料の負担を増やすことです。これでは地方自治体が行ってきた老人保健事業などが後退し、介護予防に逆行する結果にもなりかねません。
反対理由の第四は、三十四万人の特別養護老人ホーム待機者を解消する計画を立てるどころか、今後、介護三施設の整備を抑制し、入所対象者を基本的に要介護二以上とする方向を打ち出していることです。さらに、個室化の推進や負担増と相まって、負担能力のない低所得者は施設に入所できない事態がつくり出されます。施設整備予算を削減し、交付金化で国の責任を後退させる政府の姿勢を改め、地域密着型サービスなどの基盤整備を進めるために必要な財政保障こそ行うべきです。
反対理由の第五は、老人福祉施設職員の退職金手当制度を改悪し、公的支援を打ち切ることです。掛金の事業者負担を三倍に増やし、労働者が受け取る退職金を一割減らす重大な中身であるにもかかわらず、その影響についてまともな検討がされず、将来推計もずさんなものでした。
反対理由の第六は、附則で、被保険者、受給者の拡大について検討課題とし、二〇〇九年度を目途として所要の措置を講ずるとされていることです。若年者からの介護保険料徴収については、今の経済情勢からも、負担増の対象となる若い世代の雇用と収入が不安定になっていることからも、滞納や制度の空洞化を招きかねません。また、若年障害者への介護保険制度の拡大は、障害者にサービス水準の低下や負担増を押し付けることになり、いずれの面からも賛成できません。
介護保険制度は老後の安心を支える制度です。今回、国として初めての制度見直しを行うに当たっては、高過ぎる保険料や利用料の問題、特養ホームの待機者が増え続け、保険あって介護なしという事態が広がっていること、介護の質の向上に欠かせないホームヘルパーを始めとする介護労働者の労働条件の改善など、実施以来五年間で明らかになった問題点を改善することこそ求められています。
こうした課題にまともに向き合おうともせず、国庫の支出削減を目的に給付の削減と国民負担増ばかりを押し付ける本法案は改革の名に値するものではありません。こうしたやり方は、介護保険制度に対する国民の信頼を失わせ、老後の不安を一層かき立てるもので、断じて認めることはできません。
日本共産党は、希望ある老後のため、真の介護保障制度の確立のために全力を尽くす決意を表明して、反対討論を終わります。