私は防衛医科大学校に所属していますんで、自衛隊全体の衛生に関しては統括していませんし、分からない部分もあります。ですから、私が知っている限りについて御説明いたします。
今御質問がありましたように、確かに自衛官の自殺は増えております。マスメディアでは自衛官の自殺急増みたいになっているんですけれども、これはちょっとミスリーディングなんですね。確かにこうやって増えているんですけれども、やはり今日お話ししましたように、日本全体の自殺が増えているのとほぼ並行して自殺が増えているというふうに考えていただきたいと思います。
で、自衛官というとほとんどが男性で、十五歳から五十五歳までの年齢ですね。ですから、この性別と年齢を組み合わせて比べてみますと、一般の人と自衛官の自殺率、十五歳から五十五歳までの男性で見るとほとんど同じかちょっと低いぐらいなんですね。イメージとすると、最近になって自衛官がめちゃめちゃ増えているというふうにイメージがあるんですけれども、必ずしもそうではないということです。
ただし、今御質問がありましたように、自衛官の自殺が増えていることは現実ですんで、かなり早い時期から対応をしております。平成十二年度ですから、そのときに自衛隊員のためのメンタルヘルスに関する検討会というようなのが開かれていまして、この提言がもう出ています。これはホームページに、防衛庁のホームページにも詳しく全部載っているはずです。そこでもうかなりいろいろな提言を行っています。
これはメンタルヘルス全般に関してなんですけれども、その中でも直ちに行い得る具体的な対策として、実際の自殺予防もあれば、あと、残された隊員ですね、非常につながりの強かった隊員で自殺が起きると同僚に対して大変心理的な動揺が起きますので、そういった人たちのケアをしようというような動きがあるわけなんですね。メンタルヘルス月間ですとか、惨事ストレス対策の、惨事ストレスというのは要するに、こういった痛ましい事故が起きたときの対応の教育などもしております。
自殺予防はこういった三段階あります。プリベンション、インターベンション、ポストベンションですね。プリベンションというのは、元々、原因ですとかを取り除いて自殺を起こさなくすると。インターベンションというのは、今起こりつつある自殺の危険を防ぐ。ポストベンションというのは、残された人ですね、非常に大変な思いをする残された人へのケアをしようということなんですけれども、今、日本で実際に行われているのはこのインターベンションがほとんどなんですね。医療を中心としたインターベンションです。今自衛隊でいろいろやっていることはこの三段階のことを行っております。
例えば、部隊で自殺が起きたなんということがあれば専門家チームを送ります。これは調査ではないんです。残された人に対してどうやってケアをするかということなんです。それでまた、残された人と面接することによって、自殺の背景も浮かび上がってきます。最後には、もう影響を受けた、非常に強い影響を受けた人に関しては、治療が必要ならば治療にのせると。また同僚たちに対しては、最終日には、自殺予防の教育ですね、そういうようなこともすると、こういうようなことをしております。
ごく簡単に私の知る範囲でお話ししました。