質問第四号 結核予防法改正に伴うBCG予防接種の対象年齢引下げに関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成十七年二月二十五日 小池 晃 参議院議長 扇 千景 殿
結核予防法改正に伴うBCG予防接種の対象年齢引下げに関する質問主意書
結核予防法の改正に伴い、本年四月から無料で受けられるBCG予防接種の対象年齢が四歳未満から原則生後六か月未満に引き下げられる。この措置は乳幼児の結核予防には有効であるとされているが、十分に周知されていない実態があると思われるので、以下質問する。
一、BCG予防接種の対象年齢を生後六か月未満にすると、様々な事情で接種機会を逃してしまう乳幼児が相当数発生すると思われるが、これは、結核感染の予防上マイナスとなるのではないか。
二、これまで我が国では、免疫不全児への生ワクチンの接種を避けるため、接種開始時期は生後三か月以降とされてきたにもかかわらず、今回の措置でBCG予防接種を生後直後から行っても安全性に問題はないと考えるのか。問題がないと判断したのであれば、その根拠を示されたい。
三、厚生労働省の調査によると、一歳までのBCG予防接種率は八十%にとどまっているが、これをどのように引き上げようとしているのか明らかにされたい。また、予防接種の機会が少ない地方自治体も多く存在する中で、安心して予防接種が受けられるようにするための対策を明らかにされたい。
四、今回の改正において、地理的条件、交通事情、災害の発生その他特別な事情によりやむを得ないと認められる場合には、BCG予防接種を一歳に達するまでに行い得るとされているが、「その他特別な事情」の中に、医師による医学的判断がなされた場合を含めるべきではないか。
五、生後六か月に達する乳児で、BCG未接種の者が本年四月一日時点でどれだけ存在すると推定されているか。
六、制度の変更に当たっては、今回の措置が定着するまでの一定期間は、生後六か月を超えても公費でのBCG予防接種ができることとし、被害が発生したときの救済も結核予防法や予防接種法を適用すべきではないか。
右質問する。
答弁書第四号
内閣参質一六二第四号
内閣総理大臣 小泉純一郎
参議院議員小池晃君提出結核予防法改正に伴うBCG予防接種の対象年齢引下げに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員小池晃君提出結核予防法改正に伴うBCG予防接種の対象年齢引下げに関する質問に対する答弁書
一について
御指摘のBCG接種については、我が国は、国際結核肺疾患予防連合が定める乳幼児に対するBCG接種の廃止基準に該当するものの、依然として、高齢者における結核のり患率が高い状況にある中で、多くの研究においてBCG接種が乳児で結核に感染した場合の重症化に対する一定の予防効果が認められていること及びBCG接種を行う諸外国の多くで新生児期に接種が行われていることを踏まえ、当面の間、生後できる限り早期にBCG接種を行うことにより乳児の結核の重症化を予防する観点から、結核予防法の一部を改正する法律(平成十六年法律第百三十三号。以下「改正法」という。)によりBCG接種の前に行われるツベルクリン反応検査を廃止するとともに、結核予防法施行令の一部を改正する政令(平成十六年政令第三百三号。以下「改正政令」という。)により、生後六月に達するまでの期間に改正法による改正後の結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号。以下「法」という。)第十三条の規定に基づく定期の予防接種を行うこととしたところである。
政府としては、このような制度改正の趣旨を踏まえ、引き続きBCG接種の実施主体である市町村を通じて接種機会の確保に努めることとしており、結核感染の予防上マイナスとの御指摘は当たらないものと考えている。
二について
御指摘の法に基づく予防接種の定期については、生後のできる限り早期にBCG接種を行うべきとする世界保健機関の勧告、BCG接種を行う諸外国の多くで新生児期に接種が行われている状況等に基づいて改正政令により生後直後から生後六月に達するまでの期間としたものであり、予診によっても予防接種を受けることが適当でない者への接種を完全には回避できない予防接種制度において求められる安全性について合理的根拠を有するものと考えている。
なお、改正政令による改正前の結核予防法施行令(昭和二十六年政令第百四十二号。以下「政令」という。)第二条の二においては、四歳に達するまでの期間を定期としており、生後三月以降の接種を法令上義務付けていたものではない。
三について
御指摘のBCGの接種率については、結核の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針(平成十六年厚生労働省告示第三百七十五号)において、地域の医師会や近隣の市町村等との十分な連携、乳児健康診断との同時実施、個別接種の推進、近隣の市町村の住民への接種の場所の提供等によって接種機会を確保し、接種率の向上を図ることとしている。
四について
改正政令による改正後の政令第二条の二ただし書に規定する地理的条件、交通事情、災害の発生その他の特別の事情によりやむを得ないと認められる場合には、市町村は、生後六月に達するまでの期間にBCG接種の機会を確保することができないものとして、例外的に一歳に達するまでの期間にBCG接種を行うことができることとされている。しかしながら、御指摘の医師による医学的な判断がなされた場合については、予防接種制度がまれではあるが副反応による健康被害の発生を避けることができないものであることから、一概に、乳児の結核の重症化を予防する目的で定められた生後六月の期間以降において、BCG接種を特に積極的に勧奨すべきとはいえず、同条ただし書に規定する場合に該当しないものであり、法に基づかないBCG接種として、医師による医学的判断を踏まえ、乳児の保護者の希望により行われることとなるものと考えている。
五について
お尋ねのBCGの未接種の者の本年四月一日時点での数については、改正法の施行される同日以降は、生後六月に達するまでの期間にBCG接種が行われることから推計を行っておらず、また、改正法の施行に向けた市町村のBCG接種の取組が地域の事情により異なることから、推計することは困難である。
六について
御指摘のBCG接種の費用については、乳児の結核の重症化を予防する目的で生後六月に達するまでの期間にBCG接種を行うこととしたことから、政府としては、改正政令による改正後の政令第二条の二ただし書に規定する場合以外に生後六月以降にBCG接種を行う必要はないと考えているが、市町村が行うBCG接種の費用は、その一般財源のみを原資としており、生後六月以降に行われる法に基づかないBCG接種の必要性及びその費用負担については、市町村が判断すべきものであると考えている。
また、法に基づくBCG接種による健康被害については、法第二十一条の二第一項の規定により、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第十二条第一項の規定による給付の例により、給付が行われることとされており、御指摘の生後六月以降に行われる法に基づかないBCG接種による健康被害について給付を行うことはできない。
なお、法に基づかないBCG接種による健康被害についても、その健康被害が独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成十四年法律第百九十二号)第四条第六項に規定する医薬品の副作用によるものであり、かつ、被害者が同法第十六条第一項各号に定める者に該当する場合には、同条第二項第二号に該当する場合を除き、同法に基づく副作用救済給付が行われることとなる。
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