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右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十七年二月八日

小池 晃

参議院議長 扇 千景 殿

抗がん剤イレッサの有効性検証に関する質問主意書

 肺がん用の抗がん剤イレッサは、二〇〇二年七月に国の承認を受け発売されたが、その使用により発売以来二〇〇四年一二月までに五八八人が急性肺障害・間質性肺炎等の副作用で亡くなっている。

 イレッサの製造元であるアストラゼネカ社は、世界二八カ国で合計一六九二人を対象に行われた大規模比較臨床試験(ISEL試験)においてイレッサの延命効果は認められなかったとする試験結果を、二〇〇四年一二月に発表した。アストラゼネカ社はこの結果を受けて、EMEA(欧州医薬品審査庁)に対するイレッサの承認申請を取り下げたところである。

 新たな試験結果を受け、イレッサの安全性及び有効性を検証するための政府の対応について、以下質問する。

  1. アストラゼネカ社のイレッサに関するISEL試験結果(以下「試験結果」という。)を厚生労働省はいつ、どのような手段で知ったのか。
  2. 試験結果を受けての我が国のイレッサへの対応について、厚生労働省のどの部局が、いつ検討したのか。
  3. 試験結果について、厚生労働省はどのように評価しているのか。
  4. アストラゼネカ社は、東洋人の患者について延命効果が示唆された(イレッサ使用患者の生存期間九・五か月に対し、プラセボ群患者の生存期間五・五か月)と主張している。しかし、アストラゼネカ社が示した東洋人のデータは症例数が少ない上に、喫煙歴のないプラセボ群の生存期間(四・五か月)が喫煙者のプラセボ群の生存期間(六・三か月)より短くなっており、非東洋人の患者と逆の結果となっている。この点についての合理的説明はなく、喫煙歴のない東洋人のデータの正確性について重大な疑問が生じている。この試験結果だけでは、日本人に延命効果があると認定できないのではないか。
  5. 一月二〇日に開催された厚生労働省の検討会において、アストラゼネカ社が試験結果の詳細データを説明した際、その資料を傍聴者に配布しなかった理由を示されたい。また、委員に配られた資料も検討会後に回収されたが、その理由を示されたい。さらに、資料を回収してしまえば、その内容を科学的に検証することができない。このようなやり方では、国民の信頼が得られないと考えるが、政府の見解を示されたい。
  6. 日本人を対象とする国内の第三相試験はいつから行われているのか。結果はいつ発表される予定か。米国より先に承認されたにもかかわらず、なぜ我が国における第三相試験結果がいまだに明らかにならないのか。
  7. イレッサの投与に関しては、投与開始後四週間は入院又はそれに準ずる管理の下で十分な観察を行うことや、投与の前に患者に十分な説明を行い同意を得ることが求められている。ところが、アストラゼネカ社の調査を見ると、「原則入院としたが四週間は入院できていない施設」が二五%に上り、また、同意についても「必ず文書で同意取得している施設」は六二%で、「口頭」三六%、「医師ごとに、また患者ごとに同意取得の方法が異なる施設」も二%となっている。投与の実態は、安全確保のための基準が守られていないのでないか。厚生労働省はどのような認識を持ち、対策を講じているか示されたい。
  8. 国内で実施されたイレッサのプロスペクティブ調査(特別調査)結果(二〇〇四年八月発表)によれば、急性肺障害・間質性肺炎の副作用発現率は五・八%、死亡率は二・三%となっている。アストラゼネカ社は、二〇〇四年一二月二八日現在、推定累積患者数八六八〇〇人、急性肺障害・間質性肺炎等の副作用一四七三例、うち死亡五八八例と発表しているが、この特別調査結果に照らせば、副作用による死亡は約二〇〇〇人に上るのでないか。アストラゼネカ社が把握している副作用死亡件数は実態より少ないと考えられるが、政府の見解を明らかにされたい。あわせて、我が国におけるこれまでのイレッサの販売錠数を明らかにされたい。

 右質問する。


参議院議員小池晃君提出抗がん剤イレッサの有効性検証に関する質問に対する答弁書答弁書第二号

内閣参質一六二第二号
平成十七年二月十五日

内閣総理大臣 小泉純一郎

参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員小池晃君提出抗がん剤イレッサの有効性検証に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員小池晃君提出抗がん剤イレッサの有効性検証に関する質問に対する答弁書

一について

 平成十六年十二月十七日に、厚生労働省医薬食品局が、日本のアストラゼネカ株式会社から、アストラゼネカ英国本社が御指摘の臨床試験(以下「ISEL試験」という。)の初回解析の結果の発表を同日行うとの連絡を受け、発表資料を入手し、その内容を知った。

二について

 厚生労働省医薬食品局は、平成十六年十二月十七日にISEL試験の初回解析の結果を入手した後検討を始め、同月二十七日に、平成十七年一月二十日にISEL試験の結果に関して検討を行うため、医学、薬学等の専門家等からなる検討会(以下「ゲフィチニブ検討会」という。)を開催することを決定した。

三について

 ゲフィチニブ検討会では、ISEL試験について、イレッサ錠二百五十(以下「イレッサ」という。)の臨床的有用性に対する影響を判断するためには、初回解析の結果では十分でなく、詳細な解析結果を待つ必要があるとされたところであり、厚生労働省においてもその検討結果を妥当と判断した。

四について

 ISEL試験の初回解析の結果のみでは、日本人患者における生存期間に対するイレッサの有効性を判断することはできないと考えており、その有効性を判断するためには、現在日本でアストラゼネカ株式会社が日本人を対象として実施している生存期間を主要評価項目とする臨床試験(以下「第三相試験」という。)の結果を待つ必要があると考えている。

五について

 ゲフィチニブ検討会におけるアストラゼネカ株式会社のISEL試験の初回解析の結果については、その概要は傍聴者にも配布しており、必要な情報は提供したものと考えている。それ以外の御指摘の詳細データについては、同社から申出があったこと等を踏まえ、傍聴者には配布せず、ゲフィチニブ検討会の委員から回収したものである。ゲフィチニブ検討会の委員に対しては、事前に当該データを配付しており、その取扱いは、ゲフィチニブ検討会における医学的及び薬学的な検討を行うために十分なものであり、国民の信頼を損なうものではないと考えている。

六について

 第三相試験は、平成十五年九月から行われている。その結果については、現時点では、平成十九年第二四半期頃に取りまとめられ、その後発表される予定であると承知している。

 第三相試験については、試験成績を科学的に評価するために、四百八十四例の症例を対象として実施することを予定しているが、その際、被験者の同意を得ることが困難である等の事情により、第三相試験の取りまとめに一定の期間を要しているものと承知している。

七について

 イレッサの投与に関しては、イレッサの添付文書の警告欄において「同意を得た上で投与すること」及び「少なくとも投与開始後四週間は入院またはそれに準ずる管理の下で、間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと」とされている。厚生労働省としては、アストラゼネカ株式会社にこれらの状況について、定期的に報告させ、確認しているところであり、前者については、同意の取得は文書又は口頭でなされており、後者についても、警告の内容に従って個々の症例に対して適切な対応がなされている旨報告を受けている。

八について

 御指摘の「死亡五八八例」は、厚生労働省において、アストラゼネカ株式会社及び医療機関等からの報告に基づいて、把握したものであり、すべての死亡例を把握した上での件数とは考えていない。なお、「推定累積患者数八六八○○人」は、アストラゼネカ株式会社が一定の仮定をおいて試算したものである。

 また、アストラゼネカ株式会社からの報告によると、平成十四年七月五日から平成十六年十二月三十一日までのイレッサの国内出荷量は、約五百五十四万錠である。


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