- 小池晃君
日本共産党の小池晃です。
現行派遣法の下で不安定雇用が拡大しています。長時間過密労働で過労死、過労自殺ということも後を絶ちません。今必要なのは、やはり不安定雇用から労働者の権利を守る規制だと思うんです。ところが、今回の法案は、正にそれとは逆に雇用の不安定化の歯止めを外すものではないだろうかと。
最初に大臣にお伺いをしたいんですが、そもそも労働者派遣法の目的というのは、これは私は派遣労働者の雇用の安定を図ることにあると。これが当たり前の考え方だと思うんですが、この点、大臣、いかがでしょうか。
- 国務大臣(坂口力君)
それは、労働者派遣法の目的の第一条に書いてありますとおりでございまして、労働力の需給の適正な調整を図るため、労働者派遣事業の適正な運営の確保に資する措置を講ずるとともに、派遣労働者の就業条件の整備等を図り、もって派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することと、こう書いてあるわけでありますから、このことに間違いはございません。
- 小池晃君
衆議院あるいは今までの議論を通して、今回の形でも常用代替にならないんだと、あくまで臨時的、一時的雇用の枠内だというふうに答弁をされてこられました。
現状の認識をちょっと大臣にお伺いしたいんですが、しかし、現実にはやはり常用代替、これは急速に進んでいるのではないかと。この点、大臣、どう見ていらっしゃるのか、お話をお聞かせ願いたいと思います。
- 副大臣(鴨下一郎君)
常用代替が進んでいるんではないかと、こういう話でありますけれども、労働者派遣法におきましては、労働者派遣事業が臨時的、一時的な労働力の需給調整に関する制度として位置付けられたわけでありまして、同一の業務については、派遣労働者や派遣元事業主を変更しても一年を超えては労働者派遣を受け入れられないとの規制があり、ある意味で常用代替を促すことのないような措置は有効と思われておるわけであります。
実際に、実態調査を見ても、派遣労働者が行っている業務の前任者が常用労働者である場合に、その前任の常用労働者について、派遣の受入れを機に辞めてもらったというようなことが最も多いという事業所は、これは衆議院でも議論になったところでありますけれども、四・一%でありまして、御指摘のような常用代替がかなり進行していると、こういうような認識ではないということを申し上げたいと思います。
- 小池晃君
そういう点も確かにあるかと思いますけれども、ただし、現場の実態を見れば、やはりこの厳しい雇用環境の中で派遣労働者というのは常用代替に使われているという傾向が強まっているという実態がある。
これは現状の認識として、大臣、どうなんですか。そういう認識の下にこの政策出されていると私は受け止めているんですけれども、その点、いかがなんですか。
- 国務大臣(坂口力君)
そういう実態が全然ないとは私も申しません。それはそういうことも中にはあるだろうというふうに思います。しかし、先ほどから議論になっておりますように、現在の雇用状況というものを見ました場合に、企業としても常用雇用が今できにくいというこういう環境でございますから、そういう雇用の在り方というのも一つの選択肢として存在することは否定できないというふうに私は思います。
しかし、そういうことを目指してそのままで将来ともに行くということではなくて、私は、先ほどから議論になっておりますように、再び常用雇用ということが考えられるようになるのではないかというふうに私は思っております。
- 小池晃君
ちょっと認識として私は甘いのではないかなというふうに思うんですね。この間、常用代替防止策として政府が掲げてきたのは、いわゆる専ら派遣の禁止の問題、それから請負と派遣の区分の明確化の問題があります。ちょっとこの問題、今日は集中的に議論したいんですが、果たしてそれがどれだけ実効力を持ってきたのか。
まず、専ら派遣の問題ですが、これは九九年の改正後、派遣労働は急速に広がってきています。
今日、資料をお配りしております。これはある銀行の例なんですが、メガバンクです。
資料の一を見ていただきたいんですけれども、あるメガバンクが一〇〇%出資をしている派遣会社のスタッフ在籍推移表です。これを見ると派遣法施行以来の在籍数の変化が大変よく分かる。八六年の派遣法施行時、昭和六十一年、千六百八十五名、この派遣労働者が昨年九月では六千二百八名、これは四倍近くになっています。
注目したいのは、これは専門業務と認めたテレマーケット業務、これは解禁の年が九六年ですが、ここから百十九名入っている。年々増加しているわけです。それからまた、九九年に金融商品の販売業務が解禁されました。そうすると、翌年からテラースタッフ、これは百二十七名派遣されて、今では四百六十人近くになっている。正に法改正と本当に足取りを全く一にしてこういうふうに進んできているわけです。規制緩和とリンクして急速に拡大してきている。
各支店どうなっているかというと、資料二を見ていただきたいんです。これは同じメガバンクのある支店の人員配置図であります。この支店の職員は百二十六名、そのうち正行員は七十八名です。スタッフというふうに表にあるのが、これは派遣であります。派遣職員が四十八名。四割が派遣なんですね。特に一階の窓口業務などを見ると、正行員は三十二名に対して四十二名が派遣労働者なんです。今もう銀行は、メガバンクといえども窓口業務をやっている人はほとんど派遣だという実態が見て取れる。
ローンスタッフとかロビースタッフ、ビジネススタッフ、こういった人たちは二十六業務の財務、接客、事務、ファイリング、こうした専門業務として派遣されています。この支店に派遣されているのは四十八名ですが、これは四十八名中四十六名女性です。そして、そのほとんどが一年契約のパートなんですね。お話を聞くと、最初の時給が九百円だそうです。これが毎年大体二十円か三十円ずつ上がっていく、五年後に再契約すると六年目からまた時給九百円に戻っちゃうんだと、それでまた同じことを繰り返す、こういう仕組みだそうなんですね。同一の支店の同一の業務に最も長い人で十五年派遣されていると。一番多いのは八年から十年という、そういう人だそうなんです。そういう実態がある。
私たち、この九九年の法案審議のときにも、いわゆる専ら派遣が金融機関で非常に問題だということを指摘をいたしました。具体的に、その専ら派遣の基準の明確化、それから、こういう実態の多い金融機関については職場の実態調査をすべきだということも言いました。そして、その結果に基づいて対応すべきだと求めました。これに対して当時の職安局長も、金融庁と相談して対応するというふうに答弁されているんですが、どのような対応をされたのか、まずお答え願いたいと思います。
- 政府参考人(戸苅利和君)
一つは、専ら派遣の判断基準でありますけれども、専ら派遣の判断基準につきましては、定款ですとか寄附行為ですとか登記簿の謄本ですとか、そういったところに専ら特定の者に労働者派遣を行うということが書かれている場合、これは専ら派遣に当たりますと、こういうふうに明確にしております。
それから、派遣先確保のための努力が客観的に認められないというようなことで、例えば、派遣先を確保するために宣伝とか広告とか、こういったことが行われていないというようなことであります。
それから、派遣先からの労働者派遣の依頼に関しまして、特定の派遣先以外の依頼には正当な理由なく拒否している、こういうものも専ら派遣に当たります。例えば、派遣労働者の人数がもう不足しているので派遣できませんといったような正当事由以外で拒否しているというものはこれが当たりますと。
こういうことで、これにつきまして、この判断基準を対外的にも明らかにするということで、現在、厚生労働省のホームページにもこれを掲載し、問い合わせがあればこういうことでお答えしているということであります。
それからもう一つは、実態調査であります。実態調査につきましては、平成十一年の八月から、金融機関が一〇〇%出資しております派遣元事業所、百五十六事業所でありますけれども、こういったところに対しまして調査を行いました。
- 小池晃君
その最後のところだけ聞きたかったんですけれども、百五十六調査した。その結果に対して指導監督はどのように実施されていますか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
百五十六のうち、先ほど申し上げた三点でございます、三点というか、中心は派遣先確保のための活動が実際に行われているかどうか、それから会社案内等々ちゃんとやっているかということで、こういったところについての違反が見られたのが八十六事業所であります。それから、これについて是正の指導を行ってきておりまして、八十六のうち八十四は改善されているという状況でございます。
- 小池晃君
指導ということで終わっているんですね。半分は指導にすら至らなくて、残りも指導で終わっているんです。
派遣法を見ますと、指導及び助言があります。勧告があります。改善命令そして公表、こういう処分あるわけですけれども、派遣法制定から今までの間に、このうち指導で終わらずに公表、改善命令、勧告、ここまで行ったケースというのは一体幾つあるんですか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
いずれも指導に従ったということで、今お話しのような勧告、公表等に至ったケースはないと思います。
- 小池晃君
つまり、実際は指導ということで終わるわけですよ。勧告とか改善命令なんか行かない。公表はゼロであります。結局、これでは一体果たして実効力あるんだろうか。
例えば、今の基準でいくと、全員がもし一〇〇%特定の派遣先に集中したとしても、定款にはそう書いてありませんと、特定のものだけじゃなくていろんなところ行けますよと書いてあればそれで済んじゃうんです。それから、うちは営業が頑張ってやっているんですけれどもなかなか営業がうまくいきませんと、頑張ってほかの社にも派遣しようとしたけれども、営業の成績上がりませんから特定のところに行っているんです、努力はいたしますと。これで済んじゃうわけでしょう。これで専ら派遣を禁止していると果たして言えるのかと。
私、こういうやり方は本当に抜け穴だらけだと思うし、派遣労働をどんどんどんどん拡大していくというのが今の厚生労働省のやり方ですよ。そのこと自体に異論は私持っていますけれども、もし、じゃそういうことでどんどんどんどん拡大していくと、今回のでも拡大していくというのであれば、そういうことならば、やはりこの派遣法違反を野放しにしたようなこと、こんなことをそのままにしてそんなことをやっていいんだろうかと。
私は、こういう派遣労働の規制緩和を進める、派遣法違反についてはまともに公表にまでほとんど至らない、指導で終わっちゃう。指導というのも、今のような本当に抜け穴のようなやり方で済んでしまうと。私は、派遣法違反であれば直ちに公表する、そして社会的制裁を加えると。そのくらいの実効のあるやはり派遣労働を保護する法律というふうに作り替えなければ、こんな派遣労働を無制限に拡大するなどということは到底許されないというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。
百歩譲って、拡大するというのであれば、やはりきちっとこういう労働者をしっかり保護する仕組みを作る、それ抜きに派遣労働を拡大していくということは、私は到底許されないのではないかというふうに思いますが、大臣、いかがですか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
勧告まで至らなかったというのはどういうことかということだけ申し上げますと、これは是正されたということであります。是正の指導をして、それで言うことを聞かなければこれは更に勧告まで行き、公表まで行くということでありまして、今回、今御質問の件については、これはすべて是正されていると。是正されていない二件についても、これも近々に是正されるという方向になっているということであります。
- 小池晃君
だから、それがおかしいと言っているんですよ。ちょっと例えは悪いけれども、物盗みました、これからもうしませんと言ったらそれで済んじゃうという話なんですよ。そういうのじゃ駄目でしょうと。やはり派遣法、あるいはいろんな基準に照らして問題があるというところに、指導で済んじゃうというような世界じゃなくて、きちっと制裁加えるという仕組みも同時に作っていくということが必要なんじゃないですかと、私はそう申し上げているんです。大臣、いかがですか。
私の言っていることはそんなとっぴなことじゃないと思いますよ。やはりこれだけ野放しにしたまま派遣労働をどんどんどんどん拡大していく、これでは労働者の権利守られないじゃないかという声が上がったって不思議がないじゃないですか。大臣、いかがですか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
確かに専ら派遣というのは、これは派遣法の目的になっています労働力の需給調整というよりはむしろ第二人事部というべきで、使用者の労務管理の負担を派遣会社が肩代わりしているということで、これは正直言って派遣法の趣旨に反する行為であることは事実でありまして、そういったことでこれまでも指導してきているところであります。
指導に従わず悪質である、あるいは指導に従ったふりをしてまた再三そういった悪質な行為を繰り返すという悪質なケースについては、これは当然厳しく対応するということであります。
- 小池晃君
しかし、そういうふうになって悪質だということで勧告まで行ったというのは一つもないという話なんじゃないですか。全部指導で終わっちゃっているわけでしょう、実態としては。それで、いいんですかと言っているんですよ。
大臣ちょっと答えてください。やっぱり労働者これじゃ納得しませんよ。こういった問題を野放しにしたまま派遣労働がどんどんどんどん拡大していくということに対して、やはり大臣お考え示していただくべきじゃないですか。大臣、ちょっと答えていただきたい。
大臣、ちょっと二回見送ったんだから、三度目の正直で、ちょっと私何も言わなかったんだから、答えてくださいよ。
- 政府参考人(戸苅利和君)
我々も、指導をして、それに従っているところについてそれ以上の措置を取るというのはこれはできないわけで、ただ、おっしゃるように悪質な業者というのがいるんであれば、それはおっしゃるとおりきちんとした厳正な対応をするというのは当然だろうと、こう思っております。
- 小池晃君
だから、していないんですよね。だから言っているんです。
大臣、ちょっと簡単でもいいですから所見を聞かせていただきたい。これはもう大臣としても答えられないと、これはまずいというふうに思っていらっしゃるんだったらもう結構ですけれども、ちょっと大臣、答えていただきたいんです。やはりこういう在り方は問題だと思いませんか。その問題意識だけでも聞かせていただきたい。
- 国務大臣(坂口力君)
現場の問題でございますから、これは現場でどういうふうに対応しているかは局長にお任せしたいというふうに思いますけれども、いずれにいたしましても、法律がちゃんとできて、そしてそれにのっとってやっていかなきゃならないようになっているわけでありますから、それに反するところがあれば、厳正に対処する、それは当然のことだと思います。
- 小池晃君
それは当然のことなんですけれども、そういう仕組み、今のような仕組み、本当に指導ということで終わってしまうような仕組みでいいのかと。やはり私は最低限、派遣法違反のような実態があれば直ちに公表すると、そして社会的にもそういった企業はきっちり指弾されるというのは私は当然の在り方だというふうに思います。これもなしに拡大していくなどということは本当に許し難いということを申し上げたいと思います。
その上で、銀行への派遣は多く二十六業務だと。今回、通達廃止されることで三年の期間制限外れると。これまでは合理的な理由がなく同一の派遣ができないとされていたものが、四十条の五で同一の労働者に雇用の申込みが義務付けられますが、派遣先に雇用意思がなければこれは無制限にできることになっていく。事実上専ら派遣で広がってきた銀行のスタッフサービスなどの派遣労働者、これは先ほどもお話ししたように、同じ会社に八年、十年、そういう人が一杯います。そして、その派遣先も親会社になっているわけです。多くは一日五時間労働。しかし登録型のパート。常用労働者としては雇用されていません。長年同じ職場に働いていても、通常労働者より短い労働時間だというだけで非常に劣悪な条件に置かれている。
私は、本来は派遣先に常用雇用されるということがこれが一番いいことは間違いない。しかし、現在の雇用情勢の中でこれがすぐに実現できないとすれば、だとすればやはり次善の策として、労働者が希望した場合には登録型の派遣ではなくて、派遣会社への常用雇用を進める、こういうことが望ましいのではないか。
そういったことを望ましいと思わないのかどうか、認識をお伺いしたいのと、たとえ派遣労働という形態のままであっても、雇用を少しでも安定化させていく、こういう施策を私真剣に検討する必要があるんじゃないかというふうに考えるんですが、いかがですか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
派遣労働者、特に登録型の派遣労働者の場合は、派遣される日について派遣元と雇用契約を結んで、その上で派遣される。派遣される日については、派遣元が雇用主であると、こういう仕組みで来ているわけであります。
それを今のお話のように常用雇用として派遣元に雇わせるということについて、国の方で、私的なといいますか、民事上の派遣元と派遣労働者の間の契約関係について一方的に強制する、あるいはこういうことが望ましいということはこれはなかなか難しいんではないかというふうに思います。
ただ、正直言って、派遣元とそれから派遣労働者がそれぞれ何というか、雇いたいあるいは常用で雇われたいということで話が付いて、それで常用派遣に切り替わるということであれば、これはこれで我々としてはこれも結構なことだろうと、こう思っています。
- 小池晃君
それは勝手にやってくださいという話だけであって、そういうことでは駄目だと思うんですよ。別に全部強制しろなんて私も言っていないんです。もちろん、派遣先にきちっと常用雇用されるべきなんです。ただ、宙ぶらりんじゃないですか、こういう人たちは。そこを何とか安定した形にするというような施策を私は真剣に検討する、これだけ雇用情勢も大変だという中で、私は真剣に検討してもいいというふうに思うんですよ。
ちょっと、大臣、今の考え方はどうですか。こういう考え方についてどのようにお考えになりますか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
おっしゃるとおり、派遣労働者が希望するのであれば、なるべく長い期間の安定した雇用関係というのは望ましいわけであります。そういった意味で、先ほど申し上げましたが、派遣元と派遣労働者の間で話合いが付けば、それは望ましいことだろうと思います。
それから、今回考えていますのは、いろいろ議論がありまして、派遣期間とそれから雇用契約期間、これが乖離していると。派遣期間は六か月なのに雇用期間は一か月の短い期間が繰り返されると、こういったようなケースも散見されるわけでありまして、こういったものについては、派遣期間と雇用契約期間、これをなるべく一致させるような努力というか、こういったものが望ましいというふうに思っていまして、この点は衆議院での附帯決議等にも明記されているところであります。
- 小池晃君
短期常用雇用化ということ自体も望ましいことではあるというお話もありましたので、是非こういう施策も、少しでも派遣労働者の雇用を安定化させるということをやはり真剣に検討するべきだということを申し上げておきたいと思います。
その上で、製造業への解禁の問題ですが、請負と派遣の区分の明確化の問題であります。これは元々、派遣法成立のきっかけともなった構内下請の現代版業務請負業だった。今回の法案のやっぱり大きな問題点は、先ほどからも議論あるものづくりへの解禁の問題です。
これ、既にもう大きく広がっているわけですね、実態としては。NHK のテレビでも特集されました。この NHK のニュースでは、別の業種が新たに参入して更に競争が厳しくなることも予想されている、労働者の立場に立った対策が急がれていると、そういうコメントだったんです。
厚労省は、昨年、請負関係の企業や労働者への調査を実施しております。今日は資料 3 としてお配りをしておりますが、何でこの調査を行ったのか、簡単に御説明をお願いします。
- 政府参考人(戸苅利和君)
前回、平成十一年の派遣法の改正の際に、物の製造の業務については、ネガティブリスト化する中で、労働者も多い、労働条件に与える影響も無視できないということで、附則において、省令で外す業務ということでこれまで認めてこなかったわけでありますけれども、この物の製造の業務について、今、委員御指摘のとおり、実際には偽装請負というふうなケースも中にはあるんだろうと思いますけれども、業務処理の請負という格好で、製造業の現場に相当数の請負の発注者それから請負の労働者が働いているわけであります。
そういったところにつきまして、現状を把握し、もし適正な請負で行われていないといったときにどういった対応が必要なのかということも把握し、それから、今お話しのように、請負についてあるいは派遣について、どういったニーズがあるのかという辺りも把握しておこうというふうなことで、実態も含め調査をいたしたわけであります。
- 小池晃君
この調査によると、一般の現場労働者の平均勤続年数は三年七か月であります。平均年齢は三十三・四歳、平均月収十九・九万、年収でいうと二百六十三万一千円。非常に厳しい条件だと思います。
このお配りしたアンケートの中身で少し議論をしていきたいと思うんですが、四ページの表 30 を見ていただくと、請負のデメリットという質問がございます。将来の見通しが立たない四二・二%、雇用が不安定三五・二%、収入が不安定二九・二%、賃金が低い一九%。年収二百六十三万ですから当然だと思うんです。
それから、ちょっと後先になって済みませんが、三ページの表 27 を見ますと、今後希望する働き方ということでは、正社員として働きたいという方が一般現場労働者で四二%、パートとかアルバイトを希望している人は三・二%しかいません。
そこで、もう一度一ページに戻っていただいて、表 11 ですね、生産業務における請負業務で使用する機材等の所有者という問いに対して何と言っているか。必ず自社の所有しているものを使用するというのは六・八%しかない。その一方で、発注者のものが多いというのは六一・六%、必ず発注者のものを使用する二四・七%。だから、九割近くは本来は違反となる、これ、人材だけしか供給していないということになるんじゃないか。
こういう実態、これは派遣法違反の実態がかなり広がっているということを示唆するものではないでしょうか。いかがですか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
派遣と請負の区分基準でありますけれども、これによりますと、自己の責任と負担で準備し調達する機械、設備、器材等により業務を処理することと、こうなっています。
これは、その考え方としては、今御指摘のとおり、請負業者が自ら所有するというケースが中心なんだろうと思いますが、それ以外にも、発注者からの貸借契約を結んで、それによって貸借料を払いということでやっている場合もこれは該当するということだろうと思いまして、そういった意味で、今御指摘のその数字が、すべてが派遣法違反ということではないんじゃないか、請負、適正な請負になっていないということではないんじゃないかというふうに思います。
ただ、正直申し上げて、これだけ製造業の現場に請負業者が入っていますので、適正な請負になっていない、あるいは派遣法違反である、実際は派遣だけれどもやってはいかぬ派遣が行われている、あるいは派遣という形態に照らしても問題があるというケースもあるということは、これは否定できないと思います。
- 小池晃君
貸借契約と言うんだけれども、その下の表 12 で、賃貸契約結んでいますかというのに、していないというのは多いんですよね、大変。ですから、もうかなりこれは派遣法違反という実態がまかり通っているということだと思うんです。
もう一つお聞きしたいんです。表 48 、一番下ですね、一ページの。これを見ていただくと、指揮命令の問題があります。これ、発注者の従業員からの指揮命令が必ずあるが一一%です。それから、大体あるが一五・五%、さらに、半々程度が二一・五%、合わせて五割近くは発注者の従業員からの指揮命令があるんだと。
一方、これは事業者側の調査ですが、労働者側の調査は四ページにあるんですけれども、四ページの表 31 を見ていただくと、これは労働者側の調査では、必ずあるというのが二五・六、大体が一九・二%、半々が一〇・一%、これも五割を超えています。逆に、これを見ると、請負事業所の作業リーダー等の現場管理者から指示を必ず受けている、これは必ず受けなきゃいけないわけですけれども、必ず受けているという人は三六・二%しかいないんですね。しかも、このアンケートの取り方には、管理者というものの範囲が作業リーダーも含むとなっていますから、これは請負で送られている人の中の一人を管理者としている可能性もあると。
さらに、また戻って恐縮なんですが、一ページのところの表 45 、業務請負についての現場責任者の有無というのを見ても、すべての現場に責任者がいるというのは四八・四%しかないです。その一方で、一部の現場に責任者を置いてその者が他の現場を巡回しているというのが四七・九%。
ですから、この請負の基準定める告示に、私は、明らかに違反する事例、実態がここにはっきり出ていると思うんですね。こういう調査をされたんですから、この後正すことをされたというふうに思うんですが、そこはいかがでしょうか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
今回の調査は、その実情を正確に、なるべく実態をきちんとといいますか、正確に把握しようということで行ったということでございまして、そういった意味で、違反だということを自分で自覚して違反だという答えをいただけないということになるとますます何のために調査をしたのか分からないということもありまして、そういった意味で、郵送無記名のアンケート調査ということで行いました。
そのために、今のお話のように、かなり実態に迫っているというか、というふうな調査結果になっているんだろうと思いますし、それからもう一つは、労働者のアンケート調査などにつきましては、恐らく労働者の思い込みでこういった回答になっているというケースもあるのかなとも思いますけれども、ただ、いずれにしても、違反があることは間違いないわけであります。
ただ、この調査ということで申し上げますと、そういうことで調査をしたということでありまして、この調査を使って指導監督をするというふうなことは基本的にはいろいろ問題があるんじゃないかというふうに思っていますけれども、ただ明らかに悪質であるというものがあれば、これはやはり必要な指導をしていく必要があるだろうと、こう思っています。
〔委員長退席、理事中島眞人君着席〕
- 小池晃君
そこで、今までの議論を踏まえて大臣にお伺いしたいんです。
衆議院の委員会で大臣は、偽装請負がかなりあるのではないかと危惧しているというふうにおっしゃっているんです。今まで非常にあいまいだったと、今まで派遣業を禁止してきたこともあって代替措置と取られかねないというような答弁されているんですね。
このお話をちょっと議事録で拝見して、私、受け取ったのは、大臣は偽装請負というのはこれは製造業に派遣を解禁してこなかったからこういうふうに起こったんだというふうにおっしゃりたいわけでしょうか。
- 国務大臣(坂口力君)
それは、そうではありません。派遣業がないから偽装請負が大きくなっているというふうに私は思っているわけではございません。しかし、現実の問題として偽装請負というのがかなり企業の中に大きくなっている事実は否定し難いというふうに思っている次第でございます。
これはやはり何とか正していかないといけないし、ただ請負業というのは一つのいわゆる法律に基づいて企業の中に入っているというケースではないものですから、ここはどちらかといえば野放しになっているといった嫌いがございます。
ですから、一方におきまして、今回、派遣業として明確にしたわけでありますから、この請負業の方につきましても、これは厚生労働省の範疇なのか経済産業省の範疇なのかちょっと分かりにくいところでございますが、ただし働く人たちの働き方の問題になれば、これは厚生労働省の所管であることだけは間違いがないわけでありまして、きちんとここを見ていかないといけない。今後の問題、どういうふうにここを見ていくかということを考えないといけないというふうに思っている次第でございます。
- 小池晃君
私は、前回の当委員会、参議院の当委員会でも、この法案、議論をしたときの附帯決議を見ても、こう言っているんです、偽装請負の解消に向けて、区分の具体化、明確化を図るとともに、周知徹底、厳正な指導監督を行うことと。しかし、これやってきたんだろうかと、果たして。私は、この実態調査の結果を見ても、偽装請負に対する厳正、そして適正な周知徹底、指導監督が行われたとは到底思えないんですよ。
大臣は基準を明確化する必要があるというふうにおっしゃるんだけれども、私は、今なすべきことというのは行政がやっぱり果たすべき役割果たすことではないかと。やっぱり、脱法的な行為がほとんど野放しになってきたということにあるわけですから、私は、参議院の附帯決議にもあったように、徹底した指導監督をこの偽装請負の問題についてもやっていく、そして現状を改める。
それをすることなしに、言ってみれば、物の製造に派遣を解禁すれば、偽装請負が合法化されていくということになっていくということになるわけですから、私は、現状をまず正すことこそ必要なんであって、この脱法的に行われている偽装請負を合法化してしまうようなやり方でもっともっと拡大していくような道を歩んでいくということは、私は正しくないやり方だというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
これまでも、請負を行っている事業所に対する指導監督はやっているわけでありまして、例えば、平成十三年度で申し上げますと、七百六十七件指導監督して、そのうち、違法がある、適正でないということで百十一件に対して文書指導を行っているということであります。
そういった意味で、派遣を製造業に適用するということで直ちにすべての問題が解決するということでは当然ないわけでありまして、適正な請負として行われているのかどうか、適正な派遣として行われているのかどうか、その辺り、きちんと点検をして、それ以外のものについては厳しく指導監督をしていくということであります。
- 小池晃君
適正な派遣なのかどうか、適正な請負なのかどうか、それぞれ指導監督をするんだとおっしゃる。
しかし、請負について監督官庁、あるんですか。厚生労働省は、請負について明確な監督権限があるのはどこなのかと聞いても、これはどこだという答え、出ないわけですよ、ないわけです。それは、そうですね。
- 政府参考人(戸苅利和君)
おっしゃるように、恐らくそれぞれの請負の業態ごとに所管官庁はあるんだろうと思います。
ただ、我々としては、行われている、請負と称して行われているものが、派遣法に照らしてこれは適正な派遣として行われていないと、あるいは、職安法に照らして労働者供給事業に当たるということであれば、これは職業安定法なり労働者派遣法に基づいてきちんとしたあるいは厳正な指導を行うということは十分可能であります。
- 小池晃君
派遣なら派遣、請負なら請負、それぞれきちっとその監督をしていく、強化していくという仕組みがあるのであれば、また話は別なんですが、そういう仕組みがあるわけではないわけです。
そういう中で、大臣が言っているように、今までのようにあいまいだったところをはっきりさせなきゃいけないというふうになると、これはやっぱり偽装派遣だったものがどんどんどんどん合法化されていくということになりかねないと。
〔理事中島眞人君退席、委員長着席〕
そして、物の製造への派遣を禁止してきた理由はなぜかというと、これは八百万製造業に派遣を入れると、常用代替、一気に進むからという、そういう理由だったわけです。それなのに、常用代替はさせないんだと先ほどもおっしゃる一方で、物の製造には派遣を解禁していく。
私は、こういうやり方は筋が通らないというふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。
- 国務大臣(坂口力君)
請負、この請負業の問題は、派遣業から見れば、それは全部その派遣業の中で処理できる話ではありません。したがって、派遣業の中から見て派遣業に違反していないかどうかということを見る以外にないわけでありますから、この請負業につきましてのいわゆる問題というのは、もう少し別途考えないといけないというふうに私は思っております。
したがって、そこは限界があるということを申し上げているわけでございます。
- 小池晃君
ちょっともう少し、この問題、続けて聞いていきたいと思うんですが、ちょっと実態で議論したいんです。
これ、二年前になるんですが、光学精密機械メーカーの有名なニコン、この熊谷製作所に入っている請負業者、ネクスターという会社ですが、ここで働いていた、当時二十三歳の上段勇士さんという男性が過労自殺されました。で、お母さんがニコンとネクスター相手に裁判を起こしています。
この上段さんのお母さんが大臣に手紙を送ったというふうに聞いております。大臣、受け取っておられますでしょうか。読まれた感想などあれば、お聞かせ願いたいと思います。
- 国務大臣(坂口力君)
かなり前のお話だと思いますので正確には覚えておりませんけれども、お手紙をちょうだいをしたということは記憶いたしております。
- 小池晃君
この男性、上段さんは、請負会社で働いていたんですね。このニコンの熊谷製作所というのは半導体の製造機器を作っておりまして、その検査のためにクリーンルームで仕事をしていたんです。請負会社の担当者はクリーンルームには入らなかったそうですから、これは指示、全くないわけです。明らかなんですね。日常の仕事はすべてニコンの社員から指示をされていたそうであります。昼夜二交代勤務で十一時間拘束、ほぼ毎日残業、十五日間の連続勤務。労働時間は、死亡前には月七十時間だと。体調が悪くてもニコンの医療施設には入れない、利用できない。で、体重が一年四か月で十三キロ減ったそうです。たまりかねて退職を申し出たが、引き延ばされて、そしてついに、自ら命を絶ったということなんです。
この裁判は、過労自殺認定と、それから請負と発注者を相手にして使用者責任問うています。で、ニコン側は、これは請負契約だから責任は請負だと言っている。請負会社の方は何と言っているかというと、事実上の派遣だったというふうに裁判では証言しているんです。いずれも責任取らない、押し付け合うという、そういう状況になっている。
確かに、業務遂行方法に対する指示、あるいは労働時間やその他の管理を行うべき監督者、これは現場にいない。作業も機械ももちろんニコンのものを使っているわけです。これは正に送っているのは人だけです。クリーンルームですからもう間違いないわけです。
厚労省にお聞きしたいんですが、こういうケース、もうこれは間違いなく偽装請負ということになるんじゃないでしょうか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
御質問のネクスターとそれからニコンの熊谷製作所の関係でありますが、これは私どももその投書というか手紙をいただきましたので調べました。調べたところ、これは派遣法違反でございます。
- 小池晃君
こういう実態なんです。お母さんのお手紙には法律改正してほしいというふうに訴えておられる。これ各党党首にもみんな送ったそうです。手紙にはこうあります。社員と全く同じ労働をし、さらに、上乗せ労働を拒否できず、命、人権の保障なく、低賃金。自分の親戚や息子を送りたいとはとても思えない環境です。派遣を労働の底辺にしく発想をやめてください、やめさせてください。夢も技術も育ちません。こんな進み方では日本の未来には何も残りません。気付いたところから軌道修正してください。こういう訴えであります。
現在、この法案の成立を見越してでしょうか、本当に既に報道でも、製造業に次々と参入するという、そういう報道がされているんですね、派遣業者が。そういう動きがもう本当に大きく広がりつつある。国会の附帯決議にも明記された厳正な指導監督がなされていない。そして、先ほど厚労省もお認めになったように、もう正に偽装請負、こんな事件が起こっている。お母さんがこう言っているんです。法があるから安心できるのではない、法に実効性を見いだしたときに初めて安心できるのです。そのとおりだと思うんですね。
私は、これ、派遣でも請負でも本当にこんな問題が起こっている、それぞれのその規制をやはり徹底的に強化していく、そのことこそ今求められているのであって、今、物の製造に派遣解禁したらば、こういうような事例が本当にどんどんどんどん日本じゅうで起きていくということになっていくんじゃないか、そのことを大変深く危惧するわけであります。
大臣、いかがお考えですか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
このネクスターのことで申し上げますと、これは正直言って、雇用主がどっちだったのかということが、ニコンなのかあるいはネクスターなのかということがはっきりしないわけであります。そういった意味で、偽装請負の問題点というのは、一体雇用主がだれなのか、指揮命令するのがだれなのか、この辺りがあいまいになっているということでありまして、我々としては、むしろ派遣法を導入することによって、雇用主は派遣元であるということがはっきりいたしますし、それから労働条件の管理等は一体どこがやるのかという辺りもきちんと整理されるということで、それぞれの責任が明確になる、いろんな争いがあったときにどっちが責任があるということはより明確になるんだろうと、こういうふうに思っております。
- 小池晃君
ニコンはこんなこともやっているんです。こうした事実上の派遣、偽装請負ですね、これ工場内に三百人入れているんです。その一方で、IC 集積回路製造のラインで働いていた正社員、こういった人たちを余剰人員だといって出向させているんですよ。出向はどういう形で出向しているかというと、関連会社というんですが、全く直接の資本関係もない業務請負会社なんですよ。アウトソーシング会社に出向させているんです。そして、四十五歳以上の三十人既に出向対象としてなっていまして、既に十二名がニコンの工場から出されて請負会社の請負先、これマヨネーズの製造工場だそうです、そこで製造ラインから落っこった何か廃棄物なんかを集めるという仕事をやらされているというんですね。これ、現場の方は本当に、労働者があきらめて自ら辞めますと言うのを待っているようなやり方だと、本当に人権無視だというふうに怒りの声が上がっているんです。
ですから、派遣を入れているという問題じゃなくて、派遣を入れることによって更に、余剰人員だと称して中高年リストラを、派遣会社に、外に出すというやり方を取っているんですね。私、本当にあきれてしまうわけです。
大臣は正社員を直接解雇して代替することは解雇法理からも起こらないというふうにおっしゃっているけれども、実際、現実に企業の現場ではこんなことまで起こっているんですね、今。正に請負とか派遣制度を使って常用労働者を追い出して、その上、追い出した労働者を請負で使うと。もう請負、派遣で常用労働者をどんどんどんどんもう置き換えているような、こういう実態があるわけですよ。こういう中で、この物の製造に今度正々堂々と派遣が入ってくるという仕組みを作ることが、こういうふうに本当に危険な状況に置かれている今の不安定労働者のこういう実態をますます悪化させるということに私はなるというふうにもう危惧を持たざるを得ないんですよ。
大臣、ちょっとここは大臣答えていただきたい。こんなことが果たして許されるのかということも併せて、大臣にお答え願いたいと思います。
- 国務大臣(坂口力君)
現在までの、今お話しになったようなそうしたケースが不法に行われていたということが非常に問題であります。
したがいまして、今回こういう改正をいたしますけれども、今後そうしたことが正々堂々と法の下に行われるように、法を犯して行われないようにどうしていくかということが大事でありまして、各都道府県、今度は労働局でしたね、労働局を中心にして、今までハローワークならハローワークでやっておりましたけれども、ハローワークだけで収まらない話がありますから、今度は労働局が中心になりまして、この派遣業の問題をそれぞれの都道府県でお受けをして、そして解決をしていく、お話を十分に伺っていく、あるいはまたその労働局自身も調査をやっていく、厳正にやっていくというふうにしたいというふうに思っております。
- 小池晃君
いや、大臣、今のおっしゃり方で私言いたいですが、今までは違法状態の下で労働者の権利侵害、人権侵害が進んでいた、それが合法的に堂々と行われるというだけになるじゃないですか、こんなことがあっていいんですかと。私は、物の製造に拡大するということは、本当にこういう危険な状態を日本じゅうの製造現場に広げるということになるんじゃないですかというふうに言っているわけです。
私の指摘にはちょっと正面から答えていただいていないんじゃないかと思うんですが、私はこういう中で物の製造に派遣を広げていくというのは本当に不安が募るばかりであります。
しかも、こういうそのことが先ほどもあったように進んでいった場合に、日本のものづくり、日本の将来の労働というのは一体どうなっていくのかという問題であります。ものづくりが継承されなくなるんじゃないか、青年の雇用がずたずたにされていくんじゃないかということです。
例えば、いろんなチラシがまかれているんですね。東北地方などでは、本当に高卒の人たちなどに対して、高校生たちに対してもうチラシが一杯配られているそうであります。中見ると本当にいいこと書いてあるんです。技術も身に付くからスキルアップもできるよというような形でスタッフ募集というようなチラシがまかれている。しかし、こうしたところで本当にまともな教育訓練というのは行われているんだろうか。
先ほどのアンケートへ戻ると、請負労働者の調査、四ページの表の三十三というのがありますが、ここでは、仕事に関する教育訓練を受けていないという人は二七・三%であります。その次のページの表三十五を見ると、教育訓練を受けたという人でも、受けた日数というのは大体一日から二日が四五・九%なんですね。だから、全体で見ると六割が未教育か一、二日の、一日か二日のごく簡単なものでもう配属をされています。
有給休暇あり、寮完備、こんなチラシもあるんですが、これもくせ者です。これ、休暇申込みは一週間前に届ける、ラインに迷惑が掛からないと判断したときとなっているんです。だから、事実上取れないわけですね。受注先との契約終了時に次の配属先が見付からないとなった場合は即刻解雇です。寮も引き取れと、引き払えと言い渡される。満足なお金持っていませんから、これは引っ越しのためのお金、あるいは当座の生活費をサラ金に頼らざるを得ない、こういう青年の声も聞かれています。こういう悪循環がどんどんどんどん広がっているんですよ。これは実は先ほど自分の息子さん亡くされた上段さんが今全国の実態を調べていらっしゃるお話聞いたものであります。このアンケートの結果と私は合致すると思うんです。
大臣、お伺いしたいのは、こういう派遣労働、まともな教育訓練も行われないままこういう労働がどんどんどんどん青年の間で拡大していくということになれば、私はこれは日本の将来にとって決していいことだとは思えない。こうした実態を果たして放置してよいのか。大臣、いかがお考えですか。ここは大臣、答えてください。
- 政府参考人(戸苅利和君)
ネクスターの件で申し上げれば、先ほどのお話のとおり、一体どっちが雇用主なのかということを、お互いにおれは雇用主じゃないということを争っているということだろうと思います。そういった意味で、先ほど大臣申し上げたのは、派遣法になればこれは派遣元たるネクスターが雇用主であるということは紛れもない事実になるわけでありまして、そういった意味でそれは逃れられないということになり、労働者が守られるということだと思います。
それから、求人広告については、これは職安法で、とにかく虚偽の広告をした場合は、これは職安法違反になりますので、これも厳しく対応していくということだろうと思います。
それから、教育訓練につきましても、これは派遣法が適用ということになれば、やはり派遣元の責務として教育訓練を一生懸命やる、それから派遣先にも協力をお願いして教育訓練をやるようにと、こういうことになりますので、少なくとも現状の偽装請負よりは労働者にとってのメリットは大きくなるというふうに思います。
- 国務大臣(坂口力君)
法律を守らない話は、これはもう別な話でありまして、いわゆる働く人たちの選択肢を広げるという問題とそれからでき上がった法律を守らないのとは、それはもう別の話でありますから、これはもう法律は守る、ちゃんと守るようにさせなければいけませんし、厳しく取り締まらなければいけないというふうに思っております。
- 小池晃君
私は日本の将来のことを聞いたんですけれどもね、このままでいいのかと。そのことについての大臣の基本的な見解をお聞きしたかったんですが、ちょっと時間がないので。
ちょっと確認したいんですけれども、先ほどからお話しありましたように、請負業に対する監督権限ないのは問題だと、これは考えるということでありました。私、これはひとつしっかり考えていただきたいのと、併せて、派遣労働者の権利を守るために職安行政の中に労働基準監督官と同様に司法権限を持つようなセクションを作って、やはり申告に基づいて厳正、的確に違法な事業者は摘発するんだというような仕組みもやっぱり検討していく必要があるんじゃないか。これだけ派遣労働広がっている中で、やはりきちっとこういったものを摘発をし、労働者を保護していく、やはり政府の中に監督権限を持つ部署を作っていくということと、やはりこういうセクションを設けていく、これは検討すべきではないかと思いますが、これはいかがですか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
派遣法の指導監督については、先ほど大臣も申し上げましたように、ハローワークに分掌しております今の指導監督を都道府県労働局に集中して専門的に対応していこうと、こういう考え方でやっておるところであります。今後、物の製造業ということになると、安全衛生法上の問題、それから基準法上の問題等々も出てくる可能性もあるわけで、そういったものについては当然労働基準監督官が厳正に対処するということになると思います。
そういった意味で、我々としては労働基準監督行政との連携、これを強固にしていくと。それから、労働局に集中するということで適切に対応してまいりたいと、こう考えています。
- 小池晃君
そのほか、ちょっと幾つか確認しておきたいことがあるので進めますが、紹介予定派遣です。これも問題大きいんです。乱用防止の対策に絞って聞きたい。
これは仮に予定期間経過後に紹介しない、派遣しない、そういう場合ですね。私は、その理由を労働者に派遣元や派遣先が明示する、これは義務付けるということは当然やっていただきたいと思うんですが、この点いかがですか。
そして、局長は衆議院でこう言っているんです。何で採用しないのか不採用の理由を明示するのも一つの方向だというふうに言っているんですね、明示するんだと。しかし、その一方で、文書でというところまで強要できるかというような言い方しているんです。私ね、そして、それで何らかの歯止め措置は必要だと答えているんですよ。非常に何か揺れ動いているお気持ちが伝わってくるような答弁なんですが、口頭だけで歯止めになるのかと。
やっぱり私、局長、何らかの歯止めが必要だと言うんだったら、これはあくまで文書で明示する、これは最低限あるべきじゃないですか。いかがですか。
- 政府参考人(戸苅利和君)
衆議院でも申し上げたとおりでありまして、どういった措置が適切なのかということについては、これは審議会にもちょっとお諮りしてやろうというふうに思います。ただ、歯止めは必要だろうと、これは明確に思っていますので、歯止めのやり方については、今の御意見も伺いましたので、いずれにしても審議会でちょっと御検討いただこうかと、こう思っています。
- 小池晃君
私は、歯止めというならちゃんと文書で残すというのは、これは当然のことだと、最低限のことだというふうに思いますので、そこは強調したいと思います。受け止めたという言葉なんで、次の問題。
職業紹介の兼業禁止規定の問題です。
これは、貸金業との兼業禁止規定削除するということは、これは断じて認められないと私は思うんです。これは要するに、サラ金に行って返せないとなったら、裏口行ってください、そうしたら、裏口に職業紹介所があるという話でしょう。こんなことがあっていいのかと。これは事実上の強制労働になりかねないんですよね。
これは、これまでもずっと衆議院でも議論されてきて、大変問題があるという議論されています。局長も懸念を表明されています。許可制にするとか規制をしていくというふうに言っているんですが、しかし、よく聞くと、今のところとか、それから当面はとかという、そういう答弁なんですよ。これでは駄目です。私は、これね、原則的な問題だと思うんです。
今、金融庁に聞きますと、日本の貸金事業者の数、二万六千二百八十一です。契約数は大手四社だけで一千万口です。貸出しは総額四十三兆八千億円です。もうすさまじい規模で広がっているわけですね。このような業界に職業紹介の兼業を原則認めるというのはもう余りにも危険なことだというふうに言わざるを得ない。これは悪質業者排除しますと言っても、だって業界最大手の武富士が摘発されたりしているわけですからね。一体、悪質じゃない業者がいるのかという世界であります。
それから、契約者本人には職業紹介をしないことを検討すると言っているけれども、これはサラ金というのは本人だけじゃなくて保証人とか家族とか、もう全部取立てやるわけでしょう。本人避けてもこれは歯止めにならないと思うんです。
大臣ね、これはやはり条文の削除をするべきでなくて、やはりこれだけ懸念の強い貸金業のような職業は、私は引き続き禁止するというのは当然だと。貸金業などを残したこれは部分削除にとどめておくべきだというふうに思うんですが、これはいかがですか。
- 副大臣(鴨下一郎君)
要するに、個人及び企業にして、直接に又は仲介者を通じて飲食店、旅館等経営のごとき業務により利害を得る者は職業紹介に従事することを禁止されるべしと、こういう ILO の勧告を踏まえて今までそうだったわけでありますけれども、これが昨年の ILO 総会において撤回されたと。こういうような趣旨を受けて、今回はその規定を削除すると、こういうようなことでありますけれども、先生おっしゃるように、確かに言ってみれば、例えば貸金業、殊にそういうような債務者に対して様々な縛りのある中でこういうことが行われるというようなことについては、もう誠に懸念されるのはそのとおりだと思います。
そういう意味で、この当該事業を適正に遂行していくと、こういうようなことを担保するために、一つは、不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのない者であることといった要件を極めて厳格に置きまして、不適格な事業者の参入については、これらの要件や罰則に加えて、それぞれの事業を規制する法律における許可又は登録を適正に受けていることを職業紹介事業の許可基準として加えることと、こういうようなことを含めて、実際には、貸金業だけではなくて様々な、いわゆるやみ金等も含めて厳格にしていかなければいけないということは、おっしゃるとおりであります。
- 小池晃君
そんな ILO がやったからと言うのであれば、ILO 一号条約も含めて全部 ILO が決めたことをちゃんとやるべきですよ。都合のいいことだけ ILO がやったからやりますと言って、そして我が国にとって都合が悪いことは、それはそのままにしておくんだから、こういう言い訳は余りにも御都合主義じゃないですか。私は、これは納得できないです。
法律から指針や運用の規定で対応するというのはやっぱり危険過ぎます。だって、今まで労働行政というのはみんなそうなんです。そういうふうに落としておいて、そして、そのときはしませんと言って、三年か四年たったらしますと言ってやってきたわけじゃないですか。私は、だから、当面はなんと言われたって、これは安心とてもできないんですよ。それだけ、懸念まで表明しているわけでしょう、局長も、副大臣まで懸念があると。懸念があるならやめたらいいじゃないですか。こんなことは最低限私は外すべきだと。
大臣、いかがですか。これだけみんなが懸念を表明するようなことをわざわざやる必要ないじゃないですか。これははっきり削除すべきだというふうに大臣、思います。大臣、もう副大臣、さっき聞いたからいいですよ。大臣、答えてください。
- 副大臣(鴨下一郎君)
確かに様々な問題あることは間違いないわけでありますけれども、その貸金業と職業紹介事業を兼業する場合においてこれは具体的にどういうふうに規制していくと、こういうようなことでありますけれども、原則として自己の債務者を求職者としないというようなことを許可条件にして、これに違反があった場合には職業安定法の第三十二条の九に基づいて許可の取消しや事業停止命令の発動を含めて、これはもう極めて厳正に対処をすると、こういうようなことを検討して進めてまいりたいと、かようなことでございます。
- 委員長(金田勝年君)
もう時間が来ておりますから。
- 小池晃君
懸念があるなら兼業禁止の削除はこれはやるべきでないということです。以上です。