- 小池晃君
年金の物価スライド凍結解除問題をお聞きします。
これは年金だけじゃないわけです、高齢者の社会負担、社会保障の負担増。医療も介護もでありますから、これは全体像を見る必要があるんじゃないかと。
そこで、まず最初に医療ですけれども、高齢者医療、昨年十月から定率負担になっています。この負担改正による患者負担増が幾らになるのか、二〇〇三年度の老人保険の加入者は何人なのか、数字だけで結構ですからお答え願いたいと思います。
- 政府参考人(真野章君)
高齢者の一部負担の見直しに伴います十五年度の影響でございますが、昨年の制度改正時の財政試算によりますと、患者負担の影響額は約二千億程度。これは試算をお示ししたときにも申し上げましたが、十五年から十九年度の単年度平均でございまして、十五年度の影響はこれよりも少ないと見込んでおりますが約二千億。十五年度予算案におきます老人保険加入者数は約千五百四十六万人でございます。
- 小池晃君
今の数字を基に計算すると、一人当たりの年間負担増はおよそ一万二千九百円であります。
さらに、介護保険についてお聞きしたいんですが、二〇〇三年度予算で介護保険の第一号保険料の前年との差額は幾らか、また直近の加入者は何人か、これも数字だけで恐縮ですがお答え願いたいと思います。
- 政府参考人(中村秀一君)
お尋ねの点でございますが、予算上の介護給付金の見込みのうち、今、保険料ということで、六十五歳以上の方の保険料で充当される部分につきまして、平成十四年度と十五年度で比較した場合の差額は九百六十億円。それから、直近の六十五歳以上の方の人数は二千三百七十万人でございます。
- 小池晃君
これは、一人当たり年間負担増がおよそ四千円となります。
さらに、年金でありますが、年金給付〇・九%引き下げた場合、満年度ベースの給付費の削減額と、それから影響を受ける年金受給者の数をお示し願いたいと思います。
- 政府参考人(吉武民樹君)
予算上は十か月ということで計上いたしておりますが、満年度ベースで申し上げますと約三千七百億円でございます。それから、年金受給者の方々の数でございますが、これは、国民年金、厚生年金、共済年金全体を含めまして、報酬比例と基礎年金、二つを持っておられる方を一人とカウントをいたしますと約二千九百五十万人の方でございます。
- 小池晃君
すると、一人当たりの年間給付減額は一万二千五百円ということになります。
高齢者医療の負担増、介護保険料の引上げ、年金給付の減額、これ大体合計すると年間一人当たり二万九千五百円、約三万円ということになるわけです。
大臣にお伺いしたいんですが、来年は年金物価スライド凍結解除だけではないわけですね。介護も年金も負担増になってくると。これ、三つ重なってくるという影響をどうお考えか。私は、年金生活者にとってはこれは耐え難い打撃となっていくんじゃないかと思うんですが、こうした影響をどのように、三つ重なってくることをどのように考えておられるのか、お答え願いたい。大臣に、これ三つですからやっぱり大臣じゃないと答えられませんよ。これ、三つの影響ですから、大臣、答えてください。大臣、お願いします。(「その前に介護保険料について」と呼ぶ者あり)いやいや、結構です。大臣に。
- 政府参考人(中村秀一君)
今、先生は、介護保険料の引上げは四千円というお話でございましたけれども、介護保険料、現行の保険料は二千九百十一円となっております。
先ほどの十五年度の第一号被保険者の保険料相当分は八千六百四十八億円。先ほど申し上げました人数、二千三百七十万人で割りますと月額三千四十円になりますので、そういった意味での、二千九百十一円に対する月額の増加というのは百二十九円ということでございます。
つまり、四千円というのは、(「年間ですよ」と呼ぶ者あり)年間、つまり、現行の保険料と、十五、十六、十七年度、三年間の保険料を市町村が決めるわけでございますので、先生言った年間の保険料負担が四千円という数字はちょっと、推計上もちょっと問題があると。そこだけはちょっと御注意願いたいと思います。
- 小池晃君
いずれにしても、それでも二千円ぐらいですから、違いはね。トータルとしては三万円近くになるわけですよ。そのことを、大臣ね、──いや、結構ですよ、それは、結構です。大臣、医療や年金や介護、三つ合わさって負担増になってくることをどう検討しているのかと聞いているんです。大臣にお答え願います。
- 国務大臣(坂口力君)
年金、医療、介護、それぞれ厳しい状況になってきている。それは、一つは少子高齢化が進んだということがあり、景気の動向も影響しているというふうに思っております。
社会保障というのは、厳しいときであればあるほどお互いに助け合わなければならない、そういう筋合いのものだというふうに理解をしているわけでありまして、厳しいことは重々承知をいたしておりますが、こういう厳しいときであればこそ必要な人には必要なわけでありまして、必要だということになると、それは負担もしてもらわなければならないということでありますから、こういう厳しい状況のときであればこそお互いに支え合ってもらいたい、そう思っている次第でございます。
- 小池晃君
私が聞いているのはそういうことじゃないんです。
これが三つ同時に重なってくるということについて、厚生労働省としてはどのようにこれは検討されたのかと。そのことは検討したんですか、していないんですかということを聞いているんです。これ、いかがですか。
- 国務大臣(坂口力君)
当然、いろいろの側面から社会保障全体としての問題として議論もしているわけでございます。
いずれにいたしましても、年金であれ医療であれ、そして介護であれ、全体としてやはりどうなっていくかということを考えながらやっているわけでございますけれども、それぞれ、年金にいたしましても医療にいたしましても介護にいたしましても、やはりそれぞれの制度を成り立たせていくためには、これはそれなりのやはり財源が必要だということになっているわけであります。
それぞれの制度が成り立たなくてもいいというんだったら、それはどうでもなるわけでありますけれども、やはり今日だけではなく将来も併せて成り立っていくということを前提にしながら、そして、これはお互いに、みんなに支え合っていただこうと、こういうことで決めているわけであります。
- 小池晃君
一般論でお逃げになりましたけれども、高齢者にこの三つの負担が重なるということについてまともに検討していないということだと思うんですよ。
これは、しかも、今回の措置は年金だけじゃなくて各種手当にも連動していくということだと。本当に、不況の中で一番苦しい、生活が苦しい人たちに負担が押し付けられているということで、本当にこれは許されないことだと思うんですが。
さらに、その年金生活者の実態を見ると、二〇〇一年度、国民年金、老齢年金で、年金月額四万円未満の方が五百二十万人もいらっしゃる。最低限度の生活保障すらないのが今の年金制度なんですよ。
先ほども議論ありました。これはやはり、低年金の現状を、こうした本当に月額四万円未満というような現状を放置したまま一律に物価下落分のカットを行うと、手取り分減らすということは許されるのか。その点について、先ほど年金局長はお答えありましたけれども、大臣としてはどうですか、こういったことは許されると思いますか。
- 国務大臣(坂口力君)
年金の制度、これ、経過がありますから、今、四万円程度というのは、中には三万円程度しか手取りのない方もおありになるでしょう。それは、その年金制度の中で掛金をしていただいた期間が短かったということになるんだというふうに思います。皆さんが、年金だけで生活をしておみえになる方もあれば、年金以外のものも含めて生活をしておみえになる方もあるわけであります。
そうした中で、この今回の〇・九%、この物価の低下分を、見合う分をお願いをするということになりましたのは、それはそのとおりでございますけれども、これは先ほども申しましたとおり、現在の物価に対しましては中立的なものでございます。別に、物価が上がっている、物価が全然変わりがないのに、これ、年金を下げているというわけでは決してありません。物価が下がって、それだけ物価が安くなっているわけでありますから、後追いで〇・九%下げさせていただいているということでありまして、物価の問題に対しましては中立だと思っております。
- 小池晃君
そうじゃないから、だって景気に深刻な打撃を与えるから三年間やってこなかったんでしょう。説明、支離滅裂ですよ。もっと下がったのに、今度は物価の下落に合わせて年金削るなんて全く支離滅裂だと思います。
しかも、大変な無駄遣いがあるわけですよ。積立金、これは百七十兆円、六年分であります。これは、イギリスは二か月、ドイツ、フランスは一か月分の積立てだけでやっている。こういったことについて見直す必要があるんじゃないかという議論があるわけです。しかも、これは株式運用で損失出ている。十二月までで二兆千五百三十億円だそうです。
年金局長、お伺いしたいんですが、これ、累積が三兆百億円ですね、二〇〇一年度末までで。このままでは、やはり今年度末での累積損失というのは、私は五兆円を超える可能性というのは否定できないんじゃないかと思うんですが、その辺、どう見ていらっしゃいますか。
- 政府参考人(吉武民樹君)
非常に、市場運用部門では非常に厳しい状況にございまして、今、先生おっしゃいましたように、年金福祉事業団からの累積が三兆円ございます。それから、十二月末の状況で申し上げますと、市場運用分で二兆一千億を超える損失になっています。
ただ、年金財政全体で申し上げますと、資金運用部へ預託している部分が、あと平成二十年度までにすべて返還をされますが、預託金の利子収入がございまして、平成十三年度で申し上げますと、それを加えた状態で申し上げますと、いわゆる収益率は一・九%でございまして、そういう意味でトータルとしての年金財政への非常に厳しい影響というのは、今のところ出ていないという状態です。
ただ、市場運用部門が非常に厳しいということについては、私どももこれからよくその運用の体制だとかそういうものについて十分検討していく必要があるだろうというふうに考えております。
- 小池晃君
その市場運用部門について五兆円を超える損失になっていく可能性、否定できませんよね。それはそうだと思うんです。
これは、積立金自体が、私は本当にこんなものが必要なのか。これは、やはりこれだけの経済状況の下で計画的に取り崩すということを真剣に考えるべきだと思いますが、せめて赤字を作るようなことだけはすべきでないと。
しかし、昨日発表された運用計画では、更に一兆七千億円、国内株に振り向けると。これだけ損失拡大しているときに、何でその株式投資拡大するのかと。これ、保険料というのは企業年金じゃないんですから強制徴収であります。だとすれば、名目元本を減らさないというのはこれ原則だと。だとすれば、私は、株式運用など、これ、やめるべきだと思いますが、いかがですか。
- 国務大臣(坂口力君)
この積立金の運用につきましては、今いろいろ議論を重ねているところでございまして、新しい受皿の問題、そしてそこでどういう運用をしていくかということをもう一度検討し直すということで今やっているところでございます。
ただし、今までの考え方が私は間違っていたとは考えておりません。やはり、積立金の運用というのは、一つのところに集中をして、そこに運用をしていきますと、その部分が非常に悪化をいたしましたときに大きな損失を出すわけでありますから、分散をして運用をするということは大変大事なことだというふうに思っております。
ですから、先ほども局長が申しましたとおり、総トータルでいえば決して赤字を出しているわけではなくて、いろいろの運用、それは合計をすればそれはプラスでありますから、株式会社のところだけを見ればそこはマイナスであった。しかし、これは、株式の問題というのはただ単に一時的な断面で見るということはできない。株式というのは、今後いろいろ変わっていくわけでありますから、そのいっときいっときの断面だけで判断をするというものではないというふうに思っております。
- 小池晃君
断面だけと、もう質問しませんが、断面だけとおっしゃるけれども、基金の前身である年福の時代から二十年近く運用しても国債金利すら稼げなかったのが実態であり、長期運用すればもうかるといった理屈は通用しないと。これ、雑誌、「金融ビジネス」の五月号で財務省財務総合政策研究所の主任研究官がこう言っている。
もう事実が証明しているじゃないですか。今までさんざん穴を開けてきたのに、これから先は大丈夫ですと、長期運用すれば大丈夫ですと。だれが国民、そんなこと納得するんですか。しかも、二十年たってそのときになって駄目でしたと、こんなことで責任取れるんですか。
私は国民にリスクだけを押し付ける、負担増だけ押し付ける、そして長期運用の結果やっぱりうまくいきませんでした、二十年後にだれも責任取らない、こんなことはきっぱりやめるべきだということを申し上げて、私、質問を終わります。
- 国務大臣(坂口力君)
それは、財務省が担当いたしておる運用部資金に対する金利を払っていたからその部分が少なくなったということであります。その払った分は、年金の今度はこれはプラス面として金利として付いてくるわけでありますから、別にその分野で減りましても、それは減っていないということであります。
そこを十分に考えていただかないと、その運用部のところに返した分を差し引いて皆さんは計算をしておみえになりますけれども、それは実際問題はそうではないわけであります。だから、全体でそのマイナスというのは、それは計算方法に誤りがある。指摘だけしておきたいと思います。