- 小池晃君
厚労省の年金改革案が発表されました。保険料がこれでどれだけ増えていくのか、それから年金の給付がどれだけ減っていくのか、国民は大変な不安を今抱いております。
最初に、厚生労働大臣に、この厚生労働省案で負担と給付がどうなるのか、その点に絞って分かりやすく説明をしていただきたいと思います。
- 国務大臣(坂口力君)
負担と給付のお話は、厚生労働省がお出ししました案は先ほどから申し上げておりますように二〇二二年を目指しまして段階的に引き上げていく、そして上限を二〇%、すなわち企業と個人負担とを合わせて二〇%、だから個人一〇%、企業一〇%という上限にしたい、それ以下に抑えたい、こういうふうに思っているわけでございまして、それに対します今度は給付の方でございますが、給付の方につきましては、経済の動向、少子化の動向等によって変化はございますけれども、それを最低でも五〇%を下回らない、五〇%以上にしたい、下限を五〇%にしたいというふうに決めたものでございます。
〔委員長退席、理事尾辻秀久君着席〕
- 小池晃君
結局、今のお話だと保険料を毎年こう上げていって二〇二二年度には今の一・五倍になっていくわけですね。それから、給付の方はこれは経済状態が悪くなったり平均寿命が延びたりあるいは現役労働者の数が減っていったりするとこれは国会の審議なく自動的に減っていく仕組みになっていくと。最低五割保障するとおっしゃるけれども、今基本的にモデル世帯では六割保障しているわけですから、これは二割減るということになる。そうなれば二か月半の年金が消えるということになってしまうわけであります。しかも、五割保障するんだという話が先ほどから出ていますが、これはあくまで厚生労働省が設定したモデルケースの場合だけなんですね。平均じゃないんです。
そのモデルケースというのは何かというと、夫が四十年間フルタイムで働き、サラリーマンで、妻が四十年間専業主婦。これが今ではこんな人少数派なんですよ。そもそも、四十年加入という人自体が厚労省の発表している資料でも二三%しか今ないわけです。
今増えているのは、正に共働き、あるいは出産時に一時離職をするというケース、あるいは単身者。こういうケースはどうなるんですか。こういうケースも五割保障するんですか。この辺について御説明願います。
- 国務大臣(坂口力君)
今お話のございましたとおり、これは基準ケースによるものでございまして、夫だけが平均賃金で働く標準的な年金の世帯におきましては、現在は五九・四%でございますが、これを給付水準調整後には五四・七%になりますと、こういうことでございます。
〔理事尾辻秀久君退席、委員長着席〕
それから、他の世帯類型につきましてもこれと同程度に所得代替率を調整をいたしておりまして、例えば四十年間共働きの世帯におきましては、現在四六・七%でございますが、調整後には四三・〇%になります。それから、男子単身の場合には、現在四二・七%でありますものが調整後には三九・三%になります。女子単身の場合には、現在五三・三%でありますものが調整後には四九・一%になります。
こういうことでございまして、これはパーセントだけではなくて、いわゆる額とパーセントは別でございまして、女性の場合にパーセントが高くなりますのは女子の平均賃金が低いからでございます。男子の、男子単身の場合に低くなりますのは、男子の場合のこれは所得が高いからでございまして、そういう差が出てくるということでございまして、これはパーセントでございますから、今、先ほど申しましたように、実質の賃金額とは別の話でございます。
- 小池晃君
しかも、今のも経済状況が良くなったケース、少子化が一定でとどまったケース。もっと悪くなるケースもあると。
いずれもこれ、五割保障、五割保障って先ほどから話が出ているけれども、五割保障じゃないわけですよ。五割保障するのは本当に限られたケースだけだと。しかも、女性の単身者の厚生年金というのは、これは四十年間フルタイムで働き続けても十三万円にしかならない。実際には女性受給者の平均は十万六千二百円なんだと。
さらに、国民年金もっと深刻ですよ。これは国民年金でいうと、受給者全体の平均で月額五万一千七百円であります。さらに、自営業者はもっと大変だと。自営業者は平均月額四万五千四百円にすぎない。
厚労省の提案、確認なんですが、こうした極めて低額の年金まで含めて、どれも同じように一律に給付は削減していくという提案ですね。
- 国務大臣(坂口力君)
先ほど申し上げました数字は、一律に一五%引いた数字でございます。
- 小池晃君
そういうことなんですよ、今回の提案は。
総理に私、お聞きしたいんですが、この高齢者世帯の六割が公的年金や恩給以外の収入がないわけです。しかも、九月に日銀が発表した調査では、貯金がない世帯というのがついに二割超えたわけですね。年金だけでは日常生活費程度も賄うのが難しい、こういう世帯が五割超えているんです。こうした中で、正に四万あるいは三万円、こういう年金の方、いっぱいいらっしゃる。こうした年金を一割も二割も削られたら生きていけない、私、本当に切実な声だと思うんです。
総理はこういう声にどうこたえられるのか。
- 内閣総理大臣(小泉純一郎君)
年金についてはいろいろ議論があるところでありますが、要するに、これから三十年、四十年先、今のままでは破綻してしまうと。高齢者はどんどん増えてまいります。そして出生率も、戦後の一時期に比べると半分以下になってきた。今のまま維持しろとなると、これはもう年金もたないというのは御承知だと思います。今の給付水準を維持しろと、今の負担水準を維持しろとなると、税金をかなり投入しないと今の年金制度はもちません。そういうことから改革が必要だということで、今給付と負担というのはどうあるべきか、給付と負担だけでは年金もたないから、税金をあとどれだけ投入しようかということの今議論をしているわけであります。
確かに、今、小池議員指摘されたように、年金というのは、給付はできるだけ維持したいと、保険料負担はできるだけ軽くしてくれという御意見が大きいわけでありますので、そういう調整をこれからどうやっていこうかということが私は極めて重要な問題であって、今後そういう点につきましても、給付と負担と、そしてこの税金投入をどの程度しようかということについて、この国会の場でもよく議論をしていかなきゃならない問題だと思います。
- 小池晃君
給付の、負担のことだというふうにいつもおっしゃるんですが、しかし年金制度の枠内だけで保険料と給付ということをやっていけば、結局、先ほど坂口大臣おっしゃったように、小さい保険料だったら小さい年金、大きい保険料だったら大きい年金、こういう議論にしかならないんですよ。そこで、やはりできるだけ小さい保険料でできるだけ大きい年金制度にするにはどうしたらいいのかと。そのためにそこに税金をどうやって投入していくのか。
それから、先ほど総理おっしゃいましたよ、税金の投入を考える必要があるんだと、あるいは積立金をどう使っていくのかと。そういったことについて、知恵、全く今知恵が出ていないじゃないですか。そして、年金制度の枠内だけでできるだけ保険料を小さくしようという人は年金給付も削れという、保険料多くていい、年金も給付も多くていい、こういう議論になっているわけです。
こうではなくて、やっぱり今本当に必要なのは、私ども提案していますが、当面の改革としてやはり歳出の見直しで来年度から法律どおり基礎年金への国庫負担二分の一に引き上げる。それから、将来的には基礎年金部分を発展させて、私どもは加入者全員に一定額の年金が支給される最低保障年金制度が必要だと思っています。これを作っていく。その上にそれぞれが現役時代に納めた掛金が上乗せされていくという給付、こういう制度を作っていく。そして年金制度の支え手を増やしていくんだと、この政策に本腰を入れて取り組んでいくんだと、この方向に抜本的に転換することが必要だというふうに思っております。
その点で、今日は積立金の問題議論したいんですが、厚生年金の代行部分も含む積立金、それから国民年金の積立金、二〇〇一年現在で幾らでしょう。
- 政府参考人(吉武民樹君)
御説明申し上げます。
厚生年金の、厚生年金基金の代行部分、これ実際には厚生年金基金が保有をいたしておりますが、ここは政府が支給する部分を言わば代行いたしておりますので財政計算上はここも入れてございます。それを考慮いたしますと、厚生年金で百七十五・四兆円、それから国民年金につきましては十一・七兆円、これ時価ベースでございます。
- 小池晃君
公的年金というのはこれだけじゃないわけです。二〇〇一年度末で国家公務員共済年金の積立金は八兆六千五百億円あります。それから地方公務員共済年金が三十六兆九千三百億円あります。それから私立学校教職員共済が三兆八百億円あります。ですから、こうした公的年金全体の積立金を合計すると、これ実に二百三十六兆円という巨額なものになるわけですね。
我々日本共産党は、これ八〇年代からこの巨額の年金積立金を計画的に取り崩すべきだ、給付に充てるべきだと。厚労省案で今回初めて積立金を使うということを触れていますが、これどのように使うというふうに提案されているのか、これも簡潔に御説明願います。
- 国務大臣(坂口力君)
共産党さんから引き下げるという話は全然今まで聞いたことなかったですね。まあ今初めてお聞きするわけでございますが。
我々は、百四十数兆円ございますこの年金、これからまだ一時的には増えてまいりますけれども、しかし二〇四〇年ぐらいを越えてまいりますと、ここはだんだんと減らしていかざるを得ない。すなわち、これから百年後に一年間ぐらいの積立金を残すぐらいな程度にこれを使わせていただきたいということを申し上げているわけでありまして、これからの少子高齢社会の中にありまして、次の世代を担っていただく皆さん方の年金として、これはどうしても大事だというふうに思っております。とりわけ、これから団塊の世代が年金に入ってくる、そしてそのお子さん方の年金に大体二〇三〇年ぐらいから入ってくるわけでございますので、そうしたところに対する手当てをしていかなければならないというふうに思っております。
- 小池晃君
厚労省案は積立金を使用するということを初めて言ったわけです。日本共産党は八〇年代からずっとこの問題は主張していますし、国会でも何度も質問しています。余りにも厚生労働大臣として不見識だ、不勉強だということを申し上げておきたいと思います。
今の話では、積立金を使うというけれども、結局九十五年先ですよね。約百年先に現在六年分積立てがあるのを一年分まで取り崩すという気の遠くなるような計画なわけです。しかも、今御説明あったように、厚労省の試算でも積立金、これからも増えていくわけですよ、今の厚労省の試算でも。二〇五〇年に三百六十二兆円に、厚生年金だけでそうなるという計画ですよ。そこから減り始めるという計画なんです。これから五十年間は今までどおり積立金は増やしていくという計画ですから、とてもこれ積立金を活用するなんて言えた代物じゃないと私は思います。
重大なのは、積立金が有効に活用されているんだったらともかく、これが株式投資に回されている。累積損失で六兆七百十七億円、巨額の損失を作っているわけですよね。こんなことをいつまでも続けていいのか。これ、株式運用なんというのは直ちにやめて、これを計画的に給付に充てるべきじゃないですか。厚生労働大臣にまずお聞きします。
- 国務大臣(坂口力君)
この積立金はどういうふうに運用していったらいいのか、いろいろの御議論をいただいているところでございます。
結論から言いますと、一つのところに集約せずに、様々な分野でこれを活用をして、活用といいますか、分野でこれを運用をするということが一番マイナスを少なくするというのが現在の結論でございます。
全部国債を買えという人もありますけれども、しかしそれが安定か、安心かといえば、それはそれでまた安定でなくなってしまうわけでありまして、株式、国債等々、様々な分野でこれを運用をしていただいて、一部のところが下がったときには一部のところが上がると、こうしたことでこれはやっていく以外にないわけでございます。
確かに昨年三兆円ほどマイナスになりましたけれども、今年になりましてから、四月以降、もう二兆七千億、そのぐらい挽回してきておるわけでありまして、今年一杯掛かれば去年の分は挽回できるというふうに思っておりますし、これは株ですから、その時々、短期間で見れば上がったり下がったりいたしますけれども、もう少し長い目で見ていってどうかということだと思います。
- 小池晃君
今までもそう説明してきたんですよ、リスク分散だと。株式に全部使うわけじゃない、二五%を国内株式に回してきた。
その結果どうだったのかと。長い目で見て、これは年金資金運用基金の前身である年金福祉事業団の時代からこれは自主運用をやってきたわけですよ、二十年近く。財投で運用するよりも利益が上がるんだというふうに大見え切って自主運用をして、結果、二十年近く運用したけれども国債金利すら稼げてないわけでしょう。それなのに、長期運用すれば大丈夫なんというのはだれが信用するんですか。もう実際結論出ているじゃないですか。六兆円の損失も作っているんですよ。
こういう事態であるにもかかわらず、長期にやればもうかるなんというのは、本当に私は国民をばかにした議論だと。しかも、これは上がり下がりがありますって、無責任過ぎますよ。そんなリスクに国民の大切な年金の資金を充てていいのかと、そんなリスクにさらしていいのかということが問われているんじゃないですか。
しかもですね、これ、市場運用をしているのは現時点では積立金の一部です。約三十兆円であります。この運用で六兆円損失出しているわけです。累積損失六兆円です。それなのに、これ、二〇〇八年までには積立金全額を自主運用するという、こういうことになっているわけですね。三十兆円の運用で六兆円の損失出しているんですよ。これを、代行部分除けば約百五十兆円近い資金になります。これを全部市場運用したら一体どれだけ損失出す。
総理、私お聞きしたいんですが、この年金積立金というのは極めて大事な国民の財産だと私は思うんです。こういう財産を株式投資のリスクにさらしていいのか。アメリカはやってないんです、これ。株式投資にさらすのはリスクが大きいと、グリーンスパンさんが猛反対したんです。日本でもこういう問題がこれから拡大していくのか、それともきっぱり改めるのか、問われているんじゃないですか。お答え願います。総理にお答え願います。
- 内閣総理大臣(小泉純一郎君)
この問題もかなり前から議論されておりまして、確かに国債しか運用するなという意見もあります。そこで、専門家の皆さんに議論してもらっているんですね。ところが、やはり国債だけでは運用益が出ないと。やはり全部ということでないんだから、どの程度、運用益が出るように専門家のいろいろな意見を聞いて努力をしていかなきゃならないという意見の方が現在のところ強いんですね。
問題は、もちろん株に全部投資なんてとんでもありません。どの程度株式に運用した方がいいか、この問題だと思っているんです。多額の資金を運用をせずに年金の給付を上げたり保険料負担を下げたりできないと。この多額の資金を、運用によっては利益が上がるからこういう運用を考えようということで出てきた一つの知恵であります。それを全部しないで、もうある程度運用益出る出ないは考えないで、一番安全なところだけやろうということになりますと運用益はそんなに出ない。この点をどう考えるかなんです。
だから、私は、これは自分で、私自身の判断だけでは手に負えない問題です。だからこそ、いろんな専門家の意見、専門家でも株で損したり得したりするんですから、これ実に難しい問題なんです。こういうことでありますから、どの程度、どの程度、多少リスクがあっても運用益を考えるような投資を認めるべきかどうかという問題だと思っています。
私はそういう点に考えて、全部安全なもの以外実際運用しなきゃならないという意見と、ある程度、一部はそういう運用益の出る可能性がある、同時にリスクもあるという点にどの程度配分していくかという問題でありますので、この点は今後ともよく検討していかなきゃならない問題だと思っております。
- 小池晃君
専門家が議論したとおっしゃいましたので、そこを議論したいと思います。
この積立金の運用で利益を得ているのは金融機関なんですね。積立金の運用で赤字になっても黒字になっても運用を委託されている金融機関というのは手数料で多額の収益を得るわけです。昨年度の年金資金の運用手数料は幾らですか。
- 政府参考人(吉武民樹君)
平成十四年度に年金資金運用基金が民間金融機関、運用受託機関に対して支払いました手数料は百七十六億円でございまして、平成十三年度の二百九十三億円から百十七億円の削減を行っております。
- 小池晃君
パネルに示しましたが、外資系も含む金融機関が運用収入、運用手数料で百七十六億円も収益を上げているわけですよ。(図表掲示)
これ、しかも、全部年金の掛金から出ているわけです。これを全額自主運用ということになれば、この手数料だって私は一千億円近くに膨らむ可能性はあると、本当においしい話なわけですね。
しかも、専門家が検討しているというふうに先ほどおっしゃいました。これ見てください。(図表掲示)
年金資金運用基金、これ特殊法人ですが、預かっている役員というのは四名なんです。理事長は厚生労働次官天下りです。理事は厚労省からの天下りと、みずほフィナンシャルグループの理事と、それから監事は厚労省の天下りなんです。(発言する者多し)
- 委員長(片山虎之助君)
御静粛に。
- 小池晃君
それから、運用方法を研究している年金総合研究センターというのは、理事長も事務次官の天下り、専務理事も厚労省からの天下り。それで研究会って、みんな、これ、研究している人たちというのは金融機関の人たちじゃないですか。これ見てくださいよ。こういう人たちに検討させれば、それは株式投資をやってくださいという話になるじゃないですか。どうですか。
- 委員長(片山虎之助君)
時間ですよ、あなた。
- 国務大臣(坂口力君)
総理がおっしゃったのはそのメンバーじゃありません。もっと専門的なメンバーでいろいろ議論をしてもらっているということを言われたわけであります。
それでまた、先ほど赤字だというふうに言われましたけれども、これは財投等その他全体を含めれば黒字になっておるわけですから、それはいわゆる株式だけの話をされたということを付け加えておきたいと思います。
- 委員長(片山虎之助君)
もう時間だ。
以上で小池晃君の質疑は終了いたしました。
- 小池晃君
市場運用で、市場運用では赤字になっているんですよ。
- 委員長(片山虎之助君)
あなた、このまま駄目だよ。はい、おしまい。
- 小池晃君
そんなね、そんな言い逃れは許されないということを申し上げて、私の質問は終わります。(拍手)