私は、日本共産党を代表して、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案に反対の討論を行います。
反対する理由の第一は、本法案が、本来国が責任を負って直接実施すべき医薬品、医療機器の審査や安全対策を、国が自ら主体となって実施する必要のない業務として独立行政法人に行わせ、医薬品、医療機器の安全性を後退させるということであります。
当委員会での審議を通じて重大な問題点が次々と明らかになりました。医薬品の安全対策と開発振興を分離するという過去の薬害の教訓を投げ捨て、研究開発、安全対策と審査、被害者救済まで一つの組織で扱うこと、また、新法人がその資金を製薬企業に依存し、職員が製薬企業と機構の間を行き来することを制限する法律上の規定もないなど、これでは医薬品の安全対策を後退させるとの厳しい指摘が相次ぎました。大臣もこうした指摘を認め、整理し心配のない体制を作りたいと答弁せざるを得なかったのであります。
本日、こうした懸念事項について、研究開発振興業務は将来的に分離を検討する、製薬企業職員の新法人への就職と新法人の役職員の退職後の再就職を制限するなどの考えが大臣から示されましたが、本来、こうした問題点は法案提出前に十分検討されるべきでありました。多数の問題点を抱えながら法案が提出された根本には、法案の準備過程において、製薬企業には真っ先にその内容や職員の増員まで説明する一方、当事者である薬害被害者には正式に意見を聞くことをしなかった、この厚生労働省の間違った姿勢があることを指摘いたします。
反対する理由の第二は、本法案が、製薬企業の要求にこたえて、医薬品の研究開発の促進や審査の迅速化を図ることに重点を置く一方、新法人の名称から救済の文字が削られたことに現れているように、医薬品の副作用被害救済を本来業務として発足した組織を変質させるものであるということです。
法案審議の中で、抗がん剤イレッサの副作用である間質性肺炎が二百九十一例発生し、八十一人が死亡という重大な事実も明らかになりました。この抗がん剤は、迅速な審査のモデルとして約五か月で異例のスピード承認されたものです。厚生労働省が行った承認審査のどこに問題があったのか、このことの解明なしに新法人に審査や安全対策を任せては、再び深刻な薬害が発生するおそれがあると指摘せざるを得ません。
以上申し上げたように、本法案は、医薬品、医療機器の安全確保や副作用被害者救済をなおざりにし、製薬企業の利益を優先させるものであります。与党も厚労省も欠陥だらけと認めるような希代の悪法をそのまま可決することなど、国民と薬害被害者を裏切るものであり、断じて許されません。先ほど、野党が反対するのは筋違いなどという発言がありましたが、そのお言葉は丸ごとそのまま与党に返したいというふうに思います。欠陥だらけの法案は廃案にするのが当然であります。そのことを強調し、私の反対討論といたします。