- 小池晃君
日本共産党の小池晃です。
今、国民が期待する特殊法人改革というのは、まず第一に、無駄な部門は思い切って削減することだと。それから二番目には、国民生活にとって必要な事業というのは、これは公的な部門として一層拡充、改善を行うことだと思います。そして、大切なのは、直ちに天下りを禁止をして癒着構造にメスを入れることだと。これが我々が考えている三つの改革の方向である、これを今、政府が積極的に行うべきだというふうに考えております。
この点に照らして、今回の特殊法人改革というのが一体いかなるものか。今日は、特に独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案、私、この問題に絞ってお聞きをしたいというふうに思います。
まず最初に、この医薬品機構法がほかにない特徴がございます。これは、医薬品の審査、研究振興と副作用被害救済という、言ってみれば対極にあるような業務を一つの法人にまとめたことであります。ここに衆議院の審議でも意見も疑問も集中をしております。こういう疑問が出ているにもかかわらず、なぜこの三つをあえて統合するんだろうか。
政府参考人にまずお伺いしたいんですが、この業務を統合することにもしメリットがあるんだとすればそれは一体何なのか。この業務を統合する目的を説明していただきたい。
- 政府参考人(小島比登志君)
まず、今御指摘の三つの事業のうち、研究振興業務については現在の医薬品機構においても実施しているものでございまして、新法人においては新たに審査・安全対策の業務について充実強化を図ろうとするものでございます。
まず、審査業務につきましては、従来、医薬品機構、それから医療機器審査センター、それから医療機器センターの三機関で実施されていた業務を統合するとともに、質の高い審査官の増員等を行うことを通じ、より有効でより安全な医薬品、医療機器をより早く国民にお届けするということが可能になるというふうに考えております。
また、安全対策業務については、膨大な副作用情報の収集、情報提供に関しまして、更に情報処理の確実性の向上を図ることが求められておりまして、新法人におきまして体制の強化をすることによりまして、副作用情報等の詳細な分析調査、国における綿密な安全対策の企画立案、また迅速かつ適切な行政措置、こういうものが可能になり、安全対策が一層向上することになるというふうに考えております。
- 小池晃君
いや、今の説明では全く、統合したことによって利点という説明には全くなっていませんね。それぞれ別の機関でやったって、別に力を入れてやればそれで済む話じゃないですか。なぜこの業務を統合するのかという説明は全くなっていないと。しかも、衆議院の審議でも、業務は区分するから心配しないでくださいということを大臣も盛んにおっしゃっている。
しかし、このやり方というのは、正にかつての厚生省の主張とも私、正反対だと思うんです。例えば、薬害エイズ事件を受けた九六年に厚生省内に医薬品による健康被害の再発防止対策に関するプロジェクトチームというのができました。ここが医薬品による健康被害の再発防止対策について報告書を出している。そこではこう言っているんですね。治験、承認審査、市販後の安全対策等を担当する組織については、医薬品による危害を防止する見地から一層厳格なものとする必要がある。このため、薬事行政組織については、こうした治験、承認審査、市販後の安全対策等と研究開発振興、生産・流通対策等とを、原則として組織的に区分して担当させる方向で具体的に検討することとすると。これを受けて、九七年七月に厚生省が組織改編して、薬務局を廃止をして医薬安全局を新設して、旧薬務局の経済課と研究開発振興課を健康政策局にわざわざ移したわけであります。当時の厚生省の正式な薬事行政組織の再編という文書でも、基本的な考え方について、医薬品等に係る安全対策と振興対策の組織的分離を図るということが記されております。それにもかかわらず、今回、審査と研究ても、その中に業務部があり、研究振興部があり、あるいは調査指導部があり、あるいは治験指導部があり、あるいは信頼性調査部がありと、こういうことになっておりまして、これは現在の特殊法人の中におきましても振興の部分と規制の部分は両方ともこれ入っているわけであります。
だから、今回、独立行政法人にいたしますけれども、ここは今回は、まだ正式の名前は付いておりませんけれども、これは審査部あるいは安全部、これは規制の方になるわけでございますが、それから研究振興部というのがこれは振興部門でできてくるということで、両方が今度入ると。しかし、同じようにこれは入るわけですが、同じように入りますけれども、その行政上の核になるところは厚生省がちゃんと握りまして、そしてそこは明確に区分をして管理監督をいたしますよと、こういうことでございます。
- 小池晃君
それは仕組みは分かっているんです。しかし、今までの厚生省の行政方針というのは、そういったリスク管理の上で振興部門と安全対策は分けようという方向で、行政、そういう方向でやってきたにもかかわらず今回一緒にするというのは、どう考えたって支離滅裂というか、全く逆行しているとしか言いようがないじゃないかということについて私はお伺いしているんです。
その点についてはどうなんですか。
- 国務大臣(坂口力君)
ですから、行政上の問題はちゃんと分けていますと。それで、現場の問題につきましては現在の特殊法人も一緒になっているわけでありますし、今回のこの独法におきましても一緒になっておりますけれども、しかしそこを管理監督しますところはちゃんとしておりますということを私は強調しておるわけで、そこは間違いなくやりますから心配しないでくださいということを衆議院でもお答えをしたとおりでございます。
- 小池晃君
説得力ないですよ。だったらば、その機構の方だって分けるべきなんですよ。それをするのが国民にとってみたってはっきり分かることなんです。
しかも、独立行政法人通則法の第二条では、これは国が自ら主体となって直接実施する必要がないものを行うとしている。しかし、そもそも新薬の審査とか副作用被害救済というのは、私は国が直接実施すべき業務そのものだというふうに思うんです。
例えば、これまでのサリドマイド、スモン、薬害エイズ、薬害ヤコブ病、確認書では何と言っているか。例えば、東京 HIV 訴訟の確認書ではこうあるんですね。厚生大臣は、安全かつ有効な医薬品を国民に供給し、医薬品の副作用や不良医薬品から国民の生命、健康を守るべき重大な責務があることを改めて深く認識し、薬事法上医薬品の安全性確保のため厚生大臣に付与された各種権限を十分活用して、本件のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることがないよう、最善、最大の努力を重ねることを改めて確約すると言っているわけです。それなのに、医薬品の承認、副作用救済という業務を国が直接実施する必要がないとする独法に移す。
私は、これは参考人にまずお伺いしますが、今までの薬害事件の確認書に照らしても、ここで約束した国の責任を私は放棄するものにほかならないと思いますが、いかがですか。
- 政府参考人(小島比登志君)
医薬品が最終的に国民に提供される段階では、承認という行為とそれから審査、調査と、こういう三段階の行為が薬事法に規定されているわけでございまして、従来は国立医薬品食品衛生研究所の審査センターで審査を、それから医薬品機構で調査を、厚生大臣すなわち医薬局が承認ということになっていたわけでございまして、この最終段階である承認につきましては厚生大臣が責任を持って行うということでありますので、この覚書の決意というものには反しないというふうに考えております。
- 小池晃君
今までと変わらないんだというふうに盛んにおっしゃるので、ちょっと私、具体的にちょっと確認をさせていただきたいんです。
例えば、承認審査は後に置いて、医薬品の安全対策ということを見た場合に、どこまでを独立行政法人が担当して、そしてどこは厚労省が担当するのか。これ業務の流れに沿って簡潔に御説明願いたいと思います。
- 政府参考人(小島比登志君)
まず、医薬品の安全対策のやり方についてでございますが、医薬品副作用情報の受理、収集、整理、それから調査というものは新医薬品総合機構において行います。
〔委員長退席、理事中島眞人君着席〕
それは、その機構で行いました受理をいたしました情報でありますとか、整理の結果、調査の結果はリアルタイムで本省の方に連絡をされまして、その連絡を基に、報告を基に、本省では、例えば薬事法におきます行政処分あるいは緊急安全情報の発出の指示というものについて検討をするというふうなシステムになっているわけでございます。
- 小池晃君
要するに、情報集めは独法がやる、その整理もやる、分析もやる、調査もやると。結局、行政措置は厚労省がやりますよという話であって、私は、これでは厚労省が責任を持っているということにならないですよ。
だって、安全対策で一番大切なのは何か。これは、副作用情報をきちっと集める、情報を集めてその情報の中にどれほど重要なものが潜んでいるのかということを見抜く、そしてそれを分析して、直ちに医療現場に注意を喚起したりあるいは回収させたりする。あなた方は最後の、例えば回収命令とかあるいは安全性情報は厚生省が出すけれども、そこまでは全部独法がやる。私は、これでは一番大切な業務が厚労省ではなくて独法になるということになると。行政措置の部分を厚労省に残すのは、これは当然のことなんです。行政措置の結論を出すまでに至る業務こそが重要なんです。
振り返ってみれば、今までの薬害事件だって、そういうところで大切な情報を見逃したりしたことによって被害が拡大したりしたわけじゃないですか。そういうときに、副作用にかかわる情報の収集、整理、調査、こういった仕事こそ、私は、国の実際の業務として残さなければ、今までの薬害事件を繰り返すことになると。これが過去の薬害の反省に立った対応だというふうに考えますが、いかがですか。
- 政府参考人(小島比登志君)
先生の御指摘はごもっともでございまして、私どもも現在は、医薬局におきまして緊急かつ重大な案件について情報を収集し、それの対応をしているわけでございます。しかしながら、先ほども副大臣から御答弁申し上げましたように、年間三万件の副作用、医薬品の安全性情報が私どもの方に寄せられておりまして、これは年々増え続けているという状況でございます。
私どもが心配しておりますのは、死亡やあるいは重篤な障害にかかわるような副作用ということは一生懸命私どもにおいて対応しているわけでございますが、やはり、そうではない、あるいは疫学的な調査あるいは数理的な統計的な判断をもって副作用を把握しなきゃいけない、重大な障害だとか死亡に至らないまででも大変な副作用というものがあるんじゃないかということで、その点につきましてもきちっとそれを把握するということでございますが、何分にも膨大な業務量となるわけでございますので、これは機構の方でやっていただいて、私たちと、厚生労働省の方と連携を持って安全性対策を進めていくというふうに考えているわけでございます。
- 小池晃君
いや、ですから膨大な情報の中に、もう何万件という中にただ一つという情報が重要なんですよ。それを見付け出すというのが私は安全性対策の一番の基本というか、そこが真髄だと思うんですよ。
ところが、それは膨大な作業だからお任せしますと。ある程度セレクトされた情報の中でそれでやるというのでは、私は安全対策の責任を果たしたことにならないんではないかと申し上げている。とにかく膨大な情報の中で、だって、最初は薬害の情報なんというのは、だれもが注目しない、本当に見向きもされない、そういう事件から始まるわけでしょう。そういうときに、これが重要だというふうに気が付いて直ちに手を打っていく、これこそが薬害の安全性対策の一番の根本じゃないですか。そこのところを国がやらずして、一体私は責任を取ったことになるのかということを伺っているんです。
大臣、今までの議論をお聞きになったと思うんですが、大臣は衆議院でも、変わらない、責任を果たすんだとおっしゃいますけれども、私は、ここの一番大切な部分を国が手放すことのリスクは極めて大きいというふうに考えるんですが、大臣、いかがですか。
- 国務大臣(坂口力君)
ここは、厚生労働省の役人がやったから安全で、そして独法の役人がやったからこれは安全でないということは全くないと私は思います。いずれにいたしましても、ここの責任は厚生労働大臣が取るということになっているわけでありますから、それは明確であります。
したがいまして、その独法なら独法の方の専門家がやるか厚生労働省の専門家がやるかという話でありまして、そこの受付のところは、これは受付をちゃんとそこをやって、ある程度の私は人がいなきゃいけないと思うんですね。現在の段階では、残念ながら、公務員の定数に縛られまして厚生労働省の中では多くの人をそこに配備することはでき得ません。しかし、独立行政法人になればある程度のそこに人を配置をすることができるわけでありますし、私は、現在よりもこの受付のところは、明確にそこは今よりも進歩するというふうに思っております。
そして、何がそこに受け付けられたかということを受けて、それを今度は審査をする、健康被害とその因果関係を審査をする方は、これは厚生労働省の中で安全対策課がこれを行うわけであります。そこがこの健康との因果関係を明確にしていくということになるわけでありまして、そしてここが実質的には責任を持つということでありまして、最終的には厚生労働大臣が責任を持つということになるだろうというふうに私は思っております。
したがいまして、この独法に限らず独立行政法人というのはそれぞれにおやりをいただきますけれども、それぞれのところで独自におやりをいただきますが、しかし、責任はすべて厚生労働大臣が取らなければならないというシステムになっているということを申し上げているわけであります。
- 小池晃君
私は、別に国がやったら安全だなどとは一言も言っていないんです。国がやって数々の事件を起こしてきたわけですから、これは独法がやったら安全ではないというような議論をしているわけじゃないんです。国が責任を持つのはどこなのか、どこに責任を持つべきなのかという議論を私は申し上げている。
大臣は、そこで責任を取るというふうにおっしゃった。じゃ、これで第一次情報の中から見落としたとしても、そのときは厚生大臣の責任になるということになるわけですね、それは独立行政法人の責任ではなくて。一次情報の段階でもし独立行政法人の職員が見落としたとしても、それは厚生労働大臣の責任になるということなんですね。
- 国務大臣(坂口力君)
もちろん、独立行政法人も責任はありますし、そして厚生労働大臣も責任があるというふうに思っております。
実質的には安全対策課が中心になってそこはやっていかなければならない、しかし、その総指揮はやはり厚生労働大臣が取っているわけでありますから、最終的にはそういうことになる。
- 小池晃君
さらに、安全性の問題でなくて審査業務についてちょっとお聞きしたいんですが、これは審査業務については薬事・食品衛生審議会も加わってきますので、審査業務について独立行政法人とそれから薬事・食品衛生審議会と厚生労働省は一体どのような役割分担をするのか、これも業務の流れに沿って御説明を簡潔に願いたいと思います。
- 政府参考人(小島比登志君)
医薬品の承認審査業務でございますが、まず新機構におきまして、国の委託を受けて医薬品、医療用具の有効性、安全性に関する調査及び科学的評価に基づく審査を行いまして、その結果を国に通知するということでございます。次に、国は、新機構から受けた審査結果を考慮いたしまして薬事・食品衛生審議会の付議を行い、その意見を聞いて最終的な承認判断を行うというふうなことになろうかと思います。
- 小池晃君
結局、この審査業務についても、まず最初にメーカーなどから聞き取りやったり、いろいろ調査したりして報告書を作るまではこれは独立行政法人がやるということなわけですね、審査報告書を作るところまでは。それを審議会で審議をして、国の関与というのは最後の承認の言ってみれば手続だけということになるわけです。
結局、最初の議論で大臣は、基本的には変わらないんだ、行政が責任を持つんだと言いながら、実態としては、安全対策にしても審査業務にしても、一番大切な部分、一番初期の情報から分析をして一定の方向性を打ち出すというところまでは全部独法がやるわけです。私は、これでは、国が責任を果たすというのは、何か事件が起こったときに最後は責任を取るというふうには言うかもしれないけれども、私はこれは、こういう形というのは国が責任を取るということにはならないというふうに思います。
さらに、こういう形で見てくると、何でわざわざ今回医薬品機構を新たに作っていくのか、何のための医薬品機構なのかということが大変私は疑問なんですね。
〔理事中島眞人君退席、委員長着席〕
結局、こういう組織を作ることによって恩恵を一番受けるのはだれか。私は、メリットといえば製薬企業による承認審査の手続が簡素化するということぐらいなんじゃないかな、一番喜ぶのは製薬企業なんじゃないかということにならないかと。
そこで、ちょっと歴史をたどって見てみると、医薬品機構、これはどういう経過をたどって組織として流れてきているか、簡潔に御説明願いたいと思うんです。
- 政府参考人(小島比登志君)
医薬品機構でございますが、まず、昭和五十四年に医薬品副作用被害救済基金として設立をいたしまして、副作用被害救済業務を開始いたしました。その後、昭和六十二年には医薬品副作用被害救済・研究振興基金というふうに名称が変更になりまして、研究振興業務が加わったわけでございます。さらに、平成六年には、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構に名称が変わりました。審査の一環であります医薬品等の調査業務というものが開始をされたわけでございます。その後、平成九年にはさらに、医薬品等の調査業務の一部が追加されまして現在に至っているということでございます。
- 小池晃君
結局、副作用被害救済のための基金として発足しながら、研究振興事業、審査事業、そういったのがどんどんどんどん加わってきて大きく性格が変わってきているわけですね。これは人員体制を見ても明らかであります。
そこでお聞きしたいんですが、現在の医薬品機構の共通部分、総務部門なんかを除いた各部門の職員数、どうなっているでしょうか。
- 政府参考人(小島比登志君)
医薬品機構の職員数で部門ごとに申し上げますが、救済部門が十五名、研究振興部門が十一名、それから調査部門が百五名でございまして、うち安全性情報担当七名がこれに含まれています。
- 小池晃君
救済部門の十五名に対して、研究振興部門と調査部門が合計して百十六名、八倍近い人数なんですね。安全性情報担当をもしこの救済部門に加えたとしても、二十二名対百九名で五倍の職員数だと。
これは、九六年に我が党の岩佐恵美衆議院議員、当時、今参議院議員ですが、国会で、この職員数の変遷を見て組織が変質してきていると問題にしております。そのとき、九六年の段階でもどうだったかというと、救済部門十六名、それに対して研究振興部門十一名、調査部門が三十四名、だから合わせて救済部門の三倍だったんですね。だから、そのときに比べても、更に審査部門だけがもう百人を超えているわけです。どんどんどんどんそこだけが大きくなってきている。
さらに、今回の提起されている新法人になると、国立医薬品医療機器審査センターの職員七十一名が加わる。これ全部審査部門、調査部門に加わる。それから、医療機器センターから独法に移行する職員数が八名ですから、審査部門は約百九十名になるんですね。ということは、どういう組織ができ上がるかというと、役職員約二百人のうち、救済部門の職員というのはわずか十五名なんです。副作用被害救済で始まった組織であるにもかかわらず、その本来の、最初に歴史的に発足したときの職員というのはわずか十六分の一ということになる。それ以外の大部分は審査研究振興のための組織となる。そして名前が変わるわけです。
この名称変更、この間も議題になっていましたけれども、副作用被害救済の名前まで今回消えるわけです。私は、大臣は長い名前、長過ぎるから変えたんだとおっしゃるけれども、私は違うと思う。これは組織の実態が、副作用被害救済で始まった組織から研究開発、審査機能中心に変わってきている、それで結局名前まで変わった、変えようとしている、これが私、今回のやり方だと思う。正にひさしを貸して母屋を取られるという言葉がありますけれども、これほど当てはまるようなケースはないと思うんですね。
私、大臣にこれ伺いたいんですが、今回の措置で副作用被害救済から出発したこの医薬品機構の性格、これが大きく変わる、これは否定できないんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。
- 国務大臣(坂口力君)
私、いずれにいたしましても、副作用が出るということは、それは審査が不十分であったということにもなってくるわけでありますから、審査部門が、そこが徹底して審査部門を充実しなきゃならないというのは最も大事なことだと思うんですね。これからの医薬品の問題を考えましても、そこが貧弱でありましてはこれは何にもならないわけでありまして、審査部門こそやはりしっかりとやっていかなければならないというふうに思っております。そういう意味で、その審査部門の人数が増え、そこがしっかりしてくることは何ら私は恥ずべきことでもないし、私はそこは、それで私は十分ではないかというふうに思っております。
ただ、だからといって副作用部門を軽視をしてはならないという意味ならば、私は御指摘のとおりと私もそう思っておりまして、それはそのとおりというふうに思います。しかし、審査部門が多いからというので異論を唱えられるということになると、それはおかしいんではないかと。審査部門はどんどんと多くしていってこそそれは成り立つのではないか、私はそう思います。
- 小池晃君
私は審査部門を大きくすること自体など問題にしていないんです。それはそれで大切なんです。ただ、審査部門は十倍近くになっているんです。一方で、救済部門は十五人でずっと変わんないです、何十年も。これは余りにもバランス取れていないじゃないかと。当初は、もう救済部門だけで出発した組織なんですよ。それがほとんど乗っ取られているわけですよ。私は、これは正に組織の性格が変質しているんじゃないかというふうに申し上げているんです。
ところで、二〇〇四年に新法人発足した後は、各部門の人員はそれぞれどの程度増員を行う予定なんでしょうか。
- 政府参考人(小島比登志君)
まだ厳密に精査しているわけではございませんが、審査部門、安全対策部門、救済部門等が増加が見込まれまして、約五割程度の職員が必要ではないかというふうに考えているところでございます。
- 小池晃君
まだ詳細に決めていないとおっしゃいますけれども、違うんじゃないですか。
ここにあなた方出されている文書あるんですよ。これはメーカーにあなた方が出している説明文書であります。「医薬関係新独立行政法人の設置について」という文書ですね。これすべてのページに「取扱厳重注意」という印までわざわざ付いているわけですよ。これ見ますと、どう書いてあるか。非常に詳しいんです。
「現行三組織合計約二百四十人(平成十四年度)から、審査関連部門、市販後部門を中心に、当面、約三百七十人に体制強化(平成十七年度)。」、ここまで明確に打ち出しているじゃないですか。何が具体的に決めていないんですか。メーカーに対してはこんな増員計画まで説明していたというのに、国会に対しては今みたいないい加減な答弁で、私そんなの許されませんよ。どうなっているんですか。こんなことが許されると思っているんですか。
- 政府参考人(小島比登志君)
この数字につきましては、私どもの担当者あるいは相手方の業界等との勉強会等々でメモ的に出されたものだと思っていまして、それを省として決定したということはないということでございます。
- 小池晃君
でたらめな話している。どこがこれはメモですか。きちっとした文書で、ちゃんと目次まであって、ページが振ってあって、かなり克明に書いてあるんですよ。国会で出されていないような問題までいろいろ書かれている。
この文書は、独法の名称は仮称のままなんです。新独法の業務開始時期は、政府部内調整中と書いてあるんです。ということは、法案の政府部内での調整も終わっていない段階で、法案骨子も出ていない段階でメーカーに対してはこんな詳しい文書で丁寧に説明したということになるじゃないですか。これは業界に対してこれでいつ説明したんですか。
- 政府参考人(小島比登志君)
これにつきましては八月上旬だと承知しておりますが、前の国会で薬事法の改正がなされました。その改正におきまして生物由来製品の指定あるいはまたその安全対策というものが確立されたわけでございます。その薬事法の改正に基づきまして、従来から私どもで検討しておりました生物由来製品感染症の被害救済制度、これが、この基盤ができ上がったということで具体的な検討に入らなきゃいかぬというのもございましたし、また審査センターを統合するというのはさきの閣議決定で既に決まっていたわけでございます。国会関係の、国会における審議を御説明するという意味でメーカーといいますか、製薬企業の方に説明をしたということでございます。
- 小池晃君
薬事法審議の中身じゃないです。これは新法の中身が克明に書かれているんですよ。
これを政府部内調整中の段階でメーカーには説明した。一方で、薬害の被害者団体にはいつ説明したんですか。
- 政府参考人(小島比登志君)
法案の御説明は九月中旬以降、各被害者団体の方々に御説明をいたしております。
- 小池晃君
九月中旬以降だと。十月に薬被連、全国薬害被害者団体連絡協議会、十六日と二十九日に説明をされて、私、二十九日の説明にも同席しました。しかし、あの説明というのは何の資料も、厚労省側からは法案の文書だけは出されましたけれども、こんな丁寧な説明の文書なんか出なかったですよ。もう口頭で質問に答えるというだけなんだと。製薬企業に対しては法案の骨子も決まっていない段階で、政府内部調整中の段階でこんな克明な資料まで渡す、被害者団体には一か月遅れ、そしてまともに説明もしない。私はこの経過こそが今回のこの法律のねらい、はっきりと物語っているというふうに思うんです。
更にお聞きしますが、法案の第十九条の五項には、拠出金率の変更などの認可の申請に際して、あらかじめ、許可医薬品製造業者等の団体で許可医薬品製造業者等の意見を代表すると認められる者の意見を聴かなければならないという条項が新たに加わっております。これは一体なぜですか。
- 政府参考人(小島比登志君)
副作用被害救済制度は、医薬品製造業者等から事前に拠出金の負担を求め、健康被害の発生に備えるという一種の保険システムの仕組みを取っております。そのため、拠出金率の決定に当たっては、本制度の財政状況、救済、給付の今後の見通し等につきまして医薬品製造業者等の理解を得るとともに、財源の拠出者たる立場からの意見を聴取する機会を設けることが被害救済制度の円滑な運営のために必要であろうということでございまして、こうした観点から、現行の医薬品機構法においては、医薬品製造業者等の意見を代表する者を評議員会の構成員に加える旨を法定した組織があるわけでございますが、その評議員会は、今回の独立行政法人の全体の措置によりまして法定設置はしないということになったわけでございます。それに基づきまして、拠出金率の決定に限っては、これまでと同様、医薬品製造業者等から意見聴取の機会を確保するというふうな法律にしたものでございます。
- 小池晃君
今まで医薬品機構はそういう仕組みがあったから、今回法律にわざわざ一項設けているわけですね。業界団体の意見を聞くことということも加えたわけです。結局、製薬企業の意見聞かなければ副作用被害救済のための拠出金率を変更できないようにしている。被害者の意見まともに聞こうとしないで、こういう仕組みだけはしっかりと用意周到に作っていくと。
一方、メーカー側が何を要求しているかというと、日本製薬団体連合会は今年一月九日に大臣に要望書を提出しています。そこでは、承認審査の迅速化のため、本省、審査センター、医薬品機構の三元的審査体制の見直しも必要だとされておる。日本製薬工業協会も同様の見解を出しております。
私、この経過、今回の法律の中身見ると、やはり最大の目的というのはこういう製薬業界の要請にこたえて医薬品の審査をスピードを上げて行う、そのことを目的としているものだと。そのためには、これまで薬害事件などを通じて一定改善されてきたいろんな仕組み、安全対策、これが後退してもこれはやむを得ないんだ、業界の要求にこたえていくということであればやむを得ないんだということなんではないかというふうにしか思えない。
大臣、いかがですか、これはっきり答えていただきたい。そういう性格の法案だと私は思うんですが、いかがでしょうか。
- 国務大臣(坂口力君)
今回の法律のいろいろの目的はありますけれども、一つは治験が余りにも日本は遅過ぎるということもあることも事実でございます。これは余りにも遅いものですから、アメリカで出したらもう一年で許可になりますものが、日本におきましては五年も六年も掛かると。したがって、日本の研究者もアメリカに行って、そしてアメリカで治験の要求をする、あるいは向こうで審査をしてもらうということが今起こっているわけでありますから、そういう意味では、私は、今回その治験を早めるということは大事なことで、それがここの中にも盛り込まれているということは事実だというふうに思います。
ただ、治験は早くしなければなりませんけれども、それはそういうシステムを作って早くするということであって、それをただ早くするという意味でなおざりになれば、それはまた副作用等の問題に結び付くわけでありますから、そこは慎重にやはりやらないといけない。過去の過ちを繰り返してはならないということであります。
ただしかし、過去の過ちを繰り返してはならないわけでありますけれども、システムそのものが不十分であって、そして何回も何回もやり直しをさせるというような現在の日本の制度の在り方というのは改めなければならない、そのように思っております。
- 小池晃君
過去の過ちを繰り返さないということであれば、私は製薬企業の要求だけを取り入れる仕組みを作るのではなくて、やはりきちっと実際のこの仕組みの中でそれを行動で示すべきだというふうに思うんです。だとすれば、この新たな法人の中では、やはり当然、薬害の被害者を始め国民、利用者、こういった人たちの声がやはりきちっと反映して、それが運営に生かされていくという仕組みを作るのは私当然のことだと。それをしないでやるんであれば、これはもうメーカーのためのものだと言わざるを得ないと思うんですが。大臣、いかがですか、そういう仕組みをやはりこれ作るべきでないかと。これは当然のことだと思うんですけれども、お答え願いたいと思う。
- 国務大臣(坂口力君)
製薬会社だけのことを聞いてこの法律を作ったわけではありません。しかし、先ほど示されたように、そういう製薬会社に早くから情報を流すというのは、それはもってのほかで、そんなことは僕もすべきじゃないというふうに思っています。私のところへ来ないような書類を先へ製薬会社に流すようなことがもしもあったとすれば、それは今後そういうことは改めなきゃならないことで、絶対許せるべきことではないと私も思っております。
しかし、そういうことは改めていきますけれども、今後の在り方につきましては、ただ単に製薬会社だけではなくて、それは多くの皆さん方から納得のしていただけるような体制を作り上げていかなければならないわけでありますから、被害者の皆さん方、薬害被害者の皆さん方の御意見というのもそれは十分に聞いていかなければならないというふうに思っております。
- 小池晃君
私は、やはり今度の法案、今日はここで、これで終わりにしますが、引き続き次回もやらせていただきますけれども、審査、スピードを上げることが必要だと、これはおっしゃるとおりだと思います。しかし、中身が問われている。スピードを上げたことによって、今一体どういう事態が起こっているかということも次回議論をしたいと思いますし、私は今度の法案についていえば、薬害事件をきっかけにして一定改善された、進み始めた厚生労働省の安全対策、副作用対策のこの新たな芽を摘み取るものになる危険性が極めて強い、そしてやはり薬事行政を変質させていくという危険があるということを指摘したいと思います。
引き続き次回も議論させていただくということで、今日はこれで終わります。
ありがとうございました。