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154-参
2002年7月31日 本会議
「倉田議長不信任決議案にたいする賛成討論」速記録

 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました倉田寛之参議院議長不信任決議案に賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 倉田議長は、去る四月二十二日、井上議長辞任の後を受けて選任された際、「公正無私を旨として、議院の正常かつ円満な運営を図り、もって本院の権威の高揚と使命達成のため、全力を尽くす」と言明されました。しかしながら、七月二十五日の厚生労働委員会及び翌二十六日の本会議における健康保険法改悪の強行に際しての議長の議会運営は、自らの言明を大きく裏切るものであり、不信任は全く当然と言わなければなりません。

 厚生労働委員会における事態は、四会派の質疑時間を残したまま、与党の質問中に、与党からの打切り動議で採決なるものを強行するという重大な暴挙でした。

 強行の当日まで、厚生労働委員会では与野党により真摯な委員会の審議が重ねられていました。さらに、野党は、中央公聴会の開催を要求するなど、国民の負託にこたえて法案を徹底審議するための協議を重ねていました。当日の朝の理事会でも、十名の委員が質疑することを全党一致で合意していたのであります。

 ところが、自民党の中原委員の質問が終わるや否や、その後に公明党の草川委員、日本共産党の私小池、国会改革連絡会の西川委員、社会民主党・護憲連合の大脇委員の四名の質疑が予定されていたにもかかわらず、自民党の中島理事が突如提案した動議なるものを、阿部正俊厚生労働委員長は理事会にも諮らず唯々諾々と取り上げて強行し、四名の委員の質問権を乱暴に剥奪しました。理事会協議で与野党一致して合意していた議事日程を、問答無用とばかり委員会審議の途中で打ち切り、議員の最も重要な権能の一つである質問権を剥奪するなどというのは、議会制民主主義を根本から破壊するものと言うほかありません。

 しかも、直前まで与党からは採決を求める発言が一言もなかったにもかかわらず、打切り動議で質問権を封殺した上、採決を強行しました。こうした与党の卑劣な態度こそが、この法案がいかに反国民的なものであるかをはっきりと物語っているのであります。

 二十六日付け公明新聞によれば、公明党の木庭参議院国対委員長は、論点は整理され、出尽くしており、質問や答弁も同じ内容の繰り返しになっており、法案についての審議が尽くされていたから打切りはやむを得ないと述べていますが、それなら二十五日に草川氏は一体何を質問しようとしていたのでしょうか。木庭氏はさらに、参院厚生労働委員会での採決は、国会のルールに従った手順を踏んでおり、何ら瑕疵はありませんとも述べていますが、自分の党の委員の質問権が剥奪されていながら、どうして瑕疵がないなどと言えるのでしょうか。

 さらに、野党理事が一致して求めていた公聴会開催についても、与党はいまだ結論が出ていない、昼に再度協議して伝えると述べていたのに、一言もその回答もせずに採決を強行したことも重大であります。与党のやり方は正にだまし討ちと言うほかありません。

 その上、当日並行して行われていた議院運営委員会の理事会で、与党は、厚生労働委員会で協議中の公聴会が議決されれば議運の理事会に諮る必要があるとの理由で理事会を休憩にしておきながら、厚生労働委員会では公聴会開催のための努力を一切放棄して、健保法案の採決を強行しました。一方で、休憩にしていた議運理事会を再開し、医療改悪法案の本会議上程を提案し、議長はそのための本会議開会を公報掲載し、翌日には本会議開会のベルを押したのであります。こうした議長の行為は、議員の最も重要な権能の一つである質問権剥奪という民主主義破壊の最悪の暴挙を追認することにほかなりません。

 倉田議長は、何よりも議院の公正な運営をしていく責任を持っています。だれもが異常と認める厚生労働委員会のこの事態を正常化する努力を何らしなかったばかりか、それを一切問いただすこともなくそのまま追認した倉田氏に議長の資格など全くありません。議長不信任は至極当然と言うべきであります。

 さらに、本日の議長不信任案の討論に当たって、社会民主党・護憲連合から討論の申出があったにもかかわらず、自民党、公明党の反対で実現できませんでした。かつて委員会での質問権が剥奪された際には、院内交渉会派でなくても討論を行った先例があります。本会議での討論権の剥奪という二重の暴挙に対して我が党は厳重に抗議するものであります。

 そもそも健保法改悪案は、今日の深刻な経済状況の下で、一兆五千億円を超える国民負担増を押し付け、国民の健康も日本の経済もますます悪化させる最悪の法案です。参考人質疑では、与党推薦の参考人も含めて、六名中四名が明確な反対意見を述べられました。各種世論調査でも六割を超える国民が反対し、反対署名は二千七百万に及び、地方議会の決議、意見書も六百五十に上っています。このような法案を議会の民主的手続のじゅうりんを度重ねて強引に強行成立させるなど、絶対にあってはならないことであります。

 さらにこの間、審議をすればするほど法案の問題点が明らかになってまいりました。患者負担の引上げにより受診抑制が一層深刻となれば、病気の重症化によって医療費が高騰化し、かえって保険財政の悪化を招く、これこそ悪循環ではないか、こうした疑問に対する回答は今に至るまで全く示されていません。

 厚生労働省は、野党の要求にこたえて、今回の改悪による国民負担増は、患者負担で四千八百億、保険料負担は一兆三百億、合わせて一兆五千百億円に上るという試算を明らかにしました。さらに、来年は介護保険料の三年に一度の見直しに加えて、年金の物価スライド凍結解除、雇用保険料の引上げが予定されており、このままでは社会保障の負担増は優に三兆円を突破します。しかも、来年の労働者のボーナスは、総報酬制の導入により厚生年金と医療保険の保険料が大幅に引き上げられ、一人当たり平均で年間九万五千円も目減りします。アメリカで巨大企業の倒産が続き、日本経済にも深刻な影響が出ているときにこのような負担を押し付ければ、個人消費を更に低迷させ、景気を一層悪化させることは明らかではありませんか。

 健保財政悪化の最大の原因は、リストラや賃金の引下げによって保険料収入が減少していることにあります。それなのに保険料や患者負担を引き上げれば、個人消費を冷え込ませ、失業と倒産の連鎖を生み、健保財政を更に悪化させるだけではないか、この質問に対し、小泉総理は、具体的な根拠も示さずに、中長期的には国民経済全体にとってプラスになると呪文のように繰り返すだけで、まともに答えようともしませんでした。

 その上、審議の中で、宮路和明厚生労働副大臣が、帝京大学医学部の入試にかかわって後援者の依頼を受け、口利きをしていた事実が明らかになりました。宮路氏は、こうした口利きは往々にしてあると委員会で平然と答弁しています。帝京大グループに対して、厚生労働省は各局にまたがる許認可事項を有し、地方分を含め三十五億円を超える補助金を支出するなど大きな権限を持っています。その厚生労働省の副大臣が口利きを行い、その見返りとして行政がゆがめられていたとすれば、事は重大です。また、医学部の入学に当たって政治家の口利きや不正な寄附金が往々にしてまかり通 っているとすれば、日本の医療に深刻なゆがみが持ち込まれていることになり、徹底解明が求められます。ところが、野党が要求した宮路氏の参考人招致は与党の反対により実現していません。こうした問題にふたをしたまま多大な負担増を国民に押し付けることなど、断じて許されません。

 この法案のみならず、日本の医療制度をめぐる問題点を徹底的に解明するのは、国民から負託された国会の重大な責務であります。にもかかわらず、議員の質問までも多数の力で強引に打ち切るなどは、議会制民主主義を根本から覆すもので、言語道断であります。何があろうと決めたスケジュールどおりに採決するというのであれば、国会は一体何のためにあるのでしょうか。たとえ法案に賛成の立場であったとしても、議会制民主主義を守ろうとするならば、このような暴挙を認めてはならないはずであります。

 こういう事態の下、倉田議長の果たすべき役割は、先ほど指摘したとおり、質疑打切り動議や採決なるものの経過を本院の先例などに照らして調査し、その無効を指摘して、厚生労働委員会に差し戻すことでありました。それにもかかわらず、倉田議長は、厚生労働委員会の経過の調査すら行わず、正常に復する努力を一切しなかったのであります。それとも、倉田議長はこの暴挙を暴挙と認識することすらできなかったのでしょうか。そうであるなら、なおのこと議長の資格のないことは明瞭であります。

 以上、倉田議長が院の民主的運営に尽くさなければならない議長の任に全くふさわしくないことは明らかであり、不信任は当然であります。そのことを重ねて強調して、私の賛成討論を終わります。(拍手)

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