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○小池晃君 日本共産党の小池晃です。 最初にお尋ねしたいんですけれども、七十兆円の銀行支援の枠からこれまでに投入された公的資金、借入金残高や交付国債の償還累計額、預金保険機構のそれぞれの勘定ごとに一体幾らになるのか。冒頭、三月末の数字は御報告ありましたけれども、六月末の数字でお答え願いたいと思います。 ○参考人(松田昇君) お答えをいたします。 平成十四年の六月末時点における、まず借入金の残高の問題でございますが、一般勘定で三兆七千七百二十三億円でございます。特例業務勘定では三兆四千四百六十八億円でございます。金融再生勘定では五兆三千八百七十四億円でございます。金融機能早期健全化勘定では八兆二千二百四十七億円でございます。合計いたしまして、二十兆八千三百十二億円の借入金等の残高がございます。なお、この中には預保債としての三・六兆が含まれております。 また、国債の償還の問題でございますが、十三兆の枠にあります国債の中で、十四年の六月末時点までに償還を受けましたものは九兆四千三百九十三億円ということになります。 ○小池晃君 借入金残高が総計で二十兆八千三百十二億、それから交付国債の償還額が九兆四千三百九十三億、合計すると三十兆二千七百五億円ということで、ついに三十兆円を超えたということになるわけであります。 この三十兆円という数字は、これは意味のない数字ではありませんで、当初、三十兆円の公的資金枠というのがございました。私も、当時の宮澤大蔵大臣、四年前に議論させていただいたときに、宮澤大蔵大臣があれだけの額は使えないというふうに三十兆円のことをおっしゃっていた。そのことを質問したことがございます。とうとうその三十兆円を超えたと。大変な額だと思うんですね。 このうち、一般勘定と特例業務勘定が特に増えております。これは、正に相次ぐ金融機関の破綻処理の影響です。特例業務勘定のうち、交付国債償還した額は先ほどあったように九兆四千三百九十三億円と、これはもう既に返ってこないということになるわけですね。その上、例の瑕疵担保特約によって買い戻した債権のロスもある。それから、長銀、日債銀の処理にかかわって一時国有化中に発生したロスもある。譲渡の際に買い取った株式の含み損もある。更に返ってこない額、国民負担が増えていくということも避けられないと思います。 尾辻財務副大臣にここでちょっとお伺いしたいんですが、以前、国民福祉委員長をされていて、私も御一緒させていただきました。今、正に健保の法案の審議の真っ最中で私もありまして、三十兆円というと私には別の数字が思い浮かぶんですね。国民医療費の総額です。世界が全く違う話ではあるんですが、これだけのお金が銀行に公的資金としてつぎ込まれていると。効果があるならともかく、まるで栓を抜いたお風呂にお湯を入れているようなもので、全くどんどんどんどん減り続けている。不良債権は増え続けている。私は、もう率直に、国民の感情から見れば、これは税金の使い方が間違っているというふうな声が上がるのは当然だと思うんですね。 財務を預かる、財政を預かる立場として、こういう歯止めなき公的資金投入をいつまでも続けていていいのかということについて、率直な御所見をお伺いしたいというふうに思います。 ○副大臣(尾辻秀久君) 仰せのとおりに、先生もそもそもはお医者さんでいらっしゃいますけれども、国民医療費が三十兆円という額でございます。その額に匹敵する三十兆円という額でありますから、これは極めて大きな額でございます。そのお金の使い道、これは当然慎重であらなければなりません。ただ、今、先生の御指摘のように、これを無駄遣いと見るのかやむを得ざる出費と見るのか、これはいろいろ見方もあろうかと思いますので、今ここで私がそのいずれかであるとかというようなことを申し上げるのは控えさせていただきたいと思います。 ただ、大変巨大な額である、そして私たちは税金をお預かりしている立場として、それを極めて慎重に有効に使わなきゃならない、このことだけは肝に銘じなきゃいけないということは申し上げさせていただきたいと存じます。 ○小池晃君 これは正に、今、大臣おっしゃったように、国民の大切なお金、一円たりともこれを無駄にしてはならないということだと思うんですね。 財務省は、預金保険機構の適正な運営の確保について共管もしているわけでありまして、そういう観点で、預金保険機構が厳格にこの問題に取り組んでいくように常に対応されているというふうに思いますけれども、その点いかがですか。 ○副大臣(尾辻秀久君) 私どももそのように努力をいたしておるところでございます。 先生の御質問の趣旨が、この後また先生の御質問で更に明確になってくるだろうと思いますので、先にお答えするのがいかがかと思いますが、あえて言わせていただきますと、預金保険機構は業務方法書を作成しておりまして、これを内閣総理大臣及び財務大臣が認可しておるところでございます。そして、ここで資金援助の額につきましても最小限必要と認められる金額とする、このように定められておりますので、このことだけは私どももきっちりと見守らなきゃいけない、こういうふうに考えておるということを申し上げたいと存じます。 ○小池晃君 そこで、具体的な問題を伺っていきたいと思うんです。 この間、我が党は、多くの信用組合、信用金庫が強引な検査で破綻させられたという問題を取り上げてまいりました。今、それらの地域金融機関の破綻処理が最終段階を迎えて、預金保険機構の運営委員会のたびに、これは数多くの破綻した地域金融機関の資金援助額を決定しておりますね。 預金保険機構にお伺いしたいんですけれども、三月以降の運営委員会で議決した資金援助の件数と金額の合計、これは運営委員会ごとに、三月以降だけで結構ですが、御紹介願いたいと思います。 ○参考人(松田昇君) 本年三月一日以降は先生御指摘のとおりで破綻が多数発生し、かつ全額保護を全うしなきゃいけないというはざまの中で運営委員会を開いているわけでございますが、三月一日以降は五回運営委員会を開催いたしております。 そのうち四回が資金援助案件を含む案件でございまして、決定しました資金援助案件は四十九件、金銭贈与額は一兆六千五百七十八億円、それから不良資産のRCCに対する買取り額、これが五千八百九十四億円でございました。残り一回は、資金援助の決定をした後で精査をして減額をさせている案件でございまして、これが四件で、減額額は二十億円と、こういうことになっております。 ○小池晃君 今、合計全部をおっしゃったんですけれども、例えば四月十七日の運営委員会、これは十九件処理して一兆二千億円を超える資金援助を議決していますね。例えば、この運営委員会というのは大体どのぐらいの時間を掛けてやられているんでしょうか。四月十七日の運営委員会、御紹介願いたいと思います。 ○参考人(松田昇君) このときは案件が非常に多うございましたが、審議時間と申しますか、運営委員会の開催時間は二時間余でございます。 ○小池晃君 十九件、一兆二千億円を超える資金援助をわずか二時間で議論をすると。そんな時間で一件ごとにきちんと報告を受けて議論をすることは到底不可能だと思うんですね。 私、以前、佐々波委員会で、これはラインシートを見たのか見なかったのかという議論がございました。かなり大問題になったんですね。そのときに比べると、資金援助額というのは、これは債務者の切り分けあるいは引当金の積み増し、これを決めていく。こういう案件を二時間余りで十九件、一兆二千億円、一体どういう議決をされているんでしょうか。ちょっと様子を聞かせていただきたいんですけれども、破綻金融機関の債権について細かく精査されているのか、具体的にどんなふうに議論をされているのか、お伺いしたいと思います。 ○参考人(松田昇君) まず段取りでございますが、今までになく一番多い案件の審査でございました。 まず、運営委員会の構成は金融実務に精通している委員によって構成をされております。まずそれが前提にございまして、会議をする事前、例えば一週間前に会議で使います説明資料あるいは各種のいろいろな原資料がつづってあります附属資料というつづりがあるんですが、それを各委員に配付をいたしまして、場合によっては説明もいたしまして、各委員におかれてはその案件を十分に事前に審査、精査されて、御理解の上で委員会に臨んでいただいております。その上で各審査案件ごとに審議を行い、議決をしている、こういうことでございます。 預金保険機構としては、まず与信性の貸出債権の価格の設定が非常に問題になるものですから、その適性性を担保するために、まず、破綻金融機関の金融整理管財人が管財人だけの判断ではなくて監査法人の適正なチェックを受けて自己査定をして債務者区分を決めておられるということを確認いたしますし、またそうもされているわけですが、さらに、担保の評価も非常に問題になりますから、担保については、大口、大きなものにつきましては、具体的に不動産鑑定士の鑑定結果を経た上で金融整理管財人が決めておられる、その上で一定の方式にのっとった私どもの算定方式で価格を決めているわけでございますが。 その間、必要に応じて破綻金融機関の金融整理管財人あるいは受皿機関あるいはRCC等から意見等がございましたら、適宜私どもは指導をいたしておりますし、現にそれが戻ってまいりますと、戻ってまいりますとと申しますか、手続が進みまして受皿金融機関と破綻金融機関の両方で私どもに資金援助の申請がございますと、やっぱり国民負担の最小化、費用の最小化に向けてという観点から、債務者区分、担保評価、それが適切になされているかどうか、あるいは譲渡コストが適切なのか、決算損失をされているのが適切なのか。場合によりましてはいろいろな資産調査報告書、不動産鑑定書あるいは支払伝票や見積書なども一々審査をいたしまして厳重に審査をした上で、これで間違いないというところで運営委員会に諮っている、こういう手順でございます。 ○小池晃君 きちんとやっているんだというふうにいろいろおっしゃいますけれども、一兆二千億円を二時間で決めると。私は、どう考えたってこの運営委員会の皆さんが一つ一つの案件、債権がどうなっているかということについて、これほど大量の処理を短期間で行われれば、重大な問題が見逃されても不思議ではないと思います。 それから、監査法人がきちんと査定していると言いますけれども、これは全く現場の実態をわきまえない私は議論だというふうに思います。 これは私たちは調査を続けてきていますけれども、実態はどうかというと、時間に追われて監査法人と一緒になって受皿金融機関が切り分けしているんですよ。ある例では、監査法人の職員に対して受皿の職員と管財人団がこっちはもう破綻懸念先にしろとか圧力を掛けていると。そういう場面を目撃しているという証言もあるんですね。ある受皿金融機関は、貸出金の査定を預金保険機構に任せたら、預保は極力資金援助を少なくするのが基本姿勢なので、多少無理をしても専ら自ら行うというふうに言って、持参金の増額を目的にして管財人団に受皿金融機関の職員を送り込んだ、債権の切り分けをしていたと。これは国会で指摘をされて、受皿金融機関の職員を管財人団から外したという経過もあったわけであります。 私は、一日で十九件も、一兆二千億円も流れ作業のように議決していて、全くチェック機能が働いていないんじゃないだろうかというふうに思わざるを得ません。しかも、最小限負担、最小化でやっているとおっしゃいますけれども、その引き当てのやり方がどうなのか。これが余りにもいい加減なんじゃないかということを次にちょっと議論をしたいと思うんですが、果たして最小になっているのかということであります。 債務者区分ごとの引当金の問題でお配りした資料をごらんいただきたいんですけれども、これは債務者区分ごとに合理的な引当金はどの程度かということで、主な銀行の例をディスクロージャー誌で調べてみました。これによれば、正常先と要注意先の債権は、これは一般引き当てということで、債権の総額に対する割合であります。要管理先、破綻懸念先は担保アンカバー分についての引き当てなんですね。これで見ると、大体都市銀行の場合に、正常先一%以下、それから要注意先は三から六%程度、要管理先が約二〇%、破綻懸念先が七〇%前後。 これ金融庁にお伺いしたいんですが、大臣しかもうおられませんのでお伺いしたいんですけれども、このような引き当てというのは、これは金融検査マニュアルから見て問題があるんでしょうか、それとも妥当なものというふうに言っていいんでしょうか。 ○国務大臣(柳澤伯夫君) どういう、これはディスクロージャー誌から取られたということでございますので、私ども、この資料を私どもの手元でチェックをしていないという前提で申し上げますけれども、いずれにせよ、これは検査マニュアルに基づいてやっているものだというように承知をいたしておりますが、そこにありますように区々でございます。これは、例えば正常先とかを含む破綻先よりも上のカテゴリーに属するものについてはある種の確率でやっておりまして、貸倒れ率であるとか倒産確率に損失率を掛けたものであるとかというような、過去の実績に基づいてやっておるということでございまして、いずれにせよ、それぞれの機関がそれぞれの自己査定の方針に基づいてやっており、それを我々の方も時宜を得て検査をさせていただいている結果の数字だというふうに認識しております。 ○小池晃君 今、示したような引当金がマニュアルから見ても妥当なところだと。 ところが、こういう主な金融機関の引き当て率に比べて、預金保険機構は破綻処理の中で貸出金の引き当てを算定する場合に引当金控除方式という方式を取っています。これはもう極めて簡単な引き当て率なんですね。要注意先については担保アンカバー分について一律五〇%、それから破綻懸念先以下については一〇〇%引き当てる、一律全部そうなんですね。その額を譲渡損失として金銭贈与しているということだと思うんです。 この引当金控除方式という極めて簡略なやり方について、「金融法務事情」で預金保険機構法務統括室室長の佐々木さんという方は、要注意先債権は実質的には破綻懸念先債権に準じて処理するのが相当であると、かなり乱暴なことをおっしゃっております。その結果、これどうなるかといいますと、例えば要注意先債権で見ると、都市銀行では全債権の大体三%、高いところで六%です。それに対して引当金控除方式でいくと、仮に担保保全部分五〇%とすると、担保アンカバーの五〇%の引き当てですから二五%、そうすると、もう八倍もの大幅な引当金積み増すということになるんですね。あるいは、破綻懸念先で見るとどうか。これはもう破綻懸念先は預保は破綻先と同じだということで、もう再生あり得ないという考え方で、七〇%程度を都市銀行がやっているところを一〇〇%にした、三〇%増しの引当金付けていると。その引当金がそっくり受皿機関に金銭贈与される。 先ほど財務副大臣も最小限でやるとおっしゃっていますけれども、私は、これは預金保険機構にお伺いしたいんですが、費用最小化原則という点から照らして、こういうラフな、大ざっぱな引き当てでやるというのは、これは最小化原則に反しているんじゃないですか。 ○参考人(松田昇君) 先生御指摘の引当金控除方式というのは、私ども破綻金融機関の処理をするときに作っている方式でございます。いろいろ試行錯誤した後にたどり着きまして、十年ごろから採用しているものでございますが、大数の法則に従って大体この割合でやっているのがほぼ妥当な結果を生んでいるということで、私どもは今なお引き続きその方式を採用しているわけでございますが、先生御指摘の要注意先との比較でございますけれども、これは恐らく、先生のお示しの配付資料によりますのは、債権全体に対するこれは割合でございますよね、我々の方は信用部分のアンカバー五〇%なので、ちょっと一概にすぐ比較はちょっとできない、多分、僕は重なってくる部分があるんじゃないかなと思っております。 それから、破綻懸念先以下は、確かに御指摘のとおり、我々は担保アンカバー分の一〇〇%を引当金相当額だと、こう見ているわけでございますが、これにつきましては、一応我々としてはこういう評価をされる、ゴーイングコンサーンのときの場合とちょっと事情も違うのではないかなと、そのように思っております。 救済金融機関にとってみますと、破綻金融機関の回収に疑義があるような要注意先、特に破綻懸念先以下につきましては、それを新たな取引先とする場合でございますので、ロスが発生しないか厳しい目で査定すると、そういう気持ちになるのは、これは一つは当然であろうと思います。 こういう点を踏まえまして、引当金控除方式では、要注意先以下の引き当てを担保不保全分、アンカバー分五〇%、それから破懸以下は一〇〇%、こうしているんでございますが、これは、企業会計上将来の回収に疑義のある場合あるいは回収可能性が不明な場合など先行き不確実な債権に対する引き当てを考える場合に、おおよそ全体としては引き当ての誤差を最小にする考えであると、こういう考え方に基づいておりまして、これは監査法人からも妥当であるという評価を得ているところでございます。 ○小池晃君 いや、妥当だと言いますけれども、例えば監査法人のトーマツが船橋信用金庫の整理管財人に出している報告書によりますと、こう言っているんですよ。要注意先及び要管理先に対する債権については、債務者の状況としては破綻に至る可能性は必ずしも大きくない。そんな評価がされているにもかかわらず、要管理先だということで一〇〇%、担保アンカバー分五〇%ということが一律に規定されていると。 私は、いろいろとおっしゃいますけれども、こういう一律な基準でやっていくということは、正に費用最小化の原則ということから見て大変問題が大きいというふうに言わざるを得ない。 しかも、それだけじゃないんですよ。例えば、船橋信用金庫でいうと、わずか十四億円の債務超過で破綻させました。その処理に八百十一億円もの公的資金使いました。八百十一億円の資金援助のうち四百六十億円が金銭贈与、受皿機関に渡るわけです。 これは、引当金積み増してやったからだけじゃないんですね、実は。担保の評価も大幅に引き下げるために、これは担保の掛け目を原則七〇%で算定している。あの厳しかった金融検査でも九〇%だった、これを七〇%にする。これを船橋信用金庫の収計表に基づいて試算してみると、四百六十億円の金銭贈与のうち、引き当てを都市銀行並みにして担保不動産の評価も金融機関の九〇%、金融検査の九〇%にすると百五十億円を超える減額ができるんです。これ、三十兆円超える公的資金を投入した、国民の大切な財産ですよ。だとすれば、一円たりともあいまいにはできない。債務者の切り分けでも、担保の評価でも、残りの引き当てでも、こんなに大ざっぱなことをやられたら国民はたまらないと思うんですね。 ゴーイングコンサーンだからというようなお話ありましたけれども、だったら百歩譲って、こういう処理をした後で改めて、受皿に行った後、精査をしておかしいというふうになったら、それはきちっと戻すということをするのが当然じゃないですか。急いでやんなきゃいけないからしようがないんだ、ゴーイングコンサーンだからしようがないんだというのであれば、その後できちっとこれ最小化原則に基づく精算をすべきだと思いますよ。これはどうですか。 ○参考人(松田昇君) 御指摘のように、費用最小化の原則に従いまして私たち行動しているわけでございますが、一つは、運営委員会で今も申し上げたように資金援助を決めまして、決めた後、実際に営業譲渡というのはその後行われるわけですが、その間に回収等いろんなことで思いもよらぬプラス要因が生まれることがあります。それについては減額をきちっとそこでさせていることになります。 ただ、引き渡した後、これは私は適正な価格で引き渡したと思っていますから、受皿にとっても得でもなく損でもなく引き渡したものだと思っておりますから、その後は経済情勢の変化によって、あるいは当該受皿銀行の経営管理の良否によっていろんな状況が起きるわけでございますから、そこをいつどの段階でとらえてどのように検証してどうやって払っていくかと、それに掛かる我々の事務負担のコスト、そういうことを総合的に考えますと、今のところはこれを引き渡した価格が正当と、このように認識しているということで御理解いただきたいと、このように思います。 ○小池晃君 こういう大ざっぱな引き当てでやっておいて、それで引き渡した額が正当だと、精算もしないと、こういうことで果たして本当にいいんですか。国民の大切なお金を使うやり方として私は極めてずさんだと。 例えば、じゃ、こういうケース、具体的に幾つか聞きたいんですけれども、船橋信用金庫の職員の住宅ローン、これがどう扱われているかという問題ですね。 これ、以前ここでも議論になったと思うんですが、これは全部一度、勤め先が破綻したからということで職員の住宅ローンは破綻懸念先に分類される。その引当金だけで約三億円になるんですよ。この職員が受皿の東京東信用金庫に再雇用された。この職員のローンというのは、これは来年の三月末までに債務者区分の見直しをすれば当然正常先に戻ると思うんですね。これ正常先に戻したら、破綻懸念先として引き当てた部分はこれは当然返却されるんでしょうね。 ○参考人(松田昇君) 債務者区分が変わりますと、もちろん引当金控除方式ですから、その債務者区分に従って減額なりその他の措置は取ることになります。 ○小池晃君 じゃ、こういうケースどうですか。 再雇用を拒否されてしまった人も、これは退職金と相殺されるというケースが出ているんですね。これは、譲渡を前後して返済されたお金というのは、これは当然預金保険機構に返還すべきだと。預金保険機構も返還をこれはきちんと求めるべきだというふうに思いますけれども、これはいかがですか。 ○参考人(松田昇君) 申し訳ありません、ちょっと質問の趣旨がよく分からなかったんですが。済みません。 ○小池晃君 再雇用、要するに、先ほどのは再雇用、東信金、受皿に再雇用された人の場合。再雇用を拒否されてしまった、その場合に、今、船橋信金では退職金と相殺するということがやられているんですよ。それでもう住宅ローンを相殺してしまおうと。こういう場合、譲渡を前後して返済されたお金というのは、これは当然返還すべきじゃないかと。預金保険機構も返還をきちんと求めるということは当然だと思うんですが、この点はどうなんですか。 ○参考人(松田昇君) 先ほどは失礼しました。 そういう相殺の話でございますと、それが判明したところで減額をするということになります。 ○小池晃君 当然だと思います。 更にお聞きしたいんですが、これはこういうやり方をしますと何が起こるかというと、受皿金融機関の中にダブルスタンダードができるわけですね。すなわち、同じ要注意先でも、以前からの受皿金融機関が持っていた債権は三%か四%の引き当てと。一方、破綻金融機関から引き継いだ要注意先というのは、これは二五%。例えば担保はカバー五〇%だとすると二五%の引き当てと。これは、来年の三月になって引当金を見直したときに、当然その金融機関の水準に統一されると。差額の引当金、例えばさっきの住宅ローンみたいに税金で積んであげたという部分については、これは返ってくるんですね。この点についてはいかがなんですか。 ○参考人(松田昇君) 私どもの引当金控除方式と、言葉がちょっと悪うございますけれども、引当金相当額控除方式というのが正しいわけでございまして、お渡しするときに引当金として何か付けて渡すということではございません。その債権の評価をして、それを受皿金融機関に渡すわけですから、そこはそういう簿価として向こうが引き取って、後どういう管理をするかは受皿金融機関のマナーというか経営管理の問題と、このように思います。 ○小池晃君 そうすると、こういうケースについては返ってこないということになってくるわけですね。 今日いろいろと、最小化原則ということに照らしてどうなるのかということを議論させていただきました。 引継ぎに当たって時間的な問題もあるんだと、ゴーイングコンサーンだというようなことはありますけれども、私は、もしそういうことを言われるのであれば、百歩譲って、その清算の段階できちっと戻していくということがやられるべきだと。 そういう点で振り返ってみると、九五年から二〇〇〇年度まで金銭贈与の経過を見ますと、大体十二兆二千百四十九億円の金銭贈与が行われていると。しかし、結果としてその金銭贈与後の清算後の変化というのは十二兆二千百四十九億円から十二兆千百六十七億円ということで、九百八十一億円、わずか〇・八%しか減少していないという実態があると。 これでは、非常にラフなやり方で金銭贈与、引き当てを決めている、あるいは担保の問題についても非常に厚く評価も引き下げている。こういうことをやっておいて、後での清算もまともにやらないということでは、これは三十兆円も公的資金を使っておきながら、これだけの国民の税金を注ぎ込んでおきながら、私はこういうやり方では国民の納得は到底得られないというふうに思うんですね。 このやり方、根本的に見直すべきだというふうに思いますし、これまでも一度入れたものを修正してきたということはあるわけですから、国民に説明の付くように、やはり慎重にこれ精査し直して、今までやったものも含めて、余分なものはもう返させるということを当然すべきだというふうに思いますが、この点いかがですか。 ○参考人(松田昇君) 先ほど申し上げましたように、受皿金融機関に完全に渡って、営業譲渡で渡ってしまった後にもう一度我々がどの時点で行って精査をして、どの債券がどのぐらい劣化して、その劣化した理由は何だったのか、元々あった瑕疵なのか、その後の経営管理上の、あるいは経済情勢の変化によって起きた劣化なのか。そこを全部やるというのは、これは事務負担というコストから考えてもなかなか大変なことですし、それから現にいったん我々適正価格としてお売りしたわけですから、それを売った受皿金融機関がその企業の再生なり融資の継続なりに十分意を用いるべきなのが筋ではないかなと、このように考えております。 ○委員長(久世公堯君) 小池君、時間が参っております。 ○小池晃君 もう質問、今やめます。 こんなことで、受皿がもらった者勝ちというようなやり方では国民は絶対納得しないということを申し上げて、私、質問を終わります。