○小池晃君 日本共産党の小池晃です。 今回の障害者雇用促進法につきましては、我が党はジョブコーチなど知的障害者、精神障害者の生活支援、福祉的就労と一般雇用に結び付ける施策があること、あるいはその障害者の定義規定に精神障害者が盛り込まれたこと、明記されたこと、それから除外率の縮小については、段階的縮小ということについては是非論ありますけれども、その方向を明確にしたこと、まあ前進だというふうに考えております。精神障害者の義務雇用が先送りされたことや、あるいは特例子会社というのが果たしてその企業雇用の拡大に結び付くのかという疑問もございますけれども、以上のような立場で賛成ということで臨んでおるんですが、様々問題があるというふうに考えておりますので、そういう立場でお伺いをしたいというふうに思っております。 まず最初に取り上げたいのは、先ほども若干御議論あったんですが、今お配りしている資料であります。(資料配付) これは、法定雇用率を達成していない企業が増えてきているということと同時に、それに対する雇入れ計画の作成や、あるいは適正実施勧告というのが非常に少ないということが分かるわけですね。これがなぜこういうことになっているのかということを今日はちょっと最初に議論をさせていただきたいと思うんです。 これを見ますと、九八年に法定雇用率一・八%になって以降、雇用主、雇用率未達成事業主は二万七千八百六十七、平成十一年が三万三千七百七十五、平成十二年、二〇〇〇年が三万三千七百八十七件と。それに対して雇入れ計画の作成命令、これを発出した企業というのは二百十七件、百四十二件、百十七件と減り続けているわけですね。 政府参考人にお伺いしたいんですが、なぜこういう乖離が起こっているんでしょうか。この雇用率未達成企業の数とそれから雇入れ計画作成命令の発出した企業数の間にこれだけの開きがあるのはなぜなんでしょうか。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) 雇入れ計画の作成命令発出につきましては一定の基準がございます。その基準に照らして、未達成企業の中でも基準に照らして命令を発出する基準に達している人、達していない企業がありますので、こういう乖離が出るのはある意味当然ということになります。 ○小池晃君 ある意味当然だというお話なんですが、法定雇用率一・八%で、それを達成していないと計画作成命令が出るわけじゃないんですね。要するに、そのもうワンランク下にもう一つ基準がある、要するに発出要件には何らかの別の基準があると、そういうことなんですね。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) はい、そういうことであります。 ○小池晃君 その基準、私はもう一・八%というのが基準なんだろうと思っていたんですが、それ以外にもう一つ基準があると。その基準は一体どういうものなんでしょうか。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) そもそもこういういろいろ基準がありますが、その基準を私どもすべて詳細に明らかにしておりませんので、その理由はこれからの質疑の中で多分御質問があろうかと思いますが、発出基準のあらあらのことを申しますと、雇用率を今達成していない、達成するためには新たに雇い入れる障害者の数がある程度ある、かなりの程度あるということが一つ大事な要素になっておりますし、その場合に、新たに雇い入れるべき障害者の数がある程度必要ということは、分母となる障害者を含めた一般の労働者を新たに雇い入れる数がこれまた相当あるということも随伴要件として私ども考えておりますので、こうしたことが一・八%未達成企業すべてが計画作成命令の対象にならない主な理由であります。 ○小池晃君 非常に漠とした話でよく分からないわけですが、何らかのそういう数を基にしたような基準があるわけですね。だったら、その基準を明らかにすべきなんじゃないでしょうか。今理由が明らかに、それは明らかにできない理由があるんだとおっしゃいましたけれども、なぜそれが明らかにできないんでしょうか。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) ある基準を明確にいたしますと、世の中、逆選択ということがよく起きまして、その基準に直前に合わせてしまうとか、そういう好ましくない行動が出る可能性もございまして、私どもの言わば雇用率達成のためのいろいろな指導、こういうものを考えますと、基準をすべて明らかにすることはいろいろ弊害が出てくると、こう思っております。 ○小池晃君 私はこれはちょっとおかしな話じゃないかなと思うんですね。要するに一・八%という以外に基準があるわけですよ。ダブルスタンダードなんですね、これね。 この内規のようなものですか、明らかにできない基準というのは、これはいつからこれを使っていらっしゃるんですか。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) ダブルスタンダードというお話がございましたが、私どもは未達成の企業には達成するようにという指導をまずベースとしてやっております。その上で、余りにも乖離の多いようなところについては具体的な計画の作成を命じて、それに沿った具体的な行動を取ることを要請しているのでございまして、決してダブルスタンダードで緩くしているという話ではありません。 それから、この基準をいつから作ったかというお話でありますが、これは雇用率制度ができて、未達成企業がかなりの割合で出てくるということを踏まえてやっておりますので、当初からこうした仕組みは、今と全く同じというわけかどうかは私もちょっと承知しておりませんが、当初からこういう仕組みはあったということでございます。 ○小池晃君 要するに、法施行当時の一九六〇年から法定雇用率というのはあって、雇入れ計画を作成する基準というのはまた別にあるという運用が続いているというわけなんですね。 私は、この雇入れ計画の作成、計画を作りなさいよというのは、法定雇用率を守らせるためにやるわけですから、法定雇用率を守っていなければ納付金があるとか、あるいはちゃんとやりなさいよということがあったにしても、それよりかなり下の段階に行かないとその計画作成の基準に達しないという、その結果、三万三千もの企業が雇用率未達成でありながら百十七の企業にしか命令が発出されていない。〇・三五%ですよね。こういう乖離が生まれていると。 大臣、私、お伺いしたいんですが、これはダブルスタンダードでないと局長おっしゃいますけれども、やはりかなり激しい乖離のある二つの基準があるというのが実態だと思うんですね。大臣、やはりこういうことではなかなか障害者の雇用率を上げることができないんではないかと。やはりもっと厳格に、一・八%でダイレクトにすぐ全部というふうには言わないまでも、もうちょっとこの一・八%というのを達成する現実的な基準なりということを作るべきだし、それを示していくということが必要なんじゃないでしょうか。 ○国務大臣(坂口力君) 小池議員とはいつも激しい論戦をいたしておりますけれども、今日に限って申しましたら、私も意見は一致でございます。小池議員が御指摘になりましたように、私も、余り複雑なそういう目標値を作ってはいけないので、簡潔明瞭な方が私もいいと思っております。 先日もお聞きをしましたけれども、今日もお配りをいただきましたこれを拝見をしまして、雇用率未達成企業数というのがだんだんと増えてきている、増えてきているのに命令をしております企業の方はだんだんと減ってきていると。この表だけを見ますと一体厚生労働省は何をしているかということになるわけで、先日も衆議院の委員会におきましても事務局に苦言を呈したところでありまして、一体何をしているかと、こう言ったわけでございますが。 いろいろ難しいからくりは前からずっと続いているんでしょうけれども、しかし、そこは簡潔明瞭で分かりやすく、どの人からも理解されやすいものであることが望ましい、私もそう思っております。 ○小池晃君 私も、いつも激しく論戦させていただいていますので、めったにこういうことはないんですが、大臣の御意見に賛同したいというふうに思います。全くそのとおりだと思います。 ただ、更にちょっともう少し聞きたいんですが、この雇入れ計画作成命令についても独自の内部基準があるというお話でした。更に見ると、適正実施勧告の発出企業数も、さらに公表を前提とした特別指導の実施についてもそれぞれ少ないわけですけれども、これもやっぱりそれぞれその内規のようなものがあって、その基準に達したら次の段階へ次の段階へと進んでいくということなんですね。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) はい。それぞれ命令とか勧告を出すには基準が要りますので、それは持っております。 ○小池晃君 私は、大臣先ほどおっしゃったように、本当に複雑な基準が、一・八%という大原則だけではなくて非常に細かい基準があって、実際はこれ見ると正にその、例えば二〇〇〇年度でいえば三万三千七百七十七件の未達成企業がある、そのうち命令発出したのは〇・三五%ですね、わずか。百十七企業。そのうち、そのうちというよりも、二年たってから適正実施勧告ですから同じ年というわけではないですが、ちょっと単純に比較をさせていただきますと、適正実施勧告やったのは三十社ですから〇・〇八%と。これは、公表を前提とした特別指導を実施した企業は二しかありませんから〇・〇〇五%ということなんですね。さらに、最後の公表に至っては、過去二十六年間で一度も公表した例はないということだそうでありますから、やはりこういうことでは余りに甘いと。こんなことでは、せっかく法定雇用率というのを作っても私は障害者雇用を改善していくということにはならないと思うんです。 大臣からもあのような御答弁ありましたので、是非この内規についても見直すことも含めて取り組んでいただきたいというふうに考えるんですが、大臣はちょっと、改めてじゃ局長で結構ですけれども。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) 今回の法案審議におきましていろいろ御議論ございまして、大臣からも先日御指示をいただいております。 私ども、必要な範囲で見直し等々行いますが、一点だけちょっと申し上げさせていただきますと、雇用率未達成の企業の場合、一人雇えば雇用率を達成するケースが相当あるわけです。こういうものについて三年間の雇入れ計画作成命令を出すかどうかという問題ございまして、こういうのは命令を出さずにもうベースとしての指導でかなり達成するというケースもございますので、ですから、命令を出す範囲はどうするかにつきましては実務上の問題等々も踏まえて十分考えさせていただきたいと、こう思っております。 公表の問題につきましては、先日、大臣からも余りに少ないではないかというお話いただいておりますので、十分考えさせていただきます。 ○小池晃君 是非お願いしたいと思います。 それとは別の問題として、私、非常にこれを見て、この表を見て奇異に思ったのは、公表というのが一番最後なんですね。計画作成して、適正実施勧告して、特別指導して、それでもだめな場合に公表と。私、これちょっとおかしいんじゃないかなと思うんですよ。今、情報公開だ、透明性の確保だということが行政の原則として言われている中で、むしろ公開というのは僕は一番最初に来るべきじゃないかと。企業の社会的責任として、やはり障害者をどれだけ雇用しているかなんというのは、私はむしろ積極的に企業が公開をして、そのことを、あるいは株主責任ということを言えば、しっかり株主に示していくというのはむしろ企業の社会的責任の一つなんじゃないかなと。 例えばいい例があるんですが、日航、JALが、この間、株主代表訴訟が昨年五月ですけれどもございました。これは、障害者雇用を達成していないということで、株主の方が多額のその納付金を納めるということを訴えたわけですね。それは和解したんですが、和解条件はどうなっているかというと、障害者雇用率を二〇一〇年までに達成をする、それで、その間の達成率はJALのホームページで公開するということなんですね。 私は、この問題とはちょっと切り離して、やはり雇用率の達成状況というのは、少なくとも例えば上場企業に関してはホームページとかあるいは有証とか、有価証券報告書とか、あるいは株主総会で報告をさせるとか、そういった積極的な情報公開を求めていくと。そんなことを一つの雇用率を上げるやり方として御提案したいというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか、そういう考え方取っていただけないでしょうか。 ○国務大臣(坂口力君) ちょっと先ほどのお話で、過去に一度もなかったと言われて、これは若干違いまして、平成三年に四企業を出しておりますから、ここは全然なかったというわけではございません。 しかし、少ないことは御指摘のとおりでございますので、これからどういうふうにしていくか。今御指摘になりましたようなそうした方法もないとは言えませんけれども、やはり多くの皆さん方に御協力をいただいて、そして企業にも御協力をいただいていかなければならない。 ですから、協力をしていただきます企業と全く協力をしない企業とをいつも同列に扱っているというのではやはりいけないというふうに思いますから、もう少しめり張りを付けてこれから対応をしていくことを考えなければならないと私も思っております。 ○小池晃君 是非これは、本当に法定雇用率というのが実質的に意味があるものにするために改善をすべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。 その上で、次に議論させていただきたいのは、お金の問題、障害者雇用納付金の収支の問題なんですね。先ほども若干御議論ありました。この助成金の在り方がどうなのかという問題であります。 まずお伺いしたいのは、昨年度の障害者雇用納付金の収支の概要を大まかで結構ですから御説明願えますでしょうか。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) 直近で申し上げますと平成十二年度になりますが、決算ベースで障害者雇用納付金の収入の方は約二百五十八億円、支出が約百七十八億円でございまして、積立金は累計約二百七十七億円になっております。 ○小池晃君 収入に占める納付金の比率というのはどの程度になるんでしょうか。比率じゃなくて数字でも結構ですが。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) 平成十二年度の決算といいますか、実績で言いますと、収入は二百五十七億五千二百万で、納付金が二百五十六億一千五百万。ですから、差のその他の言わば雑収入というものが一億三千七百万円ほどということになります。 ○小池晃君 要するに、その収入二百五十七億のうち二百五十六億が納付金。納付金というのは、要するに法定雇用率を達成していない企業から徴収した罰金、言ってみれば罰金というか、罰金と言うとあれですけれども、納付金ですね。そういう達成していない企業から集めたお金で収入を賄っていると。そして、それを原資に達成した企業に対する調整金や報奨金を出しているという仕組みなんですね。そういう形でバランス取っていると。 今はたまたまその収入と支出がバランス取れているわけですけれども、これは基本的な仕組みとして、これから障害者雇用が進んでいけば雇用率未達成企業というのは減っていく、そうすると納付金額は減っていくと。逆に、そうなれば雇用した企業は増えるわけですから、報奨金や調整金というのは増えていくと。そうすると、どんどんどんどん収支バランスというのは崩れていくんじゃないか。 結局こういう意味では、障害者雇用が改善する、これはいいこと、もちろんいいことなんですけれども、そういう方向になっていくと財政が悪化していくということになるんじゃないですか。そのとき一体どうされるんでしょう。 ○国務大臣(坂口力君) この納付金制度につきましては、納付金も含めまして収入の範囲内で適正な運用がされるべきであるというふうに考えておりまして、安易に余り国庫負担、国庫が負担をすべきではないというふうに思っております。 この納付金収入がなくなった場合、一体どうするのかということでございますが、これは納付金がなくなるほど障害者を雇っていただければこれにこしたことはないわけでございますけれども、現状からいきますと、なかなかそんな状態にはならないのではないかという気がいたします。 しかし、論理的にはそれはそういうこともあり得るということでございますが、しかし今のところそこまで心配をするような状況にはないと、こう思っております。 ○小池晃君 心配することはないって、それは余りよくないことなんですから、これは積極的にやっぱりそういう方向に進むように考えるべきであって、私、理論的にこうなっていけばバランス崩れるのが必至という構造というのは、これは放置しておいていいのかなと。法律を見てもそういうことについては全く規定もないわけですね。 安易に国庫負担すべきでないというふうにおっしゃいましたけれども、私は、本来この制度の意味というのは、やはり障害者の雇用を進めるという制度の本来の在り方からすれば、やはり納付金額が減少して調整金に必要な額を確保できなくなるというようなことはあってはならないだろうというふうに思うんですね。 私はこの制度を、今の段階ですぐにそうならないとはいっても、やはり今後そういう心配もあるわけですから、やはり国が責任を持って財政的な不安が生じないように、未達成企業からの納付金だけに頼るんではなくて、国がその財政的責任を負っていくという方向にやっぱりしていくべきではないかと、そういう検討を始めるべきではないかというふうに考えるんですが、いかがでしょう。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) 納付金制度は、障害者雇用に熱心、現実の結果として障害者を多数雇っているところと雇っていらっしゃらない企業の経済的負担を調整するという目的でできているわけですね。ですから、法定雇用率をすべての企業が達成した場合には、すべての企業が障害者雇用に当たっての経済的負担をほぼひとしく負っているということになりますから、調整の必要がなくなります。 そういう意味では、この納付金制度は使命を達したということになりますので、もしそういう状態になったとすれば、そういう段階でどういう障害者雇用を促進するための新しいスキームが必要かと、そういう議論をすることが大事ではないかと、こう思っております。 ○小池晃君 それこそちょっと何か空想の話でありまして、そんなことというのはすぐに実現するわけないわけですね。しかも、この納付金の性格というのは、企業のアンバランスを調整するというふうにおっしゃいますけれども、法律の十八条を見ると、確かに「経済的負担の調整」ということもございます。しかし、「並びにその雇用の促進及び継続を図るため」ということで、バランスを取るだけじゃなくて、しっかり雇用の促進を支えていくということが目的として書かれているわけですから、全体がそろったから、バランスなくなったから、そろったからもう納付金、調整金あるいは給付金要らなくなるという、そういうことは、私は本来の法の趣旨からしておかしいと思うんですね。 全体として障害者雇用が非常にうまく進んだ段階で、みんな一斉にはしごを外されて報奨金も調整金もなくなるなんということは、これは現実問題としても考えられないわけでありまして、私は今の議論にはちょっと賛同いたしかねると。やはりこのシステムの根本的なこれ欠陥だと思いますので、是非国庫負担、国が責任を持って見ていくという方向での検討を始めるべきだと。 納付金の制度を否定するわけじゃないです。それはあっていいと思うんです、そういう調整機能は。ただ、やっぱり一定の国庫負担というのが入って支えていくということがなければ、将来的には立ち行かなくなるということになるんじゃないでしょうか。大臣、この辺での検討というのは必要じゃないですか。 ○国務大臣(坂口力君) ここはちょっと意見を異にしますね。 納付金がだんだんと要らなくなってくるような社会というのは、これは障害者に対してだんだんと理解ができてくる、社会的にだんだんと理解が広がって、そしてほとんどの企業が雇われる、もう納付金は要らなくなってくる。そういう社会ができてくるということは、障害者を雇ったからといって調整金をもらわなければならないというような思いも減ってくると、双方ともにこれは減ってくる。したがって、先ほどおっしゃいましたように、理論的な値としましては納付金がゼロというのも、時代もこれはあり得るわけで、その納付金がゼロの社会というのは、それは調整金も要らないという社会だと私は思うんですね。 ですから、納付金のところだけ心配をして調整金は残せというのは、私はちょっと論理矛盾を来している、これはなくなっていくのは双方ともになくなっていくと考えるのが自然な成り行きではないかと私は思います。 ○小池晃君 いや、そのアンバランスを解消するためだけの制度であればそういう考え方も成り立つとは思うんですが、私が言っているのはそういうことじゃなくて、全体としての障害者雇用を支えていく制度だとすれば、そこに対する公的責任というのがやはり入るべき部分はあるだろうと。ちょっとこれは先ほどのと違って平行線になっておりますのでこれ以上ちょっともう申し上げませんが、問題提起としてさせていただきたいというふうに思います。 その上で、障害者雇用の問題、もう少し細かい問題をお伺いしたいんですが、先ほども議論あったように、非常に障害者の雇用状況が悪化をしているということがあります。十四万人超える有効求職者数だということです。 お伺いしたいのは、障害者雇用機会創出事業を行っていらっしゃいますけれども、これは対象人員は昨年は二千人なんですね、今年度は二百人増えて二千二百人と。雇用状況これだけ悪化している中で、やっぱり十四万人も有効求職者がいる中で二千二百人という枠は余りにちょっと小さ過ぎないかと。私は、今後二千二百名、今年度分はもう進んでいますが、今後是非やはり拡大する方向で検討すべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。 ○政府参考人(澤田陽太郎君) 障害者の雇用促進、そして雇用の安定を図るための政策をトータルで私ども打っておりまして、その政策を将来に向けてどういう形で充実強化していくかという中でこのトライアル雇用の問題も考えていきたいと思っておりまして、そうした観点で、今打っておりますいろいろな政策の政策評価をしっかりやる中で、御指摘の点もトータルに考えていきたいと、こう思います。 ○小池晃君 是非前向きに検討していただきたいというふうに思います。 それから、もう一点御指摘したいのは、小規模作業所の今の実態を見ると、これは共作連が調査をしておりますけれども、非常に今の不況の影響で企業離職者をかなり多数小規模作業所で受け入れているという実態が出てきているようであります。要するに、小規模作業所というのは、そこでいろいろな経験を積んで更に企業に就職するということが一つの目的であると思うんですが、逆に企業からリストラされた障害者が再び小規模作業所に戻ってくるというような実態が大変起こっていると。それから同時に、障害者自身の問題だけではなくて、利用者の御家族がリストラされる、あるいは自営業で倒産して仕事を失って、小規模作業所の運動なんかに障害者の御家族がかかわってきたのが、とてもそんな精神的余裕がなくなっているなんというそんな話もあって、非常に深刻な実態があると思うんです。 ちょっと一つ飛ばしてお伺いしたいんですけれども、授産施設等に援助事業として授産活動活性化特別対策事業というのがありますね。これ非常に大きな役割を果たしている都道府県もあるわけです。ところが、これは平成十四年度で二十七か所、もう終わった都道府県も入れると三十二か所ということになっているんですね。私は、これを全都道府県の事業とすべきではないかということが一点。 それからもう一つは、これは規定上は二か年の、二年間の事業ということになっている。そうすると、一定、その指針なんかを作ると、それでほとんど一年間終わっちゃうというような実態もあるようでありまして、これは通達を見ると、実施期間後においても将来にわたって本事業の効果が継続するような体制を整備することが重要であると言っておりまして、これはそのとおりだと思うんですね。 私は、これ、事業を継続的に実施するためには二か年という制限はある程度緩和する必要があるんじゃないだろうか、やっぱり継続的に支援していくような仕組みを作るべきではないかというふうに考えるんですが、この二点についていかがでしょうか。 ○政府参考人(高原亮治君) 授産活動活性化特別対策事業でございます。これは、各都道府県ごとに授産施設関係者と行政関係者が共同いたしまして授産活動活性化指針を策定いたしまして、その指針に基づきまして、授産施設や小規模作業所における製品の共同受注であるとか製品開発であるとか製造技術の向上であるとか、そういったことを行いまして、授産製品等の受注量、販売量の拡大を図る事業でございます。 ただいま御指摘のありましたように、平成十二年度に創設いたしまして、平成十二年度に十二道県を実施いたしました。平成十三年度、二十四都県と着実に伸びてきております。平成十四年度予算においても箇所数の増加を図っております。本年度は、昨今の不況の影響を踏まえた特別対策という位置付けであることから、一か所における事業の実施計画は二年を限度としております。 また、この事業の性質上、ある意味では、授産施設ないしは小規模作業所の中長期的な、長期と言うとちょっと言い過ぎでしょうが、中期的なマーケティング戦略を策定する、そういうふうな機能もございますので、これを現在のところ二年という形で運用しているところでございまして、将来にわたって本事業の効果が継続するような体制を取ってほしいというふうな要望をしておる、これも委員お触れのとおりでございます。 ○小池晃君 全都道府県の事業にするという点についてはいかがでしょうか。 ○政府参考人(高原亮治君) ただいまお答え申し上げましたとおり、十四年度につきましても箇所数を増やしておるところでございまして、できるだけ要望のある県については対応してまいりたいというふうに考えております。 ○小池晃君 さらに、障害保健福祉部長名で、九九年ですか、「授産施設等の製品等の利用促進について」、要するに自治体などで授産施設での製品をもっと使うようにしなさいという、してくださいという依頼文書が出ておりますが、この後、この通達が出てから、どれくらいそういう自治体での取組が進んだのか、数量的な調査をしておられればその結果もお示し願いたいんですが、どんな成果が上がっているかということについてお答え願いたいと思います。 ○政府参考人(高原亮治君) 御指摘の点でございますけれども、各都道府県から授産施設等に対しまして、事務封筒や名刺の印刷、各種大会等の記念品の製作を始め広範な優先的な受注など行われているというふうに承知しております。これらの具体的事例につきましては、様々な機会をとらえまして周知を行っております。また、授産施設の製品等の更なる利用促進も様々な機会をとらえましてお願いしているところでございます。今後とも、積極的な官公需の促進を通じて、支援に努めてまいりたいと考えております。 なお、それで、結果といたしましてどういうふうな実績になっているかということでございますが、概数といたしまして、これは地方自治体官公需だけの集計でございますが、五億六千万円、これはグロスでございますが、これの売上げを上げているというふうに承知しております。 ○小池晃君 私は、是非この取組、これだけ不況厳しい中で、やはり官公需が授産施設に対して積極的にその製品を使うということは非常に積極的なことであると思いますし、厳しい雇用環境の下でやはり更にこれ促進していくべきだと、新たな通達なども含めて是非取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。 引き続いて、障害者の中には難病を抱えていらっしゃる方も多いわけですが、先ほども御議論ありました難病の問題、ちょっとお伺いしたいと思います。 九七年三月に、特定疾患対策懇談会特定疾患治療研究事業に関する対象疾患検討部会の報告が出されまして、ここで難病の希少性の基準、非常に少ない難病という基準として患者数五万人という数字が出されております。 そこでお伺いしたいんですが、まずお伺いしたいのは、現在五万人を超えている、患者数五万人を超えている、あるいは五万人近くに至っている、そういう疾患はどんなものがあるんでしょうか。 ○大臣政務官(田村憲久君) 先生今御質問をいただいた点でありますけれども、この特定疾患治療研究事業というもの、先ほども若干御説明させていただきましたが、この事業の疾患の対象といいますか、対象の疾患に関しましては、今言われました希少性でありますとか、また原因の不明性といいますか原因が不明である点、また効果的な治療法が確立されていない点、さらには、生活が長期的にわたって支障を来す、こういうふうな点、四つの点を勘案しながら、どういうものがそれに当たるかということを特定疾患対策懇談会等々の意見をいただきながら決めておるわけでありますが、確かにその中で希少性という部分も非常に大きな一つ一因であるのも事実でございます。 そこで、御指摘の点でありますけれども、都道府県知事が本事業の対象者といたしまして医療受給者証を交付しております人数でありますけれども、その交付数でありますが、五万件を超えている疾患といたしましては、潰瘍性大腸炎が六万六千七百十四件、それからパーキンソン病が五万五千七百九十八件、また四万以上五万未満、非常に五万人のラインに近いという疾患でありますけれども、全身性エリテマトーデスという、要するに膠原病でありますけれども、これが四万九千四百三十六件というふうになっております。 ○小池晃君 この五万件という基準というのは、新規の疾患の認定の基準として一つ検討されていると思うんですが、今の実際の患者さんから声として挙がっているのは、既に特定疾患として認定をされている、そういう中で、患者数五万人を超えているとそれで特定疾患から外されるんじゃないかという心配の声が出ているわけであります。 厚生労働省では、現在の既に特定疾患として認定されている患者さんを五万人を超えたからといって外すというような検討を今されているんでしょうか。 ○大臣政務官(田村憲久君) いわゆる患者数の部分、少ない患者数といいますか、そういう疾患に対して医療の研究というものに目を向けさせるといいますか、向けるために、そしてまた医療制度といいますか、治療体制といいますか、そういうものを確立していくためにこういうような希少性という部分に非常に目を向けた基準になっておるわけでありますけれども、ちょうど同事業が発足以来三十年経過してまいったものでありますから、環境も大きく変わってきておるということでありまして、厚生科学審議会の疾病対策部会におきまして、この中に難病対策委員会というのがあるんですけれども、ここで今言われたような基準等々を踏まえてどういうふうな在り方でしていくべきかと議論をしていただいておるということでありますが、五万云々という数字に関しましては、先ほども申し上げましたとおり、これがすべてではございません。 希少性というものももちろんそのうちの一要因では、要素ではありますけれども、言いましたとおり、その治療法が確立されているのかどうなのかとか、また原因の不明性でありますとか、さらには難病の重さ、その症状等々、非常に治療に手間、手間という言い方はあれですね、治療に対して非常に難しい治療をしていかなきゃならない、その治療の重さといいますか、そういうものを踏まえての決定といいますか判断になろうと思いますので、その点は、先ほども言いました四要素も含めて、十二分にここで議論をしていただいて、しかるべき答えを出していただけるものであろうと、このように思っております。 ○小池晃君 要するに、単純に五万人超えたから外すという検討はしていないということですね。 ○大臣政務官(田村憲久君) それも全く、要素の一つではありますけれども、それだけで決めるものではございません。他の要素がございまして、そこを勘案して決めてまいるものであろうと思います。 ○小池晃君 大臣にお伺いしたいと思うんですが、パーキンソン病、先ほども御議論あったように大変な病気なんですね。非常に神経難病で、薬がよく効けばいいんですけれども、薬が時間ごとに、例えば二時間置きに飲まなきゃいけないなんという人もいる。薬が切れた途端に突然止まってしまうと。あるいは歩き出すとき、突進歩行なんというのもありまして、交通事故に遭われたりする方も多い非常に危険な病気であります。せめて、交通費も掛かるし、仕事がなくなったりする人もいるから、せめて医療費は無料にということでこの間やってきたんだろうと。 私は、和歌山県のパーキンソン病の患者会の方からお手紙をいただいたんですが、例えばこんな方がいるんですね。バスに乗りたくても体が動かないんでタクシーを使わないといけないと。和歌山県へき地が多くて神経内科の医者が少ないため、多くの患者はJRを利用します。JRで片道三時間で、交通費が一回一万三千円掛かります。タクシーで通院している距離の方では往復三万円、月に六万円掛かる方もいますと。ある患者さん、女性の患者さんは、病院に行くのに御主人に仕事を休んで車で連れていってもらう、それが心苦しいと。さらに、この先特定疾患を外されたらどうしようか、お先真っ暗だと。あるいは、昨年亡くなられた女性の患者さんですけれども、特定疾患を受けているんだけれども、一か月の中で交通費と合わせると医療に掛かるお金が一万円だということで、これを作るのが非常に大変なんだというようなお話もございました。 私は、大臣、難病であるかどうかというのは、やはり今お話あったように、治療の難しさあるいは診断の困難さ、そういったものがやっぱり基本であるべきであって、五万人以上いたらもう難病じゃないんだと、こういうのはちょっと余りにも乱暴過ぎる議論だと思うんですね。 ですから、やはり五万人以上いるというだけで特定疾患から外してしまうと、もうそういうふうにされるんじゃないかというパーキンソン病の患者さんなんかかなり強い不安をお持ちですので、そんなことだけを理由に特定疾患から外すべきでないというふうに思うんですが、その点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。 ○国務大臣(坂口力君) 今も難病というお話出ましたが、この名前が特定疾患治療研究事業ということになっているわけですね。 私も初め、即難病かと、こう思っていたわけですけれども、即難病ではない。難病の病気というのはまだほかにざらにたくさんあるわけですね。だけれども、数の多いものは入っていないと。非常にこの患者さんの数の少ない人がここに入っている。そういう一つの基準の下に作ったこの制度なんですよね。 先ほど田村さんからもお話ありましたように、原因が不明でありますとか、治療法が確立していないとか、人数が少ないとか、あるいは生活面で長期にわたって支障を来す疾患であるとか、こうしたことが一つの基準にして選んできているということでありまして、この辺のところを私ももう一度、この中身、少し基準、どういう基準にするかも含めてですが、基準を少し見直してほしいということを要望しているところでございます。この現在の基準のままでいきましても、それじゃこの病気はなぜ入らないのとか、これはなぜ入るんだというようなこともございますしいたしますので、この辺のところをもう少し整理をしなければならないというふうに思っております。 今御指摘になりましたように、五万人といったのが若干五万を超えてきたというようなものもあるわけですよ。例えば、高齢化と関係のありますようなところは、高齢化社会になってくれば当然のことながらそこは増えてくるというふうに考えなきゃならない。今、田村さんからも話ありましたように、だから増えてきたから、そこを五万人、一人でも超えたらもう駄目だという、決してそういう割り振りをしているわけではありませんけれども、一つの目安として、最初に認定するときの一つの目安としてそうした基準を作っているというふうに言った方がいいんだろうというふうに思っております。 ○小池晃君 最初に新規に疾患として認定する場合に一つの基準にはなるかもしれないけれども、既に認定している人を五万人超えたらもう自動的に外すということはないんだというふうに理解をいたします。やはりその中身で判断していくべきだということだと思います。そういうことでよろしいですね。 さらに、次の問題お伺いしたいんですが、育児・介護休業法のことをちょっと、前回時間切れでできなかったことをちょっとお伺いしたいんですが、これは、四月一日から看護休暇の導入の努力や転勤の際の配慮義務というのが規定が施行されていると。その中、二十六条の「労働者の配置に関する配慮」についてお聞きしたいんですが、就業場所の変更によって就業しながら子供の養育や家族の介護を行うことが困難になる労働者がいるときは、事業主はその労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならないと、こういう規定を新たに設けたこの理由を端的に御説明願いたいと思います。 ○政府参考人(岩田喜美枝君) 子供の養育や家族の介護を行っている労働者にとりましては、住居を移転をしなければいけないといった配置転換がある場合には、そのことで雇用の継続が困難になりましたり、また職業生活と家庭生活の両立の負担が著しく重くなるということも考えられますので、そこで、今回改正していただきました育児・介護休業法の第二十六条におきまして、育児や介護を行う労働者につきましては転勤について事業主の配慮義務を規定したところでございます。 ○小池晃君 事業主がこうした配慮をしないで労働者に転勤しなさいというふうに迫るような事態があれば、これは当然指導の対象ということになっていくんですね。 ○政府参考人(岩田喜美枝君) 仮にそのような配慮を行わないという事業主を把握した場合には、法律の規定に沿って事業主が配慮をするよう、その事業主に対して助言、指導などを行っていくことになります。 ○小池晃君 これは当然のことだと思うんですけれども、こういう例というのは法律の二十六条の違反ということになるわけですね。 ○政府参考人(岩田喜美枝君) はい、そうです。 ○小池晃君 そこでお伺いしたいのは、NTTの十一万人のリストラが今問題になっているわけです。五十歳を超えたすべての労働者に対して、いったん退職して別会社に再就職すると。この場合は賃金三割カットだと。そうでなければ、NTTに残りたければ全国配転だということが行われておりまして、このどちらか選ぶようにと。国連の勧告を無視する大変な問題だということで我々は主張してまいりましたけれども。 今日は具体例で言うと、NTTを、残ることを選んだ労働者に対して、今、広域配転が次々と迫られておりまして、例えば山口県の女性で、この方は御両親が病院に入って入院していると。子供は小学生で、大阪に行けと言われているそうなんです。御本人は、両親の介護や育児のためにとてもそんな配転には応じられないとおっしゃっている。こういう人に家族の介護や育児ができなくなるような異動を迫るということは、私は、先ほどの例でいえば育児・介護休業法の二十六条に違反するんじゃないかというふうに思うんですが、こういう場合は指導していくということになるんでしょうか。いかがでしょう。 ○政府参考人(岩田喜美枝君) 今の個別の事例につきましては初めてお伺いいたしましたし、今お伺いしたことだけで十分正確な判断ができるかどうかということについては心もとないところもございます。ですから、個別具体的なことでございましたら、所管の労働局の雇用均等室の方で御相談に乗らせていただきまして、個々具体的な事案ごとに判断をして、育児・介護休業法二十六条に違反するということでしたら指導をしていくということになろうかと思います。 ○小池晃君 これ、訴えがあれば指導していくということは当然やっていただきたいと思うんですが、一人出ているというんじゃなくて、これは多数今出ているわけなんですね。 愛媛から大阪への転勤、あるいは名古屋から東京への転勤、全国規模で大々的にそういう動きがございます。これ、五十歳以上だけじゃなくて、四十九歳以下の、五十歳未満の労働者でも例えばこういう方います。大分から熊本へ出向を命じられた。単身赴任しろと言われているんです。子供三人いて、お父さんも同居されているんですが、持病があって足も悪いと。お母さんは高齢で、九十二歳の祖母の方も同居されている。大分離れられないと、どうしたらいいんだという訴えが来ております。何でこういうことが起こるんだろうかと。これNTTに残るんだったらば全国転勤が前提だという、会社の方針としてこれやっているんですね、NTTは。個別に、たまたまそういう例が起こっているということではない。 私は、労働者の育児や介護の状況に配慮しなきゃならないと、先ほどの二十六条の規定からいえば。こういうことでいうと、結局、仕事続けられなくなるわけですから、やっぱり法律の趣旨に照らして、今のこのNTTの全国配転を家族責任を持つ労働者にも一律に強要していくというやり方については大変問題があるんじゃないかと、そういう観点から指導すべきじゃないかというふうに考えるんですが、その点いかがでしょう。 ○政府参考人(岩田喜美枝君) どのような雇用管理をするかというのは、それぞれの企業が労働組合や従業員の代表と御相談しながら決めていかれることであるというふうに思います。 例えば、全国転勤を前提とした雇用管理区分を設けると、そのこと自体問題であるというふうには一概には言えないというふうに思いますが、仮に全国転勤を前提としたコースであっても、個々具体的な転勤の命令を出す場合に、それに先立って、その労働者の子供の養育や家族の介護の状況を把握したり、労働者本人の意向をしんしゃくするなどして、そういうことの配慮をした上で配置転換の決定をするというのが育児・介護休業法の二十六条であるというふうに思います。 したがいまして、企業の方針自体、全体をその二十六条で問えるかというとなかなか難しいというふうに思いますので、やはりあくまでも個々具体的なケースについて最寄りの雇用均等室の方に御相談いただきまして、そこで判断させていただきたいと思います。 ○小池晃君 個々具体的な事例で二十六条違反であればということは、それはもちろんそうだと思うんですね。しかし、全体としてはそういうことにはなかなか難しいというお話ですが、例えば厚生労働省が作ったパンフレットでも、この育児・介護休業法の目的としてこうあるんですね。この法律の定めによって、育児や家族の介護を行う労働者が退職せずに済むようにし、雇用の継続を図ると言っています。 やはり、現実起こっている問題というのは、個々の労働者が置かれている育児や介護の状況を踏まえずに一律に広域配転迫るということが現実にやられているわけですから、これでは事実上、家族責任ある労働者が仕事を辞めざるを得なくなると。私は、個々具体的な問題ももちろんそうなんですけれども、こういう一斉に、全国配転を家族責任持つ労働者にも一斉に迫るということは、この育児・介護休業法の二十六条の趣旨に反するんではないかというふうに考えるんですが、いかがですか。 ○政府参考人(岩田喜美枝君) 今、一斉にというふうにおっしゃいましたけれども、配置転換の移動の命令自体は個々の労働者に対して行われるんであるというふうに思います。この法律は、結果として家族責任のある労働者の配置転換をしてはいけないというそういう結果を求めているものではございませんで、企業の配置転換等の必要性の中で家族的な責任の状況を十分しんしゃくしてもらいたい、本人の意向も十分聞いてもらいたいというそういう趣旨でございますから、やはり個々具体的なケースごとに企業がそれぞれの労働者の状況の把握や意向の確認をやりながらやっていただくことではないかというふうに思っております。 ○小池晃君 その個々の確認をしないでやっているんですからこれはそれとして問題だと思いますし、同時に、配転はもちろん個人ごとにというふうにおっしゃいます。それはそうでしょう。しかし、社としてNTTの場合は正に一律に、残りたければ全国配転が前提だということを方針として出しているわけです。ということでいうと、これは正に個々の労働者にということではなくて会社の方針としてそういうことをやっているわけですから、これは私は法の趣旨に反するというふうに思うんですね。 これ、つい最近問題になったわけじゃない。この間、非常にNTTの遠隔地への移転というのは問題になっておりました。これ九六年にNTTの銚子無線局の廃止で、労働者百二十人が全く違う職種に就かされて遠隔地に配転されました。通信産業労働組合がこれILOに提訴をして、どうなったかといいますと、これ三月二十二日に示されています。ここで言うと、政府は家族的責任は考慮されたと、こう回答しているが、当事者の反対意思は結局無視されたと。職員に移動を強制する習慣を条約の趣旨に更に沿う形で見直すよう期待するというふうに日本政府に対して指摘をされています。 これ、ILO条約勧告適用専門家委員会、専門家委員会の意見というのは強制力あるものではないということですけれども、この条約を批准した政府として責任問われているんじゃないかと。私は、この委員会の指摘を受け止めて改善を図るべきだと考えるんですが、その点はいかがでしょうか。 ○政府参考人(岩田喜美枝君) 御指摘の、ILOの条約勧告適用専門家委員会のオブザベーションについてですが、この専門家委員会には、日本政府といたしまして批准をいたしました条約の履行状況を定期的に報告をする義務を負っております。そういう義務に基づきましてILO百五十六号条約、家族的責任を有する労働者についての条約でございますが、これの実施状況、直近の二年間の実施状況を平成十三年五月末日の時点で取りまとめましてILO事務局の方に報告いたしました。このILOの専門家委員会では、そういった日本政府の報告書などに基づいて審議がなされまして、その結果、先ほど委員が引用なさいましたようなオブザベーションが出たというふうに経緯を理解をいたしております。 したがいまして、その時点では、日本政府が提出しました報告書の内容として、昨年の十一月に改正されました育児・介護休業法の改正内容、したがいまして、配置転換についての配慮義務の規定について報告をいたしておりませんでしたので、そのことが反映されていなかったというふうに思いますけれども、今回、育児・介護休業法の改正によりまして配置転換についての配慮の規定を盛り込んでいただきましたので、この点はILOの百六十五号勧告の規定の内容をも踏まえた内容となっているのではないかというふうに思っております。 ○小池晃君 育児・介護休業法改正したからこのILO勧告にこたえたというのであれば、私は、変わったんだと、実際の運用も、そういう運用をすべきだというふうに思うんですね。法律変わったけれども、NTTの今の大掛かりなこういう労働者攻撃というのを一方で放置していては、私は絵にかいたもちになるということになると思うんです。労働者の意見聞いたけれども、結局、無理な配転全国で一斉にやるということであれば、何のために法改正したのかということになりかねないと。 最後にしたいと思うんですが、大臣にお伺いしたいんですが、これは法改正の際に、当委員会でも全会一致で附帯決議が上がっております。「法の実効性を確保するため、本法に基づく諸制度や指針の周知徹底を図るとともに、的確な助言・指導・勧告を実施すること。」と。 やはり、この育児・介護休業法の精神がきちっと守られるように、このNTTのような非常に全国規模での家族的責任を持つ労働者に対する全国配転というようなことについては、きちっと指導をしていくべきではないかというふうに考えるんですが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。 ○国務大臣(坂口力君) 先般、昨年だったでしょうか、育児休業法。昨年、この育児休業法御審議をいただいて決定したわけでありまして、そして、この転勤等の問題につきましてはこの四月一日から実施に移されたということでございます。四月一日からはこの転勤の配慮規定というものが適用されるようになったわけでございますので、委員が今御指摘になりますことは、総論として申し上げれば、そうした方向でこれから進めなければならないというふうに思っております。 ただ、NTTさんの場合のような具体例になってまいりますと、今までの労使の間の話合いの問題でございますとかいろいろのことが多分あるんでしょう。私、そこは詳しく存じ上げませんので今十分にお答えはでき得ませんけれども、そうした過去の経緯というものもこれは考慮に入れていかなければならないんだろうというふうに思います。 しかし、初めにも申しましたとおり、総論として申し上げれば、今後そうしたことを極力なくしていくという方向で努力をしていかなければならない、そのことに私も異存ございませんし、間違いないというふうに思っている次第でございます。