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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

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153-参-厚生労働委員会
2001年12月6日


○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 私ども、今回の改正は、この間のビル建物の衛生環境保持に必要な事業範囲の拡大を図るものであり、業界の社会的責任の確立を視野に入れたものであり賛成をいたします。
 提案者にお伺いしたいんですけれども、業界は、売り上げ五億円以上の企業は百社余りにすぎません。一社平均四十三名ということです。パートや高齢者が働く中小零細企業が大部分を占める業界であります。今回独立させる空気環境の調整、給水、排水の管理というのは、これはお聞きをすると比較的高度な技術や特殊な技術を必要とするものであると。それだけに、やはり登録業種の拡大というのが中小業者を排除するものであってはならないというふうに考えるんですが、この点についてどのような配慮を考えておられるのか、お答え願いたいと思います。

○衆議院議員(熊代昭彦君) 今回の改正では、御承知のように新たに空気調和ダクト清掃業を追加する等のことでございますけれども、空気調和ダクト清掃業が独立してきた、排水管清掃業も独立してきたということでございますが、それは御指摘のようにかなり高度な技術が必要という面もございます。しかし、必要にして十分な能力があればいいということでございますから、中小企業を排除するものではないということでございますので、その従事者の資格や機械設備などについても合理的で無理のない範囲、必要にして十分ということで定めていっていただきたいというふうに考えているところでございます。
 議員御指摘のように、零細中小企業者が日本の企業の九十数%を占めておりまして、日本の宝でございますので、この活躍の余地を狭めるということはいささかも考えておりませんので、十二分にその点を配慮して法律を実施してもらいたいと考えているところでございます。

○小池晃君 もう一点、私もレジオネラ菌の問題、この対策を強化する必要があるということを申し上げようと思ったんですが、今質問ございまして、検討中だという御答弁もありましたので、ぜひ、これ非常に怖い病気ですので、この問題についての対策を引き続き強化していただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。
 その上で、ちょっと残る時間、私、十一月二十二日に大臣が和解手続に同意をしたヤコブ病の問題についてお聞きをしたいというふうに思います。
 先日、井上議員が七三年のヒト乾燥硬膜の承認過程について質問いたしました。きょうは、その後の八五年に起きた事件について私お聞きをしたい。
 ここに、八五年五月八日付の毎日新聞の一面であります、これのコピーを持ってまいりました。これは、アメリカでヒト成長ホルモンの投与を受けていた下垂体性小人症の患者三人が八四年十一月から八五年四月にかけて亡くなった、一人はクロイツフェルト・ヤコブ病と診断された、残り二人もその疑いが持たれているという記事であります。この記事では、成長科学協会と厚生省、さらに同省のスローウイルス感染調査研究班長が検討会を開いたとしております。
 当然、当時の厚生省は、この下垂体製剤によりヤコブ病に感染して死亡された患者さんが出たという事実は把握しておられたんですね。

○政府参考人(宮島彰君) 御指摘のヒト成長ホルモン製剤によってクロイツフェルト・ヤコブ病の感染の症例が発生したという事実は当時把握しておりまして、先生御指摘のように、昭和六十年四月二十七日に、成長科学協会と厚生省の担当者とそれから遅発性ウイルス感染調査研究班長による意見交換会でこの問題を取り上げております。

○小池晃君 当時、既にライオデュラは広く使われていた。下垂体製剤でヤコブ病に感染するならば、同じ近くにある組織なわけですから、硬膜による感染ということについてもこれは当然検討は行ったんですね。

○政府参考人(宮島彰君) 今御指摘のヒト成長ホルモン製剤によりますクロイツフェルト・ヤコブ病の感染につきましては、非常に短期間、約半年間に御指摘のように三つの症例が次々と把握されたということが一つございます。それからもう一つは、ヒト成長ホルモン製剤は脳組織であります脳下垂体を原料として製造されるということでございまして、脳組織がクロイツフェルト・ヤコブ病の感染媒体となることは当時の動物実験結果から判断できましたので、したがってヒト成長ホルモン製剤がクロイツフェルト・ヤコブ病の感染媒体として危険性があるということが当時は認識されたものであります。
 これに対しまして、ヒト乾燥硬膜につきましては、昭和六十年当時におきましてはクロイツフェルト・ヤコブ病感染を示唆するような症例報告はまだございませんでした。それから、硬膜自体は脳組織ではございませんので、そういう違いがあるためにヒト成長ホルモン製剤と同様に当時は考えることができなかったものというふうに思っております。

○小池晃君 今、いろいろおっしゃいましたけれども、それは検討した結果なんですか。その当時、八五年のこの問題が出たときに、厚生省として検討したんですか。そのことを聞いているんです、私。

○政府参考人(宮島彰君) 先ほど申しました昭和六十年四月二十七日にこの問題を取り上げまして、成長科学協会、厚生省、それから遅発性ウイルス感染調査研究班長による意見交換を行いましたが、そのときの議事録等は確認されておりませんけれども、その後、四月三十日付でこの意見交換会の内容が成長科学協会から声明の形で表明されておりますけれども、その中では具体的には、このいわゆる乾燥硬膜が検討されたという形跡は見られないというところでございます。

○小池晃君 検討していないわけですよね。その当時、医療材料の中で人の死体から採取した初めての医療材料だったと。先日、当委員会で井上議員が指摘したように、この承認の過程は治験のデータもないわけです。わずか九枚の承認申請書、わずか三カ月の承認期間。もしこの承認のときに危険性について一定の検討がされておれば、私はこういう事例が起こればこれはほかにもいろいろあるんじゃないかということで検討の俎上に上がったって間違いないと思うんです、不思議はないと。要するに、全然検討していないからこういう事件が起こっても検討の俎上にすら上がらなかったということなんじゃないですか。
 私は、下垂体でも硬膜でもヒト組織由来というものでは同一なんだから、だとすれば、下垂体でこういう感染事例が起これば、少なくとも結果として検討して安全だという結論に至ったというならまだしも、これはこの可能性も疑って少なくともその検討がされてしかるべきだったんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(宮島彰君) 先ほど申し上げましたように、ヒト成長ホルモン製剤におけますこのクロイツフェルト・ヤコブ病の発症が非常に短期間に集中して三名発生したということと、脳下垂体自体が脳組織として動物実験等でもその感染の危険性が指摘されたということで、当時はかなり明確にこの危険性については認識されたというふうに思います。
 ただ一方、硬膜からのクロイツフェルト・ヤコブ病の感染につきましては、御承知のように、昭和六十年当時はまだ発症例が全くゼロの段階でありますし、硬膜自体は当時の見解では脳組織でない部分であるという認識から検討対象にはならなかったんではないかというふうに思っております。

○小池晃君 私は、今のは全然説明になっていないと思いますよ。
 だって、脳組織だけじゃないんですよ、感染の危険性が指摘されていたのは。例えば、一九七四年の段階でダフィーは角膜による感染を症例報告しているわけですよ。だから、脳組織だけが感染源だったなんというそんな知見はないんですよ。ヒト組織だったらあらゆる部分が感染の危険性は排除されていなかったんですよ。しかも、一九七六年には、クロイツフェルト・ヤコブ病の病原体、その当時プリオンとわかっていなかったけれども、これは放射線抵抗性があるということも証明されていたわけです。そして、一九七八年には、日本のガンマ線の滅菌条件ではクロイツフェルト・ヤコブ病は除去できないということまで証明されているんです。ですから、伝達性も証明されている、それで不活化も困難であるというふうになっている。
 そういう知見がある中で、こういう下垂体による組織製剤からヤコブ病の患者が出たということを受けて、そういう情報を厚生省は持っていたわけです、きょうもお認めになりましたけれども。持っていたのであれば、その時点で私は検討されてしかるべきだったんじゃないかというふうにお伺いしているんです。大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) きょうはビルのお話かと思いましたらヤコブ病でございまして、驚いておりますが、今ずっとお話を聞いておりまして感じますのは、やはり現在の時点の医学的知見で言えばさまざまなことが言えますけれども、その当時は何らわかっていなかったころでございます。
 一九八七年になりますが、アメリカで第一例が出ました。同じ年に日本の国でも発生をしているわけであります。同じく、アメリカも日本も、ふだんならば出ないお若い人に発生をしているわけであります。アメリカにおきましては、なぜ若い人にそれが発生をしたのかということを非常に不審に思って、それは脳硬膜との関係があるのではないかというのですぐ脳硬膜の禁止措置をとった、輸入禁止措置をとったということでございましたが、日本におきましては、同じ一九八七年にそうした症例があったにもかかわらず、しかも日本の中の権威ある大学病院の脳神経外科においてそうした症例が発生しておるにもかかわりませず、日本におきましてはそれが問題にならなかった。一言で言えば、日本におきます医学のおくれということで片づけられることではないというふうに思いますけれども、そうした違いがあったことは事実でございます。
 一九八四年時代のことが今論議をされましたけれども、一九八七年にいわゆる脳硬膜を使って手術をされた方にその後でクロイツフェルト・ヤコブ病と思われる症例が発生したにもかかわらず、そのことが問題にならなかった。その事実をもちまして、先般の地裁におきましては、さまざまな問題はあるけれども、ひとつ和解をしてはどうかという結論に私はなったというふうに理解をいたしております。いつからこのいわゆる法的責任があるのかという問題がありますけれども、その「法的責任の存否の争いを超えて」と、こう裁判所が仰せになったのはそういうところを踏まえてのことではないかというふうに私は理解をいたしております。
 したがいまして、もうそこまで話は行ったわけでありますから、これから先どうするかということでありまして、またその前の法的責任を今ここで論じてみてもなかなかそれは定まるものではないと私は思います。

○小池晃君 私は、一般的な医学的知見の問題を言っているんじゃないんですよ。あなたね、東京地裁の和解に関する所見に何と書いてあるか。国民や医療従事者の監視能力には大きな制約があるから、医薬品等の安全性確保の最終的な番人の役割は厚生大臣に期待するほかないというふうに裁判所は言っているんです。その当時の医学的知見がどうのこうのの問題じゃないんです。これは、やはり厚生大臣というのはそれだけの責任があるんですよ。
 責任の問題はともかくというふうにおっしゃった。しかし、私、申し上げたいのは、ヤコブ病の被害者というのは、八七年以前に手術を受けようが八七年以後に手術を受けようが汚染された硬膜を使用されたかどうか知り得る立場になかったわけですから、ここで線が引かれて救済がされたりされなかったりするということはあってはならない、どう考えてもおかしいと思うんです。
 最後にお伺いしたいのは、法的責任の存否の争いを超えてと言うならば、八七年という時点で線を引いたりせずに被害者全員を一刻も早く救済する、私、そういう立場で和解協議に臨むんだと、これが国の最低限の責任じゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) だから私は言っているんです。裁判所が法的責任の存否の争いを超えてとおっしゃったんです。だから、それ以上のことをここで言ったって仕方がないので、そういう御趣旨に従ってこれから和解を進めていく、それ以外にありません。

○小池晃君 終わります。
 

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