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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

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151-参-厚生労働委員会-18号
2001年06月21日


○小池晃君
 日本共産党の小池晃です。
 まず最初に、そもそもの問題なんですけれども、この確定拠出年金を導入する目的について簡単に御説明を願いたいと思います。

○政府参考人(辻哲夫君) 確定拠出年金は、確定給付型の現在の企業年金に比べまして、中小零細企業などにも普及しやすい、それから転職の際の年金資産の移しかえ、すなわちポータビリティーといったことが十分確保されて労働移動に対応しやすい、こういった利点がございまして、現在の雇用の流動化への対応など、いわば我が国社会の状況変化に対する構造改革に資するもの、それから、特に中小零細企業や雇用の流動化が高まる企業の従業員などの方々にとっては、年金制度のいわゆる三階部分の充実につながる、こういったことが導入する意義でございます。

○小池晃君 確定拠出年金を導入する目的ということで、中小零細企業への普及ということとポータビリティーと、大きくこの二つを今言われたわけですけれども、それぞれ本当にメリットというふうに言えるのかということをちょっと一つずつ議論をしていきたいというふうに思うんです。
 まず、ポータビリティーの問題であります。確定拠出年金はポータビリティーがすぐれているんだ、すぐれているんだというふうに言われるんですけれども、本当にそうなんだろうか。これは、例えば企業型の年金に加入していた労働者が三年以上勤務して、その労働者が転職をして、転職先の企業に、移動先に確定拠出年金がなかった場合というのはどういう扱いになるんでしょうか。

○政府参考人(辻哲夫君) 御指摘の企業型年金に加入していた従業員が企業型年金を実施していない企業に転職いたしました場合、まず転職先の企業で確定給付型の企業年金を実施していない場合は、国民年金基金連合会が実施する個人型年金に従業員の資産を移換して資産運用を続けるということになる上に、さらに本人が希望すれば個人型の加入者となり、みずからの掛金拠出を行ってそれをふやしていくということができます。
 一方、転職先の企業で確定給付型の企業年金を実施している場合は、当該企業に従事している間は、それまでの確定拠出型の年金を個人型年金に移換して、運用指図者として運用のみを行うということとなります。

○小池晃君 転職先に確定拠出年金があればそのまま移動していくことはできるわけですけれども、なければ個人型に加入するか運用するだけと。ぎりぎりの生活をしている労働者にとって、個人型年金の拠出金を出すというのは大変重い負担になると思うんですが、しかもこれは六十歳になるまで引きおろせないわけですよね。そういう制度、こういう拠出を労働者が果たしてするのか。私は、現実的には大変これは労働者にとってはきつい負担になると思うんですが、どうですか。

○政府参考人(辻哲夫君) ただいまの、就職先で確定拠出に入れない場合は逆に確定給付があるということでございますけれども、いずれにいたしましても、掛金を個人が出せるのかということにつきましては、旧総務庁の調査によりますと、勤労者世帯では将来に備えて貯蓄をふやしている状況でございますが、平成十年では、世帯収入が四百九十五万円以下の勤労者世帯にありましても、一年間で三十万円強貯蓄をふやしている状況であると承知しております。
 こういうような状況を踏まえれば、個人型年金に加入し、年十八万円という拠出限度額の範囲内でみずから拠出し得る額を任意に定め、掛金を拠出して老後に備えようとお考えになる従業員も多いものと存じます。
 以上でございます。

○小池晃君 いや、貯蓄をするというのは将来の不安があるからですよ。やはりそれは当然でしょう、老後の不安で。介護保険の負担もふえている、公的年金は削られる、医療費の負担もふえている。それに対して個人が備えるというのはこれは当然、そういうふうに皆さんは大変深刻な状況に置かれているわけですよ。
 果たして、じゃ確定拠出年金というのはどうか。これは六十歳まではおろすことはできないわけですよね。手数料を取られ続けて、運用だけになってしまうと。確定拠出年金という制度は自己責任の制度なんだ、運用も自己責任だといいながら、なぜこれ、じゃ引き出しは六十歳までできないのか。
 例えば、三年以上拠出した労働者が公務員になった場合、これは確定拠出年金にそもそも入れないわけですよ。そうすると、積み立てた分というのは六十歳になるまで運用を指図するだけだということになるわけですね。それからまた、退職して第三号になった場合、先ほども議論ありましたけれども、第三号被保険者になった場合も延々と運用だけを続けていくと。
 途中でおろせるというのであればある程度頑張って、貯蓄はそういうことでしているわけですから。でも、六十になるまでおろせないと。これから六十になるまで一体何が起こるかわからない。すぐに六十になるんだったらいいですけれども、私だってあと二十年ある。これから二十代、三十代で入る人は三十年、四十年あるわけですよ。何が起こるかわからない中で、六十歳までおろせないような拠出を続けるか。例えば、二十二歳で学校を卒業して就職をして、五年間働いて結婚して退職して第三号被保険者になったと。そうしたら、六十歳になるまでこれは三十三年間あるわけですから、三十三年間この運用だけやる。
 結局、こんな形では、長期にわたる運用で手数料収入が入ってくるのは金融機関、もう金融機関が喜ぶだけの制度になるんじゃないかと。こういう問題にどうお答えになるのか。

○政府参考人(辻哲夫君) まず、六十歳まで引き出せないということにつきましては、確定拠出年金はあくまでも老後の所得の確保を図ることを目的として設けられるものでございますけれども、御指摘の中途引き出しを認めることになれば、貯蓄との区別がつかないため、老後のための制度にならないことから認められないということでございます。
 先ほど御指摘のありました貯蓄、これはやはり私どもも老後への不安が大きい、遠い将来への不安が大きいということが大きな理由だと認識いたしておりますけれども、そうであればこそ、税制上の優遇措置をもって老後のためにこの拠出年金に参加しよう、加入しようという考え方は、制度の定着とともにふえていくものと考えておりますし、そのような意味で、最も不安の核心である老後に確実に給付がされるという意味での意味があるということと、それから、恐らくこれからは雇用流動性が高まっていくという中で、ポータビリティーのある年金というものが次第により意義のあるものとなると考えております。

○小池晃君 私、これは自己責任を運用面も含めて押しつけながら、引き出しができないという一点で貯蓄と線を引くと。こういうのは本当に、結局、そもそも確定拠出という制度そのものがやはり年金制度になじまないからこんな無理なことになるんだろうというふうに私は思うんです。
 ポータビリティーがすぐれているといいながら、結局、転職先に確定拠出制度がなければこれは意味をなさないわけですね。公務員になったり第三号被保険者になったらその途端に途切れる、このような制度で果たしてポータビリティーにすぐれているというふうになぜ言えるんだろうかと。
 私は、究極のポータビリティーというか、一番ポータビリティーという点ですぐれているのはやっぱり公的年金だと思う。とりわけ、やっぱり基礎年金を拡充させることだと思うんですよ。どのような職につこうとも、公的年金、基礎年金を充実すれば、これは終生のポータビリティーが維持できるわけであります。やはり基礎年金だけできちっと生活をしていけるという土台をつくって、その上で報酬比例の公的年金をしっかり維持して、それがやはり労働者にとって最もポータビリティーを保障する一番のやり方ではないかというふうに思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 御指摘のとおり、基礎年金、厚生年金、公的年金は実質的な価値、すなわち賃金の上昇をも含めたものとして遠い将来も価値が保障される、そして国民である限り基礎年金、そして被用者である限り厚生年金といったことが必ず適用されてつながれるという意味で、御指摘のとおりのまことに大切な制度だと考えます。
 したがって、この制度を本当に長期的に維持発展させていかなければならないわけでございますが、そのような意味におきましては、将来とも負担可能な範囲内でとどめる、そして持続可能なものとするということも非常に大切でございまして、そのような観点に立ちましてこれまでも改革の努力をいたしましたし、今後ともこの大切な年金が維持できるように、給付と負担の均衡を図り、改革を重ねてまいりたいと考えております。

○小池晃君 私は、ポータビリティーにすぐれていると言うけれども、この恩恵にあずかれる人というのは、極めて特殊な能力を持っていて、ベンチャー企業をどんどん渡り歩いていけるようなそういう労働者にとっては確かにメリットはあるかもしれない。でも、やはりポータビリティーという点でも非常にいろんな問題、大きい、ポータビリティーにすぐれているというふうに必ずしも言えない面が多々あるんではないかというふうに思うんですね。
 それから、もう一つのメリットでありますけれども、中小零細企業への普及を図ることができるんだということですね。この面についてちょっと聞きたいんですけれども、今回の確定拠出年金の制度の中で、中小零細企業に対して何らかの優遇措置というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(辻哲夫君) この確定拠出年金の制度は、税制上優遇措置を行うことといわばパッケージになっているわけでございますけれども、その税制上の優遇措置は、既存の年金制度における税制上の優遇措置との均衡上、可能な限りのものを導入するということで組み立てられております。
 特に、中小企業におきまして確定給付型がない場合に、既存の何らの支援もない場合にも加入できるということにしたといったことで、何とか中小企業に、今言いました税制の体系の均衡上、導入できる限りの努力をした。その結果、むしろ今まで何もなかったところに新たに企業年金が導入できる。その結果、税制上中小企業だけに着目した体系にはなっておりませんけれども、中小企業の従業員の方にも、その結果一定のメリットが生じるものというふうに考えております。

○小池晃君 今の説明は、要するに制度そのものが中小企業にとって導入しやすいということであって、制度の中に中小企業に対して導入を優遇するようなシステムが組み込まれているんですかということを聞いているんです。

○政府参考人(辻哲夫君) 中小企業特有の中小企業という定義に着目した措置はございません。しかしながら、何らのいわば企業年金の支援がないというのは中小企業に事実として多いのではないかと考えますので、その点においてメリットがあるという趣旨でございます。

○小池晃君 中小企業そのものに導入することを進めるような制度的な仕組みが組み込まれておるわけではないわけであります。制度そのものが中小企業向きなんだというふうにおっしゃるけれども、それはなぜかといえば、中小企業の経営が不安定で、やはり確定給付年金を単独で維持していくことが大変困難だということに私はほかならないと思うんですね。だから、確定拠出で中小企業の労働者はリスクに耐えなさいということになるとすれば、これは弱みにつけ込むようなやり方だと言われても仕方ないんじゃないか。
 中小企業向けには、例えば既に中小企業退職金共済制度、いわゆる中退金というのがあるわけですね。中退金は、これは新規に加入した企業あるいは増額した場合なんかには、掛金とか増額分に対してはこれは国からの助成が行われているわけです。今年度予算で見ると九十億円ですね。これは助成が削られてきている、問題だということをおととい井上議員が指摘をしましたけれども、それでも今九十億円。さらに、人件費、事務費で四十六億円助成もされている。
 私は、中小企業にとって老後の生活に備えるということであれば、こういう制度を拡充すること、これは中小企業にとってメリットがずっとあるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 御指摘の中小企業退職金共済制度は、年齢を問わず退職ということを事由として給付が行われるということでございますことと、中小企業のみを対象とするということから、ポータビリティーもこの適用対象とする中小企業の範囲内だけであるということに対しまして、確定拠出年金は退職というだけでなく老後の、これは六十歳ということが支給開始の年齢になっておりますが、老後の所得保障のために導入されるという点、それから中小企業を退職して大企業に勤めたりあるいは自営業者となった場合もポータビリティーが確保されるといったことで、中小企業退職金共済制度と確定拠出年金は、老後であるか退職であるか、あるいはポータビリティーの幅の広さ、こういったことから目的や内容の異なるものでございまして、これから高齢化が一層進んでいく中で国民の老後の所得確保を一層充実させるためには、新たな確定拠出年金も選択肢として必要であると考えております。

○小池晃君 ポータビリティー、ポータビリティーとおっしゃるのは、先ほど議論したんですけれども、例えば全国中小企業団体中央会の九九年十月のアンケートではこう言っているんですね。
 今のところ、確定拠出年金制度を導入する考えはない、そう答えている中小企業は五七・四%であります。半分以上の企業は当面導入するつもりはないと。そういう中で導入をしても、ポータビリティーといっても、転職先に確定拠出がなければそのメリットというのは生かせないわけですね。私は、ポータビリティーという点でも中小企業への普及という点でも、この確定拠出年金のメリットだと言われているものは極めて根拠薄弱だというふうに思うんです。
 メリットがないだけではなくて、やはり大きなデメリットがあるということを引き続いて議論をしたい。運用の問題であります。
 運用の問題では、株式投資が中心ではなくて国債や投資信託が中心というような言い方もされていますけれども、株式投資信託の実態はどうなっているか、これは実績データを見るとこんな感じなんですね。一応純資産が一千億円以上の主なものだけ拾ってみました。
 五月三十一日現在で、野村証券のノムラ日本株戦略ファンド、六千四百三十三円です。野村証券のノムラジャパンオープン、六千九百六十円、それから日興証券の日興エボリューション、七千二百十三円、同じく日興証券の日興ジャパンオープン、八千三百三十九円です。それから大和証券のデジタル情報通信革命というのが六千五百十五円、それからアクティブ・ニッポン、六千五百四十七円。そもそも一万円だったんですから、これがもう軒並み六千円から八千円になっちゃっているんですよ。これが実態なんです、株式投資信託の。管理コストもかかる、それからこの制度では運用時には特別法人税が課税されるわけですね。
 やはり株式投資信託を選んだ場合、今のような相場の状況であれば、ほとんど元本割れどころか大変なマイナスを加入者はこうむるということになるんじゃないでしょうか。どうですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 確定拠出年金の運用商品は、常に個人別の資産の額を把握できるように時価評価が可能であること、それから商品の変更が迅速にできることといった条件を満たせばその対象とできるということから、御指摘の株式投資信託についてはこうした条件を満たすものであって、運用商品として提示される対象になるものと考えております。
 株式投資信託、ただいま御指摘のありましたものは、まさしく日本の株価がまた未曾有の下落を最近示したときの下落の経過、そのときにぴたっと合ってしまったという例でございますけれども、まさしくそのように、そういう性質上、元本割れのリスクはあるわけでございますけれども、ただ、中長期的に見れば、株式は債券の収益率を必ず上回ります。この制度は六十歳まで引き出しができない、まさしく老後のためということで、ひとつこれはきちっと別にしようという制度でございますので、まさしく超長期運用を前提としております。したがいまして、中長期的には高いリターンが期待できる株式投信というのは、運用商品として十分の確認の上で選択された上で選択される対象としてニーズがあるものと考えております。
 いずれにいたしましても、株式投資信託につきましては、労使合意によりまして規約で運用商品に関する基本方針を定めるということになっておりますので、これを運用商品としてこの方針の中に含めるかどうか、これは労使で十分議論していただくということが必要でございますし、また、加入者の資産運用のあり方や運用商品の情報提供におきまして、十分この運用商品についての内容を説明する、情報提供するという形で株式投資信託も扱われていくことが適切であると考えております。

○小池晃君 年金の長期運用というのは大変難しいわけですよ。おととい、局長もはっきり言っていたじゃないですか、おとといの審議で。年金福祉事業団の私は資金運用部長をしていたんだ、そのとき半分以下しか当たらなかったと局長がおっしゃったんですよ。将来を予想するのはいかに難しいか痛感しているとおっしゃったじゃないですか。プロがこれだけ、要するに年金福祉事業団の資金運用部なんというのはもう毎週のように専門家を呼んで意見を聞くわけでしょう。一番言ってみれば最先端の情報が最も豊富にある中で判断をしても、あなた正直に言ったんですよ、半分以下しか当たらなかったと言ったんですよ。
 それをそんな難しいことを、その運用を国民に押しつける、やはりこういうことが果たしていいんだろうか。よい結果が生まれると思うんですか。あなた、自分もできないことを国民に押しつけるんですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 私が申しましたのは、まさしく毎週市況を聞くわけでございまして、次の週はどうか、次の週はどうかという短期の予測についてのことを申し上げました。中期においてさえそうだと思いますが、予測というものはいかに難しいものかということを痛感したものでございます。
 長期運用につきましては、そうであるからこそ、一定の短期的な期間の価格上下動にいわゆるベットするといいますか、かけて投資するのではなくて、一定の市場に対応するような、パッシブ運用と申しておりますけれども、一定の市場に連動するような資産構成を持って、そしてポートフォリオ、すなわち資産のバランスを政策的にリスクをどこまでとるかを決めて、そしてむしろ短期的な市場変動に右顧左べんしないで長期的に運用する。そのように私が申しました趣旨は、短期的な見通しがいかに不安定なものであるかということであるからこそ、パッシブ運用と申しますけれども、より幅の広い商品のもとで長期運用に徹することが必要だ、こういう気持ちで言ったものでございまして、決して私が申しました、ちょっと誤解があったらおわびいたしますけれども、毎週毎週聞くような予測というものはなかなか当たらないということと、長期運用というものが適切にできるかどうかということは別事でございます。
 今の年金福祉事業団の資産運用、大変厳しい状況にありますが、これは買った株を間違ったとかそういった意味よりも、むしろ株式についてはパッシブ運用、すなわち市場に連動した市場全体の株式構成で運用しておりますので、むしろ未曾有の日本の株価下落というものの影響を受けているということでございまして、これは短期的には株価は必ずぶれます。しかし、長期的には必ず収益率というのは安定していくということで、今の時点での結果のみで評価するべきものではないと考えております。

○小池晃君 おとといの議論で局長がおっしゃったのは、当面のことは予想は難しいけれども、長期は予想できないなんておっしゃっていないですよ。半分以下しか当たらなかった、将来を予想するのはいかに難しいか痛感していると言ったんですよ。正直に、長期に、年金なんというのは最も長期の運用なわけですよ。そういう中で、やはり将来にわたってこういう資金の動向などを、いろんな要素があるわけですから予想していくのは大変難しい。やはりそういうものを国民に押しつけていいのかというふうに思うんです。
 それから、元本保証の商品もあるんだということをいろんな場所で弁解されているけれども、これは預貯金や国債ということになるわけですよね、主に商品としては。そうすると、これはまさに預貯金だと。預貯金じゃなくて今度の制度は年金だというふうに言いながら、リスクがあるんだというふうに指摘をすると、いや、一方で元本割れしない商品があるんですというふうに逃げるわけですね。それだったら、例えば財形年金貯蓄制度と何も変わらない。何のために確定拠出年金制度をつくったのかということになるんじゃないだろうか。
 元本割れしない商品があると言うけれども、こういう商品というのは、言ってみれば今度の制度でいえば管理コストもかかる、特別法人税もかかる。実際の運用利回りというのは極めて低くなるわけであります。その上、六十歳になるまで引き出せない。だれがこんなものに金融商品の一つとして見たときにメリットを感じるか、魅力を感じるか。私、大変この制度、いろんな言いわけをすればするほど矛盾がはっきりしてきているんじゃないかというふうに思うんです。
 その上で、手数料の問題、管理コストのことをちょっとお聞きしたいんですけれども、この管理運用コストが重いんだと、先ほども議論がありました。先ほどの投資信託で見ても、例えば野村証券のノムラ日本株戦略ファンド、これは販売手数料が三%です。信託報酬が一・九%。約五%のコストがかかっております。これは一兆円販売したというふうに言われていて、五百億円の手数料を集めているんですね。それがさっき言ったように一万円のものが六千円におっこっちゃっているわけですよ。
 私は、確定拠出年金というのは、確定給付に比べて管理運用コストがかかる上に、やはりこれが原則として加入者の負担となるということも言われている。これは手数料の軽減を図る努力をすべきではないかというふうに思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 管理コストの体系でございますけれども、基本的には管理コストは運用方針の中で定めるということで、一括して定められるということと、それから別途の体系があるのは投資信託だけという体系になっております。
 投資信託を採用する、選択するということがない限りの管理コストでございますけれども、これは私ども多くの機関によって競ってより適正なものとしてほしいと考えているわけですけれども、米国の四〇一kにおける管理手数料、投資信託に対する手数料を除いた分の管理手数料でございますけれども、〇・六%というデータがございますけれども、こういうものも踏まえながら設定されると聞いておりまして、より適正な競争が行われることによって適正な水準となるように私どもは考えております。

○小池晃君 これは、競争の中で手数料が下がっていくんだというふうに、引き下げが進んでいくだろうというふうにおっしゃるんだけれども、そういうものだろうかと。
 新聞で、三井住友銀行の執行役員の中野健二郎さんという方がこう言っているんです。コスト割れの手数料でサービスを提供し続けるのは無理がある、そうでなくてもレコードキーピング会社や運営管理機関は、市場規模が大きくなるまで厳しい運営を迫られる、投資回収まで七年から十年はかかるだろうと。実際はコスト削減は極めて困難だというふうに金融機関の側は言っている。
 これはアメリカでは、アメリカの確定拠出年金はリスクを、リスクそのものも企業が一定負担している場合もある。さらに、受託金融機関の手数料を含む管理運用コストは大半の企業が負担しているわけであります。ちょっとお聞きしたいんですけれども、日本の場合は、この確定拠出の仕組みは事業主が元本割れした分を補てんしたり一定の利回り保証をするということができるのか。あるいは、事業主が管理運用コストを負担することは制度上できるんでしょうか。

○政府参考人(辻哲夫君) まず、確定拠出年金におきまして事業主が元本割れした分を補てんできるかどうかにつきましては、これは元本保証があることになりますので、加入者はハイリスク・ハイリターンの商品のみで運用しようとするといった、いわゆる加入者のモラルハザードを招くおそれがあるということで、自己責任という制度の趣旨とも相入れないこと、それから、元本が割れたり運用結果が一定の利回りに満たなかった一部の加入者についてのみ事業主が追加して掛金を拠出することとなって、これは特定の者に対する差別的な取り扱いになってしまう、あるいは、仮に拠出限度額そのもののぎりぎりの、目いっぱいの拠出が行われている場合、制度的に追加拠出が認められないということと不整合であるということから、これは不適切であり、確定拠出年金法案ではこの点は認められておりません。
 ただ、企業年金における管理運営コストは今言ったような趣旨とはまた違う次元の問題でございますので、企業が全部または一部を負担することも可能であり、どのように負担をするかは労使で十分協議をいただきたいと考えております。

○小池晃君 元本割れした分の補てんは、あるいは一定の利回り保証というのはできないけれども、管理運用コストを一部もしくは全部事業主側が負担することはできると。
 すかいらーくの執行役員の大場典彦さんという方はこう言っています。制度変更で従業員の不利益にならないようにするというのが会社の方針なので、関係機関に支払う費用の多くは会社側が負担することになるかもしれない。これは私、当然あるべき方向だろうというふうに思うんです。やはり事業主が管理運用コストを負担することが制度上はできると。
 これは、負担しやすいような環境を整備するための努力を厚生労働省としては当然するべきだというふうに思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

○政府参考人(辻哲夫君) 確定拠出年金における管理運用コストについては、ただいま申しましたように企業が負担することも可能でありますので、企業が負担した場合に負担金を損金算入できる方向で現在税務当局と協議しているところでございます。

○小池晃君 年金の運用問題、先ほどいろいろ議論しました。
 さらにお聞きをしたいんですけれども、旧年金福祉事業団、現在、年金資金運用基金になったわけですけれども、ここが自主運用を行っているわけですけれども、ことし二月末での運用の赤字額、これは幾らになっているんでしょうか。

○政府参考人(辻哲夫君) 本年四月に解散しました年金福祉事業団が行っておりました資金運用事業の年度末の集計、全体分析を今行っておりますのでまとまっておりませんが、二月末時点の運用実績について、資金運用部への利払いコストや民間運用受託機関への運用手数料等について一定の前提を置いて試算したところを申し上げますと、平成十二年四月から平成十三年二月までの十一カ月間の総合収益額は、金利や配当収入などの実現収益額約四千億円のプラス、株式の大幅な下落等に伴う評価損の約二兆二千億円のマイナス、これを合計いたしますと約一兆八千億円のマイナスとなっております。
   〔委員長退席、理事亀谷博昭君着席〕
 なお、前年度の、十一年度の単年度の総合収益額は約一兆八千億円の黒字となっておりました。したがって大変な落ち込みでございますが、これは主として株価のこれまで上昇に支えられたものが、一転、十二年度は株価が未曾有の下落を示したということに伴うものでございます。
 なお、同様に試算した十三年二月末時点の累積の利差損益額に関しましては、今申しましたような十二年度の大変大きな落ち込みがございまして、時価ベースで二兆円の赤字、簿価ベースで一兆八千億円の赤字でございまして、時価ベースで十一年度末に約五千億円の黒字になっておりましたが、これも十二年度の株価の大きな下落でこのような状況になっております。
 なお、三月に若干株式市場が持ち直しておりますので、今の額は、三月分を含めますと、若干でございますが改善する見通しでございます。

○小池晃君 これは、自主運用で大変な赤字を出しているわけであります。これは、年金の法案の審議をこの委員会でもやったときのことを思い出すんですけれども、あのときは、赤字だと言ったら、いや、今黒字になっているんだということを盛んに厚生省はおっしゃったんですね。ところが、一年たってみるとどうか。また一兆八千億円の赤字だと。大変やはりリスクが伴うということがこれははっきりしていると思うんですね。
 大臣、ちょっと今までの議論を踏まえてお聞きをしたいというふうに思うんですけれども、年金局長みずからが大変難しいんだと。プロ中のプロでしょう、言ってみれば。そういう人でさえ難しい、将来を予測するのは大変難しいんだと。これは実際にこの厚生年金の運用の成績を見ても、これだけ欠損が出ているわけです。やはり、プロがやってもこれだけ難しいことを国民に押しつけてよい結果が生まれるんだろうか。
 大体、労働者が老後の資金のために、貯金で自分で、本当に自己選択で自分の世界でやるんだったらいいと思いますよ。でも、年金という形で老後の資金を、毎日毎日相場を気にしながら仕事をしなければならない。あるいは、これは、高齢者になって受給者になってからも、毎日毎日どうなるかと新聞を見て、相場を見ながら一喜一憂しながら老後の生活を送らなきゃいけない。
 私、これは根本的に、そもそもこういうあり方、こういう社会というのは正常な社会なんだろうか、正常なあり方なんだろうか。年金の制度の中にこういうものを組み込んでいくということが果たしていいことなんだろうかということ、その根本的なところを大臣に見解を私は伺いたい。

○国務大臣(坂口力君) 今回のこの確定拠出年金というのは、多様なやり方というものを取り入れているわけでありまして、株を別に全部強要しているわけではありません。これはもう御承知のとおりであります。
 衆議院でもお答えを申し上げたわけでございますが、私なら、そういう才能はありませんから、定期と国債、十年国債と二十年国債、それでもう私は行きますと。そんな、私はそれは株は選びませんと、こう申し上げたわけでございますが、それはそれぞれの選び方でございまして、そういう株を選ぶ人も中にはあるでしょう。しかし、すべての人に株を選べということを強制しておるわけではなくて、ほかの行き方を、いろいろの道を選択していただけるようにしているわけでありますから必ずしも、株が上下しますから、それに一喜一憂全部がするというわけではないと思います。株というのは大体上がったり下がったりするのが株でありますから、それはその日その日によって違いますので、それで、一時上がった、下がったといって一時的に見て判断をするというのは、私は誤りなんだろうというふうに思います。
 ですから、確定拠出年金の場合にはいろいろの選択肢を与えているというところに特徴があるわけでございまして、また株も、恐らくどこかの会社の一つの株を買うとか買わないということではなくて、幾つかの株式を組み合わせたものを対象にするんだろうというふうに思っておりますが、そうした行き方も個人個人がされる場合にもそれは中にはあると思いますけれども、個人ではなくて組合全体で一括しておやりになる場合もございましょうし、いろいろのそれはやり方があるだろうというふうに思います。
 そして、中にはもうそういう株式なんかはやめておこうということが最初から合意できれば、それは、そういうことを排除して、そうしておやりになるというケースもあるだろうというふうに思っておりますから、株は予測できないものだからどうだといって小池先生から言われましても、それはなかなか答えにくい話でございまして、株というのは予測できないものだと、私もそれはそう思いますけれども、必ずしも、だからそれを強要しておるものではないというふうに思います。

○小池晃君 私が言っているのは、そもそも株をやるかどうかは個人の選択ですから、それは別にいい悪いはないわけですよ。年金制度としてこういう日々相場を気にしながら、動向を見きわめながらということが個人に問われるような制度が年金制度としてふさわしいのかどうかということについての大臣の見解を伺っているんです。

○国務大臣(坂口力君) ですから、そういう選択肢があるわけで、そういう選択をされる方はやはりそういうことに興味をお持ちの方でありますから、それは私は、年金というものに一つの関心を持っていただくということにはなるんだろうと思うんですね。年金の運用というものを全部人に任せるというのではなくて、自分でやはり運用していきたい、そういうふうにお思いになる方、その中に、やはり株式で運用していきたいというふうに思われる方も中にはおみえになるだろう。それはそういうふうにお思いになる方もおみえになるわけでありますから、そこはやはりお任せをしてもいいのではないかというふうに思います。

○小池晃君 選択肢なんだ、選べるんだというふうにおっしゃるんですけれども、果たしてそうなんだろうか。
 アメリカでは、確定拠出年金はどういうふうに位置づけられているかというと、既に確定給付型の年金を持っている大企業では、それにかわるものというんじゃなくて、補足する付加的なものというような位置づけであります。特に大企業では確定給付型の年金が依然として中心であります。確定給付年金の数も、少数加入の基金では減少しておりますけれども、五百人規模の基金ではほとんど減少していない。千名以上の基金では確定給付が逆に増加していると言われております。
 一方、我が国の導入の仕方はどうか。これは特徴としては、確定給付型年金にかわるものとして、さらに選べるものとして付加されているというよりは、確定給付をやめて確定拠出にという流れがどうやら本流になりつつある。例えば野村証券、日興証券は、これは確定給付をやめて確定拠出年金に移行するんだと。このために、日本証券業厚生年金基金、これはかつては国内の規模では最大の基金だったわけですけれども、これが存続が今危ぶまれているという報道もございます。
 そもそもの位置づけなんですけれども、私はやはり公的年金、先ほど言ったように、ポータビリティーという点では、究極のポータビリティーはやっぱり公的年金だと。やっぱり基礎年金の充実を前提として公的年金という土台をしっかりつくる、その上に核となる確定給付型の企業年金がしっかりと乗る、それに補完する部分的なものとして確定拠出的なものがあるというのが本来あるべき姿であって、今のように確定給付をやめて確定拠出にというあり方は私は間違っていると。
 私は、こういう位置づけで、先ほど言ったように、土台としての公的年金、その上に核としての確定給付年金がしっかり座る、こういうのがあるべき姿だというふうに思うんですが、その点について、大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) 基礎年金、それから厚生年金という、いわゆる一階、二階の部分がしっかりしているということがまず大事なことは、私もそれはそのとおりというふうに思います。
 特に、中小企業の経営者あるいは中小企業にお勤めの皆さんというのはもう二階どまりでありまして、この二階のない人もあるわけでありますから、せいぜい二階どまり、三階なんというのはない人が多いわけであります。だから、今までは、ある人はどうかという話だけではなくて、そういうない人もあるわけですから、ない人にも三階の部分を共有していただけるような制度をつくろうというのが一つの今回の意味でありまして、だから、そういうない人にも三階の部分を持っていただける道をつくろうと。
 その内容はいろいろそれは選択をしていただきますよと。拠出の面におきましても、経営者が出していただければそれにこしたことはありません。中小企業といえども企業が出していただけるということであればそれが一番よろしいですけれども、しかし、そうもいかない。やはり経営者がそういう拠出をしていただけないということになれば、個人で入っていただくという道もそれはつくりましょうと。そして、その中で、それは株式という方法もあるし、あるいは国債を買うという堅実な方法もあるし、それはいろいろの行き方がありますからどうぞそこは御選択をくださいということを言っているわけであります。
 一階、二階がしっかりしている、そして、その上にプラスアルファとして三階部分というのが我々の考え方でございます。

○小池晃君 実態は違うと先ほどから言っているんですよ。ないところに乗せているんじゃなくて、実際にある確定給付をやめて確定拠出にというのが大企業は大体そういう流れなんです。中小企業を見るとどうかというと、メリットがほとんどないから、先ほど言ったように、五七%の企業は当面考えていないと。
 ない企業に乗せるというんだったら、それはある程度わからないでもない。でも、実際としてはやはり確定給付年金がどんどん切り縮められていって、それが確定拠出に置きかえられる。今回の法案の流れというのはまさにそれを加速しているじゃないですか。こういうことでいいんですかと。
 やはり公的年金が土台だというのは大臣もおっしゃった。その上にしっかり確定給付が乗って、それをしっかり、前回議論しました、受給者の権利をきっちり保護する基本法のようなものをつくって、アメリカのERISAのようなものをつくって、そしてそれを充実させていくことこそ今求められているんじゃないんですかというふうに言っているんですけれども、大臣、この点で見解はいかがですか。

○国務大臣(坂口力君) ですから、そこは労使でお話し合いになるわけですから、三階部分のところを確定給付年金の方でいこうというふうにお決めになるところはそれは給付年金でいかれるわけでありますから、それを、すべてが拠出年金の方に持っていってほしいということを我々は言っているわけではありません。
 並列的におやりになるところもあると思いますし、そして、給付年金の方を選択になるところもこれは当然あるだろうと思いますし、私は多いのではないかというふうに思います。しかし、中にはそれは拠出年金の方をお選びになるところもそれはあるだろうというふうに思いますから、そこはお話し合いの中での選択の話だと思います。

○小池晃君 大事なところは労使で決めていくということであれば、政府は一体何のためにあるのかということになるわけであります。
 確定拠出年金のそもそもの本当の一番のねらいは何だろうか。
 出てくる経過を見ると、まず九八年二月に、自民党の臨時経済対策協議会の緊急国民経済対策、ここが始まりであります。「証券市場の活性化方策」、「四〇一kプランとその投資運用のしくみについては、年金制度全般の動向をみつつ、早急に党内機関にて検討する。」としたわけであります。さらに、同年六月の自民党政務調査会労働部会勤労者拠出型年金等に関する小委員会、ここが勤労者拠出型年金の創設についての提言を出した。さらに、自民党の私的年金等に関する小委員会を経て、関係四省に具体案作成が指示されてこの法案が作成され、提出された。
 おとといの審議でも、金融庁の政府参考人ははっきり言っていました。マーケットを拡大してビジネスチャンスをもたらすと期待を表明されておりました。
 私は、こういう最初の出どころのところから見ても、確定拠出年金の導入というのは、引退後の所得保障の充実のためというよりも、これは金融市場の活性化、ビジネスチャンスを拡大するという色合いが強いのではないかというふうに見られても仕方がないんじゃないかと思うんですが、大臣いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) それは、結果としてそうなることも私はあるだろうと思います。
 自民党の中でそういう議論をされて、そしてこういう法律ができた、それは与党として私は当然のことだと思いますね。また、自民党以外の党でもいろいろ四〇一kについての研究会なんかをやりまして、これを研究してやろうじゃないかという動きがあったことも事実でございます。
 これは私も、小池百合子さんが発起人になられまして、そして超党派でひとつやりましょう、一緒に研究をしませんかというようなお話をいただいて、私もその中に入れていただいていろいろ勉強させていただいた経緯も過去にございました。それはなかなかこれ、一つの方法としていい方法ではないかというような、そのときに意見が多かったように記憶をいたしております。
 ですから、そういういろいろなところで、いろいろなそういう研究会ができたり、いろいろな勉強が基礎になってこの法律ができてきたことは、私はそれはそれでいいんだろうというふうに思いますし、結果として私はこれが証券業界の活性化につながるということはそれはあるかもしれない、しかし、予測していたことでないかもしれない、それは今後の動向を見ないとちょっとわからない話だと私は思います。

○小池晃君 アメリカからはこういう意見も出ています。アメリカの四〇一k協会のウレイさんという会長です。
 アメリカ人は貯蓄をしないため、四〇一kが導入された。日本には千三百兆円も個人資産がある。今さらなぜ四〇一kを導入して、さらに個人金融資産をふやす必要があるのか。しかも、日本の金融市場は非常に不透明、非効率であり、金融機関の運用能力は非常に低い。このような時期に日本でなぜ急いで導入するのかと。アメリカの四〇一kの本家本元がこう言っているわけですね。
 私は、今回の中身を先ほど議論してきたけれども、メリットと言われている点も、ポータビリティーにしても中小企業にとってのメリットという点も大変甚だ疑わしいし、運用の問題では大変リスクが大きい、手数料も重い。そういう中で、老後の資金をリスクにさらすようなこういう四〇一kというのが今の日本でなぜ必要なのかということについては、全く説得力が私はないというふうに思うんです。
 大臣、今四〇一k、今の日本でこういう状況の中でなぜ導入するのかという、このアメリカ四〇一k協会の会長のコメントにどうお答えになりますか。

○国務大臣(坂口力君) アメリカはアメリカとしての四〇一kをやっているわけでありまして、日本は日本としての四〇一kをやろうと今しているわけであります。
 日本は千三百兆あるいは千四百兆近いとも言われておりますが、預貯金がだんだんとふえていく、その中で預貯金が非常に率が高くて、そしてアメリカあたりに比べますと日本は株式というのは、株の方は非常に少ない、全く少ない。余りにも日本は預貯金だけに偏り過ぎているというところも問題であることも事実であります。
 これらの問題を経済全体としてどうしていくかという問題があることも事実でありまして、現在は年金という一つの社会保障の中での話でありますけれども、結果としてそれが経済全体にもそういう何らかの好影響を及ぼすということになれば、それはプラスアルファのこととして結構なことではないかというふうに私は思います。

○小池晃君 私は、このねらい、そもそも老後の生活保障のためというより、やはり金融機関のビジネスチャンスを広げるためというねらいが極めて強いということははっきりしているだろうというふうに思います。
 最後に、年金税制の問題についてお聞きをしたいんですけれども、経済財政諮問会議の問題であります。
 基本方針の素案の段階で、年金課税の問題について見直すと。公的年金、企業年金に対しては優遇した税制が行われていて、この点を含めて負担の適正化の観点から見直すというふうにされていますけれども、この問題について、厚生労働省としてはどのように検討されているんですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 今月十一日に経済財政諮問会議に提出され、会議後公表された今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針の素案におきましては、御指摘のように世代間・世代内の公平を確保するための年金税制の見直しに関して基本的な記述がなされております。
 年金収入が他の所得と比べて優遇した課税が行われている点を含めた年金課税のあり方につきましては、世代間の公平や拠出、運用、給付の各段階を通じた負担の適正化の観点からさまざまな議論が現になされているところでございまして、厚生労働省としても、各方面における検討状況を踏まえつつ対応していく必要があると考えております。

○小池晃君 厚生労働省は、旧厚生省ですね、八六年に年金税制に関する研究会、公的年金税制のあり方について提言をされています。
 その中では、標準的な年金額の給付にも課税が及ぶことは本来想定されていないと考えるべきである、標準的な老齢年金の水準は老後の生活維持の基盤を支えるものとしていわば社会連帯の合意のもとで設定されたものだ、この標準的な年金額にまで課税が及ぶことは公的年金に対する国民の支持と信頼を確保する観点からも適切ではないと、こういうふうにはっきり言われています。
 厚生労働省としてこの点、この問題についてこの考え方、この提言に示された中身はこの考え方を変えたんでしょうか。

○政府参考人(辻哲夫君) 御指摘の一九八六年、昭和六十一年の年金税制に関する研究会の提言は承知しております。これは、当時の社会保障研究所長を座長とし年金や税制に関する有識者により構成されていた研究会のものでございまして、当時の厚生省としての見解を示すような性格のものではないと認識しております。
 いずれにしましても、年金税制の見直しに当たりましては、このような見解があることも含めて幅広い検討が必要だと考えております。

○小池晃君 厚生省の正式な見解ではないにしても、やはりこの研究会が出した基本的な方向というのは、厚生行政のその後に一つの指針となっているというふうに考えますし、その点については今も変わっていないということははっきりしているんじゃないですか。どうなんですか。

○政府参考人(辻哲夫君) その点は私ども、これはあくまでも研究会の見解でございますので、今後、今申しましたように、世代間の公平や拠出、運用、給付の各段階を通じた負担の適正化を図るという観点、こういう観点からの議論を進められるというところでございますので、この研究会の見解そのものはあくまでも厚生省の見解ではないという整理で今後検討を進めてまいりたいと思います。

○小池晃君 研究会という性格だからというふうにおっしゃるけれども、じゃ中身はどうなんですか。標準的な年金というのは老後の生活を支えるものだと、ここに今後課税が及ぶことは適切ではないという考え方そのものについては、厚生労働省としてはどのようにお考えになるんですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 基本的に私どもの認識は、年金に関しては他の収入がある場合もございます。そういうことで、他の収入もある場合の問題、そしてまた、全体として税による公平を図るという観点、そして年金自身の負担と給付との観点、これはまさしくさまざまな幅広い観点からの検討が必要でございますので、その点、今後十分各方面で現に御議論がなされますし、ただいま申しましたように、この研究会の意見も意見として一つの考え方としてございますので、この見解も含めてもちろん議論されることと考えておりますので、そのような観点からの議論を踏まえて私どもも適切な対応をしてまいりたいと思います。

○小池晃君 じゃ、ちょっと別の聞き方をしますけれども、標準的な年金額というのはどういう基準で決められているのか、それから現在の額はどうなっているのか、お示し願いたいと思います。

○政府参考人(辻哲夫君) 標準的な年金額につきましては、前回の財政再計算におきまして、夫は再計算時点での平均的な報酬額で四十年間厚生年金に加入し、妻は四十年間専業主婦であるという世帯を仮定して計算してお示ししたものがございます。
 具体的には、夫婦二人が四十年間加入した場合の老齢基礎年金の月額が十三万四千円、平成十年時点での現役男子の平均標準報酬月額の平均値である三十六万七千円をもとに四十年加入で計算した報酬比例年金部分の給付額十万四千円、これを今の十三万四千円と加えまして、合計二十三万八千円がその標準的な年金額でございます。

○小池晃君 この標準的年金額の給付には、この場合はこれだけであれば課税されていないわけであります。基本的な考え方として、先ほども冒頭でもおっしゃっていましたけれども、年金のその額というのは、新規裁定の時点で現役世代の手取りの六割という考え方は、これは厚生労働省としての正式な見解ですね。

○政府参考人(辻哲夫君) この水準は、ボーナス込みの年収の六割に相当するものでございます。

○小池晃君 現役世代の手取りの六割ということが基本的な考え方だと。この標準的な年金からも課税をするということになれば、現役世代の手取りの六割という所得は保障されなくなる、年金額の引き下げになるわけですから。こんなことを行うつもりなんですか、こんなことも検討の対象になっているんですか。

○政府参考人(辻哲夫君) 先ほど申しましたように、年金以外の収入も高齢者は今の収入実態を見ますと相当にございます。それから、これから考えますときに、年金の収入を考えるときの現役との公平、そういった観点も、税と年金を含めてどう考えるかという観点もございます。
 そういう観点から、その点はより総合的な幅広い観点から議論されるべきでありまして、ある部分だけ取り出して、六割を切ることが妥当かどうかというような議論ではないと考えております。

○小池晃君 別の収入ということで逃げるんですけれども、大臣にちょっとお聞きしたいんですけれども、今経済財政諮問会議が出されている年金の給付における課税の見直しということで、標準的な年金から税金を取るなんということになれば、これは現役世代の手取りの六割というのが保障されなくなる。年金の引き下げになるわけですね。こんなことは私は決してやってはいけないことだと思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) そこはどうなるか、まだ決まっておりません。ただし、我々が勤めておりますときにも、年々歳々もらいます給与とそれからボーナスを含めました額から税金を払っているわけでありますから、その六割という年金の部分から、その年金の部分が非常に高い額であるならば、それは当然現在でも税の対象になるでしょう。
 ですから、平均値ではなくて高いかどうかということになっているわけでありまして、だから平均でどうかといえば、現在も平均値だったら税は私はかかっていないと思いますが、ちょっとそこは調べないとわかりませんけれども、私はかかっていないというふうに認識をいたしておりますけれども、これからも平均値で平均のところをかけようということではなくて、そういう非常に高いところ、だから年金プラスほかの所得で非常に所得の多い人のところからちょうだいをしようということになっているということであります。

○小池晃君 要するに、標準的な年金額から課税するようなことは考えていないということですね。

○国務大臣(坂口力君) 多分そういうことになると思います、まだ決まっていませんけれども。

○小池晃君 終わりにしたいと思いますけれども、公的年金は老後の生活保障の基盤であります。今までいろいろと議論してきた確定拠出、確定給付、その土台になる非常に大切なものであります。私、給付カットになるような課税というのは行うべきではない。
 そもそも標準的な年金額というのは夫婦で二百八十万円、これは決して十分とは言えないわけですよ、これだって。これからさらに税金を取るなんということは決してあっちゃいけないと思う。ここからさらに課税最低限を引き下げるということになれば、まさに老後の生活を直撃するわけですし、そんなことを進めていって、一方で幾ら三階部分を立派なものをつくっても、一階二階がおんぼろの家に三階に立派な家をつくったってどうしようもないわけですから、やはりそういう意味では、この公的年金を切り縮めるというやり方は断じてやるべきでないと。標準的年金から課税するというのは、私は明らかに今までの厚生省の方針とも反するものだというふうにも思いますし、やっぱり断固拒否すべきだということを最後に強調したいというふうに思います。
 同時に、今回提案されている確定拠出年金について言えば、やはり公的年金の拡充こそ重要なのであって、やはり大変メリットと言われている中身も大変問題が大きいし、老後の生活資金をリスクマネーにさらす、喜ぶのは金融機関だけというようなやり方は断固拒否したいということを申し上げて、質問を終わります。

 

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