○小池晃君 日本共産党の小池晃です。 前回、二月二十四日の当委員会で今回の改悪の完成時、すべて完成した暁にはモデル世帯で厚生年金の生涯受給額がどれだけ減るかという私の質問に対して、千二百万円減少する、そういう答弁をされました。 そこで、きょうお聞きをしたいんですけれども、今回の改悪が現在の世代にどのような影響を与えるのか。現在、夫が七十歳、六十歳、五十歳、四十歳、三十歳、二十歳、こういうモデル夫婦のケースで、それぞれ一世帯当たりどれだけ厚生年金の生涯受給額が影響を受けるのか、これを示していただきたい。 ○政府参考人(矢野朝水君) 今回の改正によりまして、まず七十歳の方でございますけれども、現行制度で七千百万円のところを改正案では六千八百万円、約三百万円、四%の減でございます。六十歳の方は七千万円が六千五百万円ということで約五百万円、八%の減。五十歳の方は六千二百万円が五千七百万円となりまして約五百万円、九%の減でございます。四十歳の方につきましては六千百万円が五千百万円ということで約一千万円、一七%の減でございます。三十歳の方は六千百万円が五千万円ということで約一千二百万円、一九%の減。二十歳の方は六千二百万円が四千九百万円ということで約一千二百万円、一九%の減でございます。 ただ、これは若い人の保険料負担もその分減少するわけでございまして、例えば三十歳の方は現行制度で、本人負担分でございますけれども、二千九百万が二千六百万ということで約二百万円、八%の減。二十歳の方は三千四百万が三千万ということで約五百万円、一四%の減。十歳の方は三千九百万が三千二百万ということでございまして約六百万、一七%の減ということでございます。 ○小池晃君 保険料負担が減るとも言われましたけれども、これは国庫負担三分の一で設定しているわけですから、国庫負担二分の一にすればそれだけでもう既に下がるんですよ。その議論は前回申し上げたわけで、保険料が減るからこういう給付がいいんだということは、これは全然正当化できない。 配付資料をごらんいただきたいと思うんですが、これは、今、局長が答弁された中身を、きのう数字をいただいて表にしたものであります。これを見ると、今回の給付減の実態というのがリアルにわかると思うんです。 まず第一に何が言えるか。この賃金スライドの凍結、既裁物スラというのが、これは直ちに現役の年金受給者に打撃になるということであります。保険料を既に払い終わった七十歳あるいは六十歳という世代ですら、七十歳で三百万円の減、六十歳で五百万円の減だということであります。 第二に、四十歳以降になりますと、ここに支給開始年齢の引き上げの繰り延べの影響がかぶさってくる。途端にその減少額が大幅にふえるわけですね。一千万円を超える減少になってくる。 さらにつけ加えて言えば、来年から定額部分の、この一階部分の支給開始年齢の繰り延べが来年から始まるわけであります。その改悪の影響で、これを見るとわかるんですが、六十歳の現行制度での支給額と四十歳以下の支給額というのは九百万円違う。これはまさに一階部分の支給開始年齢の繰り延べの影響であります。 ですから、単純に今回の改悪の影響だけで見るのではなくて、現在の受給との関係で見れば、六十歳の現行制度で七千万円が、例えば二十歳でいえば四千九百万円、三十歳でいえば五千万円ということですから、現在の受給の額と比べれば二千万円を超える減少になるということなんです。今回の年金改悪というのが大変なものなんだということがこれでおわかりいただけると思う。これは、将来世代だけではなくて、現在の年金生活者あるいはことしから年金生活に入る、来年から年金生活に入るという方にも多大な影響を与えるものであるということがおわかりいただけるのじゃないだろうかというふうに思うんです。 厚生大臣に、これを見ていただいてお聞きをしたいと思うんです。 先日、この厚生年金の給付減の問題は大変だと。これは、現在の消費不況の足を引っ張るし、やはり将来世代の不安をかき立てるような大改悪じゃないかというふうに私は申し上げたんですが、大臣はこれは将来世代の過重な負担を避けるためやむを得ないと、こういう答弁を繰り返し繰り返しされたわけであります。 きょう改めて、この現在世代のこれだけの給付減、この数字をごらんになってどうなのか。これは与党の議員の皆さんもそうですよ。こういうことがやられようとしているということを認識されているのかどうか、そういったことを踏まえて今回提起されて賛成されているのか、私は問いたい。 そして、大臣にお聞きしたいのは、やはりこういった現在の年金生活者あるいはこれからすぐに年金生活に入る人も含めて大変な給付減になるというやり方が今の景気にとってどうなのか、あるいは将来不安をあおる、そういうことをどうお考えなのか、深刻な影響を与えるというふうにお考えにならないのかどうか、改めてお聞きしたい。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 今回の改正案におきましては、将来世代の重い負担を防ぐという見地から将来の年金額の伸びを抑えよう、こういうことで法案を提出させていただいておるような次第でございます。 いずれにいたしましても、私どもは、年金を受け始めた時点で現役世代の手取りの大体六割の給付水準を確保することによって、その後は物価スライドを行うことによりまして実質的な価値というものは十分に維持することができると、こう考えております。 年金制度に対する国民の信頼を揺るぎのないものにするということでございまして、今、小池委員がおっしゃったような、確かに将来にわたっていわゆる給付が削減されるということは紛れもない事実でございますが、これを先延ばしすることによって将来の姿をあいまいにしておくよりは、これをきちんとお示しして、その中においてそれぞれの生活設計を立てていただく、そのことが私は老後の不安を解消することができる、こう考えておるわけでございます。今回の年金法改正案が直ちに消費不況の足を引っ張ることと結びつけて考えることは、私はそういうことはあり得ないと考えております。 ○小池晃君 なぜ消費不況の足を引っ張るということはあり得ないと言えるのか。これはまさに今の年金生活者の生活を直撃するんですよ。そういう認識なくこういう大改悪を提起しているということだと思うんです。 そこで、さらにお聞きをしていきたいと思うんですが、先ほど今井委員からも指摘のあった点について、重なる部分もあるかと思うんですが、お聞きしたい。 六十五歳支給開始の繰り延べの影響であります。今回の財政再計算のベースとなった労働力率の見通し、これは労働省の職業安定局の九八年十月の推計であります。これはもちろん九八年十月の推計ですから、二〇〇一年からの定額部分の支給開始年齢の繰り延べ、この影響は見込んだものなんですね、織り込んである。ところが、今回の改悪で予定されている厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の繰り延べの影響、これはもちろん九八年十月の推計ですから織り込まれていない。 先ほどちょっと大臣から御答弁があったんですが、局長から詳しく説明していただきたいんですが、厚生省は報酬比例部分の繰り延べの影響をどう見込んでいるのか。財政再計算を行うに当たって、六十五歳までの報酬比例部分の繰り延べの影響を労働力率にどう反映させたのかお聞きしたい。 ○政府参考人(矢野朝水君) 今回の財政再計算に当たりましては、ただいま引用されましたような労働省の九八年十月の労働力率の見通しを基礎にいたしておるわけでございます。 これによりますと、二〇〇〇年の六十歳代前半の労働力率は七七・〇%でございますけれども、二〇二五年では八二・四%に上昇する、こういうことになっております。 さらに、今回の改正では、報酬比例部分につきましても時間をかけて六十五歳支給に引き上げる、こういうことを予定しておりますので、その分、六十歳代前半の労働力率が高まると考えておりまして、二〇二五年で今申し上げました八二・四%が二、三%程度上昇いたしまして八五%程度になるものと見込んでおるわけでございます。 ○小池晃君 私、先日この問題を質問したときに、大臣は雇用と年金との連動が望ましいというふうにお述べになりました。しかし、実際はどうかというと、報酬比例部分の支給開始年齢の繰り延べで、六十歳から六十五歳までの支給というのは完全にこれはとまるわけです。その一方で雇用はどうかといえば、厚生省の見込みですら二、三%しか上がらない、この支給開始年齢の繰り延べによって。これはまさに、一方では年金は出ない、そして雇用は二、三%しか伸びませんよと。これでどうして連動するんですか。年金は出ない、仕事もない、これでどうやって生きていけばいいのか、これは国民の率直な声だと私は思います。これにどうお答えになるのか。厚生大臣、お答えいただきたい。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 二〇一三年から二〇二五年まで十二年間かけて行うものでございますし、これはこれとしても、少子高齢化社会が大変な勢いで進んでおるわけでございますので、私どもは、労働省を中心とする関係省庁とも十分に連絡をとりながら今後の高齢者の雇用のあり方について最大限努力をして、高齢者になられても働く意欲があってお元気な方には働いていただく、こういうような方向を求めていきたいと考えております。 ○小池晃君 決意は何度聞いたっていいんです。空手形だったんですよ、六十五歳までの雇用が伸びるなんというのは。厚生省自身の財政再計算の根拠で三%しか伸びないと言っているんです。このことをお認めになるのかどうか。そうじゃないですか。厚生省自身の計算でも三%しか伸びていない。ということは、今までいろいろと決意だというふうにおっしゃっていたけれども、実際は空手形だったということなんじゃないですか。どうですか、厚生大臣。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 一つの推計だと思いますが、私はそういうことであってはならないと思っております。 ○小池晃君 そういうことであってはならないといっても、厚生省の推計の数字が三%になっているんです。これは大変な問題だと思います。六十歳代前半の雇用環境がほとんど期待できない、これは学者の方も皆さんそうおっしゃっているんです。厚生省の見込みですら、財政再計算の計算でもこれは明らかだと。こうした中で、ただただ年金支給だけがとまっていく、このことがいかに国民の不安をかき立てるものであるのか、このことも重大な課題として指摘をしておきたい。 さらにお聞きしたいのは、八五年改悪との関係で、前回議論したことの若干続きになることでありますけれども、お聞きをしたい。 八五年の改悪で、厚生省は四十年加入というのを前提とした給付乗率の抑制をやっているんですね。これによって九〇年代に入ってからの年金支給額が顕著に抑制されている、頭打ちになっているという実態が前回の質疑を通じて明らかになった。しかし、実際は定額部分の上限、定額頭打ちという問題がある。定額部分については計算の月数に上限が設けられております。五年前の年金の改定時にはこのことは考慮されたわけですね、政府の側も。そして、定額部分の上限を段階的に延長して、今どうなっているかというと、四百四十四月、三十七年になっている。 今回の改定では当然四十年加入が前提なわけですから、この四十年加入を前提とした上限の延長というのはやられるべきだったと思う。ところが、なぜかこれはやられていないわけです。その結果どうなっているかというと、今の上限は三十七年であります。ですから、四十年入っても三十七年分しか定額部分は反映されないことになるんです。 昨年六十歳になった人からは既に三十七年という上限を超える人が出てきております。さらに、四四年の四月以降に生まれた方、この方からは、定額部分が老齢基礎年金の額を下回るという人が、四十年加入すればそういう人が出てくるという逆転現象があるんです。何でこういう事態を放置されるのか、今回の改定でなぜ上限額の延長をやらなかったのか、これは局長で結構です。 ○政府参考人(矢野朝水君) 定額部分の単価は生年月日に応じまして段階的に逓減しておるわけでございまして、昭和十九年生まれ以後の方につきましては、今御指摘にありましたように逆転現象が起きまして基礎年金の方が高くなる、こういうことが起こるわけでございます。 しかし、支給開始年齢につきましては、定額部分の支給開始年齢の引き上げが前回改正で決まっておりまして、こういった方の今後支給が始まるのは平成十八年、つまり二〇〇六年から昭和十九年以後に生まれた方が支給開始年齢に達する、こういうことでございまして、まだ十分時間的なゆとりがあるということでございまして、今回三十年の頭打ちを延長する、こういう措置は講じなかったということでございます。 ○小池晃君 八五年改悪というのは四十年加入を前提としているんです。それなのに三十七年という上限があるというのは大変問題だと思うんです。基礎年金の額を下回る、そういう人が出てくることを放置するのは大変問題だと思う。 今まだ時間的に間に合う、だから今回やらなかったんだというふうにおっしゃるけれども、それは男性の場合であって、女性の場合は定額部分の支給開始年齢の繰り延べというのは五年おくれですから、これはひっかかってくるんです。二〇〇四年の四月から受給する人は定額部分の金額は基礎年金を下回るんです。何でこれを放置しておいていいんですか。なぜ今回の改定でやらなかったのか。今回の改定でやらなきゃいけなかったことは明らかだと思うんですけれども、この点はどうなんですか。 ○政府参考人(矢野朝水君) 御指摘のように、昭和十九年生まれの女子につきましては逆転が生ずるわけでございますけれども、女子の場合は加入期間が一般的に男子と比べて非常に短いわけでございまして、三十七年を超えるような加入が一般的になる男子の場合で考えて判断をしたということでございます。 ○小池晃君 大変な矛盾なんですよ。四十年加入を前提として制度設計しておきながら、実態は四十年行っていないからということでやらなくていいんだということをお認めになる、これは大変な矛盾だと私は思います。 さらに言えば、一般的でないと言うけれども、四十年を超える人が出るんですよ。そういう人が出てきたらどうするんですか。それは基礎年金の額を下回ってしまうんです、定額部分が。このことを放置している。これでいいのかと聞いているんですけれども、どうですか。これは大臣にお聞きしたいんですけれども、これを放置してよろしいんですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) この定額部分の額が基礎年金の額を下回るのは平成十八年度以降でございます。六十五歳以上に支給されます基礎年金の額との均衡を考慮して今回の改正では定額部分の年数の上限を三十七年に据え置いたものでございますが、この上限の見直しにつきましては、次期財政再計算に向けて検討課題とすることが適当と考えております。 ○小池晃君 八五年改悪の問題は前回議論をいたしました。これは四十年加入を前提として制度改悪をやったんです。到底そこに至っていない雇用の状況がある、さらに制度でも三十七年を上限にしたままだと。そういうことであれば、三十七年ということで給付乗率を組みかえて、給付乗率の引き上げをやるべきですよ。それが筋の通ったやり方だと。そういったことすらしないで、ただただ先ほど言ったような給付の切り下げだけを国民に押しつける。こういうやり方が許されるのかということも私は指摘をしておきたいというふうに思うんです。 さらにお聞きをしたいのが減額率の問題であります。先ほど今井委員も御質問をされました。 来年から定額部分の支給開始年齢の繰り延べが開始をされることになります。繰り上げ支給の減額率の見直しですが、死亡率を直近の生命表に変更した場合の繰り上げ減額率、これは六十歳支給で三五%程度という厚生省の計算結果、前回、井上委員の質問に対してそういう御答弁をされたと思うんです。この計算の前提となっている運用利回りはどうなっているのか、お示しいただきたいと思います。 ○政府参考人(矢野朝水君) 運用利回りは五・五%を前提といたしております。 ○小池晃君 運用利回り五・五%というのは、一体どこの国のいつの時代の話なんですか。財政再計算は運用利回り四%でやっているじゃないですか。何で繰り上げ減額率の計算だけ五・五%でやったんですか。そのことを答えてください。 ○政府参考人(矢野朝水君) これは、衆議院の厚生委員会で厚生大臣の方から、生命表が非常に古い、昭和三十年のを使っている、これを直近に置きかえるとあらあら三五%程度になると、こういった答弁が行われたわけでございます。 私どもは、それ以降、これを受けまして、予定利率の問題、あるいは先ほど今井委員からはスライド率の問題が提起されました。あるいは、早くもらえると確実にもらえるわけでございますから、大体自分は早く死ぬかどうかというのはある程度わかるわけでございまして、早くもらった方が確実性という点では一〇〇%もらえるわけですので、そういった問題とか、いろいろ事情はございますので、そういったものを踏まえて現在幅広く検討中ということでございます。 ○小池晃君 自分が早く死ぬかどうかわかるんですか。ちょっと異常な話だと思いますね、私は。 これは大変な問題だと思いますよ。運用利回りを高く設定すれば減額率が高くなるのは当たり前なんですよ。今井委員のお配りになった資料でも、割引率が高くなればなるほど減額率も高くなっているじゃないですか。運用利回り五・五%なんという数字で設定して、それで計算された三五%という減額率に、どこに根拠があるのか。全くふざけた数字ですよ。 大臣にお聞きしたいんですけれども、運用利回り四%で計算したら六十歳の減額率がさらに下がることは明白だと思うんです。六十歳支給で三五%だというふうに答弁された減額率、これは不十分であるということをお認めになりますか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 私は、減額率の問題につきまして、三十六年当時の生命表が使われている。これはいかにも古過ぎるし、現在の生命表というのは、男は七十七歳、女性が八十四歳というところまで来ている。そういうことであらあら三五%と、こういうことを申し上げたわけでございますが、御指摘の点を踏まえまして十分今後精査していきたい、このように考えております。 ○小池晃君 三五%という数字がいかにいいかげんかということを大臣もお認めになった、これは検討が必要だと。当然四%という運用利回りで計算する、あるいは生命表だって新しくなるわけですから、これは三〇%を切って二〇%台という減額率がどうしても必要になってくるんじゃないですか。これはもう当然の前提として検討することを要求したい。 さらにお聞きしたいのは、学生の保険料の追納制度の創設の問題であります。 これが四月実施のために、これがあるから四月実施を何としてもしなくちゃいけないというふうに与党の議員の方はおっしゃる。ただ、この追納制度も、そう手放しにいいものかということではないような話なんじゃないかと思うんです。問題点が指摘をされております。 そこで、今回提起をされている学生の保険料の追納制度と現行の申請免除制度というのは一体どこが違うのかということを御説明願いたい。 ○政府参考人(矢野朝水君) これは、現在の制度は親元世帯の所得で免除かどうかを決めているわけでございますけれども、今回の学生の特例制度は学生本人の所得で免除するかどうかを決めるということが一点でございます。 それから、社会人になってから追納していただくということでございまして、追納が行われなければ老齢基礎年金の算定におきまして当該期間分は国庫負担がつかないということでございます。追納していただければ当然国庫負担はつくわけでございますけれども、そこが違います。 それから、今回、こういう措置、手続をとっていただければ、特例期間中の障害事故につきましては満額の障害基礎年金が支給されるということでございます。 ○小池晃君 申請という手続が必要だということは今も同じであります。現行制度でも十年以内であれば追納できるわけですね、申請免除の場合も。親の所得で申請免除するんじゃなくて学生本人の所得で判断する、ここが違うんだということで、実質的に変わった点はそこだけだと思うんです。追納の申請手続というのをしなければこれからも無年金障害者のような事態というのは起こり得るわけですね。 さらに問題なのは、今、局長も答弁の中で言われましたけれども、現在の申請免除の場合というのは、国庫負担分の三分の一というのは老齢年金額に反映されるわけであります、追納しなかった場合は。ところが、今回の制度で追納しなかった場合は、国庫負担の三分の一の分は老齢年金額には、期間には算入されるけれども額には反映されない。そういうことをいろいろ考えていくと、これは現行制度と比べてどうなのか。国庫負担三分の一の分がつかないというのは現行制度より後退なんじゃないですか。これはどうですか。 ○政府参考人(矢野朝水君) これは、現在、学生の保険料というのは大体親御さんがほとんど支払っておられるということで、親の非常に負担になっているわけでございます。しかも、なぜ子供の年金のために親が保険料を納めなきゃいかぬのか、ここの疑問も非常に大きなものがあるわけでございます。 学生は、何しろ在学中は所得がありませんけれども、卒業して職につけば負担能力が出るわけですから、こういった学生の特性に着目して今回こういった特例制度を設けようとしたわけでございます。 ○小池晃君 私はそこを聞いているんじゃないんですよ。そこは認めたでしょう、そこは違うというのは。そうじゃなくて、国庫負担三分の一の分が追納されなかった場合に反映されないのは現行制度より後退じゃないですかと聞いているんです。大臣に。もう局長じゃ話にならない。 これから国庫負担の割合というのは増加する方向でいくわけですね、いずれにしても。その場合、この問題というのは大きくなってくるんじゃないですか。これは老齢年金の額に国庫負担分というのが反映されるのが当然じゃないかと思うんですが、いかがですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 御意見として承って、検討させていただきます。 ○小池晃君 この学生の保険料の追納制度というのも、そんな手放しでいいというものじゃないんだと。確かに当たり前の改革というか、親の所得じゃなくて学生の所得で見る、これは当たり前です。それはいいとして、こういう問題点があるんだ、このことを私は強く指摘をしておきたいと思います。 最後に、現在十万人いる学生無年金障害者の問題についてお聞きをしたいと思います。 東京練馬区に住んでいる岡村佳明さんという方の御家族にお話を私は聞きました。この方は大学四年のときに、八六年ですけれども、バスケットボールの試合をやっていて脳腫瘍が出血をして倒れられた。一年半植物状態が続いて、今は精神機能の低下、四肢の麻痺などで身障一級になっている、ずっと入院生活が続いているということです。この方は、障害者になってから初めて、学生も国民年金の加入義務があって加入していなかったこの方、佳明さんは障害基礎年金を受けられないということを知ったというんですね。 実は、このお父さんは佳明さんが通っている東京学芸大学の教授なんです。息子さんはお父さんが教授をやっている大学に通われていたということなんです。大学の先生だったんだけど、そのお父さんは、当時、国民年金が任意加入だったと知らなかった、厚生省を通じての周知もそのときなかったと。実際、この佳明さんのケースの三年後を見ても、八九年でも任意加入の学生というのは一%しかいなかったです。今、障害のためにこの方は就職はどう考えても困難だと。親は年金生活だと。今後の医療費のことを考えただけでも障害基礎年金がどうしても必要だというふうにお聞きをしました。 さらに、将来の老齢年金のために、今、国民年金に加入をして、親御さんが保険料を払っているんだと。障害者基礎年金に入っていればこういう必要なかったわけですね、これも。お父さんがおっしゃっていたのは、もし自分たちが死んだら、息子は収入もないし、老齢年金もこれは保険料を払えなくなったら受け取れなくなる、一体どうやって生きていけというのかというふうに、電話でしたけれどもおっしゃっておりました。二十一世紀に無年金障害者の問題を持ち越すなというのはもう切実な声だと思うんですね。この声に必ずこたえる必要がある。 それで、私はお聞きしたいんですが、無年金障害者の問題は政府の責任で解消の措置を直ちにとるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 無年金障害者の問題につきましては、かねてからさまざまな御意見を承っておるわけでございます。私どもといたしましては、そうした方々が発生しないように最大限努めてきたところでございます。当初は任意加入とされていた学生につきましても、御案内のように平成三年から強制加入とするなど、適用対象の拡大を図ってきたところでございます。 しかしながら、無年金障害者について、年金制度において何らかの給付を行うことは、制度への加入と保険料の負担に応じて給付を行うという年金制度の根幹そのものに触れるものでございます。年金審議会においても、現在の年金制度においてはこうしたような負担と給付という関係を無視して給付を行うことは大変難しい、こういうようなことが審議会として出されておるわけでございます。ですから、この年金の世界とは別に、さまざまな形で大変お困りな方々に対する、どういうような手厚い救済策ができるかということを進めていくことが現実的ではないかと、このように考えている次第です。 ○小池晃君 私はそれはおかしいと思いますよ。そもそも二十前で障害を受けた方は無拠出で障害基礎年金を受給できるわけですね。さらに、今回、学生追納制度を創設して、学生時代に発生した障害に対しては保険料は払わなくても障害基礎年金は出るわけですね。だから、無拠出という形になったわけであります。追納制度の申請さえしておれば、これは障害基礎年金が無拠出で支給されるんです。ですから、保険料の負担に応じた給付という関係ではもはやないんですよ。だから、負担に応じた給付でないから、無年金障害者の救済を年金制度の枠内でできないという議論、私はその論拠は崩れていると思うんですけれども、いかがですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 私どもは、決して委員の今御指摘のことに何かこだわってどうのこうのということでありません。現実問題として社会保険方式の中においてこれをきちんと確立しなければならない。しかし、個々のケースの場合において、どうしてもこれは知り得ないような場合だとか、加入できないような場合であるとか、そういうようなケースがあるのかないのか、そういうことを含めまして検討しなければならない問題だと、このように考えております。 ○小池晃君 保険料負担をしていないから年金給付ができないという論拠が崩れているということをお認めになりますか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) これはあくまでも保険料の負担に基づいて給付を行うということでありまして、この原則はきちんと守られておりますし、今後とも守っていかなければならない問題だと考えています。 ○小池晃君 ですから、現在もう保険料負担をしなくても給付を受けるというふうになっているじゃないですか、その論拠が既に崩れているんじゃないですかというふうにお聞きしているんです。大臣ちょっと答えてください。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 先ほどから申し上げましたように、この基本は崩れていないと、こう考えています。 ○小池晃君 いや、おかしいと思いますね。私は今の答弁は全く納得できません。負担と給付との関係というのはもはや崩れているというふうに思うんです。このままで二〇〇二年、障害者プランの終了というのを迎えていいのかというふうに思うわけであります。これはまさに年金制度の中で解決することが最も筋の通った解決のやり方だというふうに私は思います。 きょうの議論を通じて、まだまだ不十分な点がありますが、さまざまな問題点が私は明らかになったというふうに思うんです。年金積立金の問題あるいはその運用の問題、その点について議論もできなかったので、ぜひこれは徹底的に引き続き審議していくということがきょうの議論を通じても必要になったというふうに申し上げたい。そのことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
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