147-参-予算委員会-5号 2000年03月06日
地域振興券と児童手当の問題点を追及
(予算委員会)
147-参-予算委員会-5号
2000年03月06日
地域振興券と児童手当の問題点を追及
(予算委員会)
○小池晃君 昨年の緊急経済対策の目玉とされたのが、事務経費を含めて七千七百億円の地域振興券であります。果たしてこれが景気回復に効果があったのか。
二月二十九日のある民放のニュース番組でもこの問題が取り上げられていました。そこではこんな投書が紹介されている。地域振興券はほとんど役に立っていないと思います。しかも、そのためにふえた国の借金は今の若者が払うことになります。納得できませんと。当然の声だと思うんですね。同様の声がたくさん寄せられております。この鳴り物入りで取り組まれた事業についての総括、これをきちっとやっておく必要がある。
そこで、まず経済効果についてお聞きをしたいと思うんですが、政府としてどれほどの経済効果があったと考えていらっしゃるのか、合理的に説明できるのかどうか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(堺屋太一君) 経済企画庁では、昨年八月六日に公表いたしました「地域振興券の消費喚起効果等について」というのを発表しておりますが、それによりますと、昨年の三月から六月までの消費に対しまして、地域振興券の既に使われたものが三二%程度ふえております。個人消費といたしまして二千三十二億円の押し上げ効果があったということになっております。
これをマクロモデルの計量モデルで計算いたしますと、実質GDPを一年目に〇・一%程度押し上げた、消費も一年目に〇・一%程度押し上げたということになります。この効果は大体、減税で可処分所得をふやしたのとほぼ同じではないか、この経済効果だけについて言いますとそのようなことになります。
○小池晃君 所得税減税と比較するのは大変難しいというふうに前回長官はおっしゃられたんですよ。
今言われたように、三二%が新たな消費を喚起したんだというんですが、長官が三月二日の当委員会で答弁しているように、消費に色がございませんので、こういう調査は非常に主観的なんですねと。景気回復に効果があったというふうに合理的に証明することは大変難しいと思うんですけれども、そういうことじゃないんでしょうか。
○国務大臣(堺屋太一君) 今申し上げましたのはあくまでもアンケート調査をしてモデルで計算したことでございまして、現実にどうだったかということになりますと、お金に色がございませんし、また地域振興券で買ったものを現金の方を蓄えたというようなこともございまして、なかなかそこは明確にぴしゃっとなりません。
それから、今テレビ番組の話ございまして、私もそれを見ましたけれども、これまた地域によりまして大変効果があったという地域とそうでなかった地域といろいろございます。また、傍証として、これは全然それがぴたっとくるものではございませんけれども、あえて申しますと十一年の四月から六月、地域振興券が使われたころの消費はやや伸びている、まあ効果があったのかなというような感じもしないではございません。
○小池晃君 地域によってはあったと言うんですけれども、そういう地域が一体どこにあるのか教えていただきたいと思うんですね。
例えば、長野市の事業者アンケート、経済効果なかった、七六%。川崎商工会議所、売り上げ変化なし、八九・一%。甲府商工会議所、客足変化なし、八八・六%。鹿児島市の事業者アンケート、売上増への効果について、効果なし、八〇・一%。そして、青森県商工会議所連合会長、ざっくばらんに言ったら余り効果はなかったんじゃないか。これが国民の声なんじゃないかと思うんです。景気対策として胸を張って全国規模で効果があったと言えないんじゃないかと思うんですけれども、どうですか。
○国務大臣(堺屋太一君) 膨大な消費の中で七千億円でございますと、やはり六、七割の方が気がつかなかったとおっしゃるのももっともかという感じがしないでもないんです。
申し上げておりますように、〇・一%云々の話でございますから、それは何割、五割以上の人が効果あったと思われるかどうか、そこはちょっと何とも申しかねますが、やはり今挙げられた数字だけではなしに、比較的早くやった島根県の浜田市なんかではイベントなどやりまして効果があったという話もございます。だから、一概にどうだということは言えないし、検証しにくいんじゃないでしょうか。
○小池晃君 イベントをやって効果があったというんだったらイベントそのものをやればいいんですよ。やはり科学的に、合理的に効果があったというのを言うのは大変難しいということが今の議論を通じても明らかになったと。
七千七百億円使って二千億円ちょっとの消費喚起でどうして効果があったと言えるのか。これ国民の率直な声であります。昨年六月の全信連総研、全国一万六千の中小企業を対象にした大規模な調査でも、八三%の企業が売り上げへの影響なかったというふうに回答しています。これが実感ではないだろうか。
さらに突っ込んでお聞きをしたいのは、地域振興の名で行われましたが、本当に地域の中小商店を元気づけたのかという問題であります。
経済企画庁の先ほどの「地域振興券の消費喚起効果等について」という八月六日の文書でも、地域振興券を利用した店舗、これが分析されています。百貨店が八・九%、総合スーパーが二六・九%、大型家電店が五・二%、食品スーパーが一一・八%、合わせて五二・八%ですね。
一般的に見ると、百貨店やスーパーでの全体の消費に占める割合はどうなっているか。これは通産省が九七年の商業統計表というのを出しております。これによれば、百貨店、総合スーパー、専門スーパー、その他のスーパー、これ全部合わせても小売業の年間販売総額に占める比率というのは三四・五%であります。
普通の買い物に比べると、地域振興券による買い物というのは大型店で使われた比率が高かったんじゃないか、このことは認められるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(堺屋太一君) それぞれの数字は、今、委員が仰せられたとおりになっております。したがって、平均的よりも大型店で使われたという構成比率はやや高いかもしれませんが、その時期とか、それから使っているものですね、そういったもの、お子さまのものが多かったとかそういうようなことがございまして、地域振興券だから大型スーパーへ行ったということもないんじゃないかと。
その辺はどうも追跡が十分できないところでございまして、委員仰せのように、どれだけの効果があったか具体的に数字でぴしゃっと示すことは事の性格上非常に困難でございます。特に、ここで出ておりますのは、百貨店は子供対象のものが多かったとか、それから食品スーパーは高齢者対象のものが多かったとか、そういうような種類もございまして、この時期、何か買いたいと、ちょうど春の時期でしたから、買いたいと思う人がどこへ行かれたかというのはそれぞれでございます。
だけれども、概していいますと、やはりスーパーにいたしましても、その地域にある、商店街にあるスーパーが使われたというような声もございまして、一概に地域振興に役立たなかったとも言えないように思います。
○小池晃君 これは東京都の調査でも同様のことが証明されているんですね。
東京都総務局の東京二十三区内の地域振興券の換金状況の調査というのがあります。これによれば、各区の換金受け付け率上位三十社を合わせると、第一種大規模小売店が六百九十社中百十七社それから第二種大規模小売店舗が三百五社で、六一・一%がこれは名実ともに大型店であります。
これは大臣も言われたように、地域振興券は大型店で使われた比率が大変高いんだと率直にお認めになりました。先ほど地域振興になるんだということをおっしゃいましたけれども、地域振興というかけ声だったですけれども、これは大型店で使われるとどうか。町の商店で使われれば、それは仕入れや生活費という形でその地域で繰り返し使われていく効果があるわけであります。ところが大型店の場合は、その大半はすぐに銀行に入って本部の勘定に入る。これは仕入れも全国規模でやるわけですから、地域に落ちていくお金というのは、例えばその市町村に払われる税金であるとか、パートさんに対する給料であるとか、そういうのは除けば、その買い物をした地域に回っていくというお金ではないわけであります。これでは、地域振興とはまさに名ばかりだというふうに言わざるを得ない。
さらに、この地域振興券で使われたお金が将来世代の負担になって返ってくるんだという問題についてもお伺いしたいと思うんですが、地域振興券の費用七千七百億円、これは全額六十年払いの赤字国債で賄われるわけです。その返済には莫大な利子がついてまいります。
衆議院予算委員会の資料要求で出された大蔵省の数字によれば、六十年償還の国債に対する元利払いの総額は、利率一%ならば元金の一・四倍、利率三%なら二・一倍、利率五%では二・八倍だということであります。
元本が七千七百億円であれば、その返済には利率三%とすれば約一兆六千億円、これだけかかることになりますけれども、これは間違いないでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 利率三%というのはちょっと高くないですか。
○小池晃君 今は、大蔵省が衆議院の予算委員会に示した資料で、三%だとすればという設定で言われているのは正しいかどうかとお聞きしている。──通告してありますよ、これ。
○国務大臣(宮澤喜一君) 三%とすればという計算なら、それは間違っていないと思いますけれども。
○小池晃君 三%は高過ぎるというお話でしたが、今後の長期金利について大蔵省は中期財政展望を出しておられます。経済成長率一・七五%という低成長でも利率三%と見込んでおられるわけで、つまり、大蔵省のシミュレーションによっても、国民は地域振興券によって将来一兆六千億円もの借金を二十一世紀に支払っていくということになるわけであります。
静岡経済研究所のアンケートによれば、事業者の六五・三%が今後は実施してほしくないというふうに回答されている。新潟県上越市のアンケートでは、今回限りでよい六八・九%、日経の昨年四月の二千世帯のアンケートでも、第二弾の次の実施ということについては、地域振興券不交付世帯で七一%が反対、もらっている交付世帯ですら四三・四%が反対と賛成の四二・六%を上回っているわけです。もらった人ですら二回目はもうやめてほしいというふうに言っているわけであります。先ほどもらった人が少ないから効果がないんだと言ったけれども、もらった人ですらもうこれで終わりにしようという人の方が多い。これはよほどのことだと思うんですね。こういう国民の声に一体どうこたえるのか。
大蔵大臣にお聞きをしたいと思うんですが、昨年、第二弾、第三弾をという、これは公明党の冬柴幹事長がそういう質問をされて、小渕総理は今回の効果を見きわめて判断したいと答弁されているんです。財政当局として、こういう地域振興券のようなやり方を今後も景気対策の選択肢として残すのか、もうこれっきりにするのかどうか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどの中期展望の数字は、そのときにも申し上げましたように一・七五という成長も今はないことでございますし、したがって三%ということも一つの仮想でございます。
それで、今の、先ほどからのお話でございますが、去年はああいうことで全く日本じゅう暗うございましたから、何かでもちょっと役に立てばいい、子供さんも何か欲しいかもしれないし、地域でも話題になって幾らかでも町が、商売が少しでもふえればいいといったような気持ちでいたしました。これだけの大きな経済でございますから、六千億や七千億でどうなるというものじゃございませんが、しかし、それでも多少明るい話題になれば日本経済の将来にマイナスじゃなかろうと、こういうような気持ちがございました。
それで、ことし経済も大分少し明るくなってまいりましたので、ことしは余りそういうお話もないようでございましたので、やらずに済ましております。
○小池晃君 率直に、もうことしやらないということで、もうこれっきりだと。
さきに引用した静岡経済研究所のアンケートでも、消費の拡大に効果的な政策はという質問があるんです。その質問に対して、消費者の四二%、事業者の四二・五%が消費税率の引き下げを挙げています。地域振興券の交付としたのは、消費者で二・四%、事業者に至ってはこれゼロなんですね。ビジネスマンの間でも消費税引き下げの声は上がっていまして、日経ビジネスの一月十日号のアンケートでも、景気へのてこ入れ策として期待するものはの問いに、トップは消費税を下げる、これは三六・六%であります。景気対策というのであれば、地域振興券のようなやり方ではなくて消費税率の引き下げこそ最も効果的だ、これが国民の声だと、これは答えがはっきり出ているんじゃないかというふうに思います。
さらに、次の問題をお聞きしたいと思うんですが、児童手当と年少扶養控除の廃止にかかわる問題であります。
来年度予算における児童手当の支給拡大が、その財源の確保が、年少扶養控除の廃止に伴って、これが財源確保として行われると。
最初にお聞きしたいのは、昨年その年少扶養控除制度、これを創設された理由を御説明いただきたい。
○国務大臣(宮澤喜一君) これは、政策としてその層の控除をふやすべきだという御議論は前からありましたのですけれども、あれをいたしました非常に直接的な理由を率直にひとつ申し上げますと、前の年に定額減税をいたしまして、実は定額減税というのは、税制としてはごく何かの便利のためでないと理屈的には説明しにくい税でございますが、非常に急ぎましたので定額減税をいたしました、橋本内閣のときに。
しかし、これはもともと、するとすれば定率減税に直すべきものでございますし、あのときに抜本改正もいたしましたので、この部分を定率減税に直しました。その結果として、大抵の方は税制改正で減税になったのでしたが、ある層だけがむしろ増税になるという結果になりました。
それは、定額を定率に直しますとそうなるわけでございますけれども、このことはどうも、一遍限りの定額減税ですから、基本的な税制改正が次にあったときに、あるそういう部分が生まれても理屈としては仕方がないことだとは思いましたが、払われる方からいえば、大抵の人が減税になったのに自分たちの層だけが税がふえちゃったということは、いかにもそういう不平を持たれる方、不満を持たれる方があるだろうと思いましたので、何とかそれを少しでも緩和できないかということであの部分の控除をふやしたわけでございます。それでもなお余計に払わなきゃならない方はおられましたのですけれども、何ぼかそれを緩和できたという、そういう実は気持ちがございました。
○小池晃君 昨年の議論の中では、子育て世代への配慮、教育支出のかさむ所得層への配慮ということでやったんだということであります。
何でそれをたった一年でやめてしまうんだろうか、こういうのを朝令暮改と言うんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) そういう御批評があろうかと思います。現実にございましたことは、予算編成のかなり後の段階になりまして、児童手当というものをもっとふやすべきだというお話が政府・与党間でございました。
それで、御承知のように、児童手当というものは、国によりまして歳出でやっておりますところと、歳入でと申しますか、控除で賄っている国と両方ございます。日本のように両方でやっている国もございますので、そういう三党協議の中で大変大きな児童手当を提案された党もございまして、しかし、それは到底手当と控除と両方というわけにはいかないということを提案者もちゃんと知っておられて、それであれば大きく控除を切り下げてもいいんだという、そういう御主張をされました。
当初の御主張は、金額でいうと兆単位のものでございました。それはそれで一貫した御主張ではあるんですけれども、ただ児童手当を歳出でやるか歳入でやるかという議論は、とても予算最終段階の二、三週間では片づかないものでございますから、それは各党間の御協議に将来させていただきたいと申し上げまして、その結果、それであれば今の予定した予算の中で賄える程度の児童手当をふやすことはできないか、そういうお話になりまして、それが今いわゆる就学の年までの、三歳から就学時までというふうにふやしまして、それに充てる財源としては、ただいまお話しのその前に上げました十万円の控除分をもとに戻した、そういう経緯でございます。
○小池晃君 政党間協議の中で持ち込まれた問題、何とか帳じりを合わせようということでこういうふうになったと。
しかし、この問題は大変重大なんです。というのは、年少扶養控除廃止の影響を受けるのは、これは十六歳未満の子供を持つ家庭であります。それに対して、児童手当の支給拡大というのは小学校入学までということですね。ずれているわけです。小学生と中学生については、これは増税だけかかってきちゃうという仕組みになっているわけですね。
具体的には、児童手当の新たな支給対象児童は三百九万人、これに対して年少扶養控除の廃止による増税の対象となる児童数は千九百万人、これは国会答弁ありました。差し引き一千六百万人分がこれは増税になるわけであります。
私も参加する社会保障制度審議会でも、この点は大変議論になりました。そして、答申でもこう書いてある。「児童手当の給付及び財源に関する根本的な検討が不十分なこと、今回の改正案における税負担と給付の配分の変化に問題が残ること等を考慮すれば、当面の措置であるとしても問題なしとしない。」、こうしたんですね。
もちろん、児童手当の対象拡大は必要なことである。しかし、差し引き増税という形で、こういうやり方で財源を生み出す、こういうことをよしとするんでしょうか。大蔵大臣にまずお聞きしたい。
○国務大臣(宮澤喜一君) 確かにおっしゃいますように、この施策によりまして、六歳以上十六歳未満の扶養親族を持っていらっしゃる方、それから児童手当には所得制限がつきますから、所得制限を超える方、こういうケースは両方とも負担の増になります。おっしゃるとおりでございます。
そういう問題は確かにこの問題には残っておりまして、本来であれば扶養控除の問題と児童手当の支給との問題を少し長期的に検討をして、これ一年やそこらで片づかないと思いますけれども、非常に問題ではございましたけれども、そういう予算編成の最終段階で各党間の御協議になりましたために、こういう措置をとらせていただきました。
考え方としては、控除と手当の支給との関連の問題でございますから、いずれをよしとするかということはいろいろの議論があろうと思いますけれども、全く筋違いの歳出と歳入を混同したという意味ではございませんで、もとのところの問題の抜本的な解決に時間を要すると考えられましたので、こういう措置をとらせていただきました。
本来の予算編成がもっと時間をかけて行われるならばこういうことは避けられたかもしれませんが、実はそれ以外の方法によりますと、この財源を公債発行で賄わなければならないという非常に難しい選択になりましたので、こういう措置をとらせていただいたわけでございます。
○小池晃君 見切り発車だということを率直にお認めになったんですが、厚生大臣の方はこれはどういうふうに御説明されますか。
○国務大臣(丹羽雄哉君) 大蔵大臣の答弁と重複するわけでございますが、三党協議の中においていろいろな議論がございましたけれども、いわゆる厳しい財政状況の中で児童手当の拡充を行うに当たりましては、御懸念の、将来の世代に負担を回すような特例公債の増発というものはできるだけ抑制していこうではないか、こういうようなことで年少扶養控除、この創設と児童手当とのあり方を財源確保の面で検討したと、こういうような経緯があるわけでございます。
こういう中で、今回の予算におきましては、子育て支援基金に四百億円ほど計上いたしておりますし、また十一年度の補正以来、奨学金制度の拡充など、いわゆる委員御指摘の税負担増につながる御家庭にも十分に配慮しながらこのようなことを決めさせていただいておる、総合的に御判断を賜れば大変幸いであると、このように考えております。
○小池晃君 子育て支援基金に四百億円でこの増税分を穴埋めなんというのはとてもできないというふうに思います。
これは、やはり当局の方も正面から胸を張っていい政策だというふうなことはとても言えない。大変問題があるということを認めざるを得ないような中身だと思うんですね。
さらに、きょうここで問題にしたいのは、この年少扶養控除の廃止によって一体どういう事態が起こるかを明らかにしたいと思います。
そこでお聞きしますけれども、年少扶養控除の廃止というのは、子供の数が多い世帯ほど、多ければ多いほど増税になるという、これは間違いないと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) そういう仮定でございますと、そうなるはずでございます。
○小池晃君 来年度予算の年少扶養控除の廃止で、子供の数が多い世帯ほど打撃を受けることになるんですね。重大なことは、子供の数の多い世帯というのは、実は九九年の先ほどおっしゃいましたように税制改正のとき、すなわち特別減税の打ち切りとそれから最高税率の引き下げ、定率減税によってほとんどが、子だくさんの家庭は増税になっているわけであります。それは九八年の特別減税というのが、家族数に応じた税額控除方式だった。そのために、子供の数の多い世帯ほど特別減税打ち切りの影響が大変大きく出たわけであります。
そこで私、九九年の税制改正と二〇〇〇年の年少扶養控除の廃止、これを合わせて九八年から二〇〇〇年、この二年間でどうなったか、二年間の所得税、住民税の税額の変化を計算してみました。この結果、一般のサラリーマン世帯を考えた場合には、同じ年収で比較した場合、子供の数が多ければ多いほど増税になるという数字が出ましたけれども、これはもう間違いないと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) その計算をしてみたことはございませんけれども、それは確かにそうなるはずです。
○小池晃君 ぜひそういうことはしていただきたいと。これ大変な問題なんですよ。
きょう配付した資料をごらんいただきたいというふうに思います。これ年収六百万円のサラリーマン世帯、大体平均七百万円ぐらいで小中学生を持つ世帯で、このぐらいをちょっと参考にしてみました。この世帯はもちろん児童手当の対象世帯であります。
この年収六〇〇万円のサラリーマンの場合、この二年間に行われた税制改革の影響が、これ子供の数が多ければ多いほどどんどんふえていくということになるわけですね。単身者は五万八千円の減税であります。それに対して、夫婦のみはほぼ差し引き増減税なし。子供一人だと約四万、二人だと約八万、三人だと約十二万円と増税額がふえていくわけであります。もしこうした家庭で運悪く三歳から小学校入学までの子供がいないとどうなるかというと、これは丸ごと増税しかかかってこないわけです。そういうことになる。
もし児童手当拡大の対象の子供がいたとしてもそれほど運がいいというわけじゃなさそうなんですね。というのは、仮に三歳から小学校入学までの間に二人目の子供がいたらどうか。そうすると、児童手当は月五千円ですから年間六万円ふえる。しかし、増税が八万円ですから差し引き増税であります。仮に三人目の子供が三歳から小学校入学の間にいたらどうか。これは児童手当は月一万円であります。ですから年間十二万円。三人子供がいると十二万円増税ですから差し引きこれは吹き飛んでしまうんですね、増税分が。児童手当分が消し飛ぶ。第三子が小学校に入学したらたちまち全部が増税になるという計算であります。
これでは子供の数が多ければ多いほど被害が多い。子づくり、子育てに対する罰金なんじゃないだろうかというふうにも言えるような中身で、これはまさに少子化対策ということでいえば逆行するやり方じゃないかと思うんですが、大臣いかがですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 厚生大臣がお答えくださるかと思うんですが、それは九八年に、今おっしゃっていることは定額減税をやったのを定率減税に直した、それで事実上増税になる方がおられて、そしてそれを何とか回避しようとしまして十万円少子減税を上げた。それでも救えない人があったわけですが、その後、少子減税を上げた分を今度また戻しますから、両方通じて損をした人がもう一遍損をする。子供が多いほどそういうふうになるケースはあるだろうとおっしゃれば、私はそれはあるだろうと思います。たくさんおられるとは思いませんが、それは理屈上どうしてもそういうケースがあるということは認めざるを得ないと思います。
○国務大臣(丹羽雄哉君) 委員の御指摘のこの年収六百万円の角度から見れば、そういった面は否定できないことは紛れもない事実でございますが、児童手当と年少扶養控除というのは一律に同じように扱うわけにいかないわけでございます。
違った角度から見ますと、要するに児童を養育する家庭の負担軽減という観点から見た場合には、扶養控除というのは非課税世帯は恩典を受けない、これは御案内のとおりと思います。その一方で、所得が高いほど効果が大きくなる、こういうことでございますけれども、児童手当というのは定額で、高所得者にはいわゆる所得制限七割がかかっておるわけでございますので、要するにそういうような制限を受けるわけでございます。
ですから、この児童手当と年少扶養手当というものの目的、役割をそれぞれ同一視できないわけでございますが、結果的に見れば、今回の措置というのは少子化対策の中でいわゆる低所得者により重点的に配慮したと、このように御理解をいただければ幸いでございます。
○小池晃君 そういう一般論を言っているんじゃないんですよ。今回の政策についてどうかと私は言っているんです。今回のやり方を見れば、児童手当の拡大というのは必要だと先ほどから言っていますよ、それは。しかし、今回のやり方はどうか。児童手当を拡大した三百九万人の中に非課税世帯はある、それは当然であります。そこが恩恵を受ける、それは当然であります。一方で、増税対象の千九百万人というのは、これはすべて高額所得者ですか。違いますよ。六百万円の世帯だって高額所得者ですか。違いますよ。そういう世帯が増税の打撃を受ける仕組みになっているんです。だから私は、児童手当の拡大自体否定しているわけじゃない、こういう財源の生み出し方は子育て世帯に打撃を与える結果になるんじゃないですかというふうに言っているんです。
大蔵大臣、もう一回お聞きします。先ほど御答弁なかったんですけれども、こういう子供の数がふえるほど税金がふえるというやり方は、これは子育て、少子化対策に逆行するんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) こういうことになりました、それらに伴う計算は今、委員のおっしゃったとおりで私は間違いないと思います。そのことが子供さんをたくさんつくるということに政策としては逆ではないかとおっしゃれば、私はそういう方がたくさんいらっしゃるとは思いませんけれども、それに関する限り、それはおっしゃることも認めざるを得ないと思います。
○小池晃君 これ、はっきりしましたよ。こんなやり方で何が少子化対策かと。教育に金がかかるという声が一番強いんですよ、子育て世代からは。そういう声が強い中で、一番金のかかるそういう階層世代である、年代である、小中学生の子供を持つ親に最も増税の被害が及ぶ。これは支離滅裂な政策であります。
私たち日本共産党は、少子化対策としては国際的に見て極めて低い児童手当、これは引き上げが当然必要だ、女性が働きながら出産、育児に取り組める環境づくりも必要だ、そういうふうに考えています。しかし、自自公政権のやり方、これはその経済的支援すら後退させようとするものじゃないだろうか。子育て世代への支援どころか、逆に打撃を与えるようなこういうやり方は到底認めることはできない。このことを申し上げて、私の質問を終わります。
○国務大臣(宮澤喜一君) そういうケースがあることは認めますけれども、そう大きな声で根本政策の御批判を受けるような問題ではないと思います。
○委員長(倉田寛之君) 以上で小池晃君の質疑は終了いたしました。(拍手)
▲「国会論戦ハイライト」目次
|