○小池晃君 日本共産党の小池晃です。 年金というのは国民の現在と将来に深く影響を与える大変な法案であります。この審議に日本じゅうが今注目しているというふうに言ってもいいと思います。私の議員会館の事務所にも百通をはるかに超えるファクスや電報が寄せられています。全国の千二百七十三地方議会で年金改悪反対の決議が上げられております。 今、国民の将来不安の中心というのは社会保障である。そしてさらにその第一が年金ではないか。どうしたら国民の不安にこたえることができるのか、徹底的な審議を行うということをまず強く主張したいというふうに思っております。 私は、きょうは第一回の審議ということですので、法案の中心部分に関する、すなわち厚生年金の給付削減の問題、ここにちょっと絞って徹底的に議論をさせていただきたいというふうに考えております。 まず、高齢者の深刻な雇用不安、雇用の危機の問題であります。 現在、定年制が六十五歳以上の企業は全体の六・六%、大企業では労働者の四三%が定年前に退職しております。求人年齢の上限の平均は三十七・三歳、そして六十歳代前半の有効求人倍率、これはいろんな場所で言われておりますが、〇・〇六、十六人に一人という数字であります。 厚生大臣にまずお伺いをしたい。 高齢者をめぐる雇用環境は依然として大変厳しいと思うんです。政府は、六十歳代前半の雇用確保が支給開始年齢繰り延べの前提だというふうに今までも言われてまいりました。しかし、その前提自体が崩れているんじゃないか。このことにまずお答えいただきたい。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) まず、近年の雇用関係でございます。 六十歳代前半でも働いて収入を得ている方は平成十年で五七%に達しております。着実に方向としてはふえてきておるわけであります。それから、定年制を設けている企業は既に六十歳定年制が定着いたしておりますし、今後、定年年齢が引き上げられる傾向にあるわけでございます。 ことしの春闘におきましてもこの問題が大変大きなテーマになっておるようでございますし、それぞれの労使間で定年制を延長する方向で自主的にお決めになっているところがふえ、特に、例えば電機労連なんかはそういうような傾向にあると聞いておるような次第でございます。いずれにいたしましても、高齢化社会を迎えて、定年制を含めて何らかの形で六十歳代前半の働く方々は着実に今後ふえていくのではないかと思っています。 ただ、最近のいわゆるリストラ、合理化、こういう問題が大変深刻なことも事実でございますし、これは一時的なものであるというふうに私どもは考えておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、働く意欲のある健康な六十歳代前半の皆さん方が働けるような職場の確保のためにも、今後、労働省とも十分に連携を図りながらその充実に努力をしてまいる決意でございます。 ○小池晃君 今のお話を聞くと、現時点での高齢者雇用の深刻さは一時的なものであるというような認識をお持ちのようなんですが、例えばかつてバブルの絶頂期、日本経済が絶好調の時期と言われていた時期であっても、六十代前半の有効求人倍率というのは〇・二であったと。これは、衆議院の参考人質疑の中で一橋大学の高山教授から紹介をされておる。景気が回復すれば六十代前半の雇用環境がきっとよくなるに違いないという想定は、少なくとも過去の実績からすると、信じることができないというふうにおっしゃっているわけです。これは決して一時的な状況ではないと。 繰り延べの前提だと言うのなら、それを保障するべきだ、保障されなければいけない。努力したけれどもその時点ではだめだったということでは済まされないと思うんです。これはできるんですか、保障を。六十五歳支給繰り延べを提起している中で、六十歳代前半の雇用を確保するんだということを厚生大臣として責任を持って国民に対して約束できるんですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 雇用と年金との連動が望ましいことは言うまでもありません。基礎年金の一階部分の導入を決めた時点においても、大変この問題についても大きな焦点の一つとして議論をしていたことを承知いたしておるわけでございます。 あの当時は、定年制は大体五十五歳でございました。それから大体五十七、八になって、今や六十になってきている。これは、当然のことながら、いわゆる高齢化の波が欧米に比べまして三倍ないし四倍のスピードで押し寄せていく中において、いわゆる六十代前半の方々の労働力に依存するところも少なくないわけでございます。私どもは、引き続きそういった方向で努力をさせていただきたい、このように考えているような次第であります。 ○小池晃君 幾ら努力をするというふうに言われても、一方でリストラを推進しているような政府が、近未来に六十代前半の雇用が確保されるなどと言って一体だれが信じるかということを申し上げたい。この問題は最後にもう一回立ち返って私は議論をしたいというふうに思います。その上で、雇用の危機というのは高年齢層だけの問題なのか、決してそうではないんじゃないかということを議論したい。 ことし一月に社会保険庁が発表した「平成十年度社会保険事業の概況」、「平成十年公的年金加入状況等調査」、この二つの報告に基づいて厚生年金制度の現状について質問したいと思います。 「社会保険事業の概況」には、不況とリストラによる雇用破壊が年金に大変な影響を与えているということが鮮明に数字としてあらわれております。厚生年金の被保険者は前年度に比べて何人減ったか、実に五十一万人であります。男子三十三万人、女子十八万人。そして、その多くはリストラによって職を失った労働者であります。製造業二十七万人、建設業十二万人、卸売・小売業十二万人、金融・保険業六万人、明らかにこの間リストラを進めている業種が中心となっています。 そこでお聞きしますが、このように厚生年金の被保険者数、加入者数が減るのは一体何年ぶりでしょうか。 ○政府参考人(小島比登志君) 厚生年金の被保険者数は三千二百九十六万人でございまして、今御指摘のように前年度末に比べまして五十一万人減少しております。これは、昭和五十年度末に一万七千人減少して以来のことでございます。 ○小池晃君 昭和五十年度の減少というのは、オイルショックのときであります。このときの減少は一万七千人、今回の減少は五十一万人、つまり三十倍であります。過去最大規模の加入者の減少、そういう事態になっているわけであります。 「社会保険事業の概況」によれば、厚生年金の加入事業所数は一万カ所減少している。企業合併なども反映している部分もあるでしょうが、多くは倒産であります。もう一度お聞きしますが、厚生年金の加入事業所数の減少というのは何年ぶりのことでしょうか。 ○政府参考人(小島比登志君) 適用事業所数の減少でございますが、これは昭和二十年度末に三万五千事業所が減少して以来のことでございます。 ○小池晃君 今のお聞きいただけたと思うんです。これまで加入事業所数というのは、戦後のどんな不況の時期にも決して減ることはなかったんです。一貫してふえ続けてきたんです。それが減ったのは、大空襲や原爆投下で日本じゅうが破壊され、敗戦を迎えた昭和二十年だ。そのとき以来のことだ。文字どおり戦後初めての事態が今訪れているわけです。 さらにお聞きします。 賃金カットの影響で、標準報酬月額、サラリーマン、厚生年金加入者の給与所得は全体で〇・二%減少しています。男子が〇・五%ダウンであります。標準報酬月額が減ったのは何年ぶりでしょうか。 ○政府参考人(小島比登志君) 厚生年金制度始まって以来のことであります。 ○小池晃君 昭和十七年制度発足以来初めてであります。 我が党の市田議員も代表質問で取り上げましたが、被保険者数が減り、加入事業所数も減り、標準報酬月額も減った。そのもとで、ついに保険料収入も前年比でマイナスになった。これは何年ぶりですか。 ○政府参考人(小島比登志君) これも制度始まって以来のことでございます。 ○小池晃君 以上の議論を踏まえて、私は厚生大臣にお聞きしたい。 これから少子高齢化の時代が来るから年金は大変なんだ、そういうふうにおっしゃってきた。それで年金制度が危機なんだと言われてきた。しかし、どうでしょうか、厚生年金の加入者数が減る、事業所数が減る、平均報酬月額が減る、そして保険料が減る。これは、厚生省すら予想しなかった事態が今まさに起こってきているわけです。深刻な事態が進行している。 少子高齢化の進展云々を言う前に、まず今、現局面での深刻な事態を一体どうするのか。このことに対する緊急な対策こそが求められているんじゃないですか。いかがですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 近年の雇用情勢の変化でございますが、これは御案内のようにバブルが崩壊をいたしまして、各企業ができるだけ身軽にしていこうではないか、あるいは不採算部門については切り捨てて、そして収益率の高い部門を中心にしてこれからは会社経営を行っていこうではないかということを大体方向として求めつつある中で起きたものでございます。 私は、率直に申し上げて、ちょうど今産業構造そのものが大きく変動している中において、短期的なものではないか、こう認識をいたしておるような次第でございます。この期間をできるだけ短くして、そして新たな業種のもとにまた新たな労働力というものが吸収される、そうなっていかなければならない、こう考えているような次第でございます。 その一方で、年金制度というのはあくまでも長期的な傾向を見て行うものでございます。先ほど来申し上げておりますように、あくまでも将来世代の過重な負担を防ぐとともに、確実な給付を約束するという考え方に立って御提案を申し上げておるわけでございますので、その辺のところにつきまして私どもの考え方を御理解賜ればと思っております。 ○小池晃君 今の戦後初めて、制度発足以来初めてという事態、これを一時的、短期的な現象だなどというような見方でいたのでは、現在の局面を打開して国民に展望を示す、方向を示すことはできないというふうに私は言わざるを得ないと思うんです。 先ほど柳田議員から指摘があったように、現在の局面の中で年金制度の給付の削減を示すことが景気の足を引っ張るんじゃないか、そのことをどうするのかということのまじめな検討なしに国民に信頼も安心も与えることはできない。今のような認識では、とても年金制度の未来を示すことはできません。 私も別の観点から聞きたいと思いますが、この厚生年金を取り巻く状況を一体どう見るのかということであります。まさに雇用の危機が社会保障制度の基盤を崩しているということなんじゃないだろうか、そういう認識をお持ちかどうかということであります。そういう認識をもしお持ちなのであれば、抜本的な手だてを打つことなしに年金制度の財政収支の帳じりを合わせることだけを考えていても、まさにこれは袋小路に陥るだけではないかというふうに思うわけであります。その辺の認識を示していただきたい。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) まず、雇用の創出につきましては、今御審議いただいております十二年度の予算案の中にもさまざまな形で雇用の創出のために、いわゆる高齢者に対する奨励金を助成するとか、また高齢者の再訓練、ミスマッチの解消であるとか、そういうようなことを通じまして私どもは高齢者のいわゆる雇用状況の改善に今後とも懸命な努力をいたしていく決意でございます。 先ほどから申し上げておりますように、これを短期的に見るのか長期的に見るかということが一番の問題でございますが、私は率直に申し上げて、今極めて厳しい状況でございますけれども、全体的にやや明かりが見え始めてきたところでございますし、今が最もピークである、こういう認識に立つものでございます。 いずれにいたしましても、高齢者の雇用問題につきましては、今後とも私どもは、何らかの形で六十歳代前半の方々が働く機会を持てるような環境づくりのために、労働省とも十分に連携をとりながら進めていく一方で、そしてさらに先ほど来申し上げておりますような若年世代の負担の軽減ということを考えていかなければならないと思います。 それと同時に、まず今回のいわゆる例えば二階部分の支給開始年齢を引き上げることでございますが、我が国の平均寿命が男性で七七・一九歳、女性で八三・八二歳と世界で今や最も長寿の進んだ国でございますし、さらに欧米などを見ましても六十五歳以上の支給が一般的でありますし、また一部には、さらにまたこれを引き上げようという動きがあることも委員御承知のことだと存じます。そういう中で、私どもは、将来世代の過重な負担を防ぐとともに確実な給付を約束するために必要である、このように考えております。 ○小池晃君 今日のこの深刻な厚生年金を取り巻く状況を短期的、一時的な事態だということで、これに対して何ら手を打つことなく、将来の給付削減を今この場で提起するということがいかに景気を冷え込ませ、国民の将来不安をあおるものであるか、そういう認識が全くないということが今の答弁で私ははっきりわかると思うんです。 さらに、加入者数の問題について質問を続けたいんですが、厚生年金からはじき出された被保険者は一体どうなっているのか。「概況」の国民年金被保険者の推移を見ますと、厚生年金の被保険者が五十一万人減った、このことに連動して国民年金の第二号、サラリーマンですね、これは五十五万人減少している。さらに、第三号被保険者も十三万人減少しておりますが、これはどういう原因によるものですか、社会保険庁。 ○政府参考人(小島比登志君) 今御指摘のように、国民年金の第二号被保険者は三千八百二十六万人でございまして、共済の方を含めまして五十五万人、全体を含めますと五十五万人の減少ということになっております。 それから、三号被保険者が十三万人の減少ということですが、一号被保険者は二千四十三万人で八十四万人の増加ということになっております。この理由でございますが、平成十年当時の経済・雇用情勢ということの変化によりまして、二号被保険者及びその被扶養者であります三号被保険者と第一号被保険者との間で移動が起こったということが一つ。それから、私どもは平成七年から二十歳到達者に対する年金手帳の送付などで未加入対策を進めておりまして、そういったものの効果がありまして、第一号被保険者数が増加したものと考えているところでございます。 ○小池晃君 要するに、リストラで夫が職を失った。そうすると厚生年金からはじき出される。そうすると妻も厚生年金から締め出される。三号被保険者から夫も妻も一号被保険者に移っていっているんだ。その結果、今回八十四万人第一号被保険者が急増しているんだ。まさに二号、三号からはじき出された労働者とその妻が一号に流れ込んできているということなわけです。 職を奪われた労働者夫婦が一号被保険者となると一体どうなるか。月額夫婦二人で二万六千六百円という保険料負担を全額自己負担することになるわけであります。そして、給付は極めて低く抑えられてしまう。まさにこれは将来不安を高めざるを得ないことじゃないか。 先ほどから議論しているように、今のこの厚生年金制度の加入者数の推移などを見ると、本当にやはり国民生活の状態悪化というのが背景にあるんだ。低賃金とリストラによって国民生活が状態悪化している。ここを改善せずに展望が切り開けるのかということであります。これは、年金制度だけではなくて、今もう医療保険も雇用保険も労災保険も同様の危機に瀕しております。保険の支え手が大変弱っている。 ところが、政府がとっている政策はどうかというと、こういう事態は短期的、一時的な現象でありますということで、それに対して何ら抜本的な手を打つことなく、給付を削減する、あるいは負担を強化するという形でこの危機を乗り切ろうとしている。こんなことをすれば悪循環に陥ることはだれの目から見てもはっきりしていると思うんです。 今回の年金改悪というのは、まさにその典型的なやり方というふうに言っていいんじゃないだろうか。 以下、その内容に即して私は質問をしたいというふうに思います。 今度の改悪法案によりまして二〇二五年での年金水準は一体どうなっていくかということです。これは、実は昨年三月の国民年金保険料凍結の議論をした当委員会で私が質問いたしました。二〇二五年時点で新規裁定、新しく年金をもらい始める、そういう夫婦の場合、非常に大ざっぱな計算だというただし書きでしたが、平均的な夫婦が生涯に受け取る年金の総額というのは五千三百万円から四千三百万円へ一千万円ダウンするんだという試算を厚生省は示された。しかし、これは極めて大ざっぱな計算で、遺族年金の分なども含めて計算したものではございません。 今回、計算をするように要求をしておりますので示していただきたいんですが、この年金改悪法案を通じて、遺族年金を含んで平均的な厚生年金の生涯の受給額、これはどのくらい影響を受けるのか、お示しいただきたいと思います。 ○政府参考人(矢野朝水君) 今回の制度改正で厚生年金の生涯受給年金額はどのくらい変化するのかということでございますけれども、これは給付と負担両面で見る必要があると思っております。 それで、モデルでございますけれども、これは給付と負担両面において制度改革が完了いたす時点をとって考えてみたわけでございます。より細かく言いますと、二〇〇九年生まれということでございますから、これから十年後に生まれてくる方を前提にいたしますと、まず現行制度では六千一百万の生涯給付でございます。これが改正案によりますと、四千九百万と見込んでおります。 この差額でございますけれども、各改正項目別に見ますと、既裁定年金については物価スライドだけにする、これによりまして約四百万円減、七%の減ということでございます。それから、支給開始年齢を将来的には六十五歳に引き上げるということでございまして、これによる減が六百万円で、一一%の減ということでございます。それから報酬比例部分の五%適正化による分は百万円でございまして、二%の減でございます。 一方、保険料負担につきましては、現行制度によりますと四千二百万円のところ、改正案では三千四百万円ということでございまして、二一%の減になるものと見込んでおります。 ○小池晃君 今の御答弁でも出ましたように、六千百万円の生涯受給年金総額が四千九百万円、一千二百万円の減少ということになるわけです。 その内訳を見ると、やっぱり六十五歳支給繰り延べの影響が大変大きい。全体の約半分、六百万円がこの六十五歳支給繰り延べによる影響であると。それから次に賃金スライドの凍結で四百万円、報酬比例部分の五%カットで約百万円だと。これは、二〇〇九年という数字も示されましたけれども、六十五歳の支給繰り延べが完成する二〇二五年以降に新規裁定される年金受給者というのは大体こういう年金額の減少の被害が出るんだろうというふうに思うわけです。 大臣にお聞きしたいと思うんですが、先ほど議論したような厚生年金制度の危機というのがあるわけです。大変深刻な加入者の減少あるいは標準報酬月額の減少、こういった事態の中で全体で一千二百万円もの年金額が減少するという給付の抑制を今の時点で打ち出すということがどれほどの将来不安を引き起こすものなのか、そういう御認識をお持ちなのかどうかお伺いしたい。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 先ほどから繰り返し申し上げさせていただいておるわけでございますけれども、このいわゆる給付と負担をどの辺に求めていくかということが、行き着くところ、この年金制度の最大のポイントではないか。 そういう中で、いわゆる現役世代の方々が将来においても確実に給付を受けることができる、こういったビジョンをお示しすることが年金制度に対する不安、不信を解消することだ、こういう観点に立ちまして、今、私どもはこのような法案を提出させていただいておるわけでございますし、これをさらに先延ばしをして、そして後になって、とてもそれだけ給付はできません、場合によってはさらに負担をしていただかなければなりませんということは、かえって私は不信感を増幅させるだけではないか。こういう観点から、私どもは今御審議をお願い申し上げているところであります。 ○小池晃君 給付の削減をしないと保険料負担が将来世代の負担になるんだというふうにおっしゃいますけれども、国庫負担を二分の一に引き上げることすら、五年前に約束したことすらやっていないわけですね。そういう責任を果たさないでおきながら保険料負担を云々する資格はない。 先ほどモデル計算で示されましたけれども、保険料負担は減るんだとおっしゃいますけれども、国庫負担はどういう想定になっているんですか。 ○政府参考人(矢野朝水君) 今申し上げましたのは国庫負担三分の一のケースでございます。 ○小池晃君 国庫負担三分の一のまま二〇〇九年までずっと行くんだと、そういう想定のもとで出した保険料負担の数字を示して保険料負担が軽減するんだというようなことが何で言えるんですか。全くペテン的なやり方ですよ。国庫負担を引き上げるということを全体で合意しているじゃないですか。そういう方向で少なくともやろうとしているわけでしょう。そういったことをあいまいにして、それで保険料負担が減るからというようなことを言っても、全く説得力がないということを申し上げたいというふうに思うんです。 さらに、今まで受給総額の減少ということで議論してまいりましたけれども、毎月の年金額というのはどのように変化していくのか。今回の法案による年金の改悪によって新しくもらい始める時点での年金額というのは一体どうなるんでしょうか、何%減少するということになるんでしょうか。 ○政府参考人(矢野朝水君) 新規裁定者がもらい始める時点での今回改正案の将来への影響ということでございますけれども、これは報酬比例部分の五%適正化した場合を考えているわけでございまして、この場合には、厚生年金の場合は一階の基礎年金がございますので、年金額全体の影響は約二%ということになります。しかし、物価の伸びに応じた増額が行われるわけでございますので、年金額自体が減少するわけではない。従来ベースと比べて二%の減になるということでございます。 ○小池晃君 実額でふえる減るという話をしているんじゃないですよ。年金というのはそういうものじゃないです。物価が上がれば年金額が上がってくるのは当然であります。現在の価値に置き直すことで、その年金でどういう生活が保障されるのかということが国民に示されなければ、実額でふえるんだからいいでしょうと、そういう議論は年金で通用しないのはわかっているでしょう、あなたも。 今、厚生省が示した二%の新規裁定時点での減、これは厚生省がパンフレットでも今度の改悪で年金の給付というのは約二%減るんですという表を示しているわけです。これだけ見ると、このくらいなら大したことはないというふうに思われる方もいるかもしれない。しかし、これは大変なごまかしなんだということをきょうは議論したいと思うんです。なぜなら、これはもらい始める裁定時の話だけですから、この後、年金額は賃金スライドの凍結によって着実に目減りをしていくわけであります。 大臣にお聞きしたいと思うんですが、賃金スライド制度を凍結する、これは年金の考え方を大きく変えるということだと思うんです。今までは、裁定時はもちろん、その後も再計算の時に現役世代との賃金の代替率をちゃんと維持していく。そのために賃金スライドをやってきたわけです。ところが、これからは新規裁定時は賃金スライドをするけれどもその後は物価スライドだけですよということは、現役世代の賃金との代替率というのはそれから後は保障しませんよということになる。 こういう、考え方を変えるということははっきり認めていただけますね。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) そのとおりでございます。 ○小池晃君 そういうことなんですよ。これは大変な改悪なんです。年金制度の考え方そのものが大きく変わるということなんです。 実際これがどういうふうに変わっていくのか。厚生省は今回の再計算に当たって、賃金上昇率二・五%、物価上昇率一・五%という数字を再計算の基礎としております。これは単純に目の子で計算すれば、賃金スライドを凍結した場合は、賃金上昇分と物価上昇率との差が一%でありますから、およそこの一%ずつの乖離というのが年数がたつにつれてかかってくるんだと。だから、賃金スライドを続けた場合とそうでなかった場合、既裁定年金を物価スライドでやった場合は、五年たてば五%乖離するし、十年たてば一〇%乖離するし、十五年たてば一五%乖離していくんだ、およそこのような考え方で間違いないですね。 ○政府参考人(矢野朝水君) 間違いございません。そういうことでございます。 ○小池晃君 そういうことであります。 ということは、先ほどお話があったように、スタート時点で報酬比例部分の五%カットがある、二%ダウンというのが裁定時にあるわけです。その二%ダウンから五年たつごとに約五%ずつ年金の目減りというのが生じていくんだと。その当時の価値に置きかえてくれば、五年たてば七%減、十年後は一二%減、そして十五年後は約一七%減になっていく。二〇%、三〇%というふうに下がっていくんだということになるわけですね。 ○政府参考人(矢野朝水君) この報酬比例部分の五%適正化、それと六十五歳以降は物価スライドだけで伸ばします、賃金スライドは停止いたします、こういう二つの措置を講じた場合に、将来的には六十五歳以降二十数年たちますと、賃金スライドも実施した、五%適正化もやらない、こういった場合との格差というのが二二%程度になる、こういうこともあり得ると思います。 ○小池晃君 重ねてお伺いしますけれども、この影響というのは、将来世代の問題ということだけではなくて、既に年金を受けている方、それから来年、再来年から年金生活に入っていく方にもすべて当てはまる議論になるわけですね。 ○政府参考人(矢野朝水君) 年金を受給されている方についても、これまでですと五年ごとに賃金スライドがあったわけですけれども、これがなくなるということでございますので影響がございます。 ○小池晃君 大臣にお聞きしたいと思うんです。 この制度は、大変私は年金制度の精神が大きく変わる改悪だというふうに思うんです。長生きすればするほど年金額はどんどん目減りをしていくわけです。これではまさに長生きに対する罰則ではないかというふうに言っても過言ではないのではないかと思うんです。このような制度改悪というのは、まさに高齢者の生きていく希望を奪うものになるのではないか、そう考えるんですけれども、いかがですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 今回の改正は、六十五歳以降の年金額は、先ほどから御指摘のように物価スライドのみになるわけでございます。これは、あくまでも将来世代の負担を過重なものにしない、この方策の一つとして導入をさせていただくわけでございまして、少子高齢化が進み、現役世代の負担が重くなっていく中で、現役世代の賃金の上昇にあわせて高齢者の年金額を引き上げるような状況にはないものと考えられることが第一点でございます。 それから、第二点といたしましては、物価スライドなどは行いますので年金の価値が実質的に目減りしないということで、私は年金の基本的な役割は果たせるものと考えております。 ○小池晃君 物価分は見るけれども賃金分は見ない、現役労働者の生活の実態を保障していくという年金の考え方を変えるんだということを率直に認められたと思うんです。 重ねてお聞きしますけれども、こうした改悪が現実の年金生活者の生活実態を直撃するんだと。これはまさにこの四月から始まるわけですね。介護保険の保険料負担が加わってくる、高齢者医療保険制度の定率負担の改悪もある、そういう負担がのしかかってくる中で、さらにこういう賃金スライド凍結、五%カットが現実の年金生活者にかかってくることの影響を、大臣はどのように考えていらっしゃるんですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 年金制度というのは、繰り返しお話を申し上げておるわけでございますけれども、やはり賦課方式に基づきまして現在のいわゆる給付というものを保険料によって賄われているわけでございますので、後代の現役世代の方々に対してもやはりきちんとした給付というものを保障しないと、この年金制度そのものが崩壊をしかねない、こういうような実態の中でこのようなやむを得ない措置をとっている次第でございます。 ○小池晃君 先ほどから何度も言っているように、それを言うのであれば国庫負担二分の一というのを直ちにやるべきだ、積立金は五・五年分も積み立てている、そういったことを放置しておいていいのかということなんですよ。そういうことに手を打たずして、給付の削減によって現在の状況を切り抜けようというのは、まさに国民生活、今の消費不況に拍車をかけるし、将来展望を奪うものなんだということを申し上げているわけです。 一点確認したいんですが、厚生省は、賃金スライドを凍結した場合、現役世代との賃金の乖離が二〇%までは賃金スライドを停止するが、二〇%になったときには再検討するというようなことをおっしゃっています。二〇%の乖離、現役世代の賃金と二割乖離するのに必要な年数というのは何年なんですか。 ○政府参考人(矢野朝水君) これは複利計算をいたしますと、今回の経済前提、つまり物価が一・五、賃金上昇が二・五、こういった前提でやりますと二十三年でございます。 ○小池晃君 二十三年間なんです。六十五歳から年金をもらい始めて二十三年といったら八十八歳です。そこまで賃金スライドしないということなんです。これは凍結とはいっても事実上の廃止です。そういう中身なんだということも指摘したい。 そこで、実際の金額に当てはめて、国民に一体これがどういう年金になるのかということを示す責任があると思うんです。実際の金額に当てはめて、厚生年金の新規裁定の平均支給月額というのは九八年度でどれだけになっていますか。 ○政府参考人(小島比登志君) 厚生年金保険の老齢年金の新規裁定受給権者の平均年金月額ということでございますが、平成十年度十七万三千三百六十二円ということでございます。 ○小池晃君 これに当てはめて先ほどの七%、一二%、一七%減ということが一体どうなっていくのか。極めて単純に当てはめてみると、五年後には七%減で十六万一千円、十年後には一二%減で十五万三千円、十五年後には一七%減で約十四万四千円。そして、二〇%乖離するまで是正しないとすれば、報酬比例二%ダウンと合わせて二二%ということで十三万五千円であります。 五年間支給繰り延べされて六十五歳まで年金を受け取れなくなった上に、平均的な労働者の受け取る年金額というのが、現在価格に置きかえると、今の購買力水準、賃金水準に引き合わせて考えてみれば平均十四万円台まで下がっていく、そういう生活水準しか保障しない年金になっていく。これは大変な給付減じゃないですか。 厚生年金の支給額がこれほど低下する、これで不安なく暮らせる額だというふうに大臣はお考えなのか。こうした改定というのは本当に将来への不安を高めるものになるんじゃないかという声に大臣はどうお答えになるのか、お伺いしたい。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 先ほどから繰り返し御答弁を申し上げておるわけでございますが、私どもは将来世代の過重な負担を防ぐために、年金を受け取る時点において現役世代の手取り年収のおおむね六割程度の給付水準を確保することを期待し、そしていわゆる保険料におきましては、総報酬の二割という中において長期的、安定的な年金制度の確立を図ることが、ひいてはこの年金制度の不安、不信の解消につながると思っております。 それから、先ほどから委員御指摘の、国庫負担の三分の一から二分の一につきましては、御案内のように今回の法案の中で初めて附則ではございますけれども明記されました。五年前は、これはあくまでも各委員会におきます決議であったというふうに受けとめておるわけでございます。 そういう意味におきまして、その重みというものを受けとめまして、安定した財源を確保した上で、できるだけ速やかに二分の一に引き上げていくことがまさに年金に対する国民の皆さん方の不信、不安感を解消するものと考えているような次第でございます。 ○小池晃君 今、大臣がおっしゃいました五年前の改正時の附則と附帯決議の関係について一言言えば、前回の改正時も附則にちゃんと書いてあるんです。「平成七年以降において初めて行われる財政再計算の時期を目途として、」「必要な措置を講ずるものとする。」というふうに附則に書いてあるんです。そして、附帯決議では「二分の一を目途に引き上げることを検討すること。」というふうになっているんです。だから、附則に書いてあったんですよ。附則にこの趣旨は表現されているんです。それを、また附則に書いたからといって信用できないという声が衆議院の公聴会で上がったわけです。そのことをきちっと御理解いただきたい。 大臣は先ほどから同じことしかおっしゃらないけれども、私が申し上げたいのは、これは将来世代の問題だけじゃないんだと。将来世代は大変な負担があるけれども、まさに今の年金生活者を直撃するんだ、このことをどう考えるんだということにまともにお答えになっていない。 それから、将来世代の負担を言うのであれば、国庫負担二分の一を直ちにやるべきだ。それから、全額国と大企業負担、最低保障年金を我々は主張しておりますけれども、そういう制度への展望を示すべきだ。この不必要に膨大な積立金をどうするのか、このことも国民に示すべきだと。そのことなしに将来不安が解消できないと言っても何の説得力もないということを申し上げたい。 その上で、厚生年金の支給の削減の問題でありますけれども、年金の改悪で、来年度の予算ベースで厚生年金の報酬比例部分だけで支給総額がどれだけ減るか、お示しいただきたいと思います。 ○政府参考人(矢野朝水君) 約四千億円でございます。 ○小池晃君 今までの議論、また繰り返しになりますが、全体として四千億円の支給減だと。これに、今のは基礎年金部分は入っていませんから、そういう負担もあるわけであります。本当に景気の回復にブレーキをかける大改悪だということを改めて指摘をしたい。 さらに、本日、資料を配付させていただいております。この八五年の年金改定以降の流れも含めて最後に議論をさせていただきたい。 年金の新規裁定額というのが最近非常に停滞をしているという問題であります。この五年間で停滞ないし減少をしている。社会保険庁にお示しいただきたいんですが、厚生年金の新規裁定の平均受給月額、九八年度と五年前と十年前で一体どういう数字になっているのか、お示しいただきたい。 ○政府参考人(小島比登志君) お尋ねの平均年金月額の推移でございますが、昭和六十三年度は十三万九千九百七十九円、それから五年後の平成五年度が十七万一千八百二十五円、平成十年度が十七万三千三百六十二円と、こうなっております。 ○小池晃君 配付したグラフを見ていただきたいんです。 今お話があったように、五年前、十年前、十年前から五年前まで四万円ぐらい上がっているんです。しかし五年前からもう全く伸びていない。グラフを見ると明らかです。この五年間ぐらいで完全な頭打ちになっている。女性がふえているからということかと思ったんですが、男子の受給額でもやっぱり頭打ちなんです。男子の新規裁定額だけ見ても、九五年度は二十万三千二百六十六円、九六年度は十九万八千五百三十九円、九七年度は十九万六千百五十六円、九八年度は十九万七千九百六十六円、むしろ減少してきている。何でこんなことになっているんでしょうか。年金局長、お願いします。 ○政府参考人(矢野朝水君) これは、一番大きいのは昭和六十年改正の影響によると思われます。 つまり、六十年改正のときに、制度を放置しておきますと加入期間がどんどん延びていく、そういう中で給付が過大になる。こういうことから、生年月日に応じまして定額部分の単価ですとか報酬比例部分の単価を二十年かけて逓減する、こういう措置を講じたわけでございます。 従来、千分の十というのが給付乗率でございましたけれども、二十年かけてこれを七・五に下げるということで給付乗率の変更をしたということが一番大きいと思います。反面、加入期間あるいは賃金水準、こういったものがそんなに大きく伸びてない、こういうことから給付乗率が減った分、年金総額も足踏みをしている、こういうことが言えると思います。 ○小池晃君 今お話があったように、この影響というのはまさに八五年年金改悪の影響なんですよ。 八五年年金改悪というのは一体何だったのか。これはこの当時の国会の議論を見ると大変な議論がされています。八六年時点では平均の加入年数が三十二年だと。このままほっておくと大変なことになるんだという議論をされているんです。この制度をそのままにしておくと厚生年金の加入年数がどんどんふえてしまう。三十五年、四十年になってしまう。そうすると年金額が莫大になるんだという議論がされているんです。 そして、この八五年改悪の制度設計と考え方というのはどういう考え方でやられたかというと、八六年時点で、三十二年加入した人の受給額と二十年後の二〇〇六年に四十年加入した人の受給額が同じになるように制度設計されたわけです。要するに、今後、厚生年金の加入年数が四十年まで延びるという前提で給付の抑制をしたと。 実際どうだったですか。現時点での厚生年金の男子の平均加入年数を示していただきたい。 ○政府参考人(小島比登志君) 老齢厚生年金の平成十年度新規裁定男子の平均被保険者期間は四百十五月、三十四・六年となっております。 ○小池晃君 三十二年だったんですよ、八六年。今、三十四年ですよ。二年しかふえていないんです。こういう現実があるわけです。四十年になっちゃうから大変だということで制度改悪した。実際は二年間しか加入年数はふえていないんですよ。 では、二〇〇六年の時点で加入年数四十年、達成する見込みはあるんでしょうか。年金局長、お答えいただきたい。 ○政府参考人(矢野朝水君) 老齢厚生年金の平均的な被保険者期間を、男女合計でございますけれども、被保険者期間二十年以上の新規裁定者、こういった方について見た場合には、昭和六十年度以降十三年間で六年間延びているわけでございます。 今後の見通しでございますけれども、制度の成熟化に伴いまして平均加入年数も引き続き延びると考えられますので、将来的には四十年間程度制度に加入することが一般的になるんじゃないか、そう予測いたしております。 ○小池晃君 二十年後に四十年に達するというふうに言ったのは達成できるのかと聞いているんです。二〇〇六年の時点で四十年、達成できるんですか。 ○政府参考人(矢野朝水君) 将来的には四十年加入が一般的になるものと予測しております。 ○小池晃君 これは、達成できる見込みなんて示せないんですよ。財界のシンクタンクだってそういう計算をしているんです。富士銀行のシンクタンクですけれども、富士総合研究所経済調査室渥美氏の試算によりますと、二〇〇六年の予測は三十七年です。二〇一五年になっても加入年数四十年なんか達成できないという予想を出しているんです。これが今度の改悪にも私は通じる中身だと思うんです。 八五年の改悪のときには、これから加入年数はふえるんだ、四十年になるんだと。そうすると年金額が莫大になるから手を打たなきゃいけないということで乗率を下げた。 実際どうですか。高齢者の雇用が全然進んでいない中で加入年数は全然ふえていないんです。さっき男女を合わせるととおっしゃいましたけれども、この八五年の年金改悪の議論のときは男性の話で議論をしているんです。そういうごまかしをしちゃいけませんよ。それで、男性だけ見て、全く四十年達成するような展望がないわけであります。 まさに、今回はどうかというと、六十歳から六十五歳までの雇用が確保できるのか。そんな見通しも全く示さない中で六十五歳支給繰り延べの改悪がやられようとしている。年金の支え手をどうふやすのかということについてのまともな議論や検討や対策を打つことなく、ただ単に年金財政の収支、帳じりを合わせることだけ考えてやってきた結果がこの事態なんじゃないですか。 八五年の改悪で四十年達成できるというふうにおっしゃった。全くそのめどもない。このことの責任をどうお考えですか。厚生大臣にお答えいただきたい。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 昭和六十年の改正は、二十一世紀に向けて長期的、安定的な制度運営の基盤を確保するという、こういう観点から、基礎年金制度の導入であるとか、今議論をいたしております加入期間の延びに伴う給付水準の適正化、こういうものを行ったものでございます。 今後は、六十歳を超えて働く期間も長くなるわけでございます。多くの方々が四十年以上の加入を持つようになる、こういう観点が十分に予想されておりますし、高齢化社会においては、先ほどから申し上げておりますように六十代前半まで働いていただく、こういうような雇用形態になるわけでございます。そういう観点から、昭和六十年度の適正化の措置は大きな流れに外れたものでない、こう確信しております。 ○小池晃君 あいまいにされているんですけれども、八五年改定の前提は崩れている、このことはお認めになるんですか、ならないんですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 認識が異なっております。 ○小池晃君 何とおっしゃったんですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 認識が異なっております。 ○小池晃君 認識が異なっているというのはどういうことですか。だって、厚生省は二〇〇六年の時点で加入年数四十年ということを制度設計の根拠にされたんですよ。それが崩れているんじゃないですかということについて認識も何もないでしょう。これは事実の問題ですよ。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) ですから、申し上げましたようないわゆるバブルによる影響であるとか、今日の大変深刻な雇用状況は私自身も十分に承知をいたしておりますけれども、全体的に高齢化社会が進む中において、そして先ほどから申し上げておりますが、現に定年制の延長もかつての五十五歳から五十七歳、そして六十歳になってきておるわけでございますし、何らかの形で働く六十歳代前半の数もほぼ半分近くまで来ておるわけでございます。 そういう中において、私が申し上げてきているのは、大きな傾向は、流れというものはそう変わっておらないということにおいて認識が異なっている、こう申し上げたわけでございます。 ○小池晃君 全く答弁になっていないですね、率直に申し上げて。 八五年改定というのはどういう改定だったのか。今回の厚生年金の改悪というのは八五年の改悪に引き続く内容なんですよ。そういう中身であるにもかかわらず、八五年の改悪の前提それ自体が崩れているんですよ。その前提の上に今度のこの改悪の議論なんかできるわけないじゃないですか。 八五年改悪の見通しを誤った、そのことの原因と責任をまず明らかにすべきなんですよ。そうでなければ、次の改定を幾ら示されてもまた同じことの繰り返しじゃないですか。その責任を明らかにするべきだと。そういう認識が違うということだけでごまかして、その原因と責任を全く明らかにしないというような議論の上に今回の改悪の議論、そもそも前提としてもうここで議論に入ることはできないということを私は申し上げたいと思うんですが、大臣、いかがですか。 ○国務大臣(丹羽雄哉君) 小池委員とは予算委員会におきましてもしばしば御議論をさせていただきました。そして、私との違いは、いわゆる現在年金を既にもらっている方々や直近に年金をいただく方々の給付を適正化すべきでないという考え方、私は、そうはいっても、この今の少子高齢化社会の賦課方式のもとにおいては、将来の若年世代の皆さん方が一番この年金の問題についてとにもかくにも不安と不信を持っているからそこのところをしっかりしなくちゃならぬ、こういう考え方の違いがあるわけでございます。 そこについて、小池委員は、若年世代の負担と給付についてどういうようなお考え方を持って、どういう財源をもってやっていくかについて、もしお示しいただければ幸いと思います。 ○小池晃君 それは先ほどからの議論の中で明確に示しているじゃないですか。国庫負担を直ちに二分の一に引き上げる約束だったからやりなさいと言っているじゃないですか。最低保障年金制度をつくったらいいじゃないですか。そして、五・五年分も積立金が何で必要なんですか。そこにメスを入れる必要があるじゃないですか。そして、年金制度の支え手をふやすまともな対策をとるべきじゃないか。女性の働き手をふやす、高齢者の雇用機会をふやす、そういったことをやらずして何が展望かと私は再三申し上げています。このことは改めて議論したいと思います。 ただ、きょうは厚生年金の給付減の実態、このことが大変まだまだ明らかになっていないということで、私はいろんな角度から質問いたしました。きょうの議論を通じてかなり厚生年金の給付減というのがどういう実態を持つものなのか明らかになったんじゃないかというふうに思っているんです。 これはきょうに終わりませんから、何度となく議論をさせていただいて、ぜひ今後の年金のあり方をどうするのかということも時間もかけて徹底的に、大臣からも御提案あったことですし、議論を積み重ねていきたい、そのことを申し上げて私の質問を終わります。
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