○小池晃君 私は、日本共産党を代表して、衆議院提出の金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律案について質問します。 バブルの時代の乱脈経営のツケをなぜ国民の税金で穴埋めしなければならないのか、国民の間に広がるこの怒りと疑問に政府は何一つ答えておりません。それどころか、当初の破綻銀行の処理策から税金投入の対象はとめどなく広がり、きょうから審議される早期健全化法で、銀行とさえ名前がつけばすべてに税金が投入できる、そのことが可能になるという、世界に類を見ない野方図な銀行救済の仕組みがつくられようとしています。 破綻前の銀行には税金投入を認めなかった三野党案を政府・自民党は換骨奪胎し、破綻寸前の銀行にも税金投入を可能にしました。この日を境に雪崩を打って税金投入の対象は拡大の一途をたどり始めました。金融再生法案の三党修正案に突然盛り込まれた一般銀行からの税金による不良債権の買い取り、そしてついにその総仕上げとして出されてきたのがこの早期健全化法案であります。 この法案は、バブル処理という性格すら大きく逸脱し、世界的なマネーゲームに日本の銀行を参加させるための体力増強策、銀行応援法と言うべきものであります。 以下、その内容について質問いたします。 本法案によって必要となる公的資金の規模は、早期健全化勘定として二十五兆円、これに金融再生勘定の十八兆円、特例業務勘定の十七兆円を合わせると、実に六十兆円という空前の規模となります。今年度一般会計予算の税収見通しが約五十八兆円であることを見れば、異常な規模であることは明瞭であります。これは、国民一人当たり五十万円、四人家族で二百万円、途方もない金額ではありませんか。この金額の根拠は何ですか。明確な答弁を求めるものであります。 早期健全化法案による資本注入の特徴は、銀行と名がつけばどこにでも税金を投入できるということであります。自己資本比率八%以上のいわゆる健全行の優先株の引き受け条件は、破綻金融機関の受け皿銀行の場合と大規模な信用収縮の場合に加えて、その他特にやむを得ない事由がある場合とされています。一方、特に著しい過少資本行についても、優先株でも普通株でも、その引き受けの条件について、健全行と同じように、その他特にやむを得ない事由がある場合という項目が追加されました。これではありとあらゆることを理由にできるではないですか。どんなに健全経営であっても、あるいはどんなに破綻寸前の状態であっても、いずれも公的資金が入れられるということではありませんか。答弁を求めます。 資本注入については、対象となる銀行に制限がないことに加えて、その回数も注入金額についても何の規制もないことは明白であります。これでは、資本注入の理由も対象も金額も、すべて無限定ではありませんか。まさにこの早期健全化法案は、銀行に対するルールなき税金投入を力ずくでルールにするものにほかなりません。そうではないと言うのなら、その根拠をお示しください。 本法案では、破綻金融機関などと合併等を行った受け皿銀行だけでなく、健全な銀行が合併する場合も資本注入を可能としております。このような健全な銀行の合併の場合、金融システム不安に備えるなどという口実は全く通用しないではないですか。これは金融ビッグバンに備え、海外の銀行とマネーゲームで戦えるようにするためのものであり、あからさまな銀行支援ではありませんか。明確な答弁を求めます。こういうことに税金を投入することなど、決して国民の理解を得ることはできないと思いますが、どのように説明するつもりですか。 保岡議員は、十二日の衆議院金融特で、将来元気になって金融機関が健全な銀行によみがえったときには、国はそこに投下した資本を投下したとき以上に回収できると述べておられます。しかし、ことし三月の二十一行に対する資本注入の結果、公的資金は既に九千億円も目減りしているありさまです。早期健全化法案による買い取り株についても、値上がりする保証は何一つないではありませんか。どうしたらいずれは回収できるということを証明できるのですか。証明できるのであれば、公的資金を使わずに市場で資金調達できるはずではないですか。また、値下がりしたときは一体どうするのですか。はっきり答えていただきたいと思います。 都市銀行は、さらに貸し渋りを強めております。さきの金融安定化法でも、貸し渋りの解消をうたい文句にしていましたが、宮澤蔵相もお認めになったように、何ら効果がありませんでした。それでは、この早期健全化法案には貸し渋りをなくす具体策があるのでしょうか。何もありません。それは、自民党の山本幸三議員が、十二日の衆議院金融特で、安定化法と同じようなものでありますと答弁されていることからも明らかであります。また、堺屋経済企画庁長官も、早期健全化法ができても、ないそでは振れないが、資本注入でそでをつければ振るようになるかどうかは別問題と述べておられます。早期健全化法が貸し渋りの解消のために役立つ保証は何一つないものと思いますが、いかがですか。 十月二日付のフィナンシャル・タイムズによれば、経営が破綻したアメリカのヘッジファンドLTCMに住友銀行が一億ドルの投資をしていたとのことです。このまま銀行に税金を投入しても投機目的に使われるだけではないでしょうか。国内では悪らつな貸し渋りを行い、回収した資金で国外ではカジノ経済に明け暮れる。日本の銀行の投機的体質はバブル時代の振る舞いではっきり証明されているではありませんか。銀行の健全化を言うのなら、税金投入でなく、こうした投機的体質を改めることこそが今求められているのではないですか。明確な答弁を求めるものであります。 自民党の丹羽政調会長代理は、二十五兆円の早期健全化勘定を全額注入すれば、日本の主要十九行は自己資本比率が平均一五%となり、最も優良な香港上海銀行と肩を並べると述べたそうであります。国民は消費税にあえぎ、中小企業は貸し渋りに責めさいなまれ、銀行業界のみが富み栄える、このようなゆがんだ未来像は絶対に許せません。我が党は、銀行業界には一円の負担も求めず、国民には莫大な負担を押しつけるすべてのたくらみに反対するものであります。 十月九日の日本経済新聞で、ハーバード大学のガルブレイス名誉教授は、バブルの処理を進めるに当たって各国政府の役割は極めて大きいとして、次のように述べています。「非難されるいわれのない国民の所得や雇用、福祉を改善・向上させることがより重要であり、それが政府の使命」である。「そのためにも、日本などで、」「罪もなく打撃を受けた人々を念頭に、社会的要請にこたえられる効果的な政策を実施することが急務である。」。バブルの後始末は、決して銀行の体力増強ではなく、国民救済にこそ置くべきだ、このガルブレイスの指摘は的を射たものだと思われませんか。 政府は、銀行の乱脈の後始末を罪なき国民に押しつける政策を直ちに放棄するべきであります。そして、何よりも深刻な不況を打開し、この金融問題も解決するために切実に求められている実体経済の回復、そのために五%の消費税を三%に戻すべきである、このことを最後に申し上げて、私の質問を終わります。(拍手) 〔衆議院議員保岡興治君登壇、拍手〕
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