―厚生労働省は介護保険との統合も想定した改革を考えています。どう見ていますか。
介護と統合狙う
小池 今回、障害者福祉制度に「応益負担」を導入することによって、介護保険と同じような利用者負担の構造にして、次の段階では介護保険と統合する方向を示しています。障害者福祉に比べ、介護保険のほうが十倍ぐらい財政規模が大きいので、一緒にしてしまえば障害者福祉の財源不足を覆い隠せる、そういう考え方です。「一元化」といって身体・知的・精神の給付を一本化するという「改革案」ですが、議論の流れとしては支援費の財政困難に直面したことからきています。
介護保険制度のほうでも、重い保険料をできるだけ低く見せるために、二十歳まで保険料の徴収対象を広げるという議論があります。これに合流する形で障害者福祉と介護保険を一緒にしてしまおうというのが、当初の厚労省の路線でした。
ところが保険料徴収を二十歳まで広げることに経済界や自治体などの反対が強く、また障害者団体の間でも財政削減先にありきの統合に反対する声が広がり、厚労省はすぐ実施に移すことは断念しました。
低すぎる財政支出
それで迂回(うかい)作戦として、障害者福祉のほうから介護保険と統合できる条件づくりを先行させる。介護保険と同じ一割負担にする改悪で制度的に合体できる条件をつくり、次の段階として、今回やれなかった介護保険料徴収を二十歳まで広げて障害者福祉を介護保険にとりこもうというのが厚労省のだいたいの考えです。
障害者へのまともな財政的支援をしていないということを改めないからこういう矛盾に突き当たっているわけです。国民所得と比べた日本の障害者予算はアメリカの六割、ドイツの五分の一、スウェーデンの九分の一(二〇〇一年)。そこを見直し、低すぎる日本の障害者予算を引き上げなければ本当の改革とはいえません。
支援費が破たんして大変だと厚労省はいいますが、〇三年度は百億円足りないと騒いでいるときにイラクへの派遣には予備費からポンとだす。見通しが狂ったら補正すればよいのであって、〇四年度は補正予算で不足をカバーしようとしているのだから、国の財政規模からいえばわずかの努力でカバーできるのです。
足並みそろえ反対
―厚労省の戸苅利和事務次官は年頭の会見で「障害者自立支援給付法案」について介護保険見直し法案と同様、二月に国会に提出すると明らかにしました。国会論戦の重要な争点になります。
小池 障害者の福祉制度の大幅な改悪ということだけでなく、障害者の暮らしに深刻な困難をもたらすことになり、重大な対決点です。
いまの障害者の基本的な所得保障はまったく前進していない状況です。障害年金受給者の九割が障害基礎年金しか受けとっておらず、受給者(約百三十万人、二〇〇二年度末)の月額平均は七万六千三百円です。障害1級でも月額平均八万二千七百五十八円(〇四年度)です。生活保護水準を下回るような障害基礎年金なのに、物価スライドで逆にこの五年間でいうと年金額が下がっているわけです。
障害者の雇用率も改善していません。障害者が通う作業所とか授産施設の工賃なども、いまの不況でたいへん厳しい状況です。そういう所得保障が後退しているなかで、国は逆に大幅な負担増を障害者に押し付けようとしているのです。
障害者団体も「応益負担」に反対する点で足並みをそろえつつあるようで、共同した行動を広げる動きになっていると聞いています。法案の問題点を広く知らせ、国会でも力を尽くしていきたいと思います。
おわり
聞き手
斉藤亜津紫記者
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