障害者施策の拡充についての申し入れ
2001年7月10日 日本共産党国会議員団
今年は、国際障害者年(一九八二年)から二十年目にあたります。障害者の欠格条項の見直しにより本年七月には聴覚障害者に薬剤師免許が交付されるなどの前進があったものの、深刻な雇用情勢や介護保険制度スタートによる利用者負担の導入、施設・在宅サービス整備の遅れなど障害者を取りまく現実はいぜんとして厳しい状況にあります。
さらに、社会福祉法の二〇〇三年四月一日からの施行で、従来の措置費制度が廃止されることによる利用契約制度への移行は、障害者が自立して生活していくうえで新たな不安を広げています。
来年二〇〇二年は、「アジア・太平洋障害者の一〇年」及び障害者計画の最終年であるとともに新たな計画を作成する重要な年となります。
日本共産党国会議員団は、去る五月二十八日に障害者団体との懇談会を開き、ここで出された要望をふまえて左記の重点的事項をまとめました。二〇〇二年度予算の概算要求にもりこむなど、国の責任でこれらを着実に実施されるよう申し入れます。
一、利用契約制度への移行をめぐる課題
1 障害者が必要とするサービスを選択できるよう十分な基盤整備を行うこと。そのため障害者関係予算を大幅に増額し、施設・在宅サービスの抜本的充実をはかること。障害者の状況に対応できるホームヘルパーを正規職員として大幅に増員し、ショートステイやデイサービス、グループホームの充実などを行うこと。
2 利用者負担は現行を上まわることがないようにするとともに、扶養義務者からの徴収は行わないこと。
3 利用契約制度の運用に当たっては障害者の意見をよく聞いて、十分いに反映すること。基盤整備をはじめ施行準備が整わない場合は実施を延期すること。
二、介護保険の負担軽減、医療体制の拡充
1 介護保険制度が実施されて一年、高齢の障害者の負担が増大する事態が生じている。障害者介護のレベルを落とすことなく、負担軽減をはかること。
2 精神障害者の公費負担医療の範囲を制限する見直しを中止し、医療体制を拡充すること。
3 てんかん、高次脳機能障害、内部障害などについて、障害者施策の対象を見直し拡大すること。
4 人工肛門・人工膀胱など補装具給付制度における自己負担を軽減すること。
三、障害者プランの拡充推進と障害者福祉法を制定
1 障害者計画の見直しにあたっては計画目標の引き上げ・充実をはかること。政府は、全ての自治体において数値目標と年次計画を明らかにした障害者計画が策定されるよう財政支援を含む援助と指導を行うこと。
2 障害種別ごとに法律、施設体系、福祉施策等が設定されている現状を改め、障害者に対する法律、施策等の連携および統合をはかるため障害者福祉法を制定すること。
四、欠格条項の見直し
1 障害者施策推進本部による各省申合せ「障害者に係る欠格条項見直しに伴う教育、就業環境等の整備について」を確実に実施すること。
2 残っている法律の欠格条項見直し作業を急ぎ、すみやかに法改正を行うこと。不服申立て・救済制度を確立すること。
五、無年金障害者に対する年金給付の実現
無年金障害者に対する年金給付を速やかに実現すること。障害者が自立して生活ができるように障害基礎年金、各種手当を大幅に引き上げること。障害認定基準の改善をはかること。
六、働く権利の保障
1 深刻な不況のもと、障害者雇用を充実させ、障害を理由にした解雇を規制すること。
2 障害者の働く場の確保のために、法定雇用率、納付金を引き上げ、精神障害者を含むすべての障害者を雇用率および納付金の対象とする法制度に改めること。国及び自治体で、障害者の特別採用を行う等、雇用の場を確保すること。
3 雇用と福祉的就労との連携施策を充実させること。
七、小規模作業所に対する補助の拡大
小規模通所授産施設に対する年間一一〇〇万円の運営費補助を他の法定施設と同等の水準にすみやかに引き上げること。希望するすべての施設に対し補助を行うこと。
また、無認可の小規模作業所に対する補助金の増額をはかること。小規模社会福祉法人の運営対象事業を拡大すること。
八、難病対策の充実強化
難病患者の特定疾患治療研究事業の「適正化」による、認定のコンピュータ化を中止すること。対象疾患を増やし予算を増額するとともに全額公費負担にもどすこと。難病治療に関する研究を進め、最新の診断基準等の普及をはかること。
肝炎ウイルス感染者の公費による検査を輸血及び全血液製剤に拡大すること。老人保健の基本健康診査で肝炎ウイルス検査を実施すること。
小児慢性特定疾患治療費助成制度における全額公費負担を継続し、拡充をはかること。
九、障害児の発達と教育の保障
1 専門家による就学相談を充実し、障害児一人ひとりの障害と発達に見合った就学指導を行うこと。地域に身近に通える小中障害児学級や養護学校及び養護学校高等部を計画的に増設するとともに訪問教育の拡大をすすめること。養護学校、寄宿舎の教職員定数の改善や老朽化解消をはじめとする施設改修など教育条件を整備すること。学童保育の受け入れ体制をすみやかに整備すること。
2 障害児(者)のための医療・福祉・社会教育・労働などが連携した地域のトータルサービス体制を整備すること。障害の早期発見と治療、発達保障のための発達クリニックや通所指導相談などを整備すること。
十、情報アクセス権の保障
1 障害者情報バリアーフリー化支援事業の対象品目にパソコン本体を加えるとともに助成限度額を引き上げること。障害者向けパソコン講習を実施すること。
2 省庁ホームページを音声変換ソフトに対応できるよう改善すること。
3 テレビ放送の手話・字幕番組の拡大充実と受信機器の普及をはかること。緊急時の字幕放送につて研究を進めること。
十一、交通バリアフリーなど社会参加の推進
1 障害者の移動の自由と安全確保の権利を保障するため、すべての施設・設備を対象に計画的に交通バリアフリー化を推進するよう、JR、大手私鉄などko交通事業者への指導を強化すること。地方自治体が計画する「基本構想」作成と財政的支援を強化すること。バリアフリー化にあたっては、障害者の参画による意見反映をはかること。自宅から目的地まで「ドア・ツー・ドア」の交通サービスの制度化をはかること。
2 交通運賃割引制度を、精神障害者等すべての障害者に拡大するとともに、一〇〇キロメートル制限を撤廃し、JRの特急・寝台料金も割引の対象とすること。
3 障害者むけ公営・公団住宅の建設を促進するとともに、ケア付き公共住宅の建設促進をはかること。五十歳以下の精神障害者も公営住宅の単身入居を認めること。
十二、障害者の参政権の保障
在宅投票制度の拡大、点字広報の配布、投票時のガイドヘルパーの派遣、投票所のバリアフリー化など障害者の参政権を保障すること。
以 上
二〇〇一年七月十日
日本共産党国会議員団障害者の全面参加と平等推進委員会
委員長 児玉健次
内閣総理大臣 小泉 純一郎 殿
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