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雇用保険法改悪案
自己都合離職の受給資格
1年働かないと得られず

「しんぶん赤旗」2007年4月2日(月)より転載

 参院で審議中の雇用保険改悪法案で、「国庫負担の五割削減」や「季節労働者への特例一時金削減」と並んで、これまで六カ月働くと得られた受給資格が奪われることが大きな問題点として浮上しています。


 改悪案では、これまで一般労働者が自己都合で離職する場合、六カ月働くと得られた受給資格を倍の十二カ月までいきなり延長します。(解雇や倒産などによる離職は六カ月で変わりません)

実態も調べず

 「安易な給付、循環的な給付を防止する」(柳沢伯夫厚労相)というのが理由。六カ月だと安易に仕事を辞めたり、何回も給付を受ける人がいるから、一年働かないと受給資格が得られないようにするというのです。

 しかし、離職前の賃金の八割から五割しかない手当をもらうために、六カ月で仕事を辞めたり、六カ月の短期離職を繰り返す人がどれだけいるというのでしょうか。

 審議のなかで厚労省側は、受給期間一年未満の自己都合離職者が二万二千四百五十五人(二〇〇五年度)いると報告しましたが、そのうち「安易な受給者」が何人いるのか調べたこともなく、データも持っていないと答え、無責任な姿勢を浮き彫りにしました。

 自己都合で辞めた人にはもともと、三カ月たたないと給付を受けられないという給付制限がすでに設けられています。

 給付期間もこれまでの改悪によって、自己都合でない場合は、最大で三百三十日もらえるのに対し百五十日まで減らされてきました。今度は、資格要件まで差別化しようというのです。

 一年未満の自己都合の離職でも、やむをえない理由で離職する場合も少なくありません。それを「安易な離職」とみなして、二重三重に差別を加えることは、離職した人の生活を保障するという雇用保険法の原則に反しています。

重大な不利益

 見逃せないのは、六カ月で得られていた資格が十二カ月になることで、重大な不利益を受ける人が出てくることです。

 これまで自己都合の離職であっても、結婚して通勤できないところへ転居したり、家族の介護をしなければならなくなったなど正当な理由がある場合は、給付制限はありませんでした。

 それが受給資格が延長されると、正当な離職理由があっても、資格期間が足りなくなって、基本手当を受けられなくなる人が出てきます。

 厚労省は「省令で手当てしていく」(柳沢厚労相)としか答えられず、衆院では審議が一時中断する事態になりました。

 それだけではありません。自動車工場で働く期間工など、一年に満たない短期契約で働く有期労働者の場合も問題です。

 有期労働者はその企業にとって恒常的に必要とされる基幹的な労働力なのに、いつでも辞めさせることができるように、細切れの短期契約にしているのが実態です。

 そのため労働者が働きたくても最初から更新など予定されておらず、生産計画によって雇用期間が延長(更新)されることがあるのが通例です。

 これまでなら、半年働けば受給資格が得られ、ハローワークに行って、受給申請と再就職相談ができました。しかし、改悪によって手当もなくほうりだされかねない事態になってしまいます。

有期労働者は

 厚労省は、契約更新が明示されていたのに一年未満で契約更新されなかった場合に限って、「解雇・倒産と同じように資格要件は六カ月にする。契約更新は口頭約束でもかまわない」と答えました。これは当然のことですが、受給できなくなる有期労働者が出てくることには何ら対策をとる考えを示しませんでした。

 雇用保険は、多くの失業者がセーフティーネットからはじき出され、不安定雇用に就かざるをえなくなった結果、労働者の五人に一人(公務員など適用除外者を除く)、約一千万人が雇用保険に入っていないという空洞化が起こっています。今回の改悪はこの空洞化にますます拍車をかけることになりかねません。

 日本共産党の小池晃参院議員は二十七日の参院厚生労働委員会で、雇用保険に入れないということは生活保障ばかりか、能力開発や教育訓練も受けられなくなり再就職の権利まで奪われることになると指摘し、「安倍内閣は『再チャレンジ』といいながら、やっていることは『再チャレンジ』の権利を奪うことだ。雇用保険の改悪は撤回すべきだ」と強調しました。



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