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違法労働ただす突破口
光洋シーリング請負労働者のたたかい

「しんぶん赤旗」2006年9月3日(日)より転載

 青年たちの勇気あるたたかいは、製造職場に横行する違法労働をただす突破口を開きました。「偽装請負がまん延している日本社会に未来はない。問題はこれからです」。青年たちのたたかいは続きます。(谷内智和=徳島県、酒井慎太郎)

青年たち労組結成

 「もう我慢できない」

 二年前、約二十人の青年らがJMIU(全日本金属情報機器労組)徳島地域支部の門をたたきました。違法な偽装請負の実態を告発し、直接雇用を求める不屈のたたかいのはじまりでした。

 就労先は、トヨタ系自動車部品メーカー光洋シーリングテクノ(徳島県藍住町)。生産現場では、独立して作業にあたる請負労働には、ほど遠い状況が横行していました。日常の作業指示はもちろん、請負会社の採用面接から雇い止めまでテクノが関与していました。請負を装う派遣労働でした。

 年収は二百万円前後の低賃金で、何年働いても上がりません。組合をつくった青年たちは、賃上げ、労働条件の改善を求めて交渉し、次々に改善させてきました。その労組への信頼が高まり、組合員は結成時の倍近くになりました。組合員の要求実現をめざす団結は、厳しい試練にも崩れません。

 昨年十二月、組合員三十人が直接雇用の指導を求めて厚生労働省に申告しました。ところが、請負会社の一社が組合員ら全員の雇い止めを通告してきます。申告に対する報復でした。これも撤回させ、別の請負会社に移籍させました。

 直接雇用の願いは労働局にも拒まれました。

 徳島労働局は、職場の実態が派遣労働であり、派遣受け入れの期間制限にも違反していることを認めました。しかし、直接雇用を求める是正指導でなく、「適正な請負にする」。さらに巧妙に請負体制を装うテクノ側の偽装工作に手を貸すものでした。

 直接雇用の道を開いたのは、あきらめない労組のたたかいと、支援する運動の広がりでした。

 全労連などが七月末に現地で開いた集会には全国の支援者ら約三百人が参加。JMIUの生熊茂実委員長は「労働組合の仲間が団結し、たたかっていけば必ず勝利できる」と激励しました。

現場と議員と「赤旗」

 日本共産党の国会議員団は、テクノなど製造現場で横行している違法労働の実態は「日本のものづくりの火を消しかねない問題」と位置づけて事態打開のために力をつくします。

 佐々木憲昭、塩川鉄也両衆院議員、小池晃、大門実紀史、仁比聡平の各参院議員が、現地調査を踏まえて国会質問五回、厚労省に数度にわたって申し入れます。現地での調査、シンポジウムには、春名なおあき参院比例候補が参加します。

 「赤旗」日曜版が二〇〇四年九月、この問題をいち早く報道したのをはじめ、「赤旗」は青年労働者のたたかいを伝え続けてきました。

 川崎厚生労働大臣は、八月の記者会見で、「国会で随分、この(請負)問題について、質問をいただきました。偽装請負は是正を求めていかなければならない」とのべました。

 青年たちが労働組合をつくり、JMIUや全労連の支援をうけてたたかい、日本共産党国会議員団が国会で追及し、これらを「赤旗」が伝え世論に訴える―。まさに三位一体のたたかいが、偽装請負を是正させる一歩になったといえます。

直接雇用へ道開いた

 青年たちは、請負会社と雇用契約を結び、テクノに派遣され、テクノの指示で働いていました。偽装請負です。今回テクノは、これを一部是正し、青年たちと契約を結び直接雇用します。

 対象は、徳島労働局の臨検と指導を受けて偽装請負解消の対象となった二十九人、これとは別に請負として長く働いてきた労働者三十人です。

 請負労働者にたいし直接雇用の道を開いたのも画期的な成果です。

 同時に請負の二十九人が派遣契約に切り替えられます。会社は、工場内の持ち場を派遣会社ごとの労働者で再編しました。これらは、法違反を逃れるための形づくりとの面も残されています。

全員正社員へさらに

 JMIU徳島地域支部内で古参の青年(26)は、所属する請負会社「スタッフ・クリエイト」から九九年十二月にテクノに派遣されてきました。

 勤続年数は六年九カ月で今回の直接雇用の対象者です。「たたかいの中での大きな成果ですが、今までいっしょに働いてきた仲間が、直接雇用になる人とそうでない人に分かれてしまいます。手放しには喜べません」

 直接雇用される五十九人は六カ月間の「期間契約社員」になります。「期間契約で雇用を打ち切るものではなく、一定期間と基準により正社員への登用」を会社は約束しています。「直接雇用は、次のステップへの第一歩です」と青年は先を見据えていいました。

 JMIUが一日に行った記者会見には、矢部浩史さん(41)、仲村早途さん(34)が参加しました。

 矢部さんはいいます。「自分ら非正規の労働者は、いつ首切られるかも分からない。しかし、必死になって会社のために働いています。製品の品質は正社員にも負けてない自信があります。偽装請負がまん延している日本社会に未来はあるのか。会社にも行政にも道理だけは通させたい」

 仲村さんは、こういいました。「僕たちが求めてきたのは、若い労働者が将来まで安心して働いていける職場です。みんなが直接雇用され、正社員への道が開けるよう、これからも信念を持ってたたかっていきたい」


たたかいの歩み

04年9月JMIU徳島地域支部に加盟
テクノに直接雇用を申し入れ
「赤旗」日曜版が報道
12月テクノに団体交渉を申し入れ
05年1月テクノは団体交渉を拒否
3月参院予算委で共産党質問
11月テクノに直接雇用を申し入れ
テクノは直接雇用を拒否
12月組合員30人が厚労省に申告
請負会社から雇い止めの通告
06年1月雇い止め通告の撤回、移籍
共産党が厚労省要請
2月衆院予算委で共産党質問
3月衆院経済産業委で共産党質問
4月徳島労働局が指導状況を報告
6月全労連などと厚労省に要請
7月共産党国会議員団の現地調査
現地の集会に約300人参加
全労連などテクノらに要請
8月テクノが直接雇用を表明

 偽装請負 派遣労働者は、派遣会社と契約を結び、実際の労働は派遣先企業でその指揮のもとに行います。しかし、期間が限定されており、二〇〇七年二月末までは一年、それ以降は三年。その期間を超えた場合、派遣先企業は直接雇用の責任を負います。これを免れようと、実態は派遣なのに請負という形をとって働かせる脱法行為が偽装請負です。本来の請負は仕事を請け負った業者がその責任で仕上げ納品します。契約の形式が請負であっても契約者の指揮で働かせれば違法となります。


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