国民年金に未加入だった学生時代に統合失調症と診断された東京都内の男性二人が、初めて医師の診療を受けた日(初診日)が二十歳すぎだったことを理由に障害基礎年金を支給しなかったのは違法として、社会保険庁長官を相手に不支給処分の取り消しを求めた二件の訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は十日、原告側の訴えを退けました。
障害基礎年金は初診日が二十歳前であれば支給対象となります。
原告側は、統合失調症が発症に気付きにくく、受診まで時間がかかることが多いため、「二十歳未満の発症だったと事後に確認できれば、初診日要件を形式的に解釈すべきでない」と主張。判決は、初診日については字義通りに解釈することが立法趣旨にかなうと判断し、原告側の主張を退けました。
判決後、国会内で報告集会が開かれ、池原毅和弁護士は、四人の裁判官のうち一人が「初診日を基準として受給要件を定めることは医学的根拠を欠く」との反対意見を述べたことを紹介。「これは運動の成果だ」と話しました。
学生無年金障害者訴訟全国連絡会の吉本哲夫会長が、残る札幌、盛岡、大阪の訴訟に全力を尽くす決意を述べました。
日本共産党の小池晃参院議員は、「学生無年金障害者の問題は国の制度不備で起こったもので、国民の年金を受ける権利を保障するため、引き続き力をあわせて全力を尽くします」と、あいさつしました。
「学生無年金障害者」 国民年金の加入期間中に病気やけがで障害者になった場合、障害基礎年金が支給されます。現在、二十歳になった全国民は、同制度に強制的に加入させられます。しかし、学生は一九九一年三月まで、二十歳になっても加入を強制されず、自分で手続きをしないと入れない「任意加入」でした。そのため、学生時代に障害を負った人が、未加入を理由に障害基礎年金を支給されない「学生無年金障害者」が生まれました。当時、任意加入をしていた学生は全体の1%で、厚生労働省の推計で、「学生無年金障害者」は約四千人にも。
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