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2004年3月31日 「最低保障年金制度」を実現し、いまも将来も安心できる年金制度をつくる2004年3月31日 日本共産党
解説記事:年金最低保障月5万円/国庫負担で安心できる制度/日本共産党が政策/小池政策委員長が発表 2004年4月1日 しんぶん赤旗
「負担増・給付減」の年金大改悪は廃案に小泉内閣が国会に提出した年金法案は、7000万人の加入者と3000万人の受給者に被害がおよぶ、史上空前の大改悪です。 最大の問題は、保険料の引き上げと給付水準の引き下げを、今後は国会審議なしで自動的におこなう仕組みに変えることです。サラリーマンなどの厚生年金は平均で毎年約1万円の値上げが、自営業者などが加入する国民年金は、毎年月額280円ずつ、年間で3360円の値上げが、それぞれ2017年度まで連続しておこなわれます。 一方で、給付水準は、「マクロ経済スライド」(注)の名で自動的に引き下げる仕組みが導入されます。「モデル世帯」(夫:40年加入、妻:40年専業主婦)で、現在の現役世代の手取り収入の59・3%から、2023年度には50・2%になると、政府は試算しています。実質で15%程度下がることになり、年間約44万円、ほぼ2か月分の年金が消える計算です。 しかも、政府・与党は、「50%」の給付水準は保証すると宣伝していますが、それが適用されるのはごく少数の「モデル世帯」にすぎません。共働きや単身者の給付水準は3割〜4割台まで引き下げられます。 さらに重大なことは、国民年金や障害年金などの低額年金まで例外なく引き下げの対象にしていることです。政府みずから憲法25条に保障された「国民の生存権」を侵害する法案を提出して、何が「改革」でしょうか。 日本共産党は、およそ「改革」の名に値しない年金大改悪法案をきっぱり廃案にすることをもとめます。
最低保障額5万円の「最低保障年金制度」に踏みだすことを提案します今日の年金制度の最大の問題点は、日々の生活をとうていまかなえない低額年金、無年金者の人々が、膨大な数にのぼっていることにあります。国民年金しか受給していない高齢者は900万人にのぼりますが、受給額は平均で月額4万6000円にすぎません。2万円〜3万円台の受給者も少なくありません。 国民年金の保険料未納率が約4割に達し、免除者、未加入者も含めると、保険料を払っていない人は、すでに1000万人を超えています。この事態を放置すれば、将来さらに膨大な無年金者や低額年金者がうまれることは必至です。厚生年金なども、女性を中心に劣悪な年金が放置される一方で、厚生年金の加入事業所数は、この5年間で約7万社も減少するなど、深刻な空洞化が年金制度全体にひろがっています。 にもかかわらず、今回の政府案は、こうした問題の解決策をなんらしめさないばかりか、老後の最低生活を保障するという、国がほんらい果たすべき責任を放棄したものです。「改革」というなら、こうした現状を打開することこそ必要です。憲法25条に明記されている「国民の生存権」の保障という見地にたった年金制度への一歩を踏みだすことは、待ったなしの課題となっています。
「最低保障年金制度」への移行によって、国民年金や厚生年金の低額年金の問題、25年掛けないと1円も年金がもらえないという問題、無年金者の問題、年金の空洞化の問題など、今日の年金制度が抱える諸矛盾を根本的に解決する道が開かれます。 この制度によって、現在の無年金者には月額5万円の最低保障年金が支給されます。現在2万円〜4万円の国民年金受給者は、最低保障額の5万円に加えて、支払った保険料に相当する1万円〜2万円を上乗せし、月額6万円〜7万円が受け取れるようにします。現在、国民年金の満額である6万6000円の人は、同様に5万円に3万3000円を上積みし、8万3000円が受け取れることになります。厚生年金についても、一定額までは同様の底上げをおこないます。 最低保障額は、当面月額5万円から出発しますが、安定的な年金財源を確保しながら引き上げをはかり、最終的には憲法25条にもとづく「国民の生存権」を保障する水準をめざします。 いまも将来も老後に安心できる年金制度を維持、発展させるために「最低保障年金制度」を実現し、将来にわたって持続的に発展させるためには、安定的な財源の確保が不可欠の課題となります。 そのためには、ゼネコン・大銀行優先の歳出構造の抜本的な改革とともに、「所得や資産に応じて負担する」という経済民主主義の原則にもとづく税制と社会保障制度の民主的な改革が不可欠です。 さらに政府・与党のような現行年金制度の枠内でのつじつまあわせでなく、人間らしい労働のルールづくりや、少子化の克服など、社会や経済の仕組みそのものを変えることがどうしても必要です。 日本共産党は、そうした立場から、つぎの改革にとりくみます。この改革をすすめることによって、将来にわたって、国民の負担を抑えつつ、低額年金者の底上げをはかりながら、全体としての給付水準を維持することが可能になります。 (1)「最低保障年金」の財源は、歳出の見直しと税制の民主的改革でまかなう第1に、最低保障年金の財源は、歳出の徹底した見直しと税制の民主的な改革をつうじて確保します。5万円の最低保障を実現するために必要な財源は、国庫負担を2分の1にするための2・7兆円のほかに、あらたに約5兆円が必要です。 日本共産党は、2・7兆円の財源については、道路特定財源の一般財源化をはじめとする公共事業費など、歳出の見直しで確保する方針を明らかにしています。国庫負担の2分の1への引き上げは、もともと2004年度に実施することが、法律にも明記されており、政府・与党のように2009年度まで先送りするのではなく、ただちに完全実施します。 5兆円の財源を確保するためには、公共事業費や軍事費など歳出のいっそうの見直しとともに、歳入の見直しが必要です。この間に引き下げられた法人税率や所得税の最高税率を見直し、法人税にゆるやかな累進制を導入し、外国税額控除などの大企業向け優遇税制をあらためることで、安定した年金財源を確保します。そのさい、中小企業の負担は、現在の負担より重くならないようにします。 政府や財界は、企業負担を増やすと国際競争力がなくなるといいますが、わが国の国民所得は約380兆円(2000年度)、うち企業の税負担は18・6兆円、社会保険料の事業主負担は28・2兆円であり、「税と社会保険料」全体の負担は国民所得比で12・3%にすぎません。イギリス16%、ドイツ17・7%、フランス23・6%など、ヨーロッパ諸国にくらべて、日本の企業負担はきわめて低い水準です。月額5万円の最低保障年金を実現するための財源を、仮に法人税などの増税でまかなうとしても、この比率は1%程度上がるだけです。 将来、年金受給者が増え、年金財政が大きくなった場合でも、大企業の負担をヨーロッパ諸国の水準並みにちかづけることで、「最低保障年金制度」を持続させることは、十分に可能です。大企業が年金をはじめ社会保障に応分の負担をして、その社会的責任を果たすことは当然であり、そうしてこそ経済も社会も真に持続可能になります。 政府・与党は、「年金の財源」を名目にして、年金課税の強化、定率減税の縮小・廃止、消費税増税などをすすめようとしていますが、日本共産党は、「社会保障」を口実にした弱いものいじめの悪税の増税には、絶対反対です。とりわけ、消費税は低所得者ほど負担が重い不公平税制であり、最悪の福祉破壊税です。日本経団連など財界は大企業の保険料負担の軽減をもとめる一方で、消費税大増税を主張していますが、こんな横暴で身勝手な態度は許せません。 (2)巨額の年金積立金は報酬比例(2階部分)の給付維持のために活用する第2に、巨額の年金積立金は、現在の報酬比例(2階部分)の給付水準を維持するために計画的に活用します。政府の計画によると、厚生年金の積立金は05年で164兆円に達し、年金給付費など支出総額の5・2年分です。イギリスの2ヶ月分、ドイツ、フランスの1ヶ月分程度と比べても、日本のためこみは異常です。 政府は100年かけて積立金を取り崩すといいだしました。しかし、政府の計画は、厚生年金の積立金を05年の164兆円から、2050年には335兆円まで増やし続け、そこからようやく減少に転ずるというものです。積立金については、これまでも株式運用での損失やグリーンピア(大規模年金保養基地)などの浪費を続け、国民のきびしい批判を受けてきたものです。その背景に、高級官僚の天下り先を確保するというねらいがあったことは明らかです。政府の計画は、100年先も「天下り」を温存するということにほかなりません。 日本共産党は、高齢化がピークを迎える50年後をめどに、積立金を計画的に取り崩して、ヨーロッパ諸国並みにまで減らし、給付水準を維持することを提案します。国民の財産である年金積立金を、年金給付以外に流用することと、株式運用でリスクにさらすことは禁止します。 (3)雇用と所得をまもる政策への転換で、年金の安定した支え手をふやす第3は、雇用と所得をまもる政策への転換をはかり、非正規雇用の急増に歯止めをかけ、年金の安定した支え手をふやすことです。 大企業の横暴なリストラや、パート、フリーター、派遣など不安定雇用への置き換えで、厚生年金の加入者は2000年以降、年間200万人〜300万人も政府の計画を下回っています。とりわけ、厚生年金に加入する青年が激減していることは重大です。このため、保険料などの厚生年金収入は、00、01年度の2年間だけで約6兆円も見通しを下回っています。これでは年金財政がゆきづまるのはあたりまえです。政府・与党の経済失政の結果であり、その責任は重大です。 日本共産党は、長時間労働やサービス残業の根絶などで、雇用創出に本格的に取り組むとともに、男女賃金格差の是正をはじめ「均等待遇」のルールを確立すること、政府と大企業の責任で若者に安定した仕事を保障する手立てをとらせることなど、雇用と所得をまもる政策への転換をはかります。これは年金の安定した支え手をふやすことにもなります。 (4)少子化の克服は、年金問題を解決するうえでも土台になる第4に、少子化は日本国民の将来にかかわる大問題です。経済、財政のあらゆる問題の将来を考えても、この問題の克服をぬきにしては考えられません。将来に安心をもてる年金制度のためにも、少子化の克服はその土台となります。 政府・与党の年金見通しは、1・32まで低下した出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数)について、2050年の時点で1・39にするというものであり、少子化の急激な進行を避けることができないという前提にたっています。この前提にたっては、年金制度もゆきづまるのは当然です。少子化の急激な進行を避けることができない前提とするのではなく、その克服に本腰を入れることと一体に、年金制度の将来設計をたてるべきです。 フランスなどは、国が率先して社会全体で子育てを支える体制を整備して、1・88(02年)まで出生率を回復させています。世界をみると、女性の就業率が高い国、男女の賃金格差が小さい国ほど、子どもが多いという傾向がはっきりしています。これらの国々の教訓に学び、少子化対策に本格的に取り組むことが重要です。 日本共産党は、子どもをとりまく環境を改善するとともに、第1に、長時間労働をなくし、家庭生活との両立ができる働き方にする、第2に、男女差別・格差をなくし、女性が働きつづけられ、力を生かせる社会にする、第3に、出産・育児と仕事の両立を応援する、などで“ルールある経済社会”への転換をすすめ、子どもを安心して産み、育てられる社会をつくります。 すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を公的年金制度は、老後の生活保障という役割をもつ、社会保障の中核的な制度です。その年金が次々と改悪されていけば、国民の将来不安が際限なく増大するのは当然です。それがまた、暮らしと経済も加速度的に悪化させることもすでに明白です。 今回の負担増と給付削減の年金改悪について、世論調査でも83%の人が「不安」(「東京」04年3月21日付)、76%の人が「反対」(「読売」04年1月29日付)の声をあげています。職場、地域から国民の力をあつめ、年金大改悪反対の国民的な共同をひろげようではありませんか。 すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するという憲法の精神にたって、「最低保障年金制度」の実現の第一歩を踏みだそうではありませんか。 |
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