四月の薬価改定で、大幅に引き上げられた先天性疾患(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症)の治療用ミルクの薬価が六月中に引き下げられることが明らかになりました。患者団体や日本共産党の小池晃参院議員が「あまりに急激な値上げで命にかかわる」として薬価引き下げを強く求めたのに対して、厚生労働省が製薬企業に働きかけ実現したものです。薬価は四月にさかのぼって引き下げられ、差額は返還されます。
先天性の疾患であるフェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症は、食事やミルクに含まれるアミノ酸の一部が分解できず体に蓄積するため、治療をせず放置すれば障害を起こし死に至る病気です。低タンパク食事療法と治療用のアミノ酸除去ミルクの摂取を生涯続けなければなりません。
四月から治療用ミルクの薬価は製造・販売元の雪印乳業が「不採算」を理由に一缶あたりフェニルケトン尿症用が一・六倍、メープルシロップ尿症用が六・五倍に引き上げられました。治療には一カ月あたり五缶から六缶のミルクが必要で、メープルシロップ尿症の場合、薬剤費は一カ月あたり約一万七千円から約十一万円に増加。高額療養費制度を利用しても年間五十万円もの薬剤費負担が患者にのしかかります。
「フェニルケトン尿症親の会連絡協議会」は「生涯治療が必要なのに生活破綻(はたん)、治療の断念さえ迫られる。生死にかかわる問題」と厚生労働省に対して引き上げの撤回を強く求めていました。
小池議員の話 「お金のかかる私たちに、ミルク代が払えないなら死んでくれと言ってるんだね」というお子さんの悲痛な声をお聞きしました。大幅な値上げは撤回されたものの、四月前の薬価から見れば二割の引き上げとなっています。病気で苦しんでいる患者さんに経済的な負担まで押し付けるやり方はやめるべきです。
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