難病小児助成 重症だけに
これが自公の「子育て支援」?
自己負担の導入も
2003 年 9 月 5 日(金)「しんぶん赤旗」より
小児のがんや難病、慢性疾患の医療費を助成する「小児慢性特定疾患治療研究事業」が見直され、現行より対象範囲を狭めたうえ、自己負担を導入するなどの方針案が「子育て支援」の一環として推進されようとしていることが四日までにわかりました。親たちからは不安の声があがっています。
3 つの等級
見直しの「与党基本方針」は、▽現行の補助金事業の法制化▽対象を重症に限定▽自己負担の導入▽対象疾患の整理▽入院通院とも対象とするなど、です。
親たちの不安が大きいのは、制度の対象が「重症」に限られ、除外される子どもがでることです。
「重症」には三つの等級が設けられる予定です。一級は「小児期、または十数年以内に死亡する可能性が高い」。二級は「日常生活に相当程度の制限、問題がある」。三級は「適切な治療でほぼ普通の生活ができる」。
三等級は細分化され、実質五段階の重症度に分けられます。重症度に応じて新たに設けられる福祉サービスが実施される予定といいます。
また、導入がねらわれる医療費の自己負担には、成人の難病新制度にならって、所得によって負担額の違う制度が考えられています。
こうした改悪が盛り込まれた厚労省概算要求を与党の自民・公明党は「子育て支援に一兆円」などと自分の“手柄”として大宣伝しています。公明党は、少子化対策として「全力を挙げて推進してきた重点項目…大きな実績」といって、「新たな小児慢性特定疾患対策の確立」(公明新聞八月二十八日付)をあげています。
線引き困難
「全国心臓病の子どもを守る会」は、重症度基準の導入を「絶対に受け入れがたい」としています。現行どおり対象病名がついた疾患児すべてを対象にすることを要望。専門家も「全疾病を重症とそうでない状態とに医学的に線引きするのは困難」と指摘します。
若い親にとって差額ベッド代や交通費、入院に付き添うための宿泊費、看病で長期に休むための収入減など、かなりの負担です。「これら負担を軽減するサービスの拡充がないかぎり、せめて保険医療に関しては自己負担のない制度に」と同会は訴えています。
同事業は一九七四年に補助金事業として創設。十疾患群約五百疾病、約十万人が対象。厚労省は、「制度安定のため」として二年前から見なおしを検討していました。
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見直し後の対象疾患群
- 悪性新生物
- 慢性腎疾患
- 慢性呼吸器疾患(現行・ぜんそく)
- 慢性心疾患
- 内分泌疾患
- こう原病
- 糖尿病
- 先天性代謝異常
- 血友病等血液疾患
- 神経・筋疾患
- 慢性消化器疾患(新設)
※ 2002 年度厚生労働科学研究・報告書から
小児難病の医療費助成 対象者 2 〜 5 割を除外
ぜんそくや成長ホルモン治療 厚労省が報告書
2003 年 9 月 11 日(木)「しんぶん赤旗」より
がんや難病、慢性疾患の子どもの医療費助成をする「小児慢性特定疾患治療研究事業」(小慢事業)の見直しを検討している厚生労働省の研究班の報告書で、事業の対象者が二割から五割も除外されることが十日までにわかりました。研究班の専門家は「来年度の新規申請者から重症者にしぼりこむと聞いた」といいます。
先ごろ公表された『2002 年度厚生労働科学研究 報告書』は、「疾患によっては個々の患児の対象基準を設定」するとして、その基準を適用して対象を重症者にしぼりこんだ場合の推計をしています。
報告書は「成長ホルモン治療」の「36.4 %」を事業から「対象外とするのが妥当」としています。「慢性腎疾患」群からは「慢性糸球体腎炎(二千四百十七人)を対象外とし」、二〇〇〇年度の国の小慢事業とこれに準じた県単独事業をあわせた患者のうち
23.5 %が事業から外される恐れがあります。
ただし、慢性糸球体腎炎が悪化すれば、他病名に変更して対象となります。
「ぜんそく」の場合は 53.1 %、「慢性心疾患」は 47 %(一九九八年度の患者比)が、国と県の事業から除外される恐れがあります。この割合は報告書が提示した「将来の患者数の推計」から割り出したものです。
現行事業(国と県)から対象外となる割合
ぜんそく |
53. 1 % |
慢性心疾患 |
47 % |
成長ホルモン治療 |
36. 4 % |
慢性腎疾患 |
23. 5 % |