自民、公明、民主各党の賛成(日本共産党は反対)で成立した介護保険法改悪の全面実施(昨年四月)から一年たちました。“介護の必要度の軽い人”に向けて新設された「新予防給付」の対象者のうち、サービス利用者は62.5%にとどまり、支援が必要とされながら介護保険のサービスを利用していない人が、四十五万人にのぼることが分かりました。
法改悪前より推計7.6万人増
厚生労働省が日本共産党の小池晃参院議員の求めで提出した資料から明らかになったもの。
新予防給付は、改悪前の要支援のすべて(現在の要支援1)と、要介護1の大半(同要支援2)の人が対象です。
同省がまとめた今年四月時点の見込みでは、要介護認定で新予防給付の対象とされた人は百十九万九千九百一人。実際にサービスを受ける人は、七十四万九千七百七十九人です。
一方、同省の統計にもとづく本紙の試算では、改悪直前の〇六年三月時点で、要支援と要介護1の人が実際に介護保険のサービスを利用している割合は68.8%でした。介護や支援が必要と認定された軽度者がサービスを利用する割合は改悪前と比べて6・5ポイント低下し、推計すると未利用者が約七万六千人増えたことも明らかになりました。法改悪による利用制限の影響とみられます。
改悪で新設された新予防給付では、訪問介護の利用に「家族や地域による支え合いや他の福祉施策などの代替サービスが利用できない場合に限る」などの制限を加えました。
このため、訪問介護を利用していた軽度の人が、配偶者など高齢でも同居家族がいることを理由に、新予防給付のサービス計画をつくる市町村の地域包括支援センターから利用を断られるなどの被害が出ています。
大阪府堺市の耳原老松診療所ケアプランセンターのケアマネジャー、内海聰子さんは「地域包括支援センターの窓口で『同居の家族がいるなら家事はしてもらえないか』と言われ、利用者があきらめてしまう場合があります。『介護の社会化』という介護保険の理念に逆行する改悪で利用制限が進んでいます」と話しています。
また法改悪と一体の介護報酬の改定で、新予防給付の対象者と要介護1の人は、原則として、介護ベッドや車いすのレンタルができなくなりました。こうした「貸しはがし」の影響も甚大です。
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