東京都北区で、日本共産党区議団が、要介護認定のランク下げの問題を最初に取り上げたのは二〇〇五年の九月議会でした。
その直後、「北区には要介護認定の調査にかかわる独自文書がある」との情報が寄せられ、区はその存在を認めました。
文書は、訪問調査員が、本人の身体状況などを中心に調査票にチェックする際の判定基準を示したもの。国や都の示した基準に区独自の解釈を加え、判定を厳しく制限するものでした。
「望ましくない」 厚労省も回答
たとえば、両足まひの判定基準を示した項目では、両足まひが「ある」と判定するのは「歩行が出来ない場合を原則」にするとし、「ほとんどの場合、要介護4や要介護5程度になる」と独自の基準を示しています。
また脳こうそくなど病気によるまひと、加齢によるまひについて、同程度でも後者の判定をより厳しく制限する独自の基準も設けています。
ある訪問調査員は「まひのチェックが制限されると、食事や着替えなど生活動作の支障についても正確に判定できず、低い要介護度の認定につながる」と話します。
区独自の基準について厚生労働省老健局老人保健課は「はじめから要介護度を例示するというやり方は望ましくない」「マヒの有無の調査にあたって原因による差異はない」と回答しました。
毎回の議会で改善を求める
党区議団は国や都に指導を要請。毎回の議会で被害の実態を突きつけ、文書の撤回と認定調査の改善を求めてきました。
脳性まひがあり、身体障害者一級に認定されているのに、要介護度が下がった秋元麗子さん(69)の場合は―。
当初は週六時間だった訪問介護が三時間に削られ、料理の下ごしらえをヘルパーに頼めなくなりました。やむなく、不自由な手で身をよじりながら野菜を切る秋元さん。無理な姿勢のため、首筋が痛くなり眠れなくなりました。夕食のおかずは四品から二品に…。
党区議団は、〇六年九月議会で、秋元さんのケースを追及します。
区側は、もともと両手足に「まひあり」と判定され要介護3だった秋元さんが、独自基準が出された後の〇六年三月では、「まひなし」とされ、要支援1に下がったことを明らかにしました。
また、要介護度を決める認定審査のさい、訪問調査の結果とあわせて検討される主治医の意見書には「四肢に中程度のまひあり」とされていたことも判明。区は「『まひなし』としたことには、疑問はある」と認めざるをえませんでした。
介護保険予算12億円も余る
党区議団は独自基準が誤った要介護認定につながっていると指摘し、独自基準の撤回と認定調査の改善を要求。これに区は、独自基準に当てはまらなくても、調査票に理由を詳しく記載すれば、調査員の裁量で「まひあり」の判断を認める是正措置をとったことを明らかにしました。
同十一月議会で区議団は、独自基準を出した〇五年度には「要支援」が急増、介護保険予算が十二億円も余ったことを示し「血の通う介護保険に」と訴えました。
小池晃参院議員も厚生労働委員会で、国に同区の独自基準を改めさせる指導を求めました。
追及が続く中、区は十二月四日、認定調査員全員が対象の研修会を開き、議会で約束した改善策などを徹底するに至ったのです。
党区議団の福島宏紀団長は、「障害者団体などが区に申し入れるなど区民の運動と共産党が手を結び、改善をかちとることができました。今後も独自基準の撤回に向け、引き続き力を合わせたい」と話しています。