日本共産党国会議員団が二十六日、尾辻秀久厚労相にあてた、介護保険についての緊急申し入れ(全文)は次の通りです。
介護保険法の「改正」に伴って、十月一日から、介護施設における居住費(いわゆるホテルコスト)・食費が保険給付からはずされ、利用者の自己負担となります。しかし実施を前にしながら、その内容について、利用者はもとより、施設関係者や地方自治体にも、十分周知されておらず、現場は混乱しています。
すでに、自己負担の増大を危惧(きぐ)する施設待機者が入所予約を取りやめたり、ショートステイや通所の利用を手控えるなどの深刻な事態が生まれています。特定疾患患者への影響も懸念されます。地方自治体のなかには、独自の減免措置を予定するところも出始めています。
このまま十月一日からの実施を強行するならば、必要な介護を受けることができない事態が、急激に広がることは避けられないと考えます。
この事態を回避するために、緊急に以下申し入れます。
一、十月一日からの実施を中止すること
今回の制度変更は、利用者に大幅な負担増を強いるものであるにもかかわらず、法案成立からわずか三カ月余で施行という強行スケジュールが組まれていることもあり、周知の遅れから、利用者・事業者や地方自治体の間に、深刻な不安と困惑、混乱が広がっている。十月一日からの実施を中止すべきである。
二、実態調査をただちに行うこと
この負担増が与える影響を考えると、以下のような点について緊急実態調査を行うべきである。
- 低所得者対策(補足給付)の対象について、自治体の把握が十分行われているか。
- 利用者負担第四段階の人(市町村民税が世帯非課税でない人)のホテルコストなどの徴収額は「契約」による「青天井」の懸念があるが、その実態はどうか。
- 今回の措置によって生ずる施設・事業所の減収の状況とそれによるサービス低下などが起きていないかどうか。
三、負担増によって必要な介護が受けられない人をつくらないようにすること
- 介護老人保健施設や介護療養型医療施設の入所者の場合は、社会福祉法人減免制度の対象にすらならず、年金額を超える負担増が懸念される。社会福祉法人減免制度を拡充すること。
- 地方自治体が行う利用者負担の減免措置に対して、国はペナルティーを科すなどの干渉はしないこと。
- 「補足給付」の対象者がすべて、実際に給付が受けられるように、行政の責任で把握・管理すること。申請手続きは簡素化し、利用者の負担を軽減するとともに、すべての対象者が施行日から補足給付が受けられるようにすること。
- 本人の希望によらない場合の個室使用については、多床室扱いとし、特別の負担を求めないこと。
- 特定疾患(難病)患者について、居住費・食費を含めて、従来どおりの公費負担を継続すること。
四、その他
- 生活保護の場合「個室の利用を認めない」とする「事務連絡」を撤回すること。
- 原爆被爆者については、居住費・食費も含めて、従来どおりの減免制度を継続すること。