福祉施設への医師・看護師派遣解禁
国民の生命をないがしろに
小池晃議員に聞く
今国会でねらわれている労働法制の大改悪を前に、これまで禁止されていた医師・看護師の福祉施設などへの派遣が解禁されようとしています。国会での審議をしない政令「改正」で処理し、四月から実施する構えです。その中身と問題点について、日本共産党参院議員で医師の小池晃さんに聞きました。「解禁」の中身 労働法制の大改悪に先行してやられようとしているのが、医療従事者の派遣解禁です。
これまで医療分野への派遣は、「チームとして意思疎通をおこなうのが難しい」「人の身体・生命に直接かかわるものである」という二つの理由で、政府自身が派遣の対象外としていました。
今回は原則解禁としながら、病院・診療所、助産所、介護老人保健施設、介護を受けている人の居宅については今後も禁止するとしてます。しかし、それ以外の特別養護老人ホーム、保育所、産業医などが解禁の対象となります。
なぜこれらを解禁するのか。厚生労働省は、社会福祉施設の医師や看護師は非常勤が多く、「密接なチーム医療ではない」と説明しています。
これはおかしな話です。たとえば特養ホームに入所している高齢者に「床ずれ」をつくらないようにするのは大切です。普段から清潔を保ち、スタッフが高齢者の体調や皮膚の状態についての情報を交換し、議論し、手当てをしていくのは、立派な「チーム」の仕事です。特養ホームでのインフルエンザ集団感染など、医療の役割が重要です。
特養ホーム待機者が増えるなかで、厚労省は施設を増やすのではなく、要介護度の高い人を優先的に施設に入れようとしています。医師や看護師がきちんとかかわる必要がある人が増えているのです。そういうときに、福祉施設だからという理由で医療を軽視することには、重大な危ぐを感じます。医療機関へも もうひとつの懸念は、派遣の解禁がすぐに医療機関に拡大する可能性が高いことです。今まで禁止していたものを、社会福祉施設ならいいということにした。この理由は非常に相対的なもので、いくらでも拡大解釈できます。
医療機関に拡大されれば、たとえば、派遣労働の人が医療事故を起こしたとき、だれが責任をとるのか。厚労省は、あくまで派遣先の病院が責任をとるんだと説明しています。しかし、派遣会社の人が、あちこちで事故を起こした場合はどうでしょう。厚労省医政局は、医療行政として派遣会社を監督する仕組みはないと答えているのです。
連合も草野事務局長の談話で、医療事故の問題もあげながら、同じような指摘をしています。
昨年六月の労働政策審議会の職業安定分科会民間労働力受給制度部会で日本医師会は、「医療に派遣労働はなじまないのではないか」と言っています。日本看護協会も、派遣された看護師が最前線でチームにとけ込んで能力を発揮していくのには非常に時間がかかる、安全性という点で問題が出てくるのではないかと指摘しています。にもかかわらず、政府は業界の了承は得られたとして解禁しようとしています。ねらいは何か ねらいは何か。構造改革特区で特養ホームは株式会社が運営できるようになりました。小泉首相は、病院についても株式会社化を認めようとしています。だから、人件費のかかる医師や看護師は常勤で雇うのではなく、派遣で安上がりにすませたい。人手不足で苦しんでいる施設の弱みにつけこんで、営利企業が医療・福祉に参入していく条件づくりの突破口としようとしているのが、この医師・看護師の派遣解禁だと思います。
総合規制改革会議の議長はオリックスの宮内義彦社長、前議長代理はセコムの飯田亮最高顧問です。セコムやオリックスというのは、まさに医療・福祉分野の民間参入をいちばんにねらっている企業です。実際、セコムは病院経営に手を出し始めています。自分たちがビジネスチャンスとしてねらっている医療・福祉の部分を、政府の規制改革会議の場を使って変質させ、国民の生命・安全をないがしろにする許せないものだと思います。
患者・国民にかかわる重大問題として、大いに知らせ、運動を広げていきたいと思います。
▲ドクター小池の処方箋・目次
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