「わずか四日間の遅れで、こんなにも長く苦しめるのか!」。非加熱製剤を投与されてHIV(エイズウイルス)に感染した被害者が国と製薬会社に損害賠償を求めた「東京HIV訴訟」。賠償請求期限が消滅する二十年(除斥期間=民事上の時効)を四日過ぎたことを理由に和解を拒否されていた原告の一人が九月に和解が成立していたことが分かり、国の対応の遅れに批判の声が上がっています。
同訴訟では、一九九六年三月、国と製薬会社が被害者に謝罪し、原告と歴史的和解をしました。当時原告に加わっていなくても、HIV感染証明書などを提出して提訴すれば、一人当たり四千五百万円の和解金が支払われました。
今回和解が成立した原告は、八一年五月に外科手術を受けた際に非加熱製剤を投与されてHIVに感染しました。しかし、感染を知ったのは二〇〇一年一月。提訴は、同年の五月十一日。賠償請求権が消滅していました。国など被告側は、「除斥期間」を盾にして和解を長期化させてきました。
「今回の事例は、なぜこれほどまでに遅れたのか?『早期全面解決』の精神から程遠い」と話すのは、札幌市の「薬害エイズを考える会」の代表で薬害エイズ被害者の井上昌和さん(43)。「HIVの感染からエイズ発病までは長い年月がかかります。感染を知った時期も人によってさまざまです。除斥期間を血液製剤投与の時点から二十年とするのは問題です」と指摘します。
危険な非加熱製剤は、一九八七年まで使われました。その理由は、安全な加熱製剤が認可されても、回収命令が出されなかったためです。井上さんはこう問題点を指摘します。「危険な非加熱製剤の最終投与の可能性は八七年までありました。ですから二十年を経過する二〇〇七年を過ぎると、被害者は救済できないということになります」
小池議員が国会で追及
日本共産党の小池晃参院議員は、〇六年四月、参院厚生労働委員会でこの問題について質問。「これは政治的問題で、国は決断して被害者の早期かつ全面的解決に応じるべきだ」と、当時の川崎二郎厚労大臣に迫りました。
小池議員は、「大阪地裁に提訴しているもう一人の原告は未解決のままです。除斥期間の問題を和解拒否の理由に持ち出すことは、被害者に責任を押し付けるものです。国は、一九九六年三月に薬害被害に対する深い反省と、再び薬害を繰り返さないという強い決意で歴史的和解をした、その原点に立ち返るべきです」と話しています。