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「リハビリ難民」 政治動かす
来月から日数制限見直し

2007年3月25日(日)「しんぶん赤旗」より

 厚生労働省は、保険の利くリハビリテーション医療に設けていた日数制限を見直し、四月から新しい診療報酬で実施することを決めました。日数制限の設定は昨年四月から導入されたものですが、リハビリの必要があるのに、打ち切られた患者が続出。実施からわずか一年で、大幅修正を迫られる事態となりました。(宮沢毅)

48万署名

 「四十八万人の署名が提出された。医療現場も混乱をきたしている。こうした事態を私は重く受け止めている」

 日数制限見直しを了承した十四日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)総会で、土田武史・中医協会長は、早急な見直しの必要性を強調しました。

 一部の委員から「わずか二時間足らずの議論でいいのか」という声も出ましたが、土田会長は「一割の人が(リハビリの)対象から外れている。緊急性がある」と強調。二年に一度という通常の診療報酬改定の周期を前倒しする異例の措置を決めたのです。

被害続出

 「リハビリを打ち切ると病院から突然通告され、困っています」。昨年三月、赤旗編集局に悲痛な訴えが次々と届きました。その一カ月前に厚労省は、リハビリ医療を、原則として四種類に分類し(1)脳血管疾患百八十日(2)心臓疾患百五十日(3)運動器百五十日(4)呼吸器九十日という上限を設定。四月実施に向け、病院に徹底していました。

 内容のひどさとともに、実施直前に患者に伝える乱暴な手法に患者や医療機関の批判が集中しました。日本共産党の小池晃参院議員の提起なども受けた厚労省は、「周知期間」を設けるとして、本格実施を最大半年延長する措置をとりました。しかし、自らもリハビリを続ける東京大学名誉教授の多田富雄氏が新聞の投書で「リハビリ中止は死の宣告」(「朝日」四月八日)と訴えるなど患者の怒りは日増しに広がります。

 六月には全国組織「リハビリ診療報酬改定を考える会」が発足し、わずか一カ月ほどで四十万人を超える署名を集め、日数制限の白紙撤回を要求する運動に発展しました。全国保険医団体連合会(全国保団連・住江憲勇会長)は大規模な全国調査を実施し、リハビリ打ち切り被害が二十万人以上にも達する危険があることを警告しました。日本共産党は国会で政府に「日数制限の緊急停止」を迫りました。

 テレビや新聞でもひんぱんに「リハビリ難民」という言葉が登場するなか、厚労省も昨年末になって、ようやく実態調査を実施しました。その結果、リハビリが必要な患者の治療が打ち切られている例が少なくないことが判明し、今回の見直しのきっかけとなりました。

問題点も

 今回の見直しは、「全面撤回」とはいえないものの、かなり広範にわたる改善となっています。

 ▽日数制限の除外疾患に心臓疾患を追加した▽「改善が見込まれない場合」でもリハビリが継続できるケースを認める▽介護保険の受け皿がない場合、維持期のリハビリは継続できる―などです。(別項)

 ただ、「医療費への財政支出を増やさない」姿勢を変えていないため、日数を超える維持期のリハビリの診療報酬点数を低く抑えるなど問題も少なくありません。

 リハビリ打ち切り問題の大本には、自民・公明の与党と政府による医療費抑制政策があります。昨年四月の診療報酬改定は、マイナス3・16%という過去最大の引き下げでした。これは国庫負担を約二千四百億円減らし、診療報酬全体で約一兆円を削減するという大規模なものでした。そのひずみが集中的に現れたのがリハビリ患者切り捨て政策でした。

 欠陥が露呈した日数制限の制度の手直しに終わらせるのではく、日数制限の全面撤回・制度の再構築が改めて求められています。


改定ポイント

 ▼リハビリ改定のポイントは次の通り。

 (1)急性心筋梗塞(こうそく)、狭心症、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)を日数制限の対象から新たに除外する。

 (2)日数制限の対象の疾患であっても、医師が必要と認め、改善の見込みがある場合は、リハビリは継続できる。

 (3)改善が見込まれない場合でも、治療上有効と判断された障害者、先天性・進行性の神経・筋疾患(筋萎縮性側索硬化症=ALSなど)患者のリハビリは継続できる。

 (4)介護保険を受けられない四十歳未満の患者や、介護保険で適切なリハビリが受けられない患者に対応する制度を新設。日数制限を過ぎても、身体機能維持のリハビリは可能とする(疾患の区別なしに実施)。



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