インフルエンザ治療薬「タミフル」投与と、投与後の突然死や異常死の因果関係について調査する厚生労働省研究班班長に資金提供していた輸入販売元の中外製薬(本社・東京、永山治社長)に厚生労働省で医薬品の審査管理などにたずさわった官僚が天下り、常務執行役員に就任していることが十九日までに、本紙の調査で分かりました。
天下っていたのは、安倍道治氏。同氏は、静岡県立静岡薬科大学卒業後、一九七三年旧厚生省に入省。薬務局経済課課長補佐、企画課課長補佐、医薬安全局安全対策課長、厚生労働省医薬局審査管理課長などを歴任。二〇〇三年八月に厚労省を退職。同年八月に医薬品規格書の充実と普及などを行う日本公定書協会常務理事に就任。その後、中外製薬に天下っています。
「タミフル」は、二〇〇〇年八月に申請され、同年十二月にスピード承認されました。
「タミフル」の副作用にかんする調査・研究をめぐっては、厚労省研究班・横田俊平班長(横浜市立大教授)に中外製薬から約一千万円の寄付金が支払われていたことが判明しています。
今回、中外製薬に医薬品行政に携わってきた厚労省官僚が天下っていたことが分かったことから、官・業・医の癒着の構造が問われます。
薬害問題を研究している東洋大学社会学部の片平洌彦(きよひこ)教授は「薬害エイズ事件の後に、私は国会に呼ばれて、薬害発生の温床になる天下りはやめるべきなどの提言をした。それがいまだに改められていないわけで、この際、癒着の関係について徹底的に真相究明する必要がある」と話しています。
薬害問題を国会で追及してきた日本共産党の小池晃参院議員は「タミフル問題に対する国の対応は、国民の生命と安全を守る立場で迅速な対応をとっているとは言えない。その背景にカネにまつわる疑惑や天下りの人脈による公正な判断をゆがめる力が働いているとしたら重大だ。こうした癒着の構造を直ちに断ち切るべきだ」と語っています。
中外製薬広報部の話 常務執行役員に安倍道治がいるのは間違いないが、過去の経歴などは、個人情報なのでコメントできない。弊社には厚生労働省OBが一人いるが、誰かは言えない。職歴、見識が当社に貢献する人材かを、役員採用の判断にしている。