小池:人の体制について、厚生労働省は何といっているか、ひどい話があります。 福島豊政務次官(公明党)は国会答弁で、「医療事故の実態を見ますと、人員配置基準を大幅に上回る看護婦が配置されていた病院でも事故は発生いたしております。したがって、労働環境の変化と医療事故とは必ずしも直接の関係があるわけではない、そのように認識いたしております」というのです。 大学病院の事故のことなどをいっているのですが、そのような病院は複雑な治療や高度な治療が必要な患者さんが多く集まるので、ヒューマンエラーの確率が高くなることは明らかなこと。ミスの背景に、業務に追いまくられている労働実態があるわけで、このことを理解しない厚生労働省に医療事故問題を解決する能力も資格もないといえます。 問:どうすればいいのでしょう 小池:海難事故の場合、国土交通省から独立した機関「海難審判庁」が調査し、再発を防ぐ手段を検討します。「航空事故調査委員会」は今度、鉄道も加わっての委員会になり、航空機と鉄道事故に対応します。 医療事故も、このような第三者機関があって、事故の様子や原因、対策を全国に発表して、注意を喚起する仕組みをつくらないと、事故はなかなかなくならないと思います。 問:その通りですね。 小池:厚生労働省は、事故報道が増える中で重い腰を少し上げはじめました。 二〇〇一年度の医療安全対策予算は四億六千万円。何をするかといえば、インシデント事例をとりあえず集めるというのです。やらないよりやったほうがいいのですが、非常にお粗末で遅れていますね。 安全対策でつくった委員会も専任のスタッフは五人しかいない。兼務の十六人とあわせても二十一人。 諸外国のことを調べましたが、アメリカには「医療リサーチ・クオリティ庁」があり、スタッフ二百九十四人、予算は二億六千九百九十九万?です。日本と比べてケタ違いに多い。 問題の深刻さに比べて、日本のとりくみはあまりにも弱いといえます。国会で引き続いて追求していきたいと思っています。 問:医療の安全性について、民医連も一生懸命にとりくんでいますが、どのように見ておられますか。 小池:民主主義、情報公開という点で一番先進的なのは、だれが見ても民医連だと思います。 セラチア菌感染の場合でもそうでしたが、きっちり情報公開をしてとりくみを進めています。問題の解決のモデルを示せるのが民医連だと思います。 国に対しても、腰の引けた態度を批判しながら、医療従事者は本来こういう解決をしていくのだというモデルを示していく、大変だと思いますけど大いに期待しています。 聞き手:ありがとうございました。(おわり) *「みんいれん」(東京民医連機関紙)2001年6月5日号より 転載
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