医療の安全性について、先の国会で政府に対策を求めた、全日本民医連の理事 で医師(代々木病院)の小池晃参議院議員(日本共産党)に聞きました。 (聞き手は編集部) 問:国会で「医療の安全性」について質問されましたが…。 小池:国民の関心が非常に高まっています。医療事故の報道が毎日のようにされ、国民にとって不安であるとともに、医療従事者も、いつ事故を起こすか恐怖感におびえながら仕事をする状態。国民にとっても不幸なことで、一刻も早い解決が求められています。 ただ、ことがらの性格上、医療費や介護保険のように、国や政治のここを直せばよくなる、予算を増やせばよくなるというものではありません。 医療従事者もいろいろとりくまなくてはいけないし、患者の側も問題提起をしなければいけない。国の責任も重大。複雑で重層的な問題です。 国会の日本共産党議員団の中に医療事故問題のプロジェクトチームをつくって、日本看護協会や日本薬剤師会など、広範な団体と懇談しました。 私たちはこの問題を考える場合、社会や政治全体の問題としてとらえることが大事だと思っています。その視点として、三点くらいを考えています。 問:と、いいますと。 小池:一つは、人の命は大切なんだということ。命がおろそかにされている社 会のあり方があって、大銀行やゼネコンのもうけが優先される政治がまさにそのものです。 医療現場でも、何があっても患者のいのちが大事にされるということが貫かれ ているかどうかです。 二つめは、民主主義と情報公開の問題です。医療従事者同士、従事者と患者の 間ではどうなのか。情報公開が不十分で、貫かれていないということがあるので はないか。 三つめは、患者が安心して治療に専念できるような、医療保険制度とか、医療 供給体制になっているかということです。 医療現場の職員が、経営効率ということに追いまくられて、ゆとりを持って医 療にとりくめない。ゆとりを持つだけの経済的保障があるのか。 根本的にいえば、公共事業に五十兆円、社会保障に二十兆円という逆立ち財政 で、医療が切り縮められている、ここを変えなければいけないということです。 問:その視点に立って質問されたのですね。 小池:まず体制・人の配置で、病棟薬剤師と看護婦の基準を質問しました。 投薬の事故も多いのですが、その背景に投与が複雑になっていることがありま す。静脈に入れるものでも末梢に入れるもの、中心静脈に入れるものがあり、動脈もあれば、鼻からチューブで、あるいは、胃ろうをつくって、というように。 薬の種類も増えている。薬剤師の果たす役割は、昔に比べて重くなっています。 ところが、九八年に病院薬剤師の基準が緩和されました。それまで「八十調剤 に一人」だったものが、「入院患者七十人に一人」になり、配置基準に達していなかった病院の二割が、逆に定員を満たすということになりました。薬のミスが 起きているときに、基準を緩和するとは何事かですよね。 来春が見直しの時期。私どもも引き続いて国会で追求していきますので、みなさんも声を上げてください。 看護基準も、今の基準は低いし、診療報酬の裏づけがあまりにも低い。日本看 護協会は、最高基準を「患者一・五人に看護婦一人」に引き上げることを提案し ていますが、ぜひそうすべきです。 厚生労働省は中医協(中央社会保障医療協議会)で検討するといいますが、そこには看護婦の代表が入っていない。厚生労働省の責任できちんとやるべきです。(つづく) *「みんいれん」(東京民医連機関紙)2001年5月25日号より転載
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