赤旗2019年5月4日付
日本共産党の小池晃書記局長は3日のNHKの憲法記念日特集番組に出演し、安倍9条改憲をめぐって各党代表と議論を交わしました。
政治変えてこそ新たな時代
冒頭、「新しい元号のもとで、変えるべきものは変える」(下村博文・自民党憲法改正推進本部長)などと“新しい時代”だから“改憲せよ”との意見が出たことに対し、小池氏は「政治が変わらなければ、新たな時代にはならない」と強調。自民党政治が9条も個人の尊厳もないがしろにし、安倍政権は9条解釈を閣議決定でひっくり返したと指摘し、「こうした立憲主義の蹂躙(じゅうりん)が政治モラルの大崩壊につながり、ウソと忖度(そんたく)の政治が国政の信頼を揺るがしている。たとえ元号が変わっても帳消しにできない」と強調。「日本に必要なのは憲法を変えることではなく政治を変えることだ。憲法の先駆的な人権規定と9条を生かした新たな政治をつくる」と訴えました。
9条理念生かし平和外交を
憲法9条が戦後の日本社会に果たした役割をめぐっては、下村氏が「(9条の)平和主義というより、自衛隊や日米安保条約によって今の平和が保たれている」などと発言。小池氏は「憲法9条があったから日本は戦後、戦死者を一人も出さず、海外で外国の人を殺さなかった」と指摘し、「国際情勢が変わったというが、朝鮮半島の平和体制の構築、非核化を実現する上でも、9条の理念を生かした平和外交に本格的に取り組むことこそ、今の時代に求められている日本の役割だ」と強調しました。
無制限の武力行使を可能に
安倍晋三首相提案の「自衛隊明記」の9条改憲について、下村氏が自衛隊を明記しても9条1項、2項は残し、「9条の解釈も変えない」などと強弁。これに対し小池氏は、たとえ憲法9条1項、2項が残っても、自衛隊は「自衛のために必要な措置を取ることを妨げない」との条文が書かれると説明。「後から書かれた条文は元の条文に優先するのが法律の大原則だ」と指摘し、「結局、1項、2項が無力になって、無制限の海外での武力行使ということにつながる」と批判しました。
また現在の自衛隊は、安倍政権のもとで、海外の戦闘地域で集団的自衛権を行使する自衛隊であり、「専守防衛」の建前を投げ捨てて空母まで持ち、イラク日報の隠蔽(いんぺい)に示されたようなシビリアンコントロール(文民統制)の利かない自衛隊だと強調。「1ミリも変わらないというが、すでに何百メートルも憲法解釈を動かしてきたのが安倍政権だ。この上憲法に自衛隊を書き込めば、フリーハンドで海外で戦争できる国になってしまう」と批判しました。
小池氏の発言を受け、立憲民主党の山花郁夫憲法調査会長は「小池議員の指摘通りで、解釈論に無理がある」と批判。国民民主党の玉木雄一郎代表は「自衛権の範囲が無制限に広がる。自衛隊明記論はやめた方がいい」と表明しました。
下村氏が「解釈改憲には限界がある」と述べたことに対し、小池氏は「やはり安保法制の制約すら乗り越えて、無制限で海外で武力行使するということだ」と批判しました。
参院選で改憲策動に審判を
討論では憲法審査会についても議論に。下村氏が、司会者から通常国会中に憲法審査会で改憲4項目の提示を目指すのかと問われ、「(審査会は)与野党の合意の中で開かれる」とした上で、「4項目をきちっと審査会の場で説明させていただきたい。討議をして、その中でまとまる流れができてくればいい」などと発言。今国会中に改憲案を審査会に提示するとの姿勢をあらわにしました。
公明党の北側一雄憲法調査会長は「1項、2項を変えないというなら、本当に変えない条項になっているのか、しっかりと論議をすべきだ」「憲法審査会で意見表明をしたいということまで拒否するのはいかがなものか」などと述べ、審査会での改憲論議の加速をあおりました。日本維新の会と希望の党の改憲勢力が同調しました。
小池氏は、「国民多数が改憲を求めていない中で、改憲発議を目的とする憲法審査会を動かす必要はない」と主張。現在の改憲論議は、安倍首相が自ら旗を振り、「任期中の改憲」を主張しているとして、「憲法第99条の憲法尊重擁護義務違反であり、立憲主義の破壊だ」と強調し、「安倍政権が狙っている改憲には道理も大義もないし、国民の支持もないということは明らかだ。これまで憲法違反の法案を次々強行してきた安倍政権に憲法を語る資格はない」と厳しく批判しました。
また「朝日」の世論調査(3日付)で72%が改憲の機運は高まっていないと回答し、9条を「変えない方がよい」との声は64%に増えていると指摘し、「このようなやり方での改憲は許さないと野党は一致し、市民のみなさんとの運動も広げていく。参議院選挙で、改憲の策動ができなくなるような審判を下す」と表明しました。