赤旗2019年1月28日付
日本共産党の小池晃書記局長は27日のNHK「日曜討論」で、28日から始まる通常国会の焦点である毎月勤労統計の不正・偽装問題や消費税増税問題などについて、各党の代表と議論しました。
通常国会
行政監視の国会の機能を取り戻す
まず各党に通常国会に臨む姿勢が問われました。
小池氏は「野党が結束して、隠ぺい、改ざんの政治に終止符を打つ、そういう国会にしなければならない」と強調。昨年の裁量労働制のデータ偽装をはじめ、今年の新年の安倍晋三首相の沖縄県・辺野古新基地建設予定地の「サンゴ移植」発言、そして毎月勤労統計の不正・偽装などの問題を列挙し、次のように表明しました。
「うそや隠ぺいが続き、民主主義の根幹を揺るがす事態になっている。国会は国民の負託に応えてうそのない当たり前の政治をつくっていかなければいけない。行政をしっかり監視する国会の機能を取り戻さなければいけない」
立憲民主党の福山哲郎幹事長は、28日に野党党首会談を開くことをあげ、「安倍政権に野党の5党1会派が共闘してたたかっていくことを確認したい」と述べました。
統計不正・偽装
この問題の解明は予算審議の大前提
2004年以降、毎月勤労統計で不正な調査が行われ、厚生労働省が昨年1月以降、国民にその事実を公表せずにデータを補正していた問題が議論となり、自民党の萩生田光一幹事長代行は「不適切で遺憾」と述べながら、民主党政権時代にも不正が続いていたなどとし、「安倍内閣でなにか作業を行ったわけではない」と責任逃れに終始しました。
小池氏は、厚労省がデータ補正を始めた時期は、裁量労働制や「森友問題」などでデータや公文書の改ざんが問題になっていた時期だとし、「背景には安倍政権による政治モラルの大崩壊がある」と指摘。萩生田氏の責任逃れについても「15年間ずっとやってきたというけれど、重大なのは昨年1月以降これを改ざんしていたこと。しかも、明らかに組織的にやってきた。これは安倍内閣(の責任)だ」と厳しく批判しました。
小池氏は「安倍首相はその偽りの数字をもとに賃上げを誇り、アベノミクスの成功を誇り、そして消費税増税を決めた。この問題の解明は予算審議の大前提だ」と強調。萩生田氏も「予算審議の前提になるさまざまな数値の根拠となっていることは野党のみなさんのご指摘の通り」と認めました。
立憲民主党の福山哲郎幹事長は、厚労省の特別監察委員会の中間報告を「不十分でお手盛り」と批判し、関連資料の提出を要求。根本匠厚労相の罷免を求めました。国民民主党の平野博文幹事長も、再調査の徹底を訴えました。
消費税増税
一寸先は真っ暗闇の経済情勢でやってはいけない
次に、10月からの消費税率10%引き上げが議論となりました。増税に伴い安倍政権が2兆円規模の景気対策を行うとしていることについて司会者から問われた萩生田氏は、景気への影響を出さないよう与党の総力を挙げて取り組みたいと述べました。
小池氏は、安倍首相がポイント還元などで「増税分は全て国民に戻す」と述べていることについて、「戻すくらいなら最初から増税しなければいい」と主張。16年に10%増税を延期したときは国内総生産(GDP)がプラス1・7%だったのに対し、現在はマイナス2・5%で、個人消費・輸出・設備投資・公共投資と軒並み落ち込み、そのうえ米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)からの合意なき離脱による「リーマン・ショック」を超える景気の落ち込みが懸念されていると述べ、「3年前には『世界景気が不透明だ』と増税を延期したが、今は不透明どころか『一寸先は真っ暗闇』だ」と強調しました。
小池氏は、貧困と格差が広がっているもとで、やるべきは消費税増税ではなく、アベノミクスで大もうけしている富裕層に応分の負担を求めることや、トランプ政権いいなりの高額な米国製兵器の“爆買い”の見直しだと力説しました。
萩生田氏は「(景気)対策で大きなお金を使うのに増税する必要はないと言われれば、19年度だけ考えればなるほどとうなずける」としつつ、社会保障予算の確保には安定財源である消費税増税が必要だと述べました。
賃金が下がっていた可能性―前提が変わって来ている
小池氏は、毎月勤労統計の不正・偽装が明らかになったことで「増税の前提が変わってきている」と指摘。賃金が上がっているという安倍政権の宣伝とは反対に、実際は賃金が下がっていた可能性がでてきたと述べ、「前提が変わったと率直に認めて、税の在り方に対する違いはあったとしても、いまの経済情勢のもとでやってはいけないということで増税は中止すべきだ」と語りました。
消費税は安定財源だとの主張にも、「この間、何度も(税率引き上げを)先送りせざるを得なかったこと自体が、安定的な財源ではないことのなによりの証明だ」と反論。「税の在り方は“能力に応じて”が基本であり、アベノミクスでもうけている富裕層、あるいは史上空前の利益をあげて内部留保をためている大企業に負担を求めることが、経済も財政も両立させる道だ。そういう方向に進むべきだ」と訴えました。
自公を除く全政党が消費税10%増税に対して「中止」「凍結」を主張しました。
日ロ領土問題
戦後処理の不公正を正面からただすことが唯一の道
安倍首相がロシアのプーチン大統領との領土問題を含む平和条約を締結しようとしていることが議論となりました。政府が交渉について一切明らかにしないなか、野党からは国後・択島・色丹・歯舞群島の「北方4島」の返還を目指す政府の従来方針が、色丹・歯舞の「2島決着」へと変化しているのではないかとの指摘が相次ぎました。
萩生田氏は「政府の基本姿勢は変わっていない」とし、「細かいことで国民や国会に報告しづらいこともある」と述べました。
小池氏は「細かいことじゃない。領土交渉の根本にかかわることをちゃんと説明していない」と批判。「ロシアが第2次世界大戦で千島列島がロシア領になったと主張していることに、日本は反論していない。ロシアに言いたい放題言われていたら領土交渉は絶対にうまくいかない」と強調しました。
小池氏は「最大の問題はロシアが第2次大戦の結果をゆがめていることだ」と指摘。旧ソ連のスターリンが戦後処理の大原則である領土不拡大を踏み破って、日本の歴史的領土である千島列島全体を不当に占領したことに、日本政府は戦後70年間きちんと反論してこなかったとし、「戦後処理の不公正を正面からただすことが、回り道のように見えても、領土問題を解決する唯一の道だ」と語りました。
沖縄新基地建設
基地を造れる場所ではない―土砂投入いますぐ中止を
最後に、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設問題が議論となりました。萩生田氏は、米軍普天間基地の危険性除去には「辺野古以外に選択肢はない」と主張。首相のサンゴ移植発言についても、「首相は辺野古一帯のことを言った」などと言い訳しました。
小池氏は、安倍首相は土砂投入している「あそこのサンゴ」と述べたと指摘し、「率直に間違っていましたというべきだ。しかも(移植したのは)7万4千群体のうち9群体だけ」と批判。辺野古の新基地建設の是非を問う県民投票が沖縄県の全市町村で実行される見通しになったことを「本当に良かった」と歓迎しました。
小池氏は、工事区域が超軟弱地盤だということを政府は3年前に報告書を受け取りながら、そのことをひた隠しにして土砂投入という既成事実をつくったと批判。「本当に卑劣なやり方だ。辺野古というのはそもそも基地など造れる場所ではなかったことがいま明らかになりつつあるわけで、土砂投入はいますぐ中止すべきだ。辺野古の新基地建設も中止し、普天間基地を閉鎖・撤去するという決断をし、アメリカにそれを求めていくべきだ」と訴えました。