赤旗2018年11月17日付
日本共産党の小池晃書記局長は15日夜放送のBSフジ番組「プライムニュース」で、外国人労働者受け入れ拡大の出入国管理法改定案について、自民党の田村憲久政調会長代理、立憲民主党の長妻昭政調会長と議論しました。
数字に根拠ない
5年間で最大34万人の外国人労働者受け入れの試算について、小池氏は「そもそも、どういう技能の人をどういう職場で受け入れるかが決まっていないのに上限が決まるわけがない。数字自体がまったく根拠がないと言わざるをえない」と指摘しました。
法務委員会での審議入りの前提として国会の付帯決議に基づく失踪実習生の「聴取票」の提出を要求。「前提となる資料が示されずに議論だけやれというのは、国会は法案を通す機械だと考えているのかと言いたくなる」と厳しく批判。長妻氏も「同じ考えだ」と述べました。
田村氏は、現行の外国人技能実習制度には「企業が契約した賃金を払わないとか、最低賃金も払わなかったとか、そういうことが散見される」などと発言。これに小池氏は、外国人技能実習生を受け入れる全国4万事業所のうち、4000事業所が監督指導されていることを示し、「散見ではなくかなりの高率で問題が起こっている」と反論。田村氏は「技能実習が駄目だから新しい制度でしようと。問題あると分かっていますから」と開き直りました。
きちんと検証を
さらに小池氏は、法改定による受け入れ見込み数34万人のうち、産業機械製造業などでほとんど、漁業で8割、造船・船用工業や自動車整備業で7割などが技能実習生からの移行だとして、「技能実習制度の問題に対しきちんと検証・総括する議論をやった上でなければ無責任なことになる」と指摘。そして、2016年改定の新たな技能実習制度の実態が表れるのはこれからだとして、「新制度の結果も見ずにまた別の制度にいこうというのか」と述べ、田村氏に「まずはどのような問題があるのかをきちんと議論をしましょう」と呼びかけました。
長妻氏も「聴取票」などデータの提出を重ねて求めると、田村氏は「出さない理由はない」と言わざるをえませんでした。
建設業や外食、宿泊業など14の受け入れ拡大業種についての議論で小池氏は、「“国際貢献”が建前だった技能実習制度に対し、今度は単純労働も含めて堂々と労働力不足を補うものとしている。技能実習制度で起きていた問題が大手をふってやられることになり、矛盾が拡大することは間違いない」と指摘。「これで外国人労働者がくるのか。人手不足対策として大失敗する」と語りました。
日本を選ばない
さらに小池氏は、業種別の受け入れ見込み人数の議論で介護職が5年間で最大6万人とされていることに関し、技能実習制度に追加された介護職で現在日本にきているのは472人だと厚生労働省が明らかにしたと述べました。
そのうえで小池氏は、介護職の人手不足の原因は低賃金など劣悪な労働条件にあると強調し、一方でアジア各国では高齢化が進み、自国の介護で手いっぱいなうえ、欧州や北米でアジアの介護職員はきめ細かなサービスなどで人気が高く、引っ張りだこだと紹介。劣悪な労働条件の改善なしにアジアの介護福祉士は日本を選ばないのではと疑問を投げかけ、「目標自体が現実に見合ったものになっていない」と批判しました。
受け入れ企業が日本人と同等以上の報酬を支払うなどの労働条件に関する議論で、司会者が「外国人材が入ってくることで、日本人労働者も含めて相対的に賃金が下がっていくのではという見方がある」と発言。小池氏は、日本人の「同一労働同一賃金」すら実現しておらず、現行の入管法の省令にも「日本人と同等以上の報酬」の規定がありながら、「実態はそうなっておらず、最低賃金ぎりぎりだ」と述べ、「外国人労働者を入れて労働条件や賃金をより劣悪にして、日本人労働者の賃金も一緒に下げていくということになりかねない」と懸念を示しました。
公的関与なし
小池氏は、韓国では外国人労働者に公的機関が関与し、16の送り出し国と2国間協定を結んでその国の言葉で相談できる体制をつくるなど手厚いケアをしているが、日本はそれが全くないと強調。「外国人労働者を日本に迎えていく制度をつくるのであれば、当たり前の基本的な権利を保障しなければ世界から信用されなくなる」と指摘し、技能実習制度にどのような問題があり、それをどう正すべきかをはっきりさせることが国会の責任だと強調しました。
最後に出演者が提言を書いたボードを掲げ、小池氏は提言を「連帯」と記し、「“万国の労働者団結せよ”だ。外国人労働者の当然の権利が守られてこそ、日本人労働者の権利も守られる」と語りました。