赤旗2018年11月8日付
「これほどの人権侵害はない」「これで主権国家といえるのか」―。日本共産党の小池晃書記局長は7日の参院予算委員会で、深刻な人権侵害が発生しているもとでの外国人労働者の受け入れ拡大の問題点を明らかにするとともに、他国と比べてもあまりに屈辱的な日米地位協定の改定を正面から迫りました。人権、国の主権にかかわる問題が問われているのに、安倍晋三首相は開き直りの答弁を繰り返し、無責任な姿勢が浮き彫りになりました。(関連記事)
安倍政権は外国人労働者の受け入れを拡大させる出入国管理法改定案を閣議決定して、早期成立を狙っています。同法案は、新たな在留資格を設けて人手不足の分野で働く外国人の受け入れを拡大させます。しかし、現行の外国人技能実習制度のもとで横行する人権侵害さえ解決できていません。
小池氏は、外国人技能実習生に対する長時間労働や賃金未払いは常習化しており、厚労省が昨年、監督指導を実施した5966事業所のうち、7割の事業所で労働基準関係法令違反が確認されたことを指摘。ところが、技能実習生で一番多い12万人のベトナム人実習生から相談や申告を受ける労働基準行政の現場には、ベトナム語ができる人が日本全国でたった一人しかいないことなどをあげ、「今ある労働法制も守られていない。守らせるための労働行政の体制も、事実上ない。こうした現状をただすことなしに、外国人労働者の受け入れを拡大すれば、いっそう事態は深刻となり、国際的な批判を招くことになる」とただしました。安倍首相は「確かにそういった状態がある」と認めながら、「今指摘されたようなさまざまな事態が起きないよう、対応を取っていこうということだ」と開き直りました。
小池氏は、出入国管理法改定案では、必要な人材が確保されれば外国人労働者の受け入れを停止する点などをあげ、「これは、ある意味、国家による整理解雇だ。しかも、職場を追われるだけではなく、帰国させてしまう。これほどの人権侵害はない」と糾弾しました。
小池氏は、沖縄県では、米軍機が相次いで重大事故を起こしても、日米地位協定によって日本の捜査機関が蚊帳の外に置かれる異常な実態を告発。全国知事会が、ドイツやイタリアなどと比較しても、日本は米軍に手厚い特権を与えていることを指摘して、全会一致で日米地位協定の改定を決議したことをあげ、「全国の知事の多くは、自民党が支援して当選し、自民党が与党として支えている。その提言は、政府・与党にとっても極めて重いものだ」とただしました。
河野太郎外相は「NATO(北大西洋条約機構)加盟国で相互防衛の義務を負っている国と、それと異なる義務を負う日本との間で、地位協定が異なることは当然」と述べて、屈辱的な特権の付与を当然視しました。
小池氏は「日米地位協定は、国会でまともに審議されず強行採決された。そのうえ日米合同委員会という密室で、さまざまな密約もされている。これこそアメリカの押し付けだ」と述べ、政府と国会が一体となって堂々と議論し、日米地位協定を改定しようと呼びかけました。