赤旗2018年10月29日付
日本共産党の小池晃書記局長は28日のNHK「日曜討論」で、24日に始まった臨時国会の焦点である補正予算案や消費税増税、外国人材の受け入れ拡大、改憲問題などについて、各党の幹事長(代行)と討論しました。
臨時国会への姿勢
憲法と暮らし守って正直で公正な政治を
臨時国会への基本姿勢について自民党の萩生田光一幹事長代行は、災害復旧を盛り込んだ補正予算案の一日も早い成立を求めました。立憲民主党の福山哲郎幹事長や国民民主党の平野博文幹事長、社会民主党の吉川元幹事長らは、西日本豪雨から4カ月が過ぎており補正予案は遅きに失したと批判。自由党の森ゆうこ幹事長は「うそで固めた安倍政権の真実を明らかにしたい」と語りました。
小池氏は「安倍政権の暴走を止めて憲法と暮らしを守る国会、うそのない正直で公正な政治を実現する国会にしたい」と発言。沖縄県知事選での玉城デニー氏の圧勝に触れ、「辺野古(名護市)に基地はつくらせないという揺るがぬ民意が示された。政府は、沖縄に基地を押し付けるのではなく、米国政府に普天間の閉鎖撤去を求めるべきだ」と強調しました。
さらに、安倍晋三首相が森友・加計疑惑の真相が明らかにされていないなか、麻生太郎財務相を留任させ所信表明演説でも一言も触れなかったことや、他の閣僚の口利き疑惑が噴出していることに触れ、「閣僚の資質はもちろん、安倍首相本人の責任が厳しく問われている。さまざまな問題で安倍政権の土台が揺らいでいる。野党が結束し、安倍政権を追いつめる論戦をやっていきたい」と語りました。
補正予算案
被災者への支援こそ強靱化するべきだ
補正予算案について自民党・萩生田氏は、災害対策や公立学校へのエアコン設置、ブロック塀対策などを盛り込んだと説明しました。
小池氏は「復旧対策は当然だ」としつつ、エアコン設置やブロック塀対策は「もっと早くに手を打つべきだった」と指摘しました。また、「政府の災害対策は問題が多いが、特に被災者支援があまりにも不十分だ」と強調。6野党・会派が支援金の上限引き上げや対象拡大などを盛り込んだ被災者生活再建支援法の改正案を国会に共同提出しているにもかかわらず継続審議になっていることに触れ、「すぐにでも実現することが被災者への激励のメッセージにもなる。与党や政府は(国土)強靭(きょうじん)化をいうが、被災者の支援策こそ強靭化すべきだ」と語りました。
さらに、衆議院の予算委員会を一日で終わらせるという話があることを指摘し、「国会を遅く始めて一日で議論を終わらせるなど、そんな話はない。きちんと国民に責任をもつ審議をやってもらいたい」と求めました。
自民・萩生田氏は、審議日程については現場で協議中だと述べ、野党の支援法改正案については「よく承知をしている。しっかり精査したい」と答えました。
消費税10%増税
大企業と富裕層に応分の負担を求めよ
政府が来年10月に消費税率を10%に引き上げると宣言したことについて立民・福山氏は、8%増税時より経済の不透明さが増し、実質賃金も上がっていないこの時期になぜ消費税を上げるのかと述べ、「撤回してもらいたい」と強調。他の野党もすべて10%増税に反対しました。
小池氏は、8%へ増税してからの4年半で家計消費支出はひと月たりとも増税前を上回ったことがないと指摘。「1世帯の年間消費額は25万円も減る中で10%に引き上げれば、さらに貧困と格差が広がり景気は悪化する」と批判しました。
また、ポイントや商品券での還元という案について「戻すぐらいなら増税しなければいい」と批判。史上最高の利益を上げている大企業の法人税減税や、1基2000億円のイージス・アショア、1機150億円のF35ステルス戦闘機などの無駄遣いを指摘し、「こういったことを見直すべきだ。社会保障の財源というのであれば、大企業やアベノミクスで潤っている富裕層に応分の負担を求めるのが、安定した財源だ」と述べました。
社民・吉川氏も、消費税が上げられる一方で法人税が引き下げられてきたことに触れ、「今は消費税を上げても法人税減税で全部水が抜けていく状態だ」と批判しました。
自民・萩生田氏は「企業が過去最高の利益をあげているのも事実。想定外だった内部留保にお金が回っている実態もある」と認めざるを得ませんでした。
外国人労働者
人権守るルール作り秩序ある受け入れを
出入国管理法の改定などで農業や介護など14分野で外国人労働者の受け入れ拡大を目指していることについて、自民・萩生田氏は「移民政策ではない」と弁明しました。
小池氏は、現在の技能実習生制度がアメリカから「人身取引」という批判を受けるほど個人の尊厳や基本的人権を守るルールがないことに加え、現行の労働基準法や最低賃金法すら守られていないことを指摘し、「この状況のもとで、なし崩し的に(対象を)拡大することは断固反対だ」と批判。外国人の人権をしっかり守るルールを整備し、労働法制を守らせる仕組みをつくることが必要だと述べ、「その中で外国人労働者の秩序ある受け入れを進めていくべきだ。外国人労働者の当然の権利を守ることが、日本人の労働者の権利を守ることにもつながっていく」と語りました。
他の野党からも、政府案は実質的な移民政策だとの指摘が繰り返され、日本社会の在り方を変える大問題であり慎重な審議を求める意見が相次ぎました。自民・萩生田氏は「慎重な国会審議にすることは同意したい」と述べながら、「来年4月開始」の姿勢を崩しませんでした。
憲法改定
立憲主義乱暴に否定 野党が力合わせ阻止
安倍首相が所信表明演説で改憲への意欲を語り、「憲法は国の理想を語るもの」「改憲論議は国会議員の責任」と発言したことが問題となりました。
小池氏はこれらを「違う」ときっぱり。「憲法は国民の権利を守るために政府の権限を制約するもので、これが立憲主義の大原則」「憲法99条は国会議員や大臣に憲法尊重擁護義務を課している。憲法を守るのが、国会議員の責任」だと反論し、首相の憲法への無理解ぶりを批判しました。
さらに、国民が望んでもいないときに、権力への制約を取り払うような憲法改定案を強引に与党・首相が旗を振って進めること自体が立憲主義の乱暴な否定だと述べ、野党で力を合わせて改憲策動を阻止していくと語りました。
立民・福山氏は「安倍総理の理想を入れるために憲法があるわけではない。憲法や国家権力に対して謙虚になるべきだ。あの態度が文書改ざんや虚偽答弁につながっている。いま憲法改正議論するような時ではない」と強調。国民の平野氏は「首相が前に出て旗を振るのは、筋違いも甚だしい」、自由・森氏も「安倍政権自体が憲法を守っているのか検証したほうがよい」と批判しました。
公明党の斉藤鉄夫幹事長は「憲法審査会で議論を深めるということに尽きる。与野党の幅広い合意が形成されている状況ではない」と語り、自民・萩生田氏は野党の批判に「うなずけるところもある」と述べる一方で、「憲法改正を望む国民の声もある」と弁明。「安倍総理がどうのこうのという問題ではない」と語りました。
小池氏は、政治的中立が最も求められる自衛隊の前で改憲の旗を振るなど首相の暴走姿勢が問題と重ねて批判しました。自民・萩生田氏は「安倍総理が黙ることで憲法審査会が動くのであれば、そういうことも考えたい」と述べました。