○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
感染症、特に今回のエボラ出血熱への対応で検疫体制が注目されております。もちろん、この疾患の特性からいって水際作戦だけで防げるものではないことも承知していますが、参考人質疑でも、抑止効果も含めてその意義が強調されておりました。同時に、検疫体制の不備については、こういう問題が起こるたびにこの委員会でも指摘をされてきたわけですが。
厚労省にまずお聞きします。
検疫所における検疫官の定員と実数は今幾らなのか。また、国際線の定期便が就航しているいわゆる検疫飛行場のうち、検疫官の常駐がない空港はどれだけあるんでしょうか。
○政府参考人(三宅智君) 検疫所における定員でございますけれども、平成二十六年十月一日現在の検疫所における検疫官の定員数は三百八十四名でございまして、現在員数は三百五十六名でございます。
また、国外から航空機が到着し必要な検疫を行う検疫飛行場は全国で三十か所ございますが、そのうち検疫官が常駐しておらず、航空機が到着する際に検疫官が出張して検疫対応している検疫飛行場は十一か所となっております。
○小池晃君 十一か所の中には、ちなみに松山空港もございます。
配付資料で、私も厚労省からこの配置をいただいて、これはなかなか大変だなというふうに率直に言って思います。例えば、検疫飛行場、青森でいえば青森空港は常駐はなくて、飛行機到着するたびに、今御説明あったように青森出張所から検疫官が出張しているということなんですね。青森出張所にも三名しかいないわけです。これでは、もしも青森空港で入国者にエボラの疑いという人がいたら、もうこれは塩竈にある仙台検疫所から応援に行かざるを得ないだろうというふうに思うんですね。
同時に、ゼロがいっぱいあるその一方で、たとえ常駐体制があるところでも、多数の入国者がある成田で六十八名、羽田で二十四名、関空四十四名、中部二十名。二十四時間空港では三交代での体制ですから、これは極めて厳しいだろうというふうに思うんです。
大臣、やはりこういう部門こそ国民の生命と安全にとって重要だと私は思うんですね。外国からの入国者は、この間、この最初の資料にある十年間でいうと一・五倍になっている。ところが、この経過を見ていただければ分かるように、検疫官の人数はほとんど横ばいであります。しかも今、定員割れしています。
私は、総定員法の枠を外してでも、国民の生命、安全を守る検疫官の抜本的増員が必要ではないかというふうに思うんですね。あわせて、予算も、その下にあるように、近年は、これは裁量的経費の削減ということで予算も減らされております。
予算の増額ということも併せて、この検疫体制の強化に向けた大臣の考え方を聞かせていただきたい。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先生御指摘のように、検疫官の、言ってみれば水際での守りというのが非常に重要であることは間違いないわけで、それについては、我々も法務省との連携も含めて強化をしてきているところでございます。
国内に常在しない病原体が航空機等を介して侵入することを防止するために必要な体制を今担ってもらっているわけでありますけれども、検疫業務に係る人員体制については、平成二十七年度の組織・定員要求におきまして、空港等での検疫体制の強化を図るために十九名の増員を今行っているところでございます。
そして、輸入食品の検査に係るものも含めた検疫所の予算に関しては、今先生から資料を配付されまして御指摘がございますけれども、平成二十七年度概算要求においては、訪日外国人旅行者の増加が顕著でありますから、それに対応するためにも約九十一億円、若干ではありますけれどもプラス一億円の増額要求を今しているところでございまして、いずれにしても、検疫官、検疫所がその役割をしっかりと果たせるように体制の確保を努めてまいりたいというふうに思います。
○小池晃君 私は、こういうのが本当の安全保障だというふうに思っておりますし、やっぱりこういったものを財務省に対してもきちっと予算要求していただきたいし、来年は、今御説明ありましたけど、こういう事態を踏まえて、この配置を見るとちょっとやっぱり心細いですよね、率直に。
これはやっぱり抜本的な強化を、現場で働いている検疫官も本当に大変な中で仕事をされているというふうに聞いているので、強化をしていただきたいということを重ねて申し上げたいというふうに思います。
ちょっと今日は国保の問題もお聞きしたいんですが、全国各地で国保料、国保税を滞納した世帯に対する差押えが激増して、これはマスコミでも取り上げられました。
今日お配りした資料の最後のページにありますように、この差押えの件数、金額共に、激増といいますか、十年間で四、五倍になっています。二〇〇五年に厚労省が収納対策緊急プランの策定等についてという通達を出して、収納率向上のために預貯金、給与、生命保険の差押えなどを例示して以来、これがかなり急増しているという指摘もございます。
前提として申し上げますけれども、もちろん、明らかに支払能力があるのに保険料を払わず、督促にも納付相談にも応じない悪質な滞納者、これは一定の非常手段を取ることを私は否定をいたしません。しかし、やってはいけないことがあるはずで、一つは、年金や給与などの生計費相当分、あるいは福祉として給付されている公的手当、それを奪われたらなりわいが絶たれるような商売道具など、いわゆる差押禁止債権・財産の差押えです。もう一つは、病気や失業、所得激減などで生活困窮に陥った世帯を更に困窮に突き落とすような差押えです。
しかし現実には、銀行口座に僅か十万円の給与を振り込まれたものを九万円差し押さえられたという京都市の例、あるいは失業している滞納者が児童手当、職業訓練用の訓練・生活支援給付が振り込まれる口座を差し押さえられて残高をゼロにされたという大分県の例などもあります。
これは、昨年十一月に、地方税の滞納を理由にして児童手当が振り込まれる口座、児童手当だけが入っていたその口座を差し押さえた鳥取県の措置について、公的手当を狙い撃ちにした差押えは違法だという判決が広島高裁で出されて、これは確定した判決です。
厚労省にお聞きしますが、これは直接的には地方税の滞納処分をめぐる判決ですけど、厚労省が所管する国民健康保険料の滞納処分をめぐってもやはり同じ立場が求められるはずではないか、国保料の滞納を理由にして児童手当など公的手当を狙い撃ちにするような差押えというのは、これはやってはならないと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(唐澤剛君) ただいま先生から御指摘のございましたような鳥取県の判決が出されていることは承知をしております。
これまで、これは私どもだけではなくて税務当局も同じでございますけれども、一般論として、こうした公的な手当等の受給権、差押えが禁止されている受給権は、これは差押えがもちろんできないわけでございます。他方で、これらが振り込まれた預金については、受給者の一般財産となりまして、原則として差押禁止債権としての属性は承継するものではなく差押えは禁止されないと解されているところでございますけれども、御指摘の判決の個別の事案については言及はできませんが、事実関係に照らしまして、この判決ではこうした原則の例外となり得るケースがあることを示したものというふうに受け止めております。
○小池晃君 ですから、例えば口座があって、もうそれは専用の、例えば障害者の特別児童扶養手当だけが入るような口座、それ以外のものは入っていない、そういったものを入った途端に差し押さえる、もうこれは狙い撃ちですよね。こういったことはやっぱりやってはならないという、そういうことでよろしいですね。
○政府参考人(唐澤剛君) 私どもとしては、今申し上げましたような一般的な原則と、それから例外となり得ることがあるということをよく踏まえまして、個々の滞納者の実情をよく把握した上で適切に対処をしていただくべきものと考えております。
○小池晃君 だから、その公的年金だけが入っているようなものを狙い撃ちにするようなことというのは、これは例外的なものということになるわけですよね、今の御説明でいえば。
○政府参考人(唐澤剛君) なかなか個別の事案についてはお答えはしにくいんですけれども、この鳥取の判決について詳しくはお話しできませんが、こちらの方では、これは児童手当を特別に受けていた口座ということだというふうに理解をしております。
○小池晃君 ですから、今の答弁でいえば、そういったものを差し押さえるということはやっぱり許されないということであるというふうに思うんですね。
それからもう一つの問題は、滞納していても、生活実態をよく調査して、生活困窮している世帯については処分を中止するというのが、これが滞納処分の原則でもあるというふうに思うんです。
しかし、生活困窮に追い打ちを掛けるような差押えが行われていて、今日お配りした朝日新聞のちょっと大きな記事がありますが、これは実例として、群馬県の前橋市に住んでいるシングルマザー、勤めている会社が経営難で、給料の支払が遅れて国保料の滞納を余儀なくされた。昨年暮れ、約十二万円の給料が入った日に銀行口座を差し押さえられて十万円を強制徴収された。預金口座には六万円しか残っていないので、友人に借金をして生活した。それでも前橋市は、今度は生命保険を差し押さえて、どう滞納分を払うのかの計画を作らなければ生命保険を解約するというふうに言ってきたというわけですね。
この記事の中でも、表がありますけれども、前橋市は滞納が六千四百八世帯に対して四千五百三件の差押えをやっています。一方で、滞納世帯数がほぼ同じ大津市の場合は、これは差押えの件数は百四件、四十分の一以下です。それから、名古屋市と前橋市は徴収率はほぼ同じですけれども、前橋市の差押えの比率は名古屋市の十倍なんですね。自治体によって、やはり生活実態を調べて差押えをやっているところと機械的にやっているところがあるのが実態なんではないかと、この記事を見て実態は推測できるわけであります。
厚労省に確認しますけれども、これは総務省も事務連絡を出しているように、これは、地方税の滞納処分であってもやはり個別の事情を考慮するということを言っております。厚労省の国保料についても、差押えに当たっては滞納世帯の生活実態をよく調査して、生活が困窮するような特別な事情がある世帯については機械的な差押えを行うということがあってはならないと思いますが、基本的な考え方をお示しください。
○政府参考人(唐澤剛君) 国民健康保険の保険料につきましては、負担の公平という観点から納付をいただく必要があるわけでございますけれども、これは、先ほど先生からも御指摘ございましたけれども、保険料を支払う財産があるにもかかわらず滞納しているという場合には差押えにより徴収を行うことも必要であるわけでございますが、各市町村におきまして、滞納する前に納付相談をまず行っていただき、それから分割納付などのきめ細かな対応を行うとともに、滞納している方の具体的な状況、個別具体的な状況を踏まえまして、生活を著しく窮迫させるおそれがあるという場合には滞納処分の執行を停止する仕組みがあると、こういうような仕組みになっているところでございますので、個々の滞納者の実情というものをよく把握をした上で適切に御対応いただきたいというふうに考えております。
○小池晃君 同じ滞納制裁である資格証明書については、これは厚労省も特別な事情の把握に努めるようにという通達を自治体に何度も出しています。やはり差押えについても、今これだけ大問題になってきている中で、同趣旨の通知を出すべきではありませんか。
○政府参考人(唐澤剛君) この差押えにつきましても、この委員会で御議論もございますし、また、先生御指摘のように紙面にも載ってきておりますので、私どもとしては、ただいまの個別の事情というものも十分把握をした上で対応をするということを、全国課長会議などもございますので、そうした会議や、あるいはブロックの会議などもございますので、こういう機会を捉えて市町村に対して周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
○小池晃君 今、大臣ちょっと手を挙げかけたので大臣にも。
これはやっぱり何か通知のような、これ、資格証明書はちゃんと出しているんです、厚労省は。
やっぱり滞納というのが今現場では大変問題になってきているので、やっぱりそういうきちっとした周知徹底のための、文書として出すべきじゃないですか。いかがですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 県の財政にとってもそう大きな額ではないような場合に、あえてしゃくし定規なことをやるかということを考えてみると、やはりそこは温情を持って臨まなければいけないし、配慮をせにゃいかぬということでありまして、どうするかは今局長から申し上げたとおりで、その辺の考え方を、やはりぬくもりを持った行政をやるべく徹底をしていくということで厚労省としても言っていきたいというふうに思います。
○小池晃君 分かりました。
しっかりぬくもりを持って、温情と言われると、社会保障ってやっぱり受給権があるわけですから、そこをしっかり保障するという立場で是非お願いします。
終わります。
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